貿易赤字解消策(保護政策の功罪)1

トランプ氏がアメリカの貿易赤字を問題視していますが、特定の対米黒字国を叩いてもアメリカ人の消費を減らさない限り・モグラ叩きゲームと同じで赤字は減らないというのが経済学の帰結と言われています。
ただし上記は、いわゆるネット上の評論であって、日露戦争時の7博士意見書同様で部分的な現象を拡大して論じている無責任・一方的意見のようにも見えますが、本当のところ素人の私にはよくわかりません。
素人の私の疑問をここに書けば、内需を減らさない限り赤字は減らないという意見はわかったようでわからない・・一面から言えば国内生産以上の内需があるから赤字になるというのはその通りでしょうが、これを逆から見れば内需に見合った国内総生産・職場を増やして行き国際収支均衡に持って行く政策もあるという事です。
米の生産量が100トン足りない時に100トン輸入している時に、みんな少しずつ食べる量を減らして生産量と均衡させるか、国内の休耕田の売り100トンに匹敵する面積の作付けを許可して100トン分の生産を増やして、100トンの輸入を減らすかの2パターンが単純でわかり良いでしょう。
上記は需要見通しの誤り(天候不順による凶作)によって不足が生じて臨時に輸入をふやした場合には翌年増産すれば良いことで簡単な話です。
各種産業のトータル輸入超過の場合には、単なる見通しミスではなく国際競争力がないことによって、輸入品に国産品が押されて、いろんな分野で徐々に輸入が増えた結果赤字になっている場合に、簡単に国内増産をすれば良いと言っても(輸入品に負けていて)売れなければ、増産できません。
国内生産品の国内消費を(輸入品に負けないように)どうすべきか?、あるいは輸入額をそのままにして、輸出商品(得意分野)をもっと増やすにはどうすべきかの問題解決・処方箋は産業別に違ってきます。
この種実務的・・地に着いた議論は難しいので、この種議論を端折って「消費を減らせばいいんだよ!」と大雑把で大胆な!意見をネット上で吐いているものと思われます。
ネット上議論とかバラエテイー番組等では、何でも単純化して一刀両断「ずばっ!」が売りです。
専門外のことでよくわからない視聴者には、ああでもなくこうでもないとこねくり回す議論を聞いていても訳が分からなくなり聞いてられません・・素人や高齢者は(途中の議論はいいから・・と)すぐに結論を知りたがる傾向があります。
単純意見は分かり良くていいでしょうが、単純結論だけ求める議論展開になると、フラストレーションのあるテーマの場合、つい、「そんなの無視すればいいんだ!」「黒字国からの輸入を制限すればいいんだ式の「スカッとする結論」・対外強硬論を煽る意見に飛びつき易い傾向があります。
これが日露戦争以来、世論という名の単純・乱暴な意見が政局を煽りその都度政治を対外強硬論へと暴走させてきた原因です。
雨が降ってきたときに「傘を持っていくべきか雨合羽が良いか」の議論しているときに、「出かけなれば濡れないよ!と言うのは卓見のようでいて、出かけねばならない時の現実解決解決力のない道家的発想です。
平和論争も同じでどうやって平和を維持するかの難しい問題を端折って、「争わなければいいんだよ!」というのに似ています。
為政者としては内需を減らして貿易赤字を減らしていくのでは、国力の縮小再生産に陥るので、内需に見合った国内生産力維持ないし復活を図るのが合理的です。
「内需を減らせば良い」という縮小再生産的対応では、長期的に国力低下が免れない・・国民が不安にならないか?が素朴な疑問ではないでしょうか?
例えば1000億円分の超過内需=赤字の場合、赤字分の内需を減らせば収支均衡するに違いない・・例えば収入減に合わせて支出を切り詰める家計と同じで・均衡だけを求めるならば、それも一つの意見ですが、個人家計でも立ちすくんで食事の量を減らすだけでは将来がありません。
扶持米では生活に足りなくなった幕府御家人が傘張り等の内職に努めたように、一時帰休などで賃金カットになれば転職したり、副業を探すとか奥さんが働きに出るなど打開策を講じるのが普通ですが、国家の場合なおさら並行して収入をふやすために努力する方が健全です。
国家の場合、内需を単純に1000億円仮に減らすと同額規模の内需関連産業も縮小し内需関連業者や従業員の収入も減少する縮小スパイラルに陥りますが、内需をそのままにして輸入を減らしてその分国内生産に置き換えられれば、国内生産関連拡大の内需拡大誘発効果と相まって健全な展開になります。
貿易赤字を減らすには、内需をそのままにして国内総生産を増やす方が長期的に見て合理的ですが、そのためにはどうするかの処方箋の問題です。
国内技術者養成→国内産業の自力勃興ないし復興を待つか、後進国の国内産業保護政策のような強権発動に頼るかの違いでしかありません。
後進国の場合キャッチアップするまでの保護期間で離陸できる・・「中進国の罠」と言われるように中進国まで這い上がるにはかなりの国に可能性があることが多いので一定の国内産業保護が合理的なのでWTOルールでも認められています。
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/wto_agreements/kyoutei-gaiyou.pdf

(2)基本原則に対する例外
第一に・・・・・・
第二に、各国の経済の発展段階に応じて考慮する措置を設ける必要があることである。
この観点からWTO協定では、前述のとおり関税による国内産業保護を許容するだけでなく、規律に対する様々な途上国例外も設けている。

発展途上を個人に当てはめれば、将来のある若者に対して学業を修める期間や就職後も(すぐ一人前に働かせないで)新人教育が必要なように小学生や中学生〜新入社員の頃から、経験豊富な中堅社員と対等な競争をさせると潰れてしまいますので研修チャンスを与えたり実務経験を積ませていくのが必要です。
これを発展途上国にも与えるのは公平であり合理的です。
高齢者が新技術や新思想・・例えばセクハラパワハラ等の基準が変化して行くのに適応出来ない場合、新技術や新基準習得を応援するのは良いことですが、その再教育期間中堅若手の採用や抜てき(適材適所配置)を先送りすべきではありません。
保護政策は、時間があれば追いつく能力のある国や青少年のために学習チャンスを与えるものであって、能力の落ちてきた高齢者が若手中堅が追いつくのを妨害するために・自己保身に使うと老害そのものであってマイナス効果しかないでしょう。
成熟国〜衰退の始まった国の場合、保護貿易・輸入制限政策は問題の先送りに終わるのが普通と思われます。
高関税その他輸入制限はまだ元気で競争力のある(輸出している)国内産業まで適正コストの部品等の利用制限・・割高部品利用強制になってしまいます。
トランプ氏の発動した鉄鋼・アルミ製品一律25%の高関税は、日本得意の高張力鋼板は米国内で生産できない為に輸入価格が25%高くなっても仕入れるしかなく、結果的に米国民は割高な車その他製品を買うしかなくなると言われています。
代替品を国内でも作っている場合・・国内市場占有率輸入品4〜5割の場合でも、それまで輸入品に5〜6割食われていた=食われていた分国際競争力がない→国内製品は高いのか性能的に劣るのか?ということですから、これが25%の価格下駄履きの結果国内品比率が上がる場合、ユーザーにとって言わば一種の不良品購入を強制されるような結果になります。

対米貿易黒字と実質利害

アメリカは植民地収奪による世界支配が終わりを告げそうになると排日を計画して来たように、近い将来・・アメリカの資本収益が減少して日本へ払う方が大きくなって来たときに資金環流に関する紛争になると言うのが私の大分前からの予想であり、日本はその備えが必要です。
直接投資残高で日本がアメリカに肉薄〜追い越すまでには今後数十年以上かかるとしても、その間にアメリカが自国・本拠地に逆進出されて面白かろう筈がないので、アメリカは何かと難癖を付けて来ることについて相応の覚悟をしておく必要があるでしょう。
4〜5日前の新聞にダイキンがアメリカで大規模工場建設の記事が出ていましたが、世界最大手と言っても空調の本場であるアメリカでシェアーを上げないとどうにもならないと言う意気込みが出ていました。
工場建設→雇用増に対してトランプ氏は選挙公約どおりの展開ですから、感謝するしかない・・文句の付けようがありませんが、自国が日系企業に支配されるのは堪え難いところがある筈です。
当面考えられるのは、知財料金や収益の本国送金の規制・・移転税制規制でしょう。
アメリカ子会社から日本本社への技術料支払いに不正がある・・高過ぎるなどと言う税務調査などが、割に簡単な嫌がらせです。
アメリカの気持ちは、ルールさえ同じならば自分より相手が強ければ、負けても良いのではなく「負けるのはイヤ」と言うだけが行動原理です。
自分が勝てるルールだけが守るべき正義であり、自分が負けるルールは正義ではない・・相手が何か狡いことをしてると言う主張です。
アメリカはルールを守るベシと言いますが、結果として競争相手に負けて欲しい・・結果重視ですから、自分の作って来た貿易ルールはどうであれ、結果としての「アメリカの大幅赤字が許せない」と宣言すれば日本も中国も青くなるしかないのが現実です。
ところで中国の方が日本よりも対米黒字が大きいから、中国が先ず矢面に立つので日本はそれほど心配しなくても良いと思う方が多いと思いますが、内実を見れば違って来ます。
中国の対米輸出の中身には米系企業の子会社が中国で生産・逆輸入している場合(子会社かどうかは別としてアップル)が多いのですが、日本の対米黒字の場合、100%日本企業による輸出ばかりで、日本進出の米系企業が日本で生産して逆輸出している事例など想像すら出来ないでしょう。
それどころか中国の輸出には、中国進出日系企業の輸出が多くを占めている・・日本製部品組み込み率あるいは東南アジア諸国の対米輸出にも実は日系企業の輸出が多くを占めているなど、実質的対米輸出依存度は中国よりも大きい可能性があります。
民族系企業の黒字額比較で言えば、日本の黒字の方が中国よりも多い可能性があるので輸出規制によるダメージ度では日本の方が中国よりも大きい可能性があります。
「中国の経済力は他国を利用して膨らませたに過ぎない張り子の虎である」と言う点が実質的ダメージ度を低下させる強みになります。
米中の基本的な親和性に対する警戒心の重要性をこのコラムではあちこちで書いて来ましたが、対米黒字の解決でも昨日書いたように経済関係の内実では日米よりも米中の方が一枚岩的関係になっている可能性がありますが、推測の域を出ません。
アメリカにとって対中投資は対外投資残高の3%前後しかないと言うことらしいですが、何故か12年頃の古いデータしか出て来ません。
この後の5年間で日本の投資が減って行き,アメリカが増えているのかも知れません。
http://www.japan-world-trends.com/ja/cat-1/post_1098.php012年10月11日
1.本年5月にジェトロが「米国企業のアジア展開事例とアジア企業の米国展開事例」という資料を発表した。これには、次の面白い数字がのっている(米国商務省統計等をもとにしている)。
(1) 米国の対中直接投資残高は2010年末で604億5200万ドル。2000年に比べて5.4倍(この期間、全海外に対しては3.0倍)に増えているも、全海外に対する直接投資残高の僅か1.5%(日本に対しては2.9%)に過ぎない(但し増加分の中での比重はもっと大きい)。欧州での残高は全体の55.9%(首位のオランダだけで13.3%を占める。持ち株会社設置に優遇措置を与えているからである)、中南米が18.5%、アジア全体で9.0%である。
(2) 米国企業の中国での売上高は2009年で2437億7200万ドルで、全海外の4.3%、純利益は287億4200万ドルで全海外の3.2%である。同年最大の売り上げは欧州におけるもので全海外の50.7%、アジア太平洋(中国を含む)は全海外の24.7%、中南米が11.8%を占める。
全海外での純利益で最大の比重を占めるのは欧州で58.1%、中南米が18.6%、アジア太平洋が13.7%である。
ここからうかがえるのは、米国企業はアジアでは薄利多売になっており、投資効率は欧州の方が上、ただし最近では新規投資先として中国が大いに伸びてきた、ということである。
2.日本の場合はどうか?
 ジェトロのホームページに出ている数字から計算すると、2011年末で日本の対外直接投資残高のうち、中国は8.6%を占めているのに対して、米国は28.6%、EUは22.3%、ASEANは11.5%になっている。

中国の場合貿易黒字が大きいと言っても、実は中国へ進出した外国企業の本国逆輸出が多い、中国自身それほど儲かっていない・場所貸し・名義貸し的立場に過ぎない面があります。
巨額黒字と言っても先進国から送付された部品を組み立てているだけではないか?とバカにされている分に比例して実質的意味・深刻な貿易摩擦の当事者にはならないメリットもあります。
対米輸出が出来なくなると中国で生産して対米輸出している日本企業・米系企業の方が、巨大投資してしまったダメージが大きくなります。
高関税をかけられるとなれば、具体的には品目別になるでしょうからそうなれば、米系企業も必死にトランプ政権にアプローチするでしょうが、日系企業よりも品目選別作業では有利です。
アメリカの対中赤字が巨額としても米系企業が中国で生産して逆輸入している輸出黒字の場合、国民にとっても自国企業の逆輸入による赤字には大目に見る・・日系企業の場合遠慮がいらない傾向があります。
米系企業・中国進出・逆輸入企業にとっては、米本国での政権アプローチが有効ですから、黒字パッシングに対する対応では日系企業とでは政治力で雲泥の差が出てきます。
中国が日本よりも対米黒字が大幅に多くても、その内実が米系企業や日系企業が多くを占めているとすれば、貿易摩擦の面でも米中結託になり易い・・日本は安閑としていられない弱点を持っています。
日米戦争は、中国でのアメリカの対中進出願望との対立・・米国に「門戸開放」を要求されていたことに原因があり、裏で蒋介石軍や中共軍応援があったことを日本は忘れることが出来ません。
戦後はニクソンの電撃的訪中などの経験もあり、トランプ政権で一見華々しい米中対立があっても、「日本の頭越しに米中裏取引が成立するのではないか?」と日本中が疑心暗鬼にならざるを得ないのは、過去の歴史を水に流すことは出来ても将来の教訓とする智恵を棄てることは出来ないからです。

資本環流と貿易赤字の持続性

前世紀の成功体験にしがみつく米中の恫喝は、どうせ一過性のヒステリーに過ぎないと言う前提で、そのときだけ廻りがある程度言い分を聞く程度のアメリカに対するあしらいになる時代が来るのでしょう。
言わばヤクザが息巻いている間黙って聞いているだけの関係と似ています。
これの前触れがトランプ政権の結果の見え透いた恫喝的取引外交です。
これを繰り返しているうちに、国際社会におけるアメリカの存在がドンドン軽くなって行くでしょう。
July 25, 2016「消費力←金融3」前後で消費力のテーマで書いて来ましたが、腕力政治・・大鑑巨砲時代が終われば、発言力は生産力によるのではなく、消費力によるのですが、まだその辺の理解が出来ないので時代遅れの国になりつつある所以でしょうか?
韓国が中国に露骨になびいたのは、04年から約10年間にわたり対中貿易がアメリカを抜いて韓国経済にとって世界一の関係になっていた事実・・今後益々拡大すると言う読みがあったからです。
15年のデータですが、以下のとおりです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000005986.pdf-
平成28年2月-外務省アジア大洋州局日韓経済室
中国は韓国にとり貿易総額で第1位の貿易相手国。
03年に対日貿易額を,04年に対米貿易額を上回り,15年は約2,274億ドルで貿易額の約25%を占める。
同年の対中輸出の割合は26.0%,対中輸入の割合は20.7%。
輸出依存度:(輸 出 の 対G D P比)50.6%(14年,世界銀行)と極めて高い比率。為替変動や他国の景気動向の影響を受けやすい経済構造(13年の日本の輸出依存度は16.2%)
上記貿易実態をみれば、朴政権が日米の制止を振り切って中国依存へ舵を切っていた背景が分ります。
ところが、頼みの中国経済が15年夏の上海株式大暴落以来変調気味になってきたことから、日米勢力圏へ回帰し日韓合意に踏み切りサード配備を決めた基礎事情でした。
生産力ではなく購買力が世界政治を決める時代になっています。
消費・購買力の基礎は資金力です。
資金力の本質的な差は持続性があるかの評価次第であって、株式発行による自己資本か社債発行によるかの差には本質的な差がありません。
発行済社債評価が下がっても発行体に関係がないようですが、既存社債の満期がしょっ中来る関係で、借換債発行が不利になるのは死活問題になります。
普通の国では長期間貿易赤字・・借金で消費しているとそのうち信用不安・・通貨が暴落で、ベネズエラ危機になります。
アメリカは貿易収支の赤字・・マイナス分をアメリカ国債購入などの資金環流で補っていますが、普通の国と違い基軸通貨の地位が続く限り、今のところ無限の可能性があります。
日銀引き受けによって政府がいくらでも国債を発行出来るのと同じような関係です。
この結果世界の製品を引き受けて、大幅赤字を提供して来ました。
貿易家赤字を続けると言うことは、その国からドンドンものを買ってやって大きな顔が出来る・・恩を着せられると言うことです。
国際収支上は、収支バランスが理論的結果ですから、赤字分同額の資本収支勘定の黒字=流入があります。
いわゆる資金環流ですが、これがいつまで続くかの問題・・基軸通貨国の地位は軍事力によるのではなく、経済力の裏付けがあってこそですから、資本収支・・海外収益還流が大きい我が国のような場合健全ですが、強面で強制的に資金環流をさせている場合いつまでも続くわけがありません。
アメリカが海外収益の拡大が続いて基軸通貨国の地位が続いた場合にも、・・海外子会社の収益還元であれ、国公社債購入であれ資金環流に頼っていると現場労働によらない収入ですから、この恩恵を受ける層と受けられない層(・・これが大多数です)に分かれて来ます。
最貧国への援助であれ、資本環流に頼る社会では、(5月13日に書きましたが、)これに関与出来る階層(先進国ではグローバル企業や金融資本家や関連従事者・後進国の場合独裁政権幹部の賄賂)と関与出来ない階層の国内格差が拡大する一方で格差問題が解決しません。
(後進国への巨額援助に関与する高官の賄賂収受と中国の巨額賄賂も根っこは同じで外資導入・・外資・・店舗や工場新設許認可に関与する「袖の下の横行」にあります・・中国が外資に頼る時代が終わると国民相手の賄賂要求では多寡が知れているので賄賂も激減するでしょう)
格差問題の根源は、資本流入に頼る経済にあるとすれば、反格差論はイキオイ貿易赤字解消運動に帰結するしかありません。
これがトランプ氏の保護主義・国内生産回復政策→貿易赤字解消策であって一応理論としては一貫していると思われます。
これに加えてアメリカが永久に貿易赤字を続けて行けるか先行き不安解消もあって一石二鳥の主張です。
いつまでも大幅赤字を続けられない・何とかしろ!と言われるとアメリカの赤字で潤っていた日中韓など黒字国はうろたえます。
軍事力が怖いのではなく、赤字=黒字削減を言われるのが怖いのです。
貿易赤字国は損をしているのではなく、実は働き以上の消費をして「得して」来た関係です。
働かないでうまいことをする関係は長く続かない・・貯蓄がなくなるとあるとき遂に支払が出来なくなる・・イキナリ最貧国転落・・10何時間時並んで漸く必要な食糧の一部を手に入れられるだけの今のベネズエラみたいになります。
アメリカの場合も、資金還流が止まるとおしまいです。
資金環流には自国企業の海外収益還流と強国へのおつきあいで(巨大な貿易黒字を多めに見てもらうために?)義務的に環流させられている資金の2種類があります。
日本や中国の政府がアメリカ国債を買わされているのは目に見えた還流強制ですが、トヨタなどが無理にアメリカに工場を作らされる・・その分資本環流させられているのもこの一種です。
無理が利くのは消費力があるからですが・・これがいつまで続くかです。
義務的とは言え、長期的に見れば資金移動は投資効率が基準であって、金利の高い方〜安全な方に流れたいのが本来です。
以前は「有事のドル」と言われ国際政治上の危機・動乱が起きると一時的にドルが上がり、さすがにパックスアメリーカーナと言われるだけのことがあると言われたものですが、この20年間程は、「有事の円」となってアメリカドルよりも円が上がります。
こう言う状態下で、アメリカ国債が日本より金利が安いと何のために割高な(金利の殆どつかない)アメリカドルを「イザというときのために」保有しておく必要があるか?アメリカ国内工場を造っても採算が合わないと続きません。
例えば中国に取っては国内基準金利でさえも4〜5%ですから、国債利回りで言えばこの2〜3倍とすれば、15日に紹介した金利のアメリカ国債を買って保有しているのは完全に逆ざや・・大損です。
このためもあって中国のアメリカ国債離れ・・ユーロなどへ分散投資の流れが続いているのですが・・これを阻止するためにアメリカは一刻も早く金利を上げるしかない・・いわゆる出口戦略・・金利上げに必死なのです。
エコノミストは「アメリカがやっているから、日本も出口戦略策定を急ぐべき」と言いますが、日本は世界最強債権国ですから金利上げを急ぐ必要性がありません。
・・それどころか日本が金利を挙げたらアメリカその他世界の資金がみんな日本に吸い上げられて困ってしまうでしょう。
アンカーの日銀がむやみに金利を上げると市中銀行がその上乗せ金利で貸すしかない・・中銀が金利を上げると金融引き締めになるのと同じで、世界経済のアンカ−たる日本が金利を上げるとみんな一斉に上げるしかなくなり参ってしまいます。
アンカーの金利は最低でないと世界は混乱します。

サービス社会化2(貿易依存度2)

新興国の高度成長・・GDPが上がった分のほぼ100%近くが輸出なので内需に関係しない上に、元々のGDPが低いので進出企業の対GDP比が高い・・結果的に貿易比率がバカ高くなるのが普通です。
最貧国や後進国が、近代製造工場の誘致によって近代工場への労働参加によって現地従業員の所得がアップするとそれまで裸足で歩いていた人も靴を買い、クルマやテレビも、あるいは日本向けエビ加工したり化粧品を作っていた人が自分も欲しくなります。
購買意欲が高まる→人件費上昇によっていわゆる中進国になると、輸出目的の生産工場の採算が悪くなって次の新興国ベトナムなどに移転して行くと中進国工場は自国内需中心に変化しないと生き残れません。
自国相手になると輸出に関わる恩恵で輸出用製品を買える層が育っていても、輸出がゼロになる訳ではないとしても輸出減少分の全量国内消費するには無理があって大幅減産ですから、失業対策上内需拡大→購買力アップに切り替えるしかありません。
内需の仲介役としてのサービス業従事者が必要であるし、一方で国内製造業減産による失業対策にもなります。
ところが、・・サービス業の生産性は先進国から誘致した近代製造業より生産性が低いのが普通なので、サービス業へ転換が進むと成長率が低下する循環に入らざるを得ません。
これが中進国の罠の原理です。
この辺は先進国の場合、新興国への工場移転が始まったときからこの問題が起きている点では先輩ですが、先行者利益享受期間が1世紀単位でであった結果、内需力が大きく育っているのと国内生産力のうち輸出分が少しずつハゲ落ちた程度・・緩やかな縮小なので対応力があります。
例えば日本ではトヨタに限らず各種名の知らぬ業界で見ても、今でも多くの企業は何割かの輸出を残していて海外工場を徐々に増やして輸出比率を下げていくだけのことです。
今朝の日経新聞朝刊15pにはNTNと言う私には何を作っている企業なのか全く知らない企業名(車軸メーカーらしい)で、トランプ氏の要求に応えて米国内工場の増強・現地生産比率を上げると発表したことを書いていますが、記事内容を見ると同社は現在海外売り上げ7割だが国内生産5割と言うことで、結果的に二割分が国内から輸出している構造であると紹介しています。
日本の場合消費材・・テレビ洗濯機などは最終組み立ての単純工程なので後進国へほぼ移管していますが、BtoB・・高度部品製造分野ではなお国内に多く留まって輸出企業になっているのが普通です。
この辺流れ作業用労働者中心のアメリカでドンドン製造業の職場がなくなっているのとの違い・・なお製造業が健在である原因です。
輸出成長から内需への時間軸の早さも問題です・・世代的に言えば、田舎から出て来た第1世代は先ず製造業や建設など3K職場で働いて、都市住民第二世代になってコンビニ等のサービス業についた方が無理がありません。
このように1世代以上経過の緩やか変化ならば業種転換も無理がないですが、新興国の場合、高成長ストップ即な内需切り替えでは、消費者も十分育っていないしサービス業向け人材も育っていません。
先進国でも日独等熟練工中心社会はまだ製造業が強いですが、アメリカ式単純粗放生産社会では、新興国が台頭するとすぐに製造業が凋落する点では、2極分化があると思われますがその点はここでは措くとして、製造業が衰退して行く社会では、その分サービス経済化して行くしかない点は同じです。
それでもアメリカイギリスの場合早くから成長していたので、過去の蓄積を背景に貿易赤字をものともせずに?内需を増やすことが可能・・文化力を背景にした商品競争力がある・あるいは世界進出用の研究開発部門を抱えている分だけ有利です。
韓国の場合も貿易依存度の高さ・・内需力の貧弱さが知られていますが、本来は中国より約20年間早く近代工業化していたのですから、成長に応じてちゃんと給与を払っていれば国民の消費水準・内需率が上がって行くべきでした。
新興国の人件費が上がると輸出主導による経済成長が頭打ち・・貿易依存度低下=内需経済移行・・国民にとってはその前約10数年〜20年間の目一杯働いた高成長の果実を得られる時期に入ったので良いことですが、成長率基準で言うと経済運営の苦しみが生じます。
元々、食糧や洗濯機など欲しい財が1〜2%しか供給されていない場合、生産量を前年比何%増やせるかは重要な指標です。
しかし供給・・例えばピアノが100%行き渡った場合、前年比生産量が1割増えても二割増えても買い手がつかないのは当たり前・・だから輸出に活路を求めて来たのです。
相手国に供給不足がある場合、他国との輸出競争に勝つ→国内生産が増える成長率に意味がありましたが、世界的に供給過剰になって来ると、国内生産が頭打ちになった場合と同じで前年比増の成長率にこだわる意味がなくなります。
市場が飽和状態になった場合、市場規模が同じでも個別企業にとっては、ゼロサムゲームで生き残れる企業がどこになるかでしのぎを削る意味がありますが、マクロ経済での成長率やGDP指標は意味がありません。
我が家ではバルミューダと言うパンがおいしく焼けるトースター新発売のときから愛用していますが、国内のトースター利用数が殆ど変わらない場合、よりよい製品でどこが勝ち残れるかと言うだけで国内のトースター販売数はほぼ変わらない・・同様に各種製品に工夫を凝らしても全体GDPは変わりません。
国民の満足度勝負・・生活水準アップ中心社会では、GDP成長率神話はあまり関係ないことが分るでしょう。
良い物を作ればその製品が海外にも売れますが、今バルミューダをネットで調べると日本の若者グループが開発したものですが、台湾製造による輸入品であることが分ります。
国内メーカーのトースターを撃退シテの快進撃ですから、トースターの総売り上げは同じで結果的に日本のGDPが逆に下がっている関係になっています。
上記のとおり、海外進出循環を経て内需中心経済になると製造業は製造コストの安い国に移行して行く・・・成長率が下がるのは当たり前です。
これを前提に失われた20年と言われて来ましたが、日本の国民にとっては内需が豊かになる個々の国民が成長の成果を享受出来る・すごく良い時代であったと繰り返し書いて来ました。
お隣の韓国も国民を大事にして内需転換時期をもっと前に来させるべきだったのですが、これが先送りさせていたのは外資支配による結果でないかと憶測しています。
アジア通貨危機以降銀行・金融機関は殆ど全部、その他大手企業の資本が外資に大方に握られてしまった関係で、低成長モデルの内需にシフト出来ない・・国民が貧しいまま・労働分配率が低かったままになっていた可能性があります。
この結果、人件費上昇による中進国の罠にはまらなかった幸運?と、タマタマ超円高(超ウオン安)効果で長い間輸出が好調だったので貿易依存度が高いまま・・内需転換が先送りされていたことになります。

サービス社会化1(貿易依存度1)

WTO違反の裁定などどうせ時間がかかるので、その前に日本が屈服して来るだろうと言う実力主義・・WTO裁定(負けるのが分っていても)の結果を中国は気にしない態度を明らかにして来ましたが、僅か1年で大規模訪日団を送るところまで追い込まれたのは中国の方でした。
レアース禁前後には、事前に決まっていた訪中使節その他ありとあらゆる日中交流日程を予定が立たないなどと言う理由で次々とキャンセルして来たことから見れば、自分の方から訪問して来るなどは180度の方向転換です。
ただ、この辺はそれほどメンツにこだわらない中国人民の柔軟性で、韓国のようにトコトン修正出来ない硬直民族との違いです。
いろんな事象に対するネットコメントを見ると、韓国人のコメントでは北朝鮮政府声明のようにいつも決まりきった反日意見しか出て来ませんが、中国人のコメントはネット検閲が厳しいと言われる割に、自国を客観的に見るコメントが多いのをみるとこれが、政府の柔軟性と繋がっているのでしょう。
もしかして柔軟性と言うよりも実利100%の国民性・・恥も外聞もない・・実利優先と言う方が正しいのかも知れませんが・・。
中国地域は異民族支配の方が長い・現在でも多民族社会ですから、物事を相対的に見る習慣が本来あるとも言えます。
専制支配が長かった印象から外れますが、異民族・多民族社会であるから自由に意見を言わせると百家争鳴でまとまらない・・強権支配しか出来なかったとも言えます。
巨人と言われたチトー死亡後ユーゴスラヴィアが解体に向かった例でも分りますが、余程の指導者か強権支配しか社会が持たないのかも知れません。
低レベル社会では落ち着いたが話し合い解決が不可能なので、議院内閣制ではなく大統領制でないと国家運営出来ない原理に繋がっています。
大統領制とは専制支配の民主的修辞です。
元々漢民族自体が黄河中流域の洛陽〜開封までの盆地・・中原地域を囲む四囲の個性の異なった民族・・北狄(高原・山麓の狩猟民族・西戎(荒涼たる砂漠の騎馬民族)・南蛮(江南・湖沼水郷系民族)、東夷(黄河デルタ地帯の民族)が、市場交易を求めて渡河の容易な黄河中流域に集まって混合した民族がその原型です。
時代の進展により、狭い中原から交易圏が広がり、(春秋戦国時代に新興勢力楚王が、周王室の鼎の軽重を聞き、秦末漢楚の攻防も結局は長江流域が交易圏に組み込まれて来た時代を表しています)今では何千km単位の広大なイメージの西戎(アフガニスタン付近まで含む)南蛮(ベトナム〜インドを含む)東夷(朝鮮日本を含む)ですが、元は洛陽あたりを中心に目に見える範囲の周辺山地・原野・デルタ地帯の先を指していた言葉です。
交易権が広がると水運に便利な便利な下流に中心地が移り、洛陽から開封に都が移って行きます。
日本でも壬申の乱の頃の東国とは、今の岐阜県あたりを指していたのですが、中世では箱根以東をさすようになったように、周辺呼称の範囲は行動圏の広がりに連れて広がります。
レアアース禁輸に話題を戻します。
レアアース禁輸後約1年経過で勝負がついて中国経済代表団が訪日せざるを得ない結果になったのは、WTOの裁定(正義)によったのでなく、日本の技術力・抵抗力が上回ったことによります。
中国は嫌がらせで日本企業を閉め出したつもりだったのに、日本の高度技術が必要なので日本からの投資減退で参ってしまったことによります。
(穴埋めにドイツ誘致を計画しましたが補完し切れないことが分ったので、手のひら返しに訪日団を結成するしかなくなったのです。)
現在韓国が中国の締め上げに参っているのは、フィリッピン同様に韓国には代替の利かない高度技術が少ないのでスキなようにやられている原因です。
日本もBtoBではなくBtoCあるいは訪日中国人観光客や現地スーパーのような代替性の高い分野に頼る業界が増えると、中国が何か要求を通したくなるとイキナリ対日観光客を絞ったり、現地日経コンビニなどを標的の不買運動など嫌がらせが始まるので、リスクが大きくなります。
フィリッピンのバナナの通関手続を故意に遅らせて腐らせてしまったりしていましたが、レアアース事件のときにもこの味を占めてたのか?日本からの輸入品の通関手続を故意に遅らせるイヤガラセをしていましたが、部品は腐らないし困ったのは輸出向け工場で日本製部品の早期組み込みを必要としていた中国民族企業の方でした。
現在中国の対韓嫌がらせも観光・韓流その他消費系が困っているだけで、今朝の日経新聞によるとサムスン・SKなどの対中半導体輸出は今年二月は前年比5割増メモリーは8割増とかで好調らしいです。
今後中国の内需目的の進出企業が巨額投資してしまうと、フィリピンのバナナのように何をやられても我慢するしかない・・かなりのリスクが生じます。
ここからサービス経済化にどのように対応するべきかテーマに入って行きます。
3月11日日経新聞朝刊7pには、米雇用23.9万人増の見出しとともに「完全雇用の死角」の題名で1990年から2016年までに民間雇用者総数は3000万員増えたが製造業では500万人減り代わりにサービス業では2500万人増えている」
「長い目で見ると給与の高い製造業の減少傾向が続き給与水準の低いサービス業へシフトが進んでいる」
となっています。
その記事の冒頭に建設現場では、給与を2〜3割上げても人手不足のままと言う現象を紹介しています。
如何にも白人・中間層は元々3K職場・建設現場に来ない・・移民労働者が入って来ないとどうにもならないと言うイメージ操作っぽい記事でもありますが、一応こんなところです。
全体の論調は(移民に職を奪われたのではなく)完全雇用下なのに多くの人が不満を持つようになったのは、サービス業シフトが賃金低下・生活水準低下を進めたから・・と言う説明です。
先進国の発展過程は、一般的に地場で成功した企業が県外等へ輸出し、次いで◯◯地方から全国規模輸出となるに連れて工場も域外に作って行く、最後に海外展開して行くのでこの間に儲けの還元などで自然と内需・サービス業も追いついて行きます。
AI化やロボット化オートメ化進展で製造業の発展に連れて成長していたサ−ビス業が、(工場周辺飲食店ではなく)製造業と切り離して独自に必要な時代が来たのです。
中国、韓国などの中進国の足踏み現象を経済的に見ると、この順次発展の過程を経ていない分、より大きな構造問題が起きるように見えます。
自発的発展ではなく、低賃金を武器にした世界の工場機能を果たすときには、元々ゼロのところに先進国から先端的近代工場が進出して来るので後進国の前近代的生産性から見ると百倍?規模で生産性アップする上に、誘致にあたっては国内産業保護のために当初100%輸出用生産しか認めないことが多い・・国内需要無視の輸出型工場誘致ですので先進国本社で輸出先を用意してくれる・・作った分だけ売れます。
中国開改革開放後に日本向け野菜などの(日本人好みに合うように)生産指導が盛んでしたが、全量日本のスーパーなどが引き取る契約でした。
毒餃子事件の騒動の報道もこの種の流れは分るでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC