適正人口5

適正人口論としては、何を基準にすべきか難しい問題・・一義的には言えないでしょうが、生存に必要な条件をどの水準で享受すべきかの議論になるべきでしょう。
所得が同じなら、扶養家族が少ない方が豊かな生活が出来ます。
他方で、一定規模以下ですと社会組織が成り立たない限界があると言われますが、交通・通信インフラの発達した現在では、実はそれほどでもないでしょう。
生活するのに大勢の集団を必要としていた時代から徐々に減少して、今では独身のままで不自由のない時代ですし、国家としても、億単位である必要がありません。
むしろ韓国のように国内市場が狭い分、海外進出・輸出向けに傾注して成功している例もあります。
(日本の場合、携帯その他国内市場向けに特殊化して海外で通用しない製品で困っている例が多いことはご承知のとおりです)
今後の国際収支の黒字は資本収益や知財等あるいは技術集約的産業によるところが多いので、ヤミクモに底辺労働しか出来ない人口が多くてもせっかくの黒字を多くの人口で食いつぶすことになりかねません。
今後は国内需要プラスアルファくらいしか単純工業品・・汎用品の生産が出来ないし単純作業的事務作業は海外アウトソーシング等で減って行くとすれば、この方面向きの人材は大幅に余ってくしかありません。
諸条件の中では、労働市場の均衡が重要な要点であることは1月7〜8日に紹介した青森県の人口流出の例が物語っています。
労働市場の需要を超えて出産しても子供・若者は適応能力順にその地から逃げて行くしかないのですから、政府が合計特殊出生率と言う現状を無視した数字に基づいて子沢山政策で国民を誘導出来たとしても、青森県の例でも明らかなように各地方ごとの人口流出減は防げないことが明らかです。
そうすると東京大阪など大都会でどこまで吸収出来るか・・結局は日本全体の雇用吸収力の試算・予測が重要です。
この予測を誤り東京大阪等で吸収しきれなくなれば、失業者は国内での逃げ場をなくし海外に逃げるしかないのですが、国内移動と違って簡単ではないので、国内に失業者として滞留して大変なことになります。
失業率の問題は、過剰労働力が仮に100万人発生する場合に、解雇・採用減を100万人にとどめずに150万人解雇・採用減して、内100万人を非正規雇用で再雇用すれば、失業者が50万人にとどまる代わりに、100万人の非正規雇用が発生します。
高齢者雇用が進んで、これの殆どが非正規雇用ですが、その分若者の正規雇用が減っているのがその1例です。
我が国の失業率が4〜5%でアメリカが10%弱と言っても、非正規雇用・短時間労働者比率あるいは家庭滞留者等と比較しないと実態が分りません。
私がここ数年経験しているところでは、いずれも千葉県の辺境地域の中高年の元大工等の現場系職人ですが、現地では仕事がなくなってここ数年以上自宅でぶらぶらしているだけで、(することもなく)飲酒運転等で事件になってしまい、私が国選事件を担当した事例が何件もあります。
中高年以上になると、千葉市などの都会に移住する訳にも行かず自宅(元農家等ですから家はあります)でくすぶっているだけになるようです。
その中でも最近の事例では、11月半ばに実刑判決があったのですが、その時について来た被告人の兄が言うには、「何時収監(現行刑訴法では収容と変わったようです)されるか?」と言うので(在宅事件でしたので・・)これから確定に2週間かかってその後の手続きがあって、「もしかしたら正月は家で過ごせるかな?」と説明していると、「何とか年内に収監してもらう方法はないか」と言う相談でした。
驚いて「何故?」と聞いてみると、仕事がなくて兄と弟(被告人)が「母親の年金で食ってるので、年を越すのが大変なので、早く入って欲しいんだ」と言う説明でした。
この事件は昨年に無免許運転プラス交通事故で執行猶予の判決を得た前科があったのですが、また無免許で乗って検問にひっかかってしまったものでしたが、兄に言わせれば、「今回2回目なのに何故逮捕してくれなかったか不思議だ!」と言う不満?でした。
私は、「そりゃあ・前は事故があったけど今回は事故もないし逮捕する必要がないから仕方ないでしょう」と取りなしておきましたが、過疎化が進んでいると言うか逃げることも出来ない中高年者は、従来の遠くはなれた過疎地に限らず東京近辺でもちょっと田舎に入ると仕事がなくて困っている人が多いのです。

適正人口2

前回紹介した労働力人口とは完全失業者と就労者の合計を意味する言葉ですが、完全失業者とは求職活動をしている人のことですから働きたいけれど諦めて求職活動をしていないヒトはここに含まれません。
従って、不景気になって就職の見込みがないとなれば、労働力人口が大きく落ち込むことになります。
65才前後の健康な男子では殆どの人が働き続けたいと希望していますが、実際に労働力率が低いのは、仕事がないから諦めていることによるものです。
ですから、報道を見ていれば分りますが、求人数が前月比増えると却って失業率が上がることが多いのは、景気が良くなって求人数が増えると自分も仕事ができるかと主婦層・家庭に戻っていた人たちが求職活動を始めるので却って失業率が上がるからです。
報道されている失業率は本来の失業率ではなく、仕事のない人の中で職安等に出かけて手続きするしかないほど追いつめられた人がどれだけいるかを知る・・政治的温度計として意味のある数字でしかないのです。
60過ぎても働きたい人はいくらもいるのですが、余裕のある人・年金のある人は無理して仕事を探す気になれないでいるのが普通です。
受け皿不足が労働力人口を引き下げていることが多いので、労働力人口だけ見て労働者が増えているか減っているかの正確な基準は分りません。
どうせなら健康な人・・労働可能人口の統計を取るべきでしょうが、これが難しいのか見たことがありません。
適正人口の判断基準にはいろんな基準があり得るでしょうが、素人の私にでもさしあたり言えることは大方の人にとって仕事が保障される環境・・労働需要との関連が一番大きな指標となるべきです。
昔、人口密度と言う意味のない指標が幅を利かしていましたが、(農業社会では耕地面積によって養える人口が限られていましたので、可耕面積比の人口・・これは技術の進歩である程度まで拡大可能・・としては意味がありました)いくら土地が広くっても仕事がなければ北海道の原野や山の中、田舎に住んでいられないのです。
ちなみに青森県の人口問題が「デーリー東北www.daily-tohoku.co.jp/news/2010/12/10/new1012100801.htm – キャッシュ」のニュースとしてネットに出ていますが、そこには昨年10月1日現在の国勢調査の結果、青森県の人口は136万人前後で昨年1年間で6万人あまりが減少したと報告されています。
減少比率が(合計特殊出生率に関係なく)日本全体に比べて大きいのは、(都市住民内での地方出身者の格差をこの後で書いて行きますが、)地方での労働需要との関係で人口受容能力がない(一般人口としては均衡点以下になっている・・自然減が約3万人なのにそれ以上減っているのは、本来の労働力人口(働きたい人)としてはまだ過剰・累積が続いている)ので人口流出減が大きいことが分ります。
勿論出て行った人は地域の失業率にもカウントされていません。

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