上海総合株価指数3とチャイナリスク

前回(5月13日)に5月10日(金曜日終値)現在のグラフで東証と上海の株価指数の推移を紹介しましたが、経済の活力・動向を示す上海株価指数を見れば、ここ半年くらいでは中国経済ジリ貧の傾向が明らかになっています。
上海の5月10日(金曜日)終わり値は、2,246.83で、13日月曜日は2,241.92ですし、今朝も下がり基調です。
2〜3月ころには習近平新政権発足による景気テコ入れ期待で少し上がっていたようですが、期待倒れに終わったようで昨日のグラフで分るように4月に掛けて経済実力相応に下がり始めていました。
(新政権が発足すれば工事中断している鉄道事業に再度投資再開という期待が大きく出ていましたし、一時鉄鋼需要が膨らんだことがありましたが、それが新政権発足後今どうなったのかさっぱりニュースに出ません・・多分また在庫の山になっているので公表出来ない・・不都合なニュースは公開禁止になっているのでしょう)
これに危機感を抱いたから、中国政府は外資の短期資本取引の自由化を示唆する発言を4月下旬にしたと思われます。
この発言を好感して月末から5月10日)金曜日)に掛けて少し株価が持ち直していたところですが、昨日月曜日の終わり値ではまた下がり始めた様子です。
上海総合指数はリーマンショック前には1時期6000台を越えていたこともありますが、それは特別な高値としても概ね5000台を維持していたと控えめに見ても、現在はその4割台の水準で低迷したままです。
5月13日に掲載したグラフで見れば分るように、東証の日経平均株価は安倍政権発足直前には約9000円弱だったことから見て、その後アベノミクスの効果で一直線の上昇カーブ・・元気一杯の様子です。
5月10日終値/日経平均は14,607.54で、5月13日月曜日終値は14,782.21で今朝も上がり調子で日々上がっています。
東証日経平均はリーマンショック前ころには18000円前後でしたから、今は約82%の戻りですが、上記のとおり経済の実態的トレンドを表す株価の動きが日本と中国ではまるで違っていてほぼ逆方向であることが分ります。
これからベトナム等に投資が逃げて行き中国国内の不景気の影響が上海の株式相場に反映されて来ると、今後もっと沈んで行くか?と言う状態でした。
中国経済の下降トレンドは資金不足によるのではなく、(資金は既に充分に入りました)ローエンド製造段階から脱出出来ず、ベトナム等から追い上げに苦しむことによるのです。
仮りに口先だけの資本自由化発言→流入期待ではなく、本当に短期資金流出入を解禁して短期資金が株式市場に海外から流入した場合、流入による買い注文が増えて 一時的に株価指数が上がるでしょうが、経済実態が悪ければ一旦流入した資金が逃げて行くので短期・目先のごまかしにしかならないでしょう。
経営不振に陥った企業が高利資金を取り入れて、さしあたり手元資金に余裕が出るように見える結果と似ています。
経済側面で成長減速・停滞のリスクが高まって来ているだけではなく、日本企業としては特に中国では幼児期から反日教育を推進している危険な側面を重視する必要があります。
幼児期からの教育の成果が出て、若年層を中心に骨の髄まで反日感情を抱いている中国人と、どのようにつき合って行くのが良いかを考えるべき時期です。
政治不安になる都度、機会あるごとに反日暴動をけしかけるリスクが高い・・その都度以前の暴動よりもエスカレートして行く・・唐時代のペルシャ人大虐殺の例もあり、人的被害が普通に発生するようになって行く、リスクが高いと想定しておく必要があります。
経済変動があっても親日国であればその分変動効果を緩和するのでリスクが少ないのですが、反日教育に精出している中韓両国の場合、経済変動リスクを加速するリスクがあるので、他所の国よりも高リスク国として想定する必要があります。
他国よりもかなりリスクの高い中国にマスコミが「乗り遅れる」なと大騒ぎして参入を焦らせる理由は何か?と疑問を抱くのが普通の神経ではないでしょうか?

上海総合株価指数2

汎用品の製造基地としての中国の将来性に疑問符がついてからは、中国の人口が多いだけを取り柄にして消費市場として期待するマスコミ報道が多くなっています。
製造業としての発展性がないと世界からより高度な産業の誘致が難しいし、ベトナム等の追い上げでローエンド製品向け職場が徐々に奪われて国民個々人が(失業増大で)貧しくなって行くとすれば、消費産業を継続的に吸い寄せるための投資資金の流入継続を期待することは不可能です。
今はまだ下着で町中を歩いたりサンダル等で歩いていた人たちが上着を来たり靴を買うようになったり冷蔵庫を買うようになったことによる一巡までの新規投資が始まったばかりですが、一定水準までかさ上げすれば、その段階で新規投資(資金流入)は停まってしまいます。
5〜6年すれば投資資金の回収が起きて逆に日本等へ資金(利潤)が還流する時代が来ます。
近い将来、所得水準の向上が期待されてこそ消費産業が継続的に現地投資したくなるもので、この期待がないときには人口だけいくらあってもアジア的停滞を免れないことは、解放前の中国や最近までのインドやバングラデッシュやインドネシアを見れば分ります。
中国が所謂ローエンド製品製造からもうちょっと高度な製造業へ脱出出来ないままで、製造業への投資減少分をスーパー等の出店投資導入で穴埋めしようとしても(消費材向けであれ当面資金が入って来る点は工場投資と経済的には同じとしても・・短期資本流入よりはマシでしょうが・・・)先が暗くなります。
規模を小さくして比喩的に言えば、日本の夕張市や釜石のような企業城下町があって、そこの主要産業が縮小〜閉鎖した場合、その代わりに大規模スーパーを誘致してもどうにもならないでしょう。
ローエンド製造品に関しては、現在ベトナム・ミャンマー等・・最近話題のビル崩落事故で言えばバングラディッシュ等への新規投資シフトが進んでいます。
既存投資の引き揚げまではいかないまでも・・新増産分が後発国へシフトしているとすれば・・ひいては中国への新規外資流入がその分減少し、流入資金を元手にした成長投資が減りますので、中国経済は前年度比何%という成長は出来なくなります。
自分で汗水たらして稼いだのではなく、外資が入って来た不労所得であれば、無駄なビル建設・鉄道工事等で名目上GDPを上げることは出来ますが、外資流入分を除けば実質的には成長どころか下降現象に陥っているのではないか・・中国政府発表の目覚ましい(粉飾的)前年比7%台の成長数字とは逆の疑問を抱いてこの2週間ばかり書いています。
人によっては、中国は昨年あるいは1昨年あたりから実質マイナス成長に落ち込んでいるとも言われています。
(こうした意見は全て公式統計の欺瞞性を前提にする以上は、公式統計を利用出来ないので、憶測記事でしかありません)
これに関する正確な統計がないので漢方医の糸脈診察同様に(参入規制があるとしても一応のトレンドが分るので)株価指数によって見るしかないというのが、4月29日前後以来のシリーズ・意見です。
株価指数を見ようとしている内に、短期資本取引自由化をその内認めるかのような発言が出て来て、上海株式市場のトレンドが短期的に上向くようになりました。
前置きが長くなってしまいましたが、この辺で株価指数のグラフを紹介しておきます。
この原稿を書き始めていた4月28日ころには上海株価総合指数は下降1直線トレンドでしたが、これに対する危機感の結果?李克強首相による短期資本取引自由化示唆発言報道等で(株式市場への資金流入期待によって)ここ10日間くらいは少し盛り返しています。
下降局面にある経済実態に反したテコ入れ効果は、仮に本当に資本自由化を実施したとしても半年〜10ヶ月程度しか続かないのではないでしょうか?
今のところ上海株価総合指数が一応当てになるデータとして(まだ改ざんされていないと信じて)、ヤフーファイナンスの上海株価指数の内3ヶ月間の表をコピーすると以下のとおりです。

(上海総合株価指数)

 

関連で日経平均もヤフーで(これは6ヶ月)見ておきますと以下のとおりです。

(日経平均6ヶ月間)

