構造変化と格差35(円高差益還元1)

アメリカや韓国みたいに極端に市場経済化一辺倒で非正規雇用を増やして賃下げを実現するのはどうかと思いますが、我が国のやり方はすべての分野で時間がかかるものの微温的変化でこの程度は円高進行によるデフレ(実質賃上げ効果)と相俟って忍耐の範囲と言うべきでしょう。
我が国はこの後で書いて行きますが和魂洋才・・欧米価値観に真っ向反対することも出来ずある程度合わして行くしかない社会ですから、ま、付き合いとしてこんな程度と見るべきでしょう。
本来の「絆」、痛みの分ち合いであれば、既存労働者も円高差益分の給与引き下げに応じてみんなが就職出来るようにするのが理想的ですが、絆が大切とは言うものの自分の給与下げは1円でも応じたくない人が多いので、自然退職を俟って新規採用を抑える・・必要分は非正規雇用化して解決するしかなくなっています。
今回の大震災でも絆が大切と良いながら、そのための増税・・廃棄物引き取りはいや・・と言う人が多いのが困ったところです。
為替相場によって経済が振り回されないようにするには、円安になればその分賃金を引き上げ、円高になって実質賃金引き上げになった分を自動的に引き下げるのが合理的です。
(電力料金が為替・原油相場で自動変化する仕組みが大分前から導入されていますので賃金も技術的に出来ないことではありません。)
これをしないまま差益を取り得にしておくことに無理があります。
これまで何回も書いているように、為替相場は上がっても輸入品が下がるなど経済的には中立ですが、国内に差益のあるグループと差損のあるグループが生じて、その調整が出来ない・・不公正を放置する前提だから円高が企業に不利に働くのです。
円高傾向のときには従業員が円高差益を懐に入れて企業が損する仕組みですが、ここを抜本的に正常化することが必要です。
これが正常化しないままに放置するのは、一種の不公正の放置ですから、公正さを求めて差損のある企業は海外に逃げるしかなくなってしまいます。
企業が逃げると雇用が減る・・ひいては社会保障給付を受ける人が増えるのに負担する現役労働者が減る→いよいよ企業負担が増える→海外に逃げる企業が更に増える悪循環でこのままでは国力が疲弊する一方です。
年金や社会保障の赤字の大きな原因は、年金や保険料の支払い者不足に帰する・・その原因は少子化というよりは失業者増(支払者から失業保険や生活保護受給者への変換・子供手当など受給者増)ひいては正規雇用者減(支払者減)にあることは明らかです。
この点に着目して非正規雇用にも保険加入を義務づけようとする動きが出て来たのですが、企業にしてみれば、正規雇用と同じ負担では人件費比率が高まってしまいます。
企業にとっては既存労働者の給与引き下げ出来ない分非正規雇用者と混ぜることによって全体で人件費比率を引き下げようとして努力してきた意味がなくなります。
正規・非正規の格差をなくすためには、(正規の水準を非正規に合わす・・あるいは双方賃金が歩み寄るなら問題がありませんが・・)全体として円相場に対応した給与水準の連動制度を作らない限り無理・・海外脱出しかなくなってきます。
たとえば毎年4月1日あるいは半年経過ごとに、前期の円相場を(計算の仕方はいろいろでしょう)基準に自動的に前期末給与を改訂し、これを基礎にしてベースアップするかしないかを企業の業績ごとに自分たちで決めて行けば公平です。
為替連動性にすれば円相場に企業が一喜一憂する必要がありませんし、円安期待やインフレ期待など無駄な(非生産的)議論がなくなります。

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