豪華クルーズ船対応批判6

昭和40年代には何かことが起きると学者が出てきて「西欧で〇〇」と留学経験をひけらかして解説するパターンが流行りましたが、(サザエさんの漫画にも出て来るほど一般化しています)これの再現を見るようでした。
このパターンの延長で米国で学んできた岩田氏のツイッターが重宝され指令塔のない日本のクルーズ船対応が悲惨な結果になっている・・クルーズ船乗客(外国人乗客の母国には訴求力があったでしょう)がひどい目にあっているというイメージが岩田氏による外国人特派員協会での記者会見を経て、これが世界に拡散されたと思われます。
この後で紹介しますが、それによると記者会見は日本語は終わりころに少しあった程度で原則英語で行ったらしく記者会見内容は日本語訳(文字起こし)が出ていませんので内容不明です。
岩田氏自身内容を説明する必要がないということでしょうから、削除したツイッターと骨子が同様と見るしかない・勝手に想像してしてくださいということでしょうか?
ウイキペデイアに出ている削除前ツイッターの骨子は、感染症専門家でない厚労省官僚が仕切っている結果ぐちゃぐちゃで感染拡大が止まらない・乗客がかわいそうというものですから、これが特派員から乗客の家族が待つ本国に一斉打電される・・自国民が被害を受けている被害者というイメージ報道(具体論がなく)が欧米でかけ巡り、それを日本大手メデイアが逆輸入し国際批判がされていると言うだけのホットニュースが日本国内で駆け巡りキャッチボールされていたイメージです。
批判内容を書かない・「日本の専門家が言ってる」というだけの内容の報道では引用できないでしょう・・で海外批判があるという程度の抽象報道に日本メデイアがシフトしていたように見えます。
米国のコロナ対策の失敗?・現在も世界最大の被害者続出中のせいで、さすがに客観事実無視のイメージ賞賛(裏からいえば根拠ない安倍政権批判)は続かず、CDC賞賛記事が今は下火になりました。
厚労省報道資料の過去1週間の日米の推移比較を見ておきましょう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11934.html

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月11日版)
によると日米の比較は以下の通りです。
4.国外の発生状況について
・海外の国・地域の政府公式発表に基づくと、6月10日12:00現在、日本国外で新型コロナウイルス関連の肺炎と診断されている症例及び死亡例の数は以下のとおり。

国・地域 感染者 死亡者
日本 17,251 919
米国 1,979,089 111,876
カナダ 96,653 7,897
フランス 154,591 29,296
ドイツ 186,506 8,736
イタリア 235,561 34,043
英国 289,140 40,883
ロシア 484,630 6,134
スウェーデン 45,924 4,717
スペイン 241,966 27,136
ベルギー 59,437 9,619

これが1週間後

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11934.html

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月17日版)
4.国外の発生状況について
・海外の国・地域の政府公式発表に基づくと、6月17日12:00現在、日本国外で新型コロナウイルス関連の肺炎と診断されている症例及び死亡例の数は以下のとおり。

日本 17,628 931
米国 2,136,043 116,917
カナダ 99,147 8,175
フランス 157,716 29,547
ドイツ 188,252 8,820
イタリア 237,500 34,405
英国 298,136 41,969
ロシア 544,725 7,274
スウェーデン 53,323 4,939
スペイン 244,328 27,136
ベルギー 60,155 9,663

米国は213万超の感染者で、まだ最近1週間で15万人以上も増加しているし、死者数も1週間で五千人も増えています。
対する日本の感染者はこれまで累計で17000人台でしかなくこの1週間で増えた数も377人、15万人増えている米国に比べれば可愛いものです。
死者も1週間で米国5000人以上に対して日本はわずか12人です。
累計死者数は米国11万6917人に比べて日本は931人で100分の1以下です。
感染1週間差比較  日本  17628ー17251=377
米国  2,136,043ー1,979,089=15万6954
死者1週間差比較  日本   931ー919=12
米国  116,917ー111,876=5041

もの事は結果が重要で、自粛要請だけでこれといった強制措置を取らなかった日本が米国の百倍以上の好成績を挙げているのに対し、(一時優等生と言われてしきりにメデイアが持ち上げていたドイツは日本より人口が少ないのに8800人も死亡です)世界に誇る陣容を擁していた米国が、ロックダウンという全面的外出禁止例を採用して国民に不自由を強制した挙句に欧米諸国が惨憺たる結果になっています。
これでは「日本では、専門外の官僚が仕切って、「ぐちゃぐちゃ」になっていてクルーズ客船・国民が酷い目にあっているイメージ情報キャッチボールの魔力が弱まるわけです。

豪華クルーズ船対応批判5

岩田氏の論法を前提にすると上陸後の処遇・・厳選して陰性、陽性、不明の3分類をして隔離可能なことを前提にしているように見えますが、収容施設があったにしても検査前には、感染後潜伏期間中の人と未感染者の区別もわかりません。
その上、入国後検査のため外国人を拘束し、羊のように思うままに隔離収容し検査受検を強制できることを前提にしていることになります。
しかし、武漢チャーター機帰国者の検査拒否は1月末のことであり、クルーズ船入港は2月3日で、検査拒否・移動制限待機要請拒否問題はホットな時でした。
日本政府の骨折りでようやく帰国できた恩義を無視して、検査拒否する人が出るとは驚いたものですが、まして自分の費用で大金を払って旅行に来た外国人が、100%約束を守る保障がありません。
承諾を得て入国直後に検査拒否してどこかへ行こうとするのを、どうやって拘束できるかです。
これについて岩田氏がどういう論陣を張ったのか・・重要論点に対する自身の立場を明らかにしていません。
もう1度引用します

「感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」

「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と何故か逃げているものの本音はそれが不満だったのでしょう。
分からないのではなく、「木を見て森を見ない」というか、「米国で習ってきたセオリー通りに対策を取らないのは間違い・低レベル」というステレオタイプ的主張にこだわったのでしょうか?
米国の立派な隔離施設や指揮命令系統を実態を経験に基づいて説明して日本が参考にするのは良いことですが、そのままにしないと遅れているとの批判をするのが良いかは別次元です。
日本法制の特殊性・・国家権力が弱く原則として先ずは「国民の協力お願い」・現場応用力に頼るしかない国柄・社会意識を前提とすると、米国のように何かあると強力な司令塔を立てて、一糸乱れない統制下で断行すべきかは別問題です。
(米国映画で見た知識で恐縮ですが、事件現場では、現場指揮官の旗が立てられるといろんな救急部隊が集結してもその場の現場指揮命令は全て指揮官の命令に統一され軍事作戦現場のような運用でした)
米国ほど極端でないにしても西欧諸国では、何か事件が起きると日本のように自粛〜個々人の応用的自制に委ねるのではなく画一的な戒厳令や外出禁止令→刑事罰とセットの規制が行われ、警官や軍人が物々しく検問する・要するに軍事作戦形式が主流です。
要するに民主主義といっても一時的軍事支配に戻る仕組みと一体になっているのです。
西欧思想家がいきなり人権などと言い出した底の浅い歴史によるのではなく、古来からボトムアップ・衆議で決めてきた地についた個々人の考え方重視社会との違いです。
西欧の価値観を露骨に体現している米国では、コロナ対策を防疫「戦争」と表現するなど、大事件があると?何々戦争にしたがる社会です。
https://www.technologyreview.jp/s/201103/if-america-is-at-war-with-covid-19-its-doing-a-bad-job-of-fighting/by Mike Orcutt2020.05.18

・・・・ドナルド・トランプ大統領は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクを「目に見えない敵」による「侵略」と呼び、自らを「戦時下の大統領」と何度も呼んできた。ホワイトハウスが広く伝えようとしているメッセージは明確だ。つまり、米国は新型コロナウイルス感染症と戦争中である、ということだ。
新型コロナウイルス感染症との戦いを戦争に喩えた政治家はトランプ大統領だけではない。3月17日、マサチューセッツ州のエドワード・マーキー上院議員はボストングローブ(Boston Globe)紙に署名入りの論説を共同執筆し、「マンハッタン計画型のアプローチ」(マンハッタン計画は第2次世界大戦中に米国が主導して実施した原子爆弾開発プロジェクト)を採って、人工呼吸器、防護マスク、検査キットといった不可欠な医療器具の全国的な不足に対処する必要があると呼びかけた。・・・・

トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束

トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束
2020年3月19日 by Darrell Etherington
国防生産法の発動は、あらゆるハードウェアを製造する米企業に広範囲な影響をもたらす可能性がある。国防生産法は、何であれ国防に必要な物資の生産を優先させるために大統領に非常に幅広い権限を与えるからだ。大統領は新型コロナウイルスとの戦いに有益であると認めれば企業にその生産の優先を命じることができる。当面、国防生産法に基づく命令は人工呼吸器とマスクの増産に絞られるようだ。しかしこの権限は臨時の病院、診療所、またそれらに必要を機器を含め、緊急医療施設を新設することにも拡大できる。

CDCを理想とする考え方は、この方式を防疫戦争→戦争→一元的司令塔の強力権限を期待するイメージです。
日本は強権で抑え込む社会でないし、米国流強権政治そのままを理想化されても困ります。
草木が自然環境の中で育っているのと同じで、個々の法はトータルの法制度・社会の価値観の中にあります。
戦争中の軍司令官のような権限を持つCDCの仕組みを作れば良いのではなく、社会全体の法意識との整合性が重要です。
岩田氏の影響か?コロナ禍初期には米国CDC体制が如何にすばらしいかの賞賛記事があふれ、日本には防疫専門組織がなく指令系統がない・・岩田氏の表現によればグチャグチャという批判が溢れていました。
その勢いを利用して安倍総理が果敢な政策を打ち出せない混迷・指導力不足(お願い・自粛ではどこまでして良いかわからないとか、ズルイという形)の批判が溢れていました。
岩田氏のツイッターや記者会見が安倍政権のコロナ対策批判勢力に対する格好の火付け役になって?安倍政権がお願いばかりなのは、政治責任回避のためというイメージが流布していました。

豪華クルーズ船対応批判4

同様にクルーズ船入港前から受け入れ研究が進んでいたでしょうから、武漢からのチャーター機帰国者の行動が大きな先例であり検査拒否者をどうするかが重要テーマになっていたと想像するのは、外野の思い込みに過ぎないと言えるでしょうか?
自粛要請を無視して格闘技大会を強行すると巷では(経営者が日本人でないのでは?)というひそひそ話が出回るように、クルーズ船は英国船籍の船でもあり外国人観光客が多数を占める場合、何%の造反が出るか、その場合感染拡大に対する防御策があるか、あるとしても有効性がどうかなどが大きな議論になったと見るのが普通です。
武漢からの帰国者の場合検査拒否しても自宅に帰っただけですが、観光目的乗客が拒否して国内各地を移動しまくる場合の感染拡大リスクは桁違いです。
クルーズ船乗客の場合・例えば4〜5日〜1週間程度の旅行日程できた人が、上陸後2週間も船外のどこかのホテルにステイしてじっとしているのに協力しかねる気持ちになるのは当然・非難性が低い→拒否し易いでしょう。
往復船で来た人は帰りの船が2週間後まで待ってくれるか2週間後に自分で帰国用の飛行機予約できるかも不明です。
クルーズ船客が黙って2週間の滞在に応じる確率が低いし、それに日本がこだわると法的根拠があるのかなどの国際的紛争を引き起こしかねないリスクなどの総合判断が行われたと見るのが普通でしょう。
今は入国解除するにしても2週間待機を前提条件にするのが国際慣例(相互主義)なっていますが、当時まだ二週間待機要請が議論の初期段階で入国条件として一般化していない時期だった記憶です。
下船=入国許可後の検査と船内検査の利益衡量をすると、下船後検査の場合、外国人観光客に下船後検査を拒否されると手の打ちようがないのに対し、船内検査の場合検査拒否すれば入国拒否すれば良いだけで単純順明瞭です。
船内検査に時間が掛かる→その間感染者が増えるかもしれないが、陽性結果者には法律上全員強制入院させられる・どちらを選ぶかの政治判断による選択だった(設備優劣でなく)と見るのが素直でしょう。
国際法で考えると入国前の防疫審査で一定の時間がかかっても・・中国がフィリッピンに対する嫌がらせにバナナ検疫に時間をかけることなどがしょっちゅう行われていますが、ズバリWTO違反になりません・・妥当性の問題です。
入国審査(防疫検査)に2〜3時間並ばせようと結果が出るまで5時間〜翌日までかかろうと妥当性の問題ですが、入国条件に2週間の移動制限や検査協力を求めるのはこの情勢下では妥当性はクリアーできても、拒否された場合強制できる法が存在しない点が致命的です。
武漢帰国者検査拒否者の論理を法的に考えると検査承諾の誓約は民事契約に過ぎず、契約による身体に対する直接強制はできない・・契約違反の損害賠償請求されてもいいという程度の意味でしょうか?

民法
(履行の強制)
第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

一般的に身体強制は上記間接強制しかできない解釈です。
間接強制は、「違反1日当たりX円を払え」という判決を求めるしかないことになっています。
弁護士に頼んで訴状を出し、それから1ヶ月後に裁判が始まり・・そんな悠長なことをしているうちにどんどん感染が広まったらどうするかが喫緊の課題でした。
こんな悠長な裁判を(国内移動目的の住居不定の外国人旅行客相手にそもそも訴状・呼び出し状送達をどうやってするのかの事実上の不可能性があります)しているうちにコロナが広がってしまうので上陸後検査拒否されれば政府としてはお手上げです。
そもそも一般的入国条件を満たしているのに外国人相手に2週間の移動制限や検査を受ける事前承諾を求めた場合、これが国際法上有効かすら俄かにわかりません。
違法の主張が起きて・・いうだけタダですので、承諾拒否された場合どうするかの問題が起きます。
これが国際報道され違法行為をしていると日本は国際非難を受けるリスクがあります。
当時は今のように2週間自粛要請がまだ一般的ではありませんでした。
さらに承諾しても、いざ下船後武漢からの帰国者のように検査に応じ、結果出るまで外出しない約束を守るかどうかすらわかりません。
船内検査した方がよいかどうの判断基準は、設備の優劣にあるのではなく、入国を認めても下船後外国人全員に検査強制できるか、一定期間待機強制できるかの問題があるのに対して、船内=今回のクルーズ船は英国船籍内にいる外国人=入国前の検疫であれば強制する必要すらない・検疫に応じなければ入国拒否できるのが国際法上の権利ですので、検疫検査結果が出るまで入国手続きに応じる義務がないという出方をすれば法的に単純明快です。
選択にあたって比較すべき項目は検査設備や受け入れ態勢の問題でなく(独りも逃さず)全員検査できるかのテーマ比較だったと想定されます。
以上は事実経過の公表がないので何が事実か不明ですが、結果から見ればそうなるということです。
岩田氏は持論の正当性を主張するならば、「最初のジレンマ」だけ出さないで当時議論された問題点を全部出すべきです。
彼は感染症の専門家の立場で、検査できる所与の環境下でどのような感染予防策がよいかの比較をした経験→関心が主だったでしょうし、厚労省役人は国際条約や国内法規の制約のもとで何ができるかできないかの前提条件のチェックがまず気になる点が大きな違いです。
医師の場合、患者が医師に見て欲しくて病院に来る前提・経験が多い・・見て欲しくない人のところへ押しかけて行く必要が滅多にないので、拒否されたらどうするかのテーマに関心が低かったのではないかの疑問を抱いています。
岩田氏の主張を見ると上陸させて分離管理して検査すれば良いのに・・設備不十分な船内検査を(厚労省役人が)選択した以上は、上陸後の検査以上に完璧であるべきとの主張になりそうです。

豪華クルーズ船対応批判3

船内検査を選択したから膨大な感染拡大が生じたというのが岩田氏の立論のようですが、彼の論理によっても厚労省統計を見ると現時点でも、クルーズ船感染者数が712名に過ぎず、かつ予定されていた横浜市内病院で一箇所で全員収容できている様子で行く先がないというトラブルが報道されていません。
以下厚労省発表データです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11879.html

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月15日版)
3月15日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客のうち、船内で14日間の健康観察期間が終了し2月19日から23日にかけて順次下船した計1,011人の方への健康フォローアップが終了しました。
【6月14日24時時点の状況について】

表の引用できませんが、PCR検査陽性は712名となっています。

※1 那覇港出港時点の人数。うち日本国籍の者1,341人
※2 船会社の医療スタッフとして途中乗船し、PCR陽性となった1名は含めず、チャーター便で帰国した40名を含む。国内事例同様入院後に有症状となった者は無症状病原体保有者数から除いている。
※3 退院等している者655名のうち有症状360名、無症状295名。チャーター便で帰国した者を除く。