     

上海総合株価指数1

5月8日夕刊によれば、韓国中央銀行は韓国経済のマイナス成長に(耐え切れずに)対策として遂に韓国は0、25%金利を切り下げたという報道がありました。
昨年からのマイナス成長ですから4月7日にも下がるという観測でしたが、4月にはウオン暴落が怖くて下げられなかったのです。
ウオン暴落の不安もあるが、あまりの急激な景気落ち込みに耐え切れずに目先景気下支えのために(先のことは心配しても仕方ない・・)踏み切ったということでしょう。
中国政府も四月下旬ころに、貿易統計に短期資本取引が紛れ込んで統計の信用性に疑問が生じるので、近いうちに短期資本取引自由化を李克強氏が言明・あるいは示唆したと報じられていました。
(ただし、ネットで再確認しようとすると出なくなっています・・政治家は匂わせるだけのことが多く、記者が前後の文脈で解釈して報道することがある・・思い込み記事だったのでしょうか。)
中国政府による貿易収支発表が香港等相手国地域との発表とあまりにも食い違い過ぎるので、この言い訳のために貿易決済名目で外資が流入して来るのを明らかにする必要が生じて来た・・資本規制自体が無理になって来たという程度の発言だったのかも知れません。
「短期資本自由化近し・・」と誤解して記事にしてもらえば、株式市場活性化に繋がる面もあるのでいろんな意味にとれるように政治家は発言します。
長期の投資・・工場用地取得や設備新設資金を日本等が持ち込んで人民元に換えている場合、その資金で土地を買って工場設備を立ち上げて稼働し始めると簡単に引き上げられませんが、短期資本自由化による資金流入の場合、数分・数時間で株や債券など売って海外に逃げられますので、急激な外資の引き上げリスクが生じます。
中国はアジア危機の教訓によって短期資金取引を規制していましたが、ここに来てイキナリ自由化に踏み切る予定の示唆発言(匂わせるだけで実行するかは分りませんが・・)するのは、もしもこの発言が本当にあったのなら余程外資不足に陥っていると見るべきでしょう。
・・将来危険があっても(そんな心配をしている余裕がない・・)目先の外資を喉から手が出るほど資金が欲しくなっている・あるいは株式市場への資金流入を期待させて相場底入れをしないと株式市場がずるずる下がって行き持たないリスクが生じて来たので相場誘導する必要に迫られているからではないでしょうか?
人民元相場は4月28日に書いたように為替が管理されている関係で実態経済の遅行指数ですので、中国の経済力が下降局面に入ってもなお相場上昇圧力が続きます。
まして今は政治的にも対日、対フィリッピン、対ベトナム等々周囲と緊張関係にあって、アメリカが中国を真正面から敵視し始めたことから、人民元の人為的安値に対するアメリカの不満を少しでも柔らげたいのが中国の立場です。
この結果ここ1ヶ月間ばかり人民元の管理相場上限をジリジリと上げているのですが、その結果もともとベトナム等後発国からの挑戦に困っているところへ人民元高の追い打ちがあると、国際競争力が余計落ち込む展開になっています。
実体経済を反映する株式相場がさえない展開なって来るので、口先だけでも外資流入→株式買い入れ資金流入を匂わせて相場底入れを計りたいところでしょう。
公式統計は何とでも操作可能でしょうが、株式相場の操作は難しいので短期資本取引自由化→資金流入増近しと言う口先だけの示唆で、株式相場の底入れを計ったのではないかと疑われます。
短期資本取引自由化発言に気を良くしたらしく、4月末ころからここ10日間くらい上海の株式相場が上がっています。
中国の成長期待をバックにした外資の投資意欲の強さをバックに中国政府は長期投資しか受け付けないという強気の政治をしていたものの、長期投資・・工場進出等の資金流入が急激に細って来て国内で資金が回って行かなくなるリスクが出てきました。
その穴埋めのために急遽短期資本取引解禁に舵を切ろうとしていると言う口先介入(匂わせ)をした可能性があります。
実際に解禁・・自由化しなくとも、李首相がこのように発言・匂わせれば、株式市場への短期資金資金流入を期待して相場が上がるのは当然です。
短期資本取引解禁示唆発言は、中国政府による経済運営の自信の現れというよりは、(苦しまぎれの)背に腹を替えられないという判断の可能性の方が高いように思われます。
李克強氏は匂わせただけとすれば、短期資本自由化を近い将来実行しなくとも政治責任がありません。

中国経済の動向3(単純作業・模倣社会から抜け出せるか?1)

一般的な理解では「不透明社会では安心して投資出来ない」という構図になるべきですが、中国の場合、何故か大手マスコミが大躍進報道を続けて、何年後にはアメリカを追い越すという根拠のない報道に明け暮れています。
世界中のマスコミが投資競争に一刻も早く参加しないと損をすると煽り続けてくれるので、不透明なままの方があわてて投資する企業が多くて中国にとっては得だからこう言う不透明政策を続けていられるのです。
(減速どころかマイナス成長になっていると分ったら、投資資金流入が停まって大変なことになります)
赤字企業は社債発行を続けないと資金が続かないので、一旦粉飾決算を始めるとこれがバレて資金供給が途絶えると大変な崖っぷちに立たされるので粉飾決算を続けるしかありません。
為替相場について規制しているときに、イキナリ実勢相場に戻ると大暴落または大暴騰になってしまうので、戻れなくなる・・個人の生き方でも一旦嘘をつくと、嘘の上塗りを続けるしかないの同じ原理です。
中国経済は国内総生産が伸びて来たと言っても、その殆どが海外投資資金導入効果によるものであることについては、この後で薄煕来事件に関連して紹介します。
世上人口ボーナス論/オーナス論が盛んですが、私はこうした考え方に対してはAugust 4, 2012「マインドコントロール2( 人口ボーナス論の誤り2)」「労働力人口と国力」 January 23, 2013その他で反対してきました。
・・資金流入の増減と技術導入の成否こそが経済浮揚・減速の原因であり、それ以外には日本のような固有の技術文化を持つ国を除いては滅多にありません。
韓国の漢江の奇跡と言っても、日韓条約によって巨額資金と技術が日本から流入したことによって起きたことです。
土地成金・・農協が元気一杯であったのは、大都市の資金が近郊農家に流れ込んだ結果でしかないのと同じで、この流入が停まれば(潤沢な資金を利用して進学したり・なんらかの技術を身につけるなどしていない限り)土地成金のままではどら息子は直ぐに干上がってしまいます。
農家人口が多ければ農業が成長するならば、戦後の農業衰退はなかったでしょうし、各種産業の衰退に伴う余剰労働人口問題が起こりようがありません。
石炭産業が衰退したのは炭坑労働人口が減ったからではなく・我が国の石炭産業が時代にあわなくなったからです。
すべからく、その産業が興隆したことによって関連労働者が増えるのであってその逆はありません。
この意味でも先に弁護士や会計士を増やせば弁護士や会計士の需要が増えるだろうという倒錯した議論によって弁護士。会計士数を無茶に増やす政策決したのは、無茶苦茶過ぎてその咎めが今になって出ています。
スペインやギリシャでは失業率が4割に達していると報道されていますが、余剰労働力さえあれば経済成長するならば、苦労がない筈です。
中国でもインドでもインドネシアでも昔から人口は充分にあったのであって、最近興隆を始めたのは資金と技術が外国から入ったからです。
数十年前からグローバル化が進んだのは、組み立て工程が単純化されて技術蓄積の低い後進国でも設備さえ据え付ければ(ちょっとした教育で)世界最先端品でも直ぐに生産出来るようになったことによります。
パソコン・スマホなどの製品そのものは高度文明の産物ですが、その組み立て自体はもの凄い単純作業ですから中国等最低賃金国での生産に簡単にシフト出来ます。
単純作業工程だけ引き受けて世界の工場だと威張っていても、あるいは既存部品の組み合わせ工夫程度では時間の経過でもっと低賃金国へシフトして行きますので、その先がありません。
(これがいわゆる中進国の罠です)

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