計画経済2とバブル崩壊1

9月6日に書き始めていた中国の計画経済と無謬性の執着に話題を戻します。
計画経済政策とは合理的計画をするのではなく、トップ幹部層の計画どおりに現場からの異を唱えさせないで、絶対修正しないで最後まで実行(強行)してしまう経済社会と言う意味でしょう。
どんな計画でも、エリ−トだけで決めるよりは「3人よれば文殊の知恵」と言うようにより多くから智恵を集めた方がより良い物になる可能性が高まります。
日本でも官僚の計画どおりにやればその殆どが需要の過大見通しで、出来上がってから閑古鳥が鳴いているのが相場ですから、過大投資は中国社会独自の問題ではありません。
「官が強過ぎ・・」民主制によるチェックが出来ない点に問題があることが分ります。
リーマンショック以降、採算度外視(市場経済・需要無視)で敢行して来たいろんな大風呂敷投資が出来上がってくると、設備運用コストがかかるので困ってきました。
この辺がわが国の不動産投資(土地を転がしをしていただけ・・金融機関が焦げ付いただけ)との違いとして、5月18日に書きました。
借金だけならば、デフォルトして踏み倒せば終わり・・貸した方が困るだけ・・金融不況ですが、作ってしまった鉄道等は、開業用の従業員を雇用していますので、設備の稼働・・赤字運営継続の問題が残ります。
今日本でも各地方自治体が40年ほど前に作ってしまった箱モノ・・公民館ヤ何とかセンターなどの維持に困り、解体費用捻出のために市債発行する状況に追い込まれています。
中国では各事業分野を無軌道に拡大投資し、出来上がってみると需要がないことの繰替えしで、しかも国有企業等共産党大幹部の関係している事業中心であったことから、失敗を認める訳に行かない・・業態ごとのデフォルトの先送り・・関連業種に転嫁して行き負債拡大して行くに任せた結果が遂に出て来たのが現在の中国株式大暴落です。
9月6日日経新聞朝刊3pでは5日にトルコで開催されたG20会議で、中国人民銀行総総裁の周小川氏が中国は「バブルが弾けた」と3回も公式発言したと書いています。
今更、経済が成長し続けていると言う虚偽発表は無理があって遂に公式に認めるしかなくなった様子です。
先進国に比較すれば不自由な市場とは言え、一応株式や通貨市場などを半端に持っているために大躍進当時のような虚偽発表を貫徹したくとも、市場の反発で