陽性判明次第即時入院させていたし、当初人数が大したことがなかったので医療施設不足で下船させなかったのではありません。
もっとも感染の有無を問わず3700人全員を一まずホテルに収容するのは武漢からのチャーター機のように少数者をホテルに収容するの違って、大量受け入れ可能な民間施設がないので無理だったでしょうが、岩田氏は医療施設に限定しています。
医療施設であれば、発症者から順に受け入れれば少数で済むことです。
岩田氏は、問題にならなかったことを問題であったかのように主張し、(そこから船内対処の方が完璧にできるかのような主張で押し切った勢力(厚労省官僚)があったかのようにイメージさせた上で、船内検査の方が良いという以上は)完璧であるべきという結論を導いているようです。
上記を見ると当時問題であったのは、感染していてもコロナの症状が出ない(潜伏期間が約2週間と言われていた)状況で、潜伏期間中の人や未感染者などの分類作業をするために必要な一定期間の待機場所・ホテル等の手配可能性と乗客の内どれだけが検査やステイに応じるかの問題だった可能性が高いでしょう。
岩田氏は、感染症対応医療機関のキャパシテイ不足を主張しながら流石に問題があると思ったのか周到に「最初のジレンマ」と言っていて、本来のジレンマがあった逃げ場も用意しながらそれを伏せたまま議論を自己の主張の正当性化に進めていくようです。
本来のジレンマでないことを論争点に持ち出して、その議論の結果船内検査に決めたならば乗客のためにより良い医療サービスを目指すものだという前提を読む者にイメージさせます。
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と言いながら「そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」と言い切ってその後の論理を進めています。
下船させて検査するか船内検査かのキャパシテイの優劣を競うだけならば上記のように、発症者優先で近隣指定病院搬送したりできる範囲で分散入院させたり、船内に一部残したりする手間暇を惜しむかどうかの違いに過ぎません。
一律外出禁止令でなく自粛要請の場合、個々人や業界ごとの工夫次第で3蜜を防ぐ工夫が生まれるるのと同じで、物事は現場工夫力が重要です。
彼は米国留学によって、米国式感染症対策を学んできたのが「売り」でしょうから、欧米式に個人工夫を禁止し、社会的にはロックダウン・・個々人の事情や工夫余地のない上からの一律強制とそれを指揮する米国CDCのような司令塔が存在しない日本の厚労省指導体制がバカくさく見えたのでしょうか?
古代から現場力重視・ボトムアップ社会の日本社会では、強力な司令塔を設置して個々人努力を積極禁止するロックダウン政策は国民性に合いません。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」とは「ジレンマ=両立できない相克」ではなく、素人の私が数秒読んだだけでもすぐに思いつくように、発症程度等による優先検査順位や分散処理する手間さえかければ良いのでないか?
その場合どういう問題が生じるかの事前予測と準備の問題ではないでしょうか?
そんな程度のことはジレンマとして議論にもならないし、現場におろしていけば司々で普通に処理していく普通の準備行為ではないでしょうか?
そんなことを準備会議で大げさに主張しても、議長は「そうだね現場からの相談には丁寧に応じる必要がある」程度で応じて「丁寧にやってください」程度の指示を事務方にして、議長は次の重要なテーマに移っていくのが普通です。
・・岩田氏はちょっと工夫すれば良いことを工夫の余地がないジレンマと理解し二択しかないと思い込んでいたのでしょうか?
昨日紹介した岩田氏の主張を読むと岩田氏は米国留学で得た知識を前提に米国ではCDCという強力な司令塔があるのに、日本にはなく指揮命令系統が「ぐちゃぐちゃ」だという批判精神が先立っている印象を受けます。
専門家でない厚労省官僚が仕切っていることに対する批判が結論として重視されているような表現になっている印象です。
岩田氏が考えるように、キャパの比較が重要テーマであったとすれば、(彼はそれを「最初のジレンマ」と称して議論のテーマが他にあったことを示唆しながら他のテーマを紹介しないまま、キャパの優劣論だけを議論の正統性の根拠に持ってきた議論を展開しています)の主張通り下船→陸上での受け入れより船内検査の方がより良いものである必要が論理上出てきそうです。
ただし「陸上病院以上であるべき」という主張が限界で「完璧」を要求するのは論理飛躍があるでしょう。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」しかテーマが(2番目以下のテーマが)なかったにしても、世の中に完璧なシステムがあるのでしょうか?
いろんなシステムあるいは製品も研究も試作品→製品化→現場利用によるフィードバックによって日々改良されていくもので世に出る当初から完璧でなければならないというものはありません。
岩田氏の生きている医療分野でも医薬品に限らず、医療機器あるいは医師の技術そのものに至るまで、医師になった以上完璧であるべきと言えるでしょうか?
岩田氏自身医師資格を得てからあちこちで研鑽を積んで現在があるのであって、取得時から現在の能力を持っていたとはいえないでしょう。
クルーズ船内という特殊環境下で、しかも3750人近くにも及ぶ大量検査を初めてする以上、何が完璧かの定義自体が意味不明です。
その点は措くとして、そもそも船内検査選択したのは、下船後検査環境以上の検査設備・体制があるという理由で決めたのであれば、陸上受け入れよりも環境が良い前提になるべきですが、そもそもそういうことは議長が「わかりました下船の場合には事務方に指示しておきましょう」程度で次の議題に移れば良いレベルなので本来の議論対象・テーマではなかったのでないか?
違ったテーマで船内検査が決まったのにこれを意図的に隠して論点すり替えしてるのではないか?
善解すれば、先決重要論点を理解できなかったかの疑問です。
「最初のジレンマ」といいながら2番目以下のジレンマに触れないで「最初のジレンマ」だけを前提に批判するのが不思議です。
上記の通り、キャパ優劣問題であれば多様な解決策が可能であった=ジレンマでなく工夫レベルの問題であったので、仮にジレンマという二択のバーターになるべき選択テーマがあったとすれば、別次元のテーマがあったからではないかと私は思います。
すなわちその時のテーマは下船後外国人が検査拒否あるいは滞在拒否して国内観光に出てしまった場合どうするかが、重要テーマだったのではないでしょうか?
クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号入港は2月3日で、直前1月29日に武漢からチャーター機で帰国した邦人が政府の用意したホテルでの滞在要請も検査要請も拒否して帰ってしまった例を6月11日に紹介しました。
このころの報道ではチャーター機救援に当たっては政府は、救援対象者として、帰国後の一定期間隔離(三日日ホテル全員収容)と、感染検査を受けることの承諾を得た人限定で帰国希望募集していたと報道されていました。
それに応じて承諾書に署名(多分署名をとっているでしょう)したのに?帰国できた途端に法の根拠がないことを理由に?検査協力を振り切って帰宅してしまった人が2名出たという報道でした。
このように見ると日本の官僚の用意周到さに驚くばかりです。

豪華クルーズ船対応批判2

クルーズ船対応の批判論を公開して(批判を受けて?)削除してしまった人物が、翌月「クルーズ船での対応は失敗した」の表題でのメデイア記事発表に協力した以上は、一旦撤回削除した主張のどこが正しくどこが誤りだったかの釈明をしたものと読者が期待します。
ところが読み進んでもクルーズ船対応の何が失敗だったかの説明がないままです。
まともな批判論がないと書く場合、逐一引用しないと「ない」証明ができない不便さがありますが、全部引用は煩雑ですので、記事中のクルーズ船に関する小見出し部分だけ引用しておきます。
全文が気になる方はご自分で記事内容に入っていただくようにお願いします。https://toyokeizai.net/articles/-/335971?page=7

――岩田教授は2月18日、クルーズ船内部の状況についての動画をYouTubeで公開しました。ウイルスのない「グリーン・ゾーン」とウイルスが存在して感染の危険がある「レッド・ゾーン」が「ぐちゃぐちゃになっていた」と。改めて、課題は何だったのでしょうか。
クルーズ船というのは閉鎖的な空間にたくさんの人がいて、おまけに高齢者が多い。非常に感染しやすく、リスクも高い。感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れキャパシティーがなければ、ただ下船させるというわけにはいかない。そこが最初のジレンマになる。
そのジレンマの中で、感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。
しかし、感染症の専門家がしっかり入ってオペレーション(運営)をするのではなく、感染対策のプランは官僚主体でつくったものになっていた。専門家は結局、少し入っただけだった。日本環境感染学会の専門家も入ったが、結局はすぐ撤退してしまった。
入れ替わり立ち替わり専門家が入っているが、専門家がリーダーシップをとった対策づくりができていなかった。
――下船した乗客の感染が後になって判明したり、作業に当たっていた厚生労働省の職員や検疫官に感染者が出たりしました。

「下船した乗客の感染が後になって判明した」点については、検査の正確度が低いことが知られている通りです。
https://www.asahi.com/articles/ASN3M7G1XN3MULBJ01C.html

新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味

酒井健司 2020年3月23日 9時00分
日本プライマリ・ケア連合学会の診療の手引きによれば、「PCR検査はウイルスゲノムを検出するという原理から、一般論として感度は低く、特異度が高いと考えられます。初期のPCR検査で陰性だが後日陽性となった患者等の検討により、感度は30~70%程度、特異度は99%以上と推定されています」とあります。ほかの専門家のコメントでもだいたい同じぐらいです。

わずか30〜70%ですから、陽性判定された人の陽性率は99%ですが陽性判定されなかった人も7〜3割が再検査すれば陽性になる可能性があるのです。
この比率は現在も変わっていないようです。
陰性2回の退院ルール下でも退院後陽性になることもあると言われ、(1回の検査で最大7割が漏れるとすれば、2回検査後でも35%が漏れている計算です)もう一度感染したのか(免疫にならないのか?)検査の正確度が低い問題なのかすらわかっていないのが現状です。
下船後の陽性反応が出た人が数名?程度出たとしても、感染防御体制不備の主張とどう関係するか不明の主張です。
現在と違いまだ大量の検査治療経験のない試行錯誤的段階の検査能力レベル批判とクルーズ船受け入れ体制不備批判とは次元の異なる議論です。
以下対応に当たった人員に二次感染が起きた等の結果責任に議論がすり替わって行き受け入れ体制批判の具体的説明がありません。
岩田氏の基本主張は、キャパが足りないという(船内のほうが、検査環境が良い)理由で、下船させないで船での検査を選択したのであれば「船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」という立論のようです。
船内検査の場合、下船後検査よりも「完璧」であるべきかの前提事実が意味不明です。
そもそも完璧とは?
研究所の化学実験でも100%の成功に漕ぎつけるには膨大な反復実験が必須です。
実験がなく、いきなり3750人にのぼる乗員乗客のいるクルーズ船での感染問題が起き上がったのが現実でした。
一斉検査を密室状態のクルーズ船内でどうやって実施するか、検査機器や検査熟練者を全国から短期間に呼びあつめ、その船に乗ったこともない感染症専門家?が狭い船内配置図とにらめっこで、検査採取空間や事務部門の後方配置(記録化や、ネット空間の設営)とのレイアウト、動線確保・・検査機器や事務処理用機器の搬入、交代要員の人繰り等々を、全世界未経験対応で緊急出動が要請されてまず活動開始するしかない段階で「完璧」対応が可能だったかの説明こそが重要です。
岩田氏の主張は、下船させて検査するのを原則とし、原則的方法を取らない以上は上陸後の検査よりも「完璧でなければならない」という主義主張を前提にする思考法のように見えます。
ただし、彼は冒頭に重要論点を不明化する発言をしています。
その部分を再引用しておきます。

「感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れキャパシティーがなければ、ただ下船させるというわけにはいかない。そこが最初のジレンマになる。」として
「そのジレンマの中で・・・感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」

以上によれば「選択をしたのであれば」の単語には選択関係という前提があり、その選択判断のジレンマ?をキャパシティの問題に微妙に矮小化?しています。
キャパだけの問題であれば分散受け入れや、3700人全員一斉下船でなく3分の1〜半分だけ下船させ残りは船内待機またはその一部(一定の症状が出ている人優先に)を検査にするなど工夫の余地があるので両立可能・・二律背反の関係ではありません。
周到に「最初のジレンマ」と言っていて、本来のジレンマを伏せたまま議論が進んでいくようです。
本来のジレンマでないことを論争点に持ち出して、その議論は乗客のためにより良い医療サービスを目指すものだという前提を置く結果、
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と言いながら「そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」と言い切ってその後の論理を進めています。
「最初のジレンマ」と言いながら次のジレンマを説明しないまま最初のジレンマだけを前提にした対応批判するのは「そんなテーマの議論でなかった」虚偽説明という批判からの逃げ場を用意したものでしょうか?

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC