日銀の国債引き受けとインフレ4

高金利国は資金があって(仕入れたり作ったりして)供給さえ出来れば儲かる社会・・資金・供給不足社会です。
日本も高度成長時代には作りさえすれば売れる時代でしたから、借金さえ出来れば儲かるので如何に銀行から借りられるようになるかの(銀行が大きな顔をしている)競争時代でした。
高金利国は、高金利でもそれ以上に儲かる元気な社会だとも言えますが、供給面で見れば供給不足・・その時代の平均的水準に必要な物品・サービスが行き渡っていない渇望感・ハングリー精神の強い社会であり、資金需要面で言えば資金不足社会です。
日銀が印刷能力の限度まで紙幣を印刷して国債を引き受けてその分の紙幣が市中に出回るとどうなるかですが、日本の場合既にハングリー時代が終わっているので、銀行が低利で貸してやると言っても必要以上に借りたい企業もないし国民も今までの倍の牛乳を飲みたい訳でもないことから、使い切れない国民は預貯金するしかないし、銀行も借り手がない分は国債を買うしかないので、次に発行する国債に紙幣が(吸い上げられて)還流して行きます。
ここ10〜20年にわたる国債増発は、行き場のない資金の受け皿だったし、紙幣が市場にあふれかえってインフレにならなかった所以です。
国債で引き受けてやらないと銀行は集まった預金の金利を払うばかりで貸出先がないので倒産してしまうのでその救済策でした。
(売る当てもないのに商品を仕入れている商店のようなもので・仕入れても仕方がない・・儲けが期待出来ないので0、00何%の低金利にしているのです)
この辺の意見は、04/27/03「銀行とは?4(農協的問屋機能の衰退、1)」以下で銀行の役割縮小を書き始め、国債引き受けは銀行に何のリスクもなく、帳簿の付け替えだけで巨額の利ざやを稼げる仕組みであることを09/13/08「金融機関の存在価値3(金融機関引き受けのからくり2)」〜09/14/08「国債の無制限引き受けと紙幣発行権2」で銀行に対する巨額の利益・倒産防止の下支えをしている仕組みを紹介しました。
BIS基準がこのころから厳しくなり、その引き換えに国債は自己資本比率に組み込めること・・ノーリスク勘定になったことも、投融資先がなくなっていた先進国での国債引き受け促進の応援政策だったことになります。
BIS構成の有力国・・先進国ではどこでも銀行機能の縮小・・優良融資先の縮小が始まっていたことがココから読み取れます。
この基準強化の結果今回のギリシャ危機でも分るように、世界の金融機関の殆どが国債を大量に保有していたことが分ります。
ある年に30兆円分の国債を日銀が引き受けて30兆円分の紙幣流通が増えても、その紙幣の使い道のない余った分は預金→銀行も借り手がないので次の国債引き受けに繋がるので日銀による際限ない国債引き受けの増加にはなりません。
実際に国会議決による国債引き受け枠は小泉内閣時代からあるらしいですが、1〜2回使った程度でその後は予算総則に書いてるだけで議論しないで毎年同じ数字のまま(5年も6年も同じ数字が出ているところには政治家は気がつかないと言うか議論の対象になり難いからです・・)国会を通過しているのは、実際には枠を使わないままだから、政治のテーマにならないのでしょう。
実際に日銀が引き受けたのが30兆円枠の内いくらだったか知りませんが、ともかく引き受けた分だけの紙幣が増えた筈ですが、我が国でインフレにならなかったどころかまだデフレで困っていることからすれば、日銀引き受け枠の増額に関しては当面まだまだ余裕があることが分ります。
この間に国債購入に向かった外に余った紙幣はいわゆる円キャリー取引で海外流出していたことについては、円キャリー取引のコラムで紹介したとおりです。
紙幣発行が需要以上に多くても、最強通貨・・即ち世界最低金利の円は引く手あまたなので当面海外へ流出して行くだけでしょう。
資金不足国への円の供給はその国では生活必需品購入資金になり、ひいては世界中が平等に文明の恩恵を受けられることですから目出たいことです。
人道主義者が「人類皆平等」などの理念を何回唱えても平等にはなりません。
資金が必要なところに借金であれ所得であれ、先ず資金があまねく行き渡るようにすることが生活水準や教育チャンス平等化の進展・人権意識の定着に資するのが明らかです。
日本がゼロ金利で巨額資金を世界に垂れ流すことにより、(国内で使うのは預金や国債を買い増すくらいですから)世界中の資金不足国が潤い、そこでの需要が広がって生活水準が向上します。
アメリカは世界中から借金で物やサ−ビスを買い、対価として資金を垂れ流し、日本は物やサービスを余り買わずに貿易黒字によって世界中から資金を集める代わりに低金利で世界に貸し出している構図です。
日本のように自分が我慢してお金を貸し出すのは国民性に合っているかも知れませんが、どうせお金を出すならば、アメリカのように自分がウマいものを食べて対価としてお金を出した方が得な感じです。
アメリカを通じて世界に資金を供給する仕組みとしては、アメリカに脅されて湾岸戦争のときに90億ドル=1兆1700億円を半強制的に取られてしまったことがありますが、アメリカ国債を買っていたとしてもこれを取り崩せないのですから経済的には同じことでした。
日本は円の値上がり阻止のために(貿易黒字ないし経常収支黒字分と同額)ドル買い介入して、買ったドルでアメリカ国債を買ってるのですから、保有しているアメリカ国債(ドル建て)を売ったらドルが値下がりしてしまうので売るに売れません。
と言う訳で、日本も中国もアメリカ国債は事実上無価値(宝の持ち腐れ状態)になっているのですから、外貨準備と言っても取られてしまったのと殆ど変わりません。
無理にまとめて売ればドルの大幅値下がりによって、ドル外貨準備の評価が何割も下がってしまい大損です。
債権債務関係では債権者の方がニッチモサッチも行かない・・フリーハンドを持っているのは債務国の方であると書いて来た所以です。

日銀の国債引き受けとインフレ3

先進国ではお金の量に比例して消費が増えるのは(まだお金さえあれば何でも買いたい人が多い)低所得層が中心ですから、バブル崩壊後消費の下支えのために子供手当や社会保障の充実・・最低賃金のアップなどバラマキが進んだのは経済合理性がありました。
中流以上の階層にとっては、収入が1割増えてもその殆どが貯蓄に回ってしまい消費があまり増えません。
ですから増税は景気を冷やすどころか、収入の何割を貯蓄してしまいお金を使わない階層から税でむしり取って政府が全部使い切る方が消費刺激になるという意見をSeptember30 ,2011「増税と景気効果2」前後で書きました。
景気対策・・と言っても、上記の通り底辺層に対する社会保障の底上げ程度では、供給能力過剰下での生産維持・下支え程度でしかなりませんので、企業は金利が安いからと言って借金してまで設備投資をしません。
ですから、金融緩和や紙幣の大量発行よりは底辺層に対する紙幣バラまき・・生活保護水準等福祉水準の引き上げやサラ金の金利引き下げの方が消費下支え効果があります。
(これがバブル崩壊後サラ金に対する高金利を違法とする判例・不当利得関連の債務者保護判例が進んだ政治・経済的背景でしょう)
農産物と違って仮に生産が足りなければ工業製品は増産が簡単ですし、それどころか我が国はバブル崩壊以降供給能力過剰で苦しんでいるのですから、仮にコーヒーを2倍飲んでもコーラや酒を多めに飲んでも業者は生産設備をフル稼働に近づけるだけで値上がりまではしません。
デフレ現象の原因はこれまで書いているとおり、賃金・生活水準で10倍格差のある中国その他新興国からの低価格品の流入にあるのであって、我が国の場合金利や紙幣量をいじってもどうなるものでもありません。
企業の方も国内投資しても儲けられないのが分っているので、いくら金利を安く・・ゼロ金利にしても、あるいは量的緩和をしても借金して投資する気持ちがありません。
3月23日の日経新聞朝刊社説には企業の手元流動性が60兆円と出ていましたが、企業は儲けるタネがないので資金があっても使い切れないで困っている状態です。
銀行も預金ばかり集まっても貸す相手がいない・・借りたい人が少ない状態ですから、金融機能が縮小して国債を買っている状態になっています。
銀行が本来の金融機能を果たせなくなっていることから国債に活路を見出している状態・・銀行は最早存在意義をなくしているのではないかという意見を09/19/08「銀行の存在意義6(融資機能の衰退3)」 前後で連載しました。
例えば、ゼロ金利どころかマイナス金利にしても車やテレビの販売が増える見込みがなければ・・あるいは鉄鋼需要がないのに製鉄の増産、車やテレビ製造の増産投資しません。
家賃を無料にしてくれても店員の給料分も売れないようなときには、店舗を借りる人がいないし、無利息で貸してくれても採算が取れる見込みがなければ、デパートも進出投資しないでしょう。
現在の我が国では供給能力過剰社会・・言い換えれば(長期にわたる貿易収支・経常収支黒字の蓄積の結果)資金余剰社会になっているので、従来の経済学理論とは異なり紙幣を濫発しても今更インフレにはなりません。
ではその紙幣がどこへ行くのかと言うと、円キャリー取引で海外流出して行きます。
ゼロ金利でも借りないほど資金余剰の国もあれば・・だぶついた資金を借りたい国・・まだ供給不足社会は世界中にいくらでもあります。
我が国の底辺層同様に新興国あるいは貧困国では、需要はいくらでもあるのに購買力が足りない国が圧倒的に多いので、そこへ資金が流れて行くのは自然であり、理にかなったことです。
旧来または現在の経済学者は、供給不足下の国内完結経済を前提に紙幣が増えればインフレになるとバカの一つ覚えのように主張するのですが、先進国では供給・生産力過剰社会ですので、紙幣垂れ流しが国内だけでのだぶつきから需要のある海外への垂れ流しになって、これを受けた海外でインフレが進みます。
日本の紙幣垂れ流しがアメリカや中国のインフレ、あるいは国際的資源高騰の遠因になっていることを03/20/08「サブプライム問題と世界経済5(低金利競争1)」以下のコラムで書きました。

