原発コスト26(損害賠償リスク・付保険6)

 青森県の東通発電所で事故発生直前まで電源喪失が続いた事例では、電源喪失対応策として用意していたジーゼル発電機を使ってみると直ぐ故障するなどお粗末きわまりない状態でした。
これらお粗末な対応の数々を見ると、「本気で二重3重の安全対策をしていたら、採算が取れないからやってられない」と言う安全よりは目先の利益重視姿勢しか感じ取れません。
計算できないほどの損害を予定しその先を考えていたら仕事にならないというのは、端的に言えば、採算がとれない・・危険すぎるという意味でしょうから、それならやめるか、あるいは付保険という市場経済に委ねる方式を選択すべきだったことと同義です。
1事故で企業の浮沈にかかわるような場合、多くの企業では無制限保険加入しているのが普通です。
必要な保険に加入しない・・保険料負担しない個人的運送屋が儲かっていると自慢していて事故が起きてから想定外だったと慌てふためいて借金に走り回る(社債発行準備)のでは、企業経営として成り立っていません。
個人的なそば屋、魚屋などなら笑い者になるだけですが、百万人単位の国民に放射能被害をかける可能性のある原子力事業者・巨大企業が、そんな無責任体質で経営しているのでは困ります。
リスクを引き受ける保険会社に損害査定を委ねれば、損害を低めに見積もると事故が起きたら自社が倒産・死活問題ですから、まじめに・必死に査定していた筈です。
どこから賄賂をもらっているとか政治献金をもらった政治家の要望があった・・・コネや献金程度のことで、保険会社は実損害額の何分の1何十分の1という極端な安い査定は出来ません。
保険会社では、利権政治家の影響による政府決定・法のように、いい加減・・・少なめの設定では自社が大損をするので、シビアーな評価・市場経済に任すことになりますから、まさか1200億くらいでは収まらないので何十〜百兆円を基準に保険料が決まって行ったでしょう。
そうすると保険料も半端なものではないので、コストが大きく膨らみ過ぎる・・原発の方が安いという宣伝の虚構性がバレてしまいます。
これを隠蔽するためにあえて無制限保険をかけさせずに、法(政治に頼って)で1200億円以内と決めてしまったように思えます。
原子力賠償法は損害額を法定していません(即ち損害がある限り無制限)が、供託金を1200億円以内と決めたので市場での自由な評価をしなくて良くなった・・法(族議員との密室の擦り合わせで)で公正な市場機能による監視を事実上妨害してしまったことになります。
供託金1200億円以下を決めるについては献金をもらっている政治家の暗躍場面となっていたことは想像に難くありません。
多数の自民党政治家あるいは自民党(国民何とか協会)自体が、東電から巨額献金を受けていた事実が既に明らかになっていますが、驚いたことに朝日新聞本体には、地球や環境に優しいなどあまり東電自体の企業広告的意味のない2〜3億円規模の広告を打ち、退職者など・ファミリー企業みたいなものかな?が巨額注文を毎年東電から受けていたとする報道が8月10日頃発売の週刊現代に出ていました。
読売は元々業界寄りですから驚きませんが、東電は批判勢力の雄である朝日新聞にターゲットを絞って客のふりして大金を使って来たようです。
週刊誌の誇大報道としての割引も必要ですが、最近の大手マスコミ全体の報道姿勢・・根拠なく「原発をやめたら大変」と言う大手マスコミの抽象的報道姿勢から見て「どこか怪しいんじゃないの?」と感じている国民が多いから、その期待に応えて根拠のない系の出版が活躍するようになるのです。
風評被害が流行っていますが、風評が産まれるだけの根拠があることに大手マスコミも反省すべきでしょう。

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