グローバル化以降のゼロ金利政策2

中国その他の国がいくら高金利にして引き締めようとしても、安い金利の日本で借りて中国その他資金需要国(高金利国で運用すれば儲かります)で投資すれば良いので、中国その他の国での引き締めは尻抜けになります。
その対の側面ですが、資金が欲しい国は高金利にするしかありません。
アメリカが日本並みの低金利政策を採用すると日本等からの資金環流が阻害されるので、その代わり連銀による国債引き受け・住宅ローン債権の買い取り等の政策(QE1〜QE2)に入っているのはその関連で理解出来ます。
(外国がアメリカ国債や住宅ローン債権を買ってくれないなら自国紙幣を刷りまくって引き受ければ良いという開き直り政策です・・行き着くところドルの暴落しか考えられませんが幸いシェールガスなどの資源によって息をつくことになりそうです)
中国や韓国では外資導入に頼っているので、欧米や日本よりも高金利を維持するしかないのが悩みの種です。
韓国の例で言えば、既にデフレ基調に入っているのに3%台で維持しているのはこれ以上下げると外資が急激に逃げる・・アジア危機時の二の舞になるのを恐れているからです。
中国の場合、今なおも7〜8%成長を公表していますが、物流から見ると既にマイナス成長に陥っていると見るのが正しい様子です。
それでも低金利に出来ないのは外資流入が減速どころか、引き揚げ加速に直面すると経済が成り立たないからです。 
この種の意見はNovember 28, 2011「大量紙幣大発行(成熟国)」等の景気対策のコラムで書きましたが、構造転換中の我が国では低金利にすればするほど金利差を利用してその資金が高金利の海外に逃げて行くだけであって、海外に逃げてしまった白物家電等大量生産型産業の国内生産が復活することはあり得ません。
これが戻って来るには後進国並みの低賃金に平準化したときですから、金利政策は実際には効果がないことになります。
(内需拡大政策は中国等からの輸入が増えることになるのと同じです)
アメリカは人件費が安くなって中国に負けないと言い出しましたが・・そんなことで(国民の労賃を中国並みに引き下げて)競争するのは悲しいことです。
政府は時代の転換・国際平準化の動きについて行けない多くの人たち・・単純労働者を救うためであるかのようにゼロ金利政策や紙幣の大量供給をしてきましたが、実際には企業の海外進出を促す材料になっただけ・・その分逆に国内雇用が減る政策でした。
これではいくら低金利を続けても国内の閉塞感・・単純労働者の失業率は下がりません。
(私は企業が海外進出しなくて良いと言うのではなく、結果を書いているだけです)
他方で、国内産業構造転換すなわち従来国内で造っていたものが新興国から流入(逆輸入)することで、物価が大幅に下落して行きます。
国内で造るより安く出来るから新興国へ生産移管が進んでいるのですから、海外製品の方が安くなるのは当たり前です。
私の身近な物価でみるとこの20年ほどでは、いろんなものやサービスがおおむね半値くらいになっている感じです。
パソコンその他の電子機器は半値どころではないでしょうし、衣類ではユニクロ現象で明らかなように激安化が明らかですし、居住コストでも安くなり木造アパートに住んでいた多くの階層が70平方メートル前後の新しいマンションに移り住んでいます。
価格そのものは同じのままの分野でも、サービス内容が2倍程よくなっている印象です。
20年前のJRで言えばまだ冷房の効いている電車は稀で、私は冷房のある電車を選んで乗っていた状態です。
駅に着くと先ずは行く先までの料金表を見てから切符買うなどしていたのに比べて今はスイカなどのカードになって、乗り換え先の切符まで買う必要がなく簡単ですし、車両は新型化して綺麗になりましたし、駅の設備・トイレも見違えるほど綺麗になりましたし、エスカレーターやエレベーターなどもそろっています。
それでも20年ほど前から料金が変わっていません。
身障者がいると駅員が飛んで来てエスカレータ利用の介助をしたり、ホームと車両に大きな隙間があると乗り降りの手伝いをしたりしています。
物価が下がれば国民は豊かな生活が出来るので、(大手企業のホワイトカラーの給与はこの何十年間一回も値下げしていないでしょう)物価が下がって何が悪いの?というのが、私の持論です。
長年日本の成長力に押されっぱなしであった欧米からみれば、「日本は駄目になって欲しい」という期待感をいつも持っているのは当然でしょう。
長期の円安・国内デフレ・物価下落傾向・供給過剰だけを旧来の伝統的理論で見ると、欧米からは、いくら低金利にしても高度成長に戻れないから「もう日本は駄目だ」と言いたくて仕方ないので、「失われた10年だ」と言い、その内「失われた20年」という言い方が定着していました。

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