日銀の国債引き受けとインフレ2

市中で(民間が)国債が引き受けた場合、その分紙幣が市中から吸収されてしまうので、国債と引き換えに政府が手に入れた紙幣を政府が使っても市中に出回っている紙幣量は変わりません。
September30 ,2011「増税と景気効果2」前後で、増税しても吸い上げた紙幣を政府がほぼ全額使うので、市場での紙幣流通量はむしろ増えることが多いので、増税が景気を冷やすことはあり得ないと書いたことと同様に国債で吸い上げた場合も同じです。
国債増発も増税も資金循環としての経済効果は、同じであると繰り返し書いている所以です。
その論理の応用ですが、国債を市場で売らないで日銀が印刷した紙幣で買うとその分量だけ市場に紙幣が多く出回ります。
日銀が政府短期証券を引き受けた場合、(政府の為替介入資金として)紙幣が出回ったままにならないように売りオペで紙幣を市中から回収するのが普通です。
為替介入・・例えば円売りドル買いの場合、政府短期証券と交換に円紙幣を政府に供給し、政府がドル買いのために市中に放出した円は、日銀が政府短期証券を市中で売って(売りオペ)同額の円を吸収することで中立化を図っています。
ついでに為替介入して得たドル紙幣の行方を説明しておきますと、政府が為替介入で得たドル紙幣を市中に出して両替するとドルが下がってしまうので、ドルのままでアメリカの財務省証券を購入するので、日本や中国のドル外貨準備が増えます。
貿易黒字国が自国の通貨じり高を防ぐために為替介入すると、その結果アメリカの財務省証券や公的債権保有が増える仕組みです。
アメリカは上記のとおり資金が還流して来るのでいくら貿易赤字を続けてもドルが赤字分だけ下落することもなく、環流した資金で更に輸入出来ることになっているのが現状の世界経済です。
国債の日銀引き受けの場合、国債を市場に再販売出来れば問題がないのですが、買い手がつかないほど国債が暴落したときに伝家の宝刀を抜くことになるのですから、日銀は市場相場(大幅額面割れ)よりもはるかに高い値で引き受けることが前提です。
国債の信用がなくなって仮に額面の6割の値段でしか市場では買い手がつかないときに、日銀が政府希望価格の95%で引き受けたとすれば、これをそのままあるいは日銀の販売コストを上乗せして転売・売りオペするのは不可能です。
そんなことが出来るくらいなら日銀が引き受ける必要がありません。
日銀引き受けの場合、論理的には売りオペを出来ないので、紙幣が大量に出回ったままになるしかありません。
古典的あるいは現在の経済学・・あるいはマスコミでは、紙幣大量発行を放置すればハイパーインフレになると心配しますが、私の意見によれば現在日本で紙幣をいくら大量発行しても国内インフレが直ちには起こりません。
この辺の関係については、9/15/08「国債の無制限引き受けとインフレ1」February 22, 2012「為替相場と物価変動2(金融政策の限界2)」前後のコラムで連載したばかりですが、飽食・飽和商品時代では紙幣があるからと言って買い物に殺到する人が少ないからです。
牛乳、卵、キャベツ、人参でもお金があるからと言って2〜3倍食べたりしない、お酒も2〜3倍飲んだりしない・・精々無農薬野菜などレベルアップする程度で終わりです。
健康志向の強い現在では多く食べるかどうかは貨幣の量ではなく健康意識にかかっています。
年収1000万円の人の収入が1割増えても、日常品の欲しいものは既に持っているので、消費がそれほど増えるのではなく、預貯金が増えたり海外旅行をするくらいで、消費物資を買いあさって物価を上げるまでは行かないでしょう。
供給過剰社会では、品質レベルや好みに合う製品を供給するかどうかであって、購買力はそれほど影響がありません。
(携帯からスマホに移行しているのは購買力や金利による変化ではありません)
そのうえ、先進国では鉱工業製品・・車やテレビ、携帯などは、需要が盛り上がっても単価が上がることはなく単に増産すれば足ります。
供給余力のある先進国では商品価格は紙幣量に比例するのではなく、競合他社との製品比較・・競争次第で決まる傾向があります。

日銀の国債引き受けとインフレ論1

倒産しても再起する例が増えて来ると、倒産すると困るのは実は債権者の方であって、倒産する方は却って筋肉質になって元気になれるメリットの方が大きい感じです。
今回のギリシャ危機でも損をしたのは債権者であるフランスやドイツの方であって、ギリシャではありません。
ギリシャは元々借金だらけで信用がなかったのですから、今回の危機で特に信用をなくしたのではありません。
彼らは従来通りの生活をしていれば良いのであって、何も困っていない筈です。
破産されると困るのは債権者・・サラ金等であることは我々弁護士世界では常識ですし、(私の場合昭和50年代半ばから破産を推奨して来たことを、05/03/02「破産 8(破産とサラ金の合理化)」以下のコラムで紹介したことがあります)業者にとっても破産されると損するので、貸す際には信用調査に慎重になります。
債務者にとっては破綻自体全く恐れる必要がありませんが、債権者が困るので「破産は大変なことだ」という宣伝・・道徳意識の涵養に必死になっています。
破綻した人というのは豊かな人にとっては最低の烙印ですが、生活保護すれすれの人にとっては現状以上に生活水準の低下がないどころか借金支払に汲々としなくて済むのでメリットの方が大きいのです。
金融資産が膨張し金融収益に頼っている組織では、相手の破綻によるリスクをマトモに抱え込みます。
1000年前後も繁栄していたベネチア共和国の衰亡は、金融資本に頼り過ぎ、他方でスペインの王様が何回も破産したりして、あちこちから踏み倒され続けてしまったことにあります。
世界1の純債権国になっている日本として心すべきことです。
破産した方は涼しい顔でいられるので、我々弁護士は債務者に破産を勧めるのが普通になっていますが、国同士でも同じことです。
このように本来債務者は破綻しても全く困らないの(困るのは債権者だけ)ですが、これに加えて政府の場合、そもそも破綻があり得るのかという問題があります。
政府の場合、元利がいくら膨らんでも破綻を選ばないで、政府・日銀は本気になれば輪転機の印刷能力のある限り紙幣大量発行が可能ですので、支払不能になることは理論的にあり得ません。
その場合インフレを心配する論者・・あるいは日本の紙幣の信用がなくなると心配する論者が多いのですが、私は後に書くように日本を除く世界インフレは起きるとしても(例えば中国などで物価が10倍になれば製造原価が上がって日本の国際競争力が回復します)日本国内インフレは起きないと思っています。
また紙幣の信用は、あるがままで良いのであって100倍印刷すれば100分の1に価値が下がるのは当然であってそれで何も損はないでしょう。
3月25日の最後に書いたように、日銀が無制限引き受けをすれば、借換債の買い手がなくなる心配・・デフォルトになることは論理的にあり得ません。

財政法
(昭和二十二年三月三十一日法律第三十四号)
第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

上記のとおり現行法でも国会議決があれば日銀の国債引き受けは可能で、現在既に満期の来た国債に限って引き受けが合法化されています。
2011年度予算では30兆円までらしいですが、必要があって決議さえすれば無制限に額を増やせます。
もしも借換債の入札が不調になって満期国債の償還が不能の見込みとなれば、その時点で、国会議決を求めれば議会の方で、「デフォルトすれば良い」じゃないかと放置することはあり得ません。
何らかのモッタイを付けるかも入れませんが、「今回に限り」とか言いながら引き受けを認めるしかないでしょう。
と言う訳で今は30兆円限度らしいですが、そのときの必要に応じて国会がいくらでも枠を引き上げて行けるのでデフォルトになることは論理的にあり得ません。
あるとすればデフォルトした方が得だと分って、サラ金債務者が自己破産するように積極的に行うときだけでしょう。
実務的には「8割カットに応じなければ破産するぞ・・」とこちらから脅して、カットに応じないときに実行することになるのでしょうか?
財政法の国会議決の条件の詳細が不明ですが・・議決ごとに何らかの付帯条件がつくのが本来でしょうが、実際には予算書総則に数字がちょっと書いている程度らしく国会では殆ど議論らしい議論がなく毎年すり抜けてるようです。
この後で書いて行くように、日銀・・中央銀行の物価の番人としての役割は疾うに終わっていて、こんなことにこだわるのは時代遅れの学者だけとすれば、そもそも日銀・・中央銀行制度は不要・・国債を引き受け過ぎて、大赤字になってつぶれても良いかも知れませんが・・・。
・・現状では一人としてこういう意見を言う学者がいないので、全員時代遅れかも知れません・・原子力ムラの学者同様・・大勢に逆らえない学者ばかりなのでしょうか?
財政法で原則として日銀の国債買い受けを禁じているのは、兌換紙幣(金本位制)から不換紙幣にした見返りみたいな制度・・・連動すれば政府が好きなだけ紙幣発行権があるのと同じになりますから、ハイパーインフレにのめり込むリスク回避のためでした。
この辺のいきさつについては、01/16/07「不換紙幣と中央銀行の独立性2」前後で連載しました。
中央銀行制度が出来た当時は必要な制度・思想でしたが、金あまり・・供給過剰の現在日本では不要な制度になっています。

国債残高が増え続けると?

国債発行による資金徴収は、古代での稲モミの貸し出しに代えて、今では紙幣発行してこれを国民に使わせてやる・・それの何割かを回収している関係と見れば良いでしょうか?
税でとるのも借金・国債でとるのも結果は同じと言う意見をここまで書いてきましたが、税なら最後まで返さなくとも良いのに対して、国債の場合利息付きで返さなければならないのが大きな違いと言えますが、実態はどうでしょうか?
実際にはどこの国でも国債や社債は借換債の発行の繰り返しで凌いで行くのが普通なので国が続いている限りいつまでたっても元利を返す必要がありません。
企業の社債発行については、借り換えで繰り返して行くつもりで満期が来てもそっくり返す予定の企業など1社もないと言っても過言でないことを、02/23/07「キャピタルゲインの時代5(修正作用2)社債発行1」で書いたことがあります。
社債でない銀行からの借金でも期限ごとに書き換えて行く(期中利息だけ前払いして)前提であるから、書き換え(法的には新規貸し出し)に応じてくれないと困るので、業者はいつもびくびくしていることも書きました。
このやり方が際限なく続くのは売上増・・規模の拡大が続いている経済の場合です。
元利合計として膨らむ一方ですので、規模拡大が続かない限り最後は払えなくなるのではないかと心配する人が多くいます。
国内資金循環効果としては国債も税収も同じことだとしても、返済能力の心配のある点が大違いですから、この心配について書いて行きます。
企業でも上記のとおり際限ない社債発行の繰り返しを前提に運営されていますが、トヨタその他の大手企業で返済不能に関する心配を聞いたことがないのは、我が国では企業規模が右肩上がりあるいはインフレによる債務の実質目減り前提に運営されてきたからです。
国債の場合も従来のように年々物価上昇が続く時代には、問題がありませんでした。
バブル崩壊以降続くデフレを何とかしてインフレに転換したい・・目標が必要と・・と言う政府企業・マスコミの大合唱の根本がココにあります。
例えば1割のインフレがあれば借金が1割減額されたことになるので、借金だらけの企業や家計・あるいは政府は大もうけです。
無理な借金やローンを組む人が多かったのは、インフレ・・給与その他の名目収入が上がれば返済が容易になる前提でした。
バブル崩壊以降この思惑が逆回転してデフレ傾向・・逆に物価が下落し続けているので、債務の多かった人や企業・・ひいては政府も参っています。
そこで政府も国債残高が累増して行く一方なので、みんなが心配するようになりました。
今回は国債残高が増える一方になってしまったらどうなるかの検討です。
既に5〜10%くらい消費税を上げても返し切れないほど増えてしまっていると見るのが妥当です。
政府と地方自治体あわせて1200兆程度の負債があるのですが、この1%の金利でも年間12兆円も必要ですし、金利が3〜4%前後になれば、現在の税収全額になってしまいます。
現在でも税収の3分の1も払えないのは明らかですから、現在既に利払いさえ税収の範囲で出来ない・・元金を減らして行くのは無理があるところまで来ています。
ところで負債を払えなくなれば、企業の場合は倒産・・整理ですが、政府の場合も倒産でしょうか?
従来企業倒産の場合原則解体処理して何も残らない・・消滅が原則でしたが、最近は会社更生法だけではなく再生法による処理が発達して来たので、倒産したからと言って何一つ残らないのではなく、古くは国鉄→清算事業団化・・近年ではGMや日本航空のように債務を切り捨てて却って身軽になれるので再起する例が増えてきました。

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