戦争と国力疲弊4(ギャング同士の戦い)

近代の戦争は民族意識を基底にした市場争奪戦争である以上は、新たに獲得すべき手つかずの地域・市場がなくなれば、大国同士(ギャング同士)の覇権争い(相手の縄張り侵蝕戦争)になり、侵蝕を防ぐための市場ブロック化(ヤクザで言えば縄張りが重要)競争になって行ったのは必然でした。
近代産業未発達国を攻撃する戦争はライオンが馬(ギャングが無防備な市民)を襲うようなもので、リスクの少ない・コストのかからない戦争でした。
列強(ヤクザ)同士の戦争になると比喩的に言えばライオンやギャング同士の戦いですから、国力・装備が均衡していることから(民族の総力を挙げて)お互い死力を尽くした戦争・・相互の受ける被害が尋常ではなくなります。
第一次、第二次世界大戦はこのパターンで、先進国(収奪国)双方に大被害をもたらし結果的に植民地からの収奪に頼る西欧列強が収益源を失い並のプレーヤーに転落してしまいました。
ナポレオン以前の西洋での王様同士の戦争も戦力的には似たもの同士の戦争でしたが、民族戦争=総力戦ではなく国王が勝手にやっている戦争だったので、国民全体が受ける被害は軽微でした。
民族国家になってからの強国同士の戦いでは背後の国民を痛めつけることが重要目的になりますから、双方に壊滅的被害が生じます。
この最たる結果が原爆投下です。
原爆は戦闘員だけではなく一般人大量殺戮を目的とした兵器ですから、アメリカは当時の締結していた非戦闘員を殺戮してはならないと言う戦時国際条約に明白に違反した行為をしたことは疑いようもありません。
アメリカはこれが怖くて、ありもしない南京虐殺や戦犯をでっち上げて日本を道義批判するしかないし、これをやめられないのです。
一般民衆目的の大量殺戮の応酬・・悲惨な結果を見て、これをやめようとするのが国連の安保常任理事国の拒否権ですし、これを実際に支えているのは核保有による相互殲滅リスク装置です。
核保有・有効な反撃力の保持こそが相手の武力行使を物理的に抑止する装置ですから、本当に世界平和・・武力行使をしない社会にするつもりならば、世界中(一定の管理の基で)どんな小国でも核保有させることであり、経済力のない国にはこれを配給してやることだという意見をこのコラムでは繰り返し書いてきました。
戦争の原因は原則として経済利害対立によるものであって、アメリカが対日戦争目的のデマを都合良く宣伝し刷り込んでいるような民主主義国対軍事国家との理念対決などでは戦争は起こりません。
アメリカと軍事独裁国家の間では、仲違いしたときに言いがかり的にイラク攻撃しただけで、それ以外には アメリカは戦後も韓国や東南アジアや中南米の多くの軍事政権を支持支援して来たことを、これまで何回も書いています。
日本とアメリカの戦いはヨーロッパ戦線での英独仏のギャング同士の戦いとは違い、植民地支配と人種差別反対の日本を人種差別国・ギャングの盟主アメリカがギャングの論理に逆らう日本を叩き潰すために嵌め込み引きずりこんだ戦争です。
アメリカの対日戦争プログラムは、日本人の正義感に従って人種差別をやめようと日本が国連で主張したことが、米英の逆鱗に触れて対日戦争プログラムが始まっていることを「価値観外交に頼る危険性7(人種差別撤廃案1)」January 30, 2014以下で紹介しました。
米英の怒りに基づいて日本を戦争に仕向ける罠が、いわゆるABCD包囲網・・市場ブロック化でした。
今のイラン禁輸網と同じです。
これが表面的な第二次世界大戦の元凶であったことが歴史上明らかでしたから、二度とこう言う大規模な戦争にならないように、戦後は市場開放を進めることが国際原理・共通認識になっています。
戦後始まったガットやその発展形態であるWTO、ウルグアイラウンド以降の行き詰まり打開のために個別国同士の関税協定として発達したFTA、そしてこれを集団化した今のTPP交渉等は全て世界大戦の原因になったブロック化阻止の流れにあったことを忘れてはなりません。
ただしアメリカは日本に対して行なったABC包囲ラインの現在版として北朝鮮やイランに対する禁輸等経済制裁を行なっていますし、今回のクリミア編入に対する対ロシア経済制裁発動も同工異曲です。

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