船内検査実施と感染症専門家の役割

厚労省としては政治判断が終わりいざ船内実施となれば、具体手順段階ですので(とはいえ船の近ずく2日程度の短期間での国際交渉と妥結などの小刻みな進展ですので、どれについても数時間か半日単位で即決していくしかない超スピード対応でしょう)この段階で感染症専門家のご意見をもらおうと現地参加をお願いし、事後検討会などでの有益意見開陳を求めたかったのではないでしょうか?
現地見学会?参加要請に対し彼は法の重要性(現=入国後検査に応じない場合のリスクの議論を知らないか、軽く見ている結果)設備上無理のある船内検査に踏み切ったことに対する批判的立場で批判材料を仕入れるために見に行った可能性があります。
そもそも彼に関するウィキメデイアでの紹介によると18日午前乗船、夕刻には下船しているというのですから、現場作業応援に行ったにしては時間が短すぎます。
戦力になるには船内配置やスタッフ分担、現状説明を受けるなど事前説明が必須ですが、午前から夕刻まででは説明を聞いて巨大な船内見学して周ってほぼ終わりで検疫手続きに忙殺されている関係者にとっては、説明案内等に時間を取られるばかりです。
専門家に最先端実務勉強チャンスを与えるつもりの見学招待だったのではないでしょうか?
6月13日紹介の岩田氏意見(3月12日インタビュー)を再引用します。

「専門家は結局、少し入っただけだった。日本環境感染学会の専門家も入ったが、結局はすぐ撤退してしまった。
入れ替わり立ち替わり専門家が入っているが、専門家がリーダーシップをとった対策づくりができていなかった。」

厚労省が後学のための専門家招待であれば、実質半日行程で入れ替わり立ち代わり来るのは当然です。
岩田健太郎氏が上陸後の完備した体制で検査をすべきという前提でこのような意見を主張していたとすれば論理一貫性がありますが、日本の法制度では当時強制隔離できる法制度がなかった前提を無視した考え方では、現実無視の意見として誰にも相手にされなかった可能性があります。
岩田氏は検疫官が感染したことを批判論拠にしていますが、隔離その他設備の整った、感染症者を受け入れるために特化したトップクラスの病院でさえ医療従事者や院内感染を100%防げない現実があるのに、上陸後検査より船内の方が安全であるべきという次元の違う論理で非難しているように読めます。
成田空港であれ各地方港湾の入国審査手続き設備陣容は、出先の臨時的施設であって東京横浜等先進地域のトップクラス病院以上の感染症対策が整った入国審査設備があるはずがない・・岩田氏は感染症専門家らしいのでこの実情を知らぬはずがないでしょう。
「二次感染が起きた」ことが、岩田氏の正当化論証のようですが、その後の経過・・長期経過で十分な対応時間があった・厳重な防護服、手袋着用等のマニュアル定着後の一般病院でもあちこちで二次感染が普通化していてこのため医療従事者の家族が差別を受けるのが社会問題になっているほどです。
世界どこも経験のない世界初・3700人ものクルーズ船対応について、何人かの2次感染者が出てもそれが大失敗の証拠にならないでしょう。
コロナ患者受け入れ施設では相応の体制が整っているから指定病院になっているのですが、それでも日本に限らず、医療従事者の感染リスクの高さが世界的問題になっています。
治療施設でもないクルーズ船(文字通り3密環境です)で3750人近くもの大量人員の検査を行うしかないとなれば、完璧でなくとも放置できない一定のリスク覚悟で行うしかないのが原則です。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/9-40.php

医療従事者の新型コロナウイルス感染は世界で9万人超=国際看護師協会
2020年5月7日(木)09時56分

以上感染のプロでない私が3月12日付岩田氏のインタビュウ記事を見たところ、クルーズ船内見学後帰路にツイッター発信、その後約2週間経過後なのでその間に起きた米国内グランドプリンセス号の処理があった後で、それと対比しての意見があるか?より具体化した再批判かな?として読んでみると、物足りないように見えます。
彼は米国感染症実務留学経験を持ってCDC基準を金科玉条にして?日本の実情批判しているかのようですが、実務というものは現場状況に応じた限られた設備と準備時間で最善を尽くすべきです。
彼が米国CDC基準に依拠した批判をしているとしても、この後で紹介するように日本の約1ヶ月後(3月4日避難命令〜5日サンフランシスコ沖停泊・入港不許可〜10日頃接岸)に発生した米国クルーズ船では、検査官が乗船して船内検査していました。
要は、現場状況に合わせて柔軟運用すべき基準であり、状況無視して画一基準を踏み外してれば批判し、それを外国人特派員協会で記者会見してしまう神経がおかしいと思います。
4〜5年前に受任した事件で大手企業で働いたことのある労働者が、地元の小企業に再就職していて、元の会社はではこうやっていたのに・・という不満ばかりというか自慢ばかり(書式その他大手そのままのやり方で小企業がやれるわけがないから小企業なのです)で同僚から浮き上がっているという話がありました。
岩田氏のインタビュウ記事は、米国クルーズ船がニュースになった後の3月12日付ですが、米国での実践を踏まえた意見らしいものが見当たりません。
米国の高度医療センターではこうやっていると言う基準をクルーズ船と言う閉鎖空間に3700人もいる極限状況下でしかも時間が迫っている環境・・・完璧でなくとも、先ずは対応するしかない局面でどうすべきかのリアルな場面に当てはめた現実的議論が必要です。
現場状況下での変則対応が適切か、臨機応変の対応が適切だったかの具体的議論が専門家の意見であるべきでしょう。
実務に直結する学問は、米国の最高設備基準に合わない点を批判していれば済むものではありません。

無制限検査とCDC賞賛意見

先進社会が重視しているのは、中国による価値観戦争・・専制支配・その一方法である監視社会の方が良いという思想の代理運動を許さないということではないでしょうか。
中国のやり方をほぼ踏襲したこのような方式を韓国が採用できる基礎には、日本支配〜米軍政下にあった期間を除けば古代からずっと専制支配下あった民族性があってできることではないでしょうか?
朝鮮族は当時(幕末から明治)清朝の属国として満足していたのに欧米の開国要求や日本の圧力で無理やり中国(清朝)から独立させられてしまった・・以降現在に至る外からの近代化について行けない苦痛が朝鮮族の苦労の基本です。
下関条約・日清講和条約は冒頭に朝鮮の清朝からの独立が宣言されていますが、日清間で朝鮮独立が決まった瞬間でした。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#

下関条約1895年
第一條[編集]
淸國ハ朝鮮國ノ完全無缺ナル獨立自主ノ國タルコトヲ確認ス因テ右獨立自主ヲ損害スヘキ朝鮮國ヨリ淸國ニ對スル貢獻典禮等ハ將來全ク之ヲ廢止スヘシ

朝鮮独立を第1条に掲げるとは最重要事項・・日清戦争は朝鮮の独立をめぐる戦争だった本質が見えます。
韓国民の本心は無理に親から引き離された悲しさ・一刻も早く慣れ親しんだ中国支配下への復帰でしょうが、まだ米国の力が強いので実家の傘下に戻れない・・様子見の状態にあると見るべきです。
蝙蝠外交を見抜いている北朝鮮によるこの1週間〜数日の激しい韓国ユサぶりでしょう。
北朝鮮が、古代の専制支配そのままの体制で安定しているのは、これが民族性レベルにあっているからです。
こういう社会では、任意協力に頼れないのでスマホ等の位置情報で追跡して何時何分にどこにいたという人を根こそぎ追跡する韓国式調査(日本で言えばプライバシー侵害の遣り過ぎ)が必要なのでしょう。
米国は流石に個人監視まで真似できないので、得意の物量作戦・発症者が出れば無制限に検査に応じる方式しか真似できない・・感染源に届かないので拡大を防げない状態のままです。
これでは医療資源の無駄遣いで国費・人材の浪費です。
米国の物量作戦方式を手放しで称賛するのが、我が国大手メデイアであり、CDC賞賛意見です。
2月末から3月初め当時の米国CDC賞賛意見の例を紹介します。
以下の例を見ると、ちょっとブームになると時流に遅れまいと旗を振る学者(メデイアの勧誘にそのまま乗る・・自分の考えがないのかな?)が多いのに驚きませんか?
ちなみに、このコラムでクルーズ船対応批判シリーズを始めた6月13日「暫定的隔離の必要性2(岩田氏の豪華クルーズ船対応批判1)」に紹介した岩田氏のインタビュー記事を東洋経済が掲載したのも3月12日でした。
https://toyokeizai.net/articles/-/335971?page=7

岩田健太郎「非科学的なコロナ対策が危ない」
クルーズ船の失敗を繰り返してはならない  2020/03/12 5:30

https://www.nippon.com/ja/news/l00270/

新型コロナウイルス:専門家が政府に提言-日本版CDCの創設や、医療コンテナ導入を
社会 医療・健康 2020.03.04
大きな予算と人材をそろえ、米国の感染症対策の陣頭指揮をとるCDC(疾病対策センター)の“日本版”の創設や、病院内などにウイルスを持ち込むリスクを低減する「医療コンテナ」の導入などを盛り込んでいる
感染症危機管理システムを構築する必要があり、感染症だけの専門家ではなく、情報学や、免疫学など幅広い分野の人を集めた専門家チームを結成し、政府に提言する仕組みを作る。
米国のCDCは人員が1万数千人、年間予算8000億円を超え、情報収集、国民への説明、検疫作業まで幅広く行っている。これに対し、日本の国立感染症研究所は人員が約300人、予算が約80億円と大きな差がある。感染症危機管理の司令塔となり、人材や施設の充実したCDCを手本とした新組織の立ち上げを急ぐ。

http://blog.ricoh.co.jp/RISB/new_virus/post_548.html

日本に求められる感染症対策「司令塔」
=米国はCDCとカリスマ所長が主導=
2020年04月15日

CDCの巨額経済規模に仰天している論調・子供の憧れ表現のようで、大金を投じてだから?何が日本より良いのかが見えません。
ざっとこんな具合でなんでもかでも米国流が良い、この基準に合わない日本の制度は時代遅れ、頑迷固陋集団かのような論調でした。
岩田氏のツイッターに始まる厚労省官僚批判はこのお先棒担ぎになる快挙!だったように見えます。
岩田健太郎氏のクルーズ船対応批判論に戻ります。
何が船内検査に決めた理由が何であったかの論争前提をボヤかしたままでは、「こういう結論を採用する以上はこのようにすべき」という論拠が成り立ちません。
入国させて仕舞えば、内国人待遇しかない・・国内法はお願い以上の強制ができない日本の法制ですから、外国人も入国してしまえば陽性の証拠もないのに外国人だけ入院や隔離強制(ホテル収容?)できません。
「日本人は要請に応じる率が高いが外国人は応じない率が高いから」という理由で外国人だけ特別不利な法律を作って強制するようなことは許されません。
そもそもそういう法律ができるとしても今回のクルーズ船対応には間に合いません。

暫定的隔離の必要性1(武漢チャーター帰国者の検査拒否)

弁護士の場合いかに急ぐ事件でも、例えば急ぐので仮処分申請してくれと言われても事件内容の説明がないと申請理由・ストーリーも不明ですしストーリーに合わせた証拠集めの指示すらできません。
以上のように弁護士と医師では日常的事実確認の必要性が違うとはいえ、現在の精神障害に対する医師の診断や社会対応を私のような素人から見れば、電車の中で不審な行動をする人がいれば原因究明よりは、先ずは距離を置くのと同じレベルの対応に見えます。
この一例で重大な人権侵害を引き起こしたのがいわゆるライ予防法でした。
らい病の場合、その後の科学発展の成果で伝染性がないとわかったのでそれまでの隔離は、犯罪で言えば、濡れ衣・・無実の罪で牢獄に入れられていたようなものです。
まして学問的に伝染性がないと決まってからも長年にわたって国家が隔離を続けたのは、無罪の証拠が出ていたのにそれを隠して拘束していたようなもので、犯罪行為そのものでないでしょうか?
容疑だけでの逮捕勾留が許されているように、伝染性があるかどうか不明の段階では国民不安次第で大事をとって隔離することが許されるかの問題です。
検査に必要な合理的期間の隔離は、法で決めれば許されると見るべきでしょう。
今回のコロナ対応でも、偽陽性で強制入院させて良いかの問題が起きれば同じ問題になります。
いわゆる法定伝染病だけ一定の疑いがあれば強制検査できるという法があった場合、新型ウイルス蔓延開始時には機動的に政省令等で指定できる場合と法改正・国会審議が必要な場合とでは、機動力に差が出ます。
武漢からの政府提供のチャーター機で羽田到着後の検査拒否?あるいは勝浦の三日月ホテルへの2週間隔離を「拒否して自宅に帰ってしまった人が出た」と報道されていたところを見ると、拒否されると強制する法令がなかったということでしょうか?
法の強制力がなくとも武漢の完全封鎖後帰国できなくなった邦人救援のために日本政府が中国政府との交渉の結果、特別救援機を飛ばして閉鎖中の武漢空港(全面閉鎖中なので空港管制機能も全面閉鎖中ですし、武漢市内外交通機関も全面停止プラス個人外出禁止=厳重検問中に武漢市内外に散在する邦人を一定日時にあわせて空港に集める工夫・公安関係の通行許可手続きなど膨大な事務的すり合わせをへて)に武漢空港に救援機が着陸し時刻通りに出発できて、帰国できたものです。
大方の日本人は帰国できた人らは税を使って自分らを救援してくれたことに感謝する気持ちいっぱいで帰国の喜びを噛み締めるものと期待しているので、入国時の検査拒否する行動自体思いもつかなかったから大ニュースになったのでしょう。
私の関心はこれだけ国際的大騒ぎになっているのに、強制検査システムがこの間に用意できなかった=国会審議が必要な仕組みになっていたらしいことに対する驚きでした。
記憶がはっきりしないので過去記事の引用です。
https://www.asahi.com/articles/ASN1Z6HWJN1ZULBJ017.html

検査拒否した帰国者2人、「検査受けたい」と申し出
新型コロナウイルス
2020年1月30日 19時48分
中国・武漢市(湖北省)で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、厚生労働省は30日、チャーター機の第1便で29日に武漢市から帰国した日本人のうち、ウイルス検査に同意しなかった2人が、検査を受けたいと申し出たことを明らかにした。現在、検査を受ける医療機関を調整中という。
第1便では206人が帰国。204人がウイルス検査を受けたが、2人は検査に同意せず、帰宅していた。

強制さえなければ周囲に迷惑をかけても何をやっても良い?検査に応じなくとも良いという考えの人は、日本人では稀でしょう。
まして法令になれば守るのは当たり前すぎる・これが法令遵守意識強固な民族性の基礎になっているのでしょう。
日本列島在住の多くはそういう民族意識ですので、自粛要請程度で刑罰を伴う外出禁止令がなくともコロナ禍の蔓延を最少に凌げた要因でしょう。
(もちろん大方の意識という意味で例外がありますので、非協力者は日本人でない・非国民という結論付は性急すぎ・「逆は真なラズ」の原理どおり(大規模災害時に警察力が弱っても、その隙に略奪等に走る民族との違いです)
コロナでの自粛要請に対して、埼玉のアリーナであったか?で格闘技のイベントを強行したり、都内だったかでいくつかのパチンコ店が強行営業するなど世間を騒がせました。
その日の(目先)興行収入を得られたとしても長期的な業界支持を失う・今後格闘技ファン→迷惑者のイメージが広がると格闘技ファンの肩身が狭くなる・・ファンが減るのかな?
民族一致して災害に備えているときに自分勝手なことをすると長期的に見て大きなリスクがあるので、仮に協力によって倒産したとしても多くの企業や個々人が民族防衛のための呼び掛けには自己犠牲を厭わず応じる社会になっています。
パチンコ入り浸り客自体がすでに日陰者的になっているのでパチンコ店の強行開店で今更イメージダウンしても困らない・開き直りだったかも知れませんが、あとで見ればより一層のイメージダウン・イメージ悪化に止まらず現実の客足急落のエポックになったかも知れません。
ただし当該パチンコ店はコロナ対策を一生懸命にやっての開店だったのに、(その他業界もポツポツと開業を始めていたのに・・)パチンコ業界だけ標的に騒ぐのは偏りがあるという意見もあるようです。
日本の武士道・・価値観は、自分の命を捨てても子々孫々のための名誉を重んじてきました。
 「虎は死して皮を残し人は死んで名を残す」
上記は定住社会で生き残る知恵だったでしょうが、グローバル化で人の移動が激しいので刹那利益に走った方が有利だと思う人が増えているかも知れません。

新型コロナウイルス対応の巧拙2(無制限検査)

高齢者や病人に感染させないようにするには、高齢者の身近に感染者がいない方がいいのですが、介護施設等の従業員だけ感染比率を防ぐ秘策など有り得ないでしょう。
せいぜい関連者だけこまめに検査したり老人ホーム入室時にアルコール手洗い義務付けぐらいでしょうか?
その上、施設を利用していない高齢者がいっぱいいますので、高齢者はできるだけ外出を控えてもらうとしても同居の親族等の関係者多数との接触が日常的にある関係で、国民全体の感染比率を減らすのが重要です。
人口比の感染者数を減らすにはどうすれば良いか?
感染が始まったばかりで死亡率が統計的にはっきりしないようですが、WHOの発表では感染者のうち致死率2%とのことで8割は軽症(8割は症状に出ないという人もいます)とのことですから、特別な病気を持っている人以外では、80前後の高齢者以外は感染したからといって普通の風邪をひいたかな?程度で終わるようなイメージです。
ちなみに2%とは、(検査等でわかった)感染者比で人口比ではないようですから、今回のウイルスは感染しても無症状の人がいて、しかもそのまま治ってしまう人もいるようですから、これらの人は2%の分母に入っていません。
4〜5日から2週間経過すれば100%検査に引っかかったり症状が出るかというと、そのまま症状が出ないでウイルスも無くなってしまう(免疫力の方が強くて勝ってしまう?)人もいるようです。
変なものを一緒に食べてもすぐ下痢する人と、少しも感じなかった人もいるし少しお腹がおかしいけれどそのうち落ち着く人がいるような違いでしょうか?
いわゆる潜伏期間4〜5日という意味は、一般的日本語の理解では体内でウイルスが入って増殖中だがまだ発熱等の症状が外に出ない期間のように思いますが、この間は検査しても陽性にならないという意味があるようです。
潜伏とは誰に対する潜伏か?ということですが、素人の直感的判別力で分かる程度の症状(微熱だるい、咳き込むなど)が現れていないというだけなのか、いわゆる検査キットでもわからないほど深く潜伏しているという意味かを決める必要があるでしょう。
感染定義とも関連しますが、体内に入っても(小粒の種子などのように)そのまま消化?あるいは残存しないで一定時間で体外排出されてしまえば、その間の体内存在は、感染とは言わないでしょう。
体内で悪さしそうな闖入者に気がついた免疫系が応戦準備に入り応戦が始まると熱が出るのでしょうが、熱が出る前の前哨戦段階で免疫系にとっては気がついているので、その段階で侵入されたその人が意識として気がつかなくとも、ある検査機器を使えば反応するような製品ができれば、検査機器を操作判定する人にとっては潜伏で無くなるのでしょう。
肺炎で言えば咳が出ない程度の肺炎は潜伏だった症状が、レントゲン撮影できるようになるとレントゲンに写る程度になれば、潜伏とは言わないでしょうし、がん細胞なども検査しないと分からないがん細胞は本人にとっては潜伏状態ですが、検査ですぐ分かるようになるとプロ的には潜伏と言わないのでしょう。
今の時代、レントゲンやMRIなどで分かるようになる直前状態を潜伏というのかもしれません。
検査というのは、ある症状の確定診断のために行う検査と兆候を早めに捉えるための検査があってある程度重複しているのでしょうが、今回の社会的重要性では後者の意味でしょうから兆候判定を前倒しすればするほど検査精度が低くなる宿命です。
テロのために首相官邸に向かっている人を職務質問や注視する場合で言えば、官邸の数十メートル付近の不審行動者限定ならば効率が良いですが、千葉県や神奈川県埼玉県から東京に向かう人全員を・都内全域で千代田区から上野に向かう人までもしかして迂回して最後に官邸に向かうのでないか?とついて歩いたり検問するのでは膨大な人手が必要で、しかも捕捉率が下がります。
ウイルスが体内侵入後迎え撃つ免疫勢と勢力拮抗中の場合・・あるいは犯人がお城に侵入したがまだ建物内に入らず様子を窺っている段階では、分からないということでしょうか?
ところで致死率2%というのは超高齢者を含む数字ですから普通のひとは、まず大丈夫と言えそうなので、超高齢者は別として60歳以下の一般健常者の場合患者のためだけであれば咳や発熱などの症状が出てからの検査で十分であり、(お腹が痛いなど自覚症状があってから診察を受ける一般の病気と同じです)自覚症状のない人まであらかじめ検査する必要性がありません。
血圧、腎臓や腹痛の場合、感染の心配がないので自分さえよければ良いのですが、元気な若者が実はウイルス感染者で他人に感染させる能力がある・・配達員・デパート店員が顧客の高齢者に伝染させると困る・・社会予防のためにはウイルス感染有無に対する事前検査がどこまで必要か?という問題です。
犯罪者の識別・・容貌や物腰態度や身内・・従業員か部外者かで入室基準がわかる人物判定と違い、ウイルス感染有無は親しい人・元気そうな人でも検査しないとわからないので完全を期すると全員検査となるのでしょう。
しかし現在の検査方法では、感染後4〜5日以内では検査しても検出できないのが現状らしいので、数日前から連続検査しないと一回の検査で未感染と判定しても今日感染していないことになりません。
グランドプリンセス号の検疫対応では、閉じ込めて検査しているから次々と感染者が出たような批判報道でしたが、潜伏期間中で一回目の検査で陰性だった人が潜伏期間(このため陰性の人も2週間下船を認めなかった)経過で順次陽性変化しただけ・潜伏期間?2週間経過後の新たな陽性反応がほとんど?ないので検査開始=船内分離後の感染がほとんど?起きていないのが実態のようです。
その上に検査の精度自体がイマイチ・・精度が(簡易キットの場合?)約5割程度?らしいので陽性の人をスルーさせてしまうリスクもあり、(これが下船後の陽性変化?)例えば3回に一回しか出ないとすれば同じ人を別の検査法で何回も検査する必要があります。
風邪の場合でも熱が出ないパターンや咳が出ないパターンなど色々あるように、特定物質の検出方法に頼ると人によっては反応が違う問題があります)
体温チェックのように入室入門の都度簡単にできるシステム開発がない限り、専門検査機関で何時間も並んで一回きりの全員検査は、何%かの感染者を高齢者施設から遮断できる程度で労が多い割に効果がはっきりしないのが難点です。

全食品検査3(国民の信用)

 事実上(法的には出荷制限解除された後・あるいは出荷制限しないための風評被害)の買い控えによる地元・国内業者の損害は、原発事故による損害にカウントされなくなるのでしょうが、法律論は今後の論争に待つとして(被害相談を受けることの多い弁護士では、自主避難等の被害も損害に含めるべきだという立場の人が多いでしょう)、国民経済的に見れば、こうした損害もカウントした上で原発の方が安いかどうかを議論すべきです。
風評被害であれ、何であれ、結果的に食品関連の輸出が阻害され、逆に輸入が増えている事実は、その分は原発事故による我が国の損害です。
今日の日経朝刊5ページによれば、チーズ等の酪農製品の輸出品については海外での輸入規制が特に厳しくこれがまだ(と言うことは10月7日の記事を書いたとき現在ということでしょうか?)続いていて、今年4〜6月の食品輸出は大幅に落ち込んでいると書いています。
中国の高速鉄道大事故で原因が究明されないままの運行再開に不安でも、中国国民には他の交通手段を選ぶ選択肢がないので、(普通車を申し込んでも「売り切れ」と言って断られるようです)乗らざるを得ない・・満員が続いていると報道されますので、国民に信任されていると中国政府が強弁しているのと同様です。
満員の定義に関するある本によると実際に乗って見ると乗車率は2〜3割が漸くらしいですが、中国ではたとえばある座席に東京横浜間に一人乗り、京都大阪間に一人乗るとその座席は200%の乗車率と計算しているらしいのです。
ただし、中国政府も当初は強気でしたが(客に敬遠されてガラガラになったからでしょうか?)最近では運行便数を大幅削減し、スピードも落とすようになったようです。
政府の方は牛乳や豚や鶏の検査をしなくとも、国民が黙っているし、仮にどのような批判が起きようとも、牛乳の場合全国ブレンドしてしまえば国民は選べません。
報道規制と同じ現象・結果です。
政府・業界は少しでも日を稼ぎ(放射性物質の飛散は水素爆発直後からはかなり収まっているので)、今年の3月以降7月頃まで現地の草や餌を食べた鶏や豚を出荷してしまってから検査すれば、結果が出なくなる可能性を期待して月日を稼いできたのでしょう。
そして国民の批判が強くなってくれば心配がなくなった頃に「そんなに心配なら・・・」と検査して「結果は何ともなかった」と発表して「安心してください」と言う方針だったかも知れません。
肉牛だけの検査はおかしいのではないかという意見はこのコラム(このコラムは稲藁汚染の報道のとき以来疑問に思って書き始めていたものですが、先送りになって今になってしまったので・・・)以外寡聞にして聞きませんので、政府・業界はウマくやり過ごしてしまったようです。
仮に牛乳その他畜産類が汚染されていたとしても、3ヶ月か半年で汚染食品がなくなるならば、(一生あるいは4〜5年続けて食べ続けるのでないならば)その間福島付近の野菜や卵を食べ続けても(汚染率にもよりますが低濃度汚染の場合)トータル摂取量は大した害がないのかもしれませんが・・・。
政府が恣意的に出して来る暫定基準値の信用がないので、どこまでなら安心かの目安が分らない結果、国民はゼロ以外は嫌だという心理になってしまっています。
原発事故発生によって、これまでの政府・電力業界による安全神話がまるでインチキだったことが白日に曝され、(想定外の津波による被害という当初の宣伝も虚偽だったことが分ってきました・・あちこちのパイプ破損や電柱網の地震による寸断が基本的な原因で冷却装置がいつまでも起動できなかったに過ぎません・・今でも(8月頃の情報です)パイプ類の補修が完成していない様子です。)その後の暫定基準値や避難区域の設定等々信用を失う場当たり対応が続いてしまいました。
原子力行政を考えるにあたっても、何事も国民の信用の上に政治が成り立っているという簡単な原理に立ち戻るしかないのではないでしょうか?
風評被害が起きるのは、政府信用性の低さに比例することになりますから、風評被害発生を如何にも風評で行動する国民が悪いかのように言いますが、風評の広がり程度は政府信用・原子力政策に対する信用度のバロメーターです。

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