個人の自由と周辺援助

 

こうした考え方・・親や周辺は関係ないとする風潮に変化した結果、刑事事件はほぼ100%国選になり(窃盗や傷害事件を起こす本人に金がないのが普通ですから、自分で弁護士を依頼するお金はありません)離婚その他も(乳幼児を抱えた若年者の場合フローの収支にいっぱいで男女ともに資金力・蓄積がないのが普通です)から、お金のない若い人はどこに相談して良いのか困ってしまいます。
昭和年代までは子世代が困れば親が、親に資力のない場合叔父叔母が世話し、あるいは雇い主が弁護士のところに連れて来たのですが、こうした親族あるいは周辺助け合い風土が消滅してしまう社会はどんな風景でしょうか?
中高年者でも2〜30万円の一時的なお金を出さねばならない時に、これすら用意出来ない困窮者がいます。
これは言うならば人生競争の敗者に限定されるでしょうが、世代別に見ると若年層の場合、将来のエリートでもほとんどの場合まだまとまった資金の蓄積がないでしょうから、ちょっと困ると(将来のエリート候補生が傷害事件など不祥事を起こすことは滅多にないでしょうが・・・)
いろんなことに関して相談出来ない・・・例えばお金に困れば親や親戚に相談出来ず、サラ金に走るしかない時代が来たと言うことです。
昭和50年代から消費者金融が爆発的に広がった背景でもあるでしょう。
結婚相手も就職先も自分で探すしかないし・・・年齢に応じた智恵が必要な分野は今でも多くありますが、こうした年長者知恵者の協力を得難い時代です。
(その分、周りに聞かなくとも良いようにネット検索が発達しましたが・・・ネットだけでは、就職情報も結婚情報も上っ面しか分らないのが原則です)
若者全般及びその他世代の弱者が周辺から援助を受けにくくなって来る・・・・逆から言えば、若者の独立性が高まったと言うことですが、恋愛自由や思想表現の自由の恩恵を受けるのはそれを使いこなせる能力のある優秀な人だけだと繰り返しこのコラムで書いて来ました・・・。
みんながみんな自由にやれるだけの能力が高まっていれば良いのですが・・・自分で何もかもやれる能力のない人(これが大半でしょう)にとっては、「あんたの勝手だよ・・」と放り出されるのは不幸な話です・・法的あるいは各種サービスから取り残される時代が来たことになります。
若者が得た自由に対応する能力がないことが多いのに、親世代や成功者が「今の若い人には口出し出来ないから」と言う口実の元に若い人が困っていても周りで援助してやる習慣がなくなってしまい、放っておけば良いとする・・言わば中高年層が地位相応の社会的責務を果たしていない時代になった感じです。

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