特定秘密保護法7(条文)

特定秘密保護法反対論では、国民に対しては秘密にすべき事柄はあり得ないと言う単純図式化した批判論が中心ですが、他方で治安情報や防衛情報の詳細図面・・警備計画図/警備員の交代システム・・SPの警備能力(射撃能力や剣道何段かなど)等詳細について、一般国民としては何の関心もないのが普通です。
逆にテロリスト等には重要関心事ですから、仮に公開すれば一般国民に出回るよりはこうした関係者に直ぐにデータが出回ることになるでしょう。
どこに高齢者が一人で住んでいるかなど健全な一般国民にとって何の関心もないから、高齢者の情報などいくら集めても公開しても良いのじゃないかと言う人はいないでしょう。
世の中善良な人ばかりならそのとおりですが、高齢者を食い物にする者もいるから問題なのです。
国民ならば何でも公開すべきだという議論によれば、公開するとこれを知りたがっている・本来知られたら困る犯罪集団や外国人やテロリストが真っ先にアクセスすることになります。
こうした弊害が分っている以上は、軍事機密に始まって外国に関連する重要な事柄には、関与して良い国民・・これの調査特定も必要です(・・例えば総理警備員や警察官任用基準など・・)を除いては、国民に対しても秘密にする必要が生じます。
これから捜索すると決めたら捜査担当者には知らせる必要がありますが、一般国民や捜索対象の犯人も国民である以上は、直ぐに知る権利があると言う人は皆無でしょう。
レーダー照射事件で報道されていましたが、戦いの先端ではこちらがどのくらいの受信解析能力があるかを知られること自体が、相手の対応改良を促すのでスパイから情報を得ていてもこれを秘密にするのが普通です。
国際政治で言えば,何月何日何時何分の会話がそのまま漏れていることを相手に言ってしまうと、犯人探しや盗聴器探しが行なわれ、情報提供者の危険に繋がってしまいます。
犯罪捜査も終われば良いのではなく、次の犯罪・証拠隠滅・・内通者探しを防ぐために警察の手の内を報道されると困ります。
これが民主主義・知る権利との矛盾関係ですが、これの利害調整をして解決するのが成熟社会の智恵というものです。
この調整がうまく行かないのが未成熟国家で独立後は軍事政権が普通になっていた理由です。
未成熟のママ成熟国家並みに民主的政権を求めると・・韓国のように標的を日本に求めてしょっ中反日を叫ぶか(・・イランの場合反米で結束しています)アラブの春となります。
国民主権だから何でもストレートに公開すべきであるとか、何でも秘密すべきだという図式論で議論するのは、幼稚な社会でしか通用しない議論になります。
成熟社会である筈の日本でも、野党は批判するばかりで具体的政治経験不足から,図式的主張することが多いので万年野党の汚名を来て来たのです。
漸く政権を担ってみたら実際の政治運営能力がないことを露呈したのが最近の民主党政権でした。
北条政権に食い込んでいて実際政治経験の豊富だった足利氏と、ずっと冷や飯食いであった新田氏の利害調整能力の違いとして、06/08/10「(1)政権交代と実務能力」のコラムで後醍醐帝と足利政権の違いで書きました。
ところで現在問題になっているのは、以下の特定秘密保護法(朝日新聞版・本日現在まだ官報等正式情報がネットで見られない様子です)で規定されているように
「安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて」「特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定める」
ことであって、国内一般政治に関するデータを広範に秘密にする秘密保護法ではありません。
安全保障関係に特化した法律です。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国際情勢の複雑化に伴い我が国及び国民の安全の確保に係る情報の重要性が増大するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される中で、我が国の安全保障【(国の存立に関わる外部からの侵略等に対して国家及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)】に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC