国際政治力学の流動化2

中国の横暴・秩序無視態度に周辺国が弱過ぎてやられっぱなしで不満がたまっていた筈ですが、中国の方は逆に何しても良いような慢心が生じた結果太平洋2分論を繰り返し主張したり、日本に対してもこれをやってしまったことになります。
日本の場合マトモに受けて立って世界外交を展開する力があった・反日行動に対しては東南アジアに新規投資するなど対抗手段がありますので、中国の孤立が始まりました。
中国が尖閣諸島侵犯だけはなく、南シナ海でイキナリアメリカの構築していた海洋秩序に挑戦し始めたのが日本にとって幸いでしたが、これは無抵抗主義の民主党政権を甘く見ていたものの素早く安倍政権に変わってしまい、日本の強力な対抗を受けて中国は格好がつかなくなって方向転換せざるを得なかったことによります。
素人目に考えても尖閣諸島だけで中国領だと言い張って対日紛争に持ち込んだ方が有利なのに、あえて周辺国みんなを敵に回す南シナ海に進出する暴挙に出たのは何故か・その結果公式に米軍が出てくる事態・世界世論(サミット宣言)を敵に回すことになったのですが、戦線を広げて敵を多くするバカな戦略の背景は何でしょうか?
世上言われているように民主党政権から中国へ日本の軍事機密が漏れ出た結果、日本海軍が中国よりも格段に強いことが分ってしまったことにより、武力一辺倒で尖閣諸島占領が無理となったものの、国内的に格好がつかなくなって南シナ海進出を始めるしかなかった・・子供染みた行為(国際政治は単純ではないと思うのが普通ですが・・)に見えます。
中国では裸官で知られるように国益など二の次の体質・・国内政治の延長・・権力闘争に勝ち残るためには、国益など構っていられない体質ではないかと言う見方です。
中国が世界秩序破壊の膨張主義に出て来たので、アメリカも漸く親中・応援路線を修正初めて、(中国にやられっぱなしではなく)逆にイランやベトナム・ミャンマ−、キューバ等への制裁解除(緩和)→中国陣営からの引き剥がしに動き出して、制裁緩和の結果ミャンマーなどの中国離れも加速しているなど世界の合従連衡の再構成が進んできました。
ところで独裁・軍事政権・人権侵害の理由で制裁していたアメリカが、イキナリ制裁緩和を始めたのでは、民主主義・人権擁護の主張を放棄したように見える点では、独裁国家中国になびいてる西欧と似ていますが、これは専制や独裁による人権侵害を応援するのではなく、アメリカの動きは制裁緩和に応じた民主化を漸次進めるように促す方向・・方法論の変更に過ぎません。
独裁強化・・自国内の言論弾圧だけではなく専制支配を更に周辺に広げることを目指す中国をそのままモンク言わずに(AIIB参加)応援する西欧とは方向性が違うように見えます。
民主主義国家であるべき西欧諸国が、中国専制支配を擁護し・香港での非民主化強行などに抗議するどころかAIIBIを通じた専制支配の拡大の後押しをするようになって来たので、この点を捉えて安倍総理がいわゆる【価値観」外交を展開したのは本質をついた良い着眼でした。
アジアで言えば中国の横暴な振る舞いに比例して従来の親中国諸国(韓国も含めて)の中国離れが進んでいます。
北朝鮮は中国支配から逃れたい・・本質は親米で「仲良くして!」と言う愛情表現が核実験やミサイル実験であると見るのが正確でしょう。
中国が、孤立しているロシアの足下を見て横柄な態度(実際には中国には資金がないのに「ない」と言えずに偉そうに格好つけているだけ?)に変化したのでロシアも、どうやって中国に頼らないようにするかの思案中になっています。
元々ロシアにとっては長大な国境を脇腹に抱え人口的に絶えざる浸透圧力のかかっている中国は、ロシアの弱み・本質的脅威国です。
プーチンが必死?に対日親和性を強調するのは理にかなっていますし、日本にとっても本拠地の遠いロシアは今の経済力等を綜合すればもはや(明治維新当時とは違い)軍事的脅威にはなりませんので張り合う必要性のない関係です。
現在の中国による反日政策と中国語の自信満々の横暴な振る舞いの原因はアメリカの反日戦後政策・・対抗軸としての中国応援によってのさばり過ぎたと見るべきでしょう。
日米戦争はソモソモアジア人である日本の台頭を叩き潰す目的で日本を戦争に引きずり込んだものですが、折角叩き潰して永久に台頭出来ないように一切の軍備も禁止したし、工業生産も禁止して来たのに、ソ連の挑戦に対応するために仕方なしに日本の再工業国化をアメリカは(臨時に?)許していたに過ぎません。
米ソ対決が終わって、アメリカは当面の敵がなくなったのでもう一度反日政策の再構築に戻ったのですが、理由もないのにもう一度軍事的に焼け野が原にする訳に行かないので、当面日本に対する道義非難を中韓にさせて様子見をしていた・・中韓と日本の反目を画策しているうちにアメリカが直截手を出さずに中国と日本を戦争させる寸前まで進んで来ていたのです。
(反日親中政策に徹したクリントン政権批判論調が我が国では多いですが、個人資質の問題ではありません)
アメリカは世界中を動員した日本叩きに精出した結果、この20年間「失われた20年」と言う対外的低迷期(私の意見では一直線に伸びるばかりでは危ういのでちょうど良い雌伏・内部充実期)に日本がはいっていたのですが、中国や韓国を優遇しているうちに今度は中国が自信を持ってのさばり過ぎたので、アメリカが中国の味方を公式に出来なくなってしまいました。
とは言えアメリカは世界の警察官をやめると公式発言しているのは、アメリカに攻めてさえ来なければ強くなった中国が西太平洋で何をやっても放置する体制・・(手始めに対日戦争準備.尖閣諸島侵略)言い訳準備が出来ていることになります・・。
中国が頻りに太平洋2分論=アメリカには手を出さない約束と自国の「核心的利益」を言うようになったのは・アメリカの核心利益に触れない限り黙認して下さいと言う意味です。
中韓の主張は、実は自分と相手とをすり替えていることが多い一例です。
とは言え、表向き太平洋2分論を認めていないことにしているアメリカにとっては南シナ海で中国が基地を堂々と作っていてこれを放置するとメンツが立たないことから、時々アメリカ艦船が航行しますが何もしない・・放置していることをオバマの弱腰と言いますが、実はアメリカの(核心的利益に反しない限り)世界の警察官をやらない宣言と平仄があっています。
ましてトランプ氏は自国に関係のないことは放っておくべきだと言う態度が露骨ですが、これがアメリカの本音でしょう。

国際政治力学の流動化1

AIIB参加国は中国の専制運営を承認したことになりますから、今後AIIBが中国の希望どおり国際機関の中枢を占めるようになると世界経済は中国の専制支配下に入ることになります。
国連諸機関が中国マネーによる汚染?で事実上どうにもならない運営になっていることが知られていますが(・・最近問題になっているオリンピック委員会もそうですが・・中国マネーやハニトラがはびこるようになって以来世界中の人が「汚染された方が得」みたいな世界になっています)一応多数決ですから中国マネーの威力が減退すれば正常化する望みがあります。
AIIBの場合制度として中国専決制ですから「それで結構です」として、そこに参加する以上どうにもなりません。
西欧諸国が中国の明からさまな専制支配体制を決めているAIIBの正統性を認めてその傘下に馳せ参じた(ある陣営があるスローガンを掲げて兵を挙げたときにこれに呼応して兵を引き連れて参加したのと同じです)事自体が驚きです。
西欧諸国のAIIB参加行為は米中対立に関して、西欧による中国専制支配でも良いから中国陣営傘下にはいる意思表示であり、民主国家陣営離脱の公式意思表示だったことなります。
ここまでは中国の世界支配に一歩近づいたように見えたので、太平洋2分論を言い出したり、南シナ海や尖閣諸島の領域拡張の実力行使を始めた基礎ですが、モノゴトは「金」次第である点はここでも本質です。
昨年秋に強行し対日戦勝利記念と称する対日宣戦布告に近いような軍事パレードを計画した時には株価暴落前だったので,式典の頃には既に株価暴落して信用がた落ちになっていても今更やめられなかったのでしょうが、この旗揚げ式に参加したのはプーチンとパク大統領とアフリカの独裁者として国際指名手配を受けている大統領の3人・・韓国出身国連事務総長だけだったと言われていました。
ここまではパク大統領はまだ中国べったりでしたが,さすがにまずいと分って来たらしくその直後から中国離れを始めたのは周知のとおりです。
中国が国際金融機関を専制運営する以上は資金もこれに見合った出し手にならないとうまく行きませんが、(金もないの威張るには軍事力・・強盗しかありませんが中国が西欧を脅すには遠過ぎます)昨年夏の上海株価暴落以降・・そもそも中国にAIIB運営資金があるの?と言う疑問・・中国の経済危機リスクが表面化してきました。
今年始めには、2回目の株価暴落があって中国経済力の信頼は地に墜ちました。
世界経済リスクの元凶になりかけている中国自身が資金を出すのを期待するのは無理があり,金がないから国際機関と称して資金を集めるのか?と言う疑念が起きてきました・・これでは中国の資金力を期待して集まった方は溜まりません。
勿論爆買いの威力をちらつかせて無茶をしても周辺国を黙らせていた神通力も利かなくなってきました。
昨年秋も直近のアメリカに於けるイエレン議長の発言でも、利上げ可否判断は、中国が持たない・・中国リスクが最大リスクとして考慮されています・・アメリカのちょっとしたサジ加減次第で中国がでつぶれるかどうかの瀬戸際にさしかかっている弱い国です。
中国は元々世界の除け者になった国々・・北朝鮮、ミャンマー、ラオス、ベトナムやアフリカの独裁虐殺国などへの唯一の援助国としての地歩を固めてきました。
共通するのは現在の国際的的価値観である民主主義的国家運営を採用しない国々・・非民主国家です。
中国自身独裁制+言論弾圧の苛烈な国ですが、アメリカは相手が大き過ぎるからと、黙認どころか対日カードに使うために巨大化するの応援して来たのですから、巨大な独裁・苛烈な人権弾圧国を応援して資金を供給しながら、弱小国を締め付けても(北朝鮮のように)中国の援助でいくらでも生き延びられる・・矛盾した政策を続けて来たことになります。
その結果6カ国協議と言う訳の分らない制度を作って中国の影響力期待・・要は中国の地位を高める政策で一貫してきました。
アメリカの巨大ブラックホール放置の弱い国相手の制裁濫発は、言わば中国の支援をうける国を増やすための政策と同じですから、非制裁国は当然中国に義理が生じ中国派の国々になります。
タイのように歴史的親日国でも軍事政権になったことによる締め付けで中国の支援が必要になったことから、日本対中国の関係では中国に遠慮が生じています。
それだけでなく、この4〜5年は豊富な外貨準備に利用(見せ金)によって西欧衰退企業への資本参加やアフリカ諸国への援助や・資源爆買いを利用して西欧を初め本来欧米派であるべきオーストラリアまで与党に組み入れる(アメリカの軍艦寄港すべき港湾運営権まで中国に与えている)など反中国的動きに豪政府が同意しない動きになっています。
今回の日本の潜水艦の受注がフランスに突如変更になったのも中国の陰が取りざたされています。
中共政権と相いれない筈の台湾でさえも、中国詣で(中国市場参入)に必死で親中の馬英九政権が誕生していました。
元々戦前からアメリカは親中ですかし、日本も田中角栄以来伝統的に親中政権ですから、世界中が親中になっていたことになります。
ただ世界の親中政策はアメリカのバックがあって成り立っているに過ぎない点に中国政府は気が付かなかったのかも知れません。
中韓ともに反日運動や国内教育はアメリカのお墨付きがあって安心してやりたい放題していた筈ですが、自信を持ち過ぎたのか中国が・・アメリカに刃向かう方向へはみ出したのが、そもそもの間違いです。
あまりにも自信を持ち過ぎたのか・内部抗争が激しくて、世界中相手に騒がずにいられなくなったのか?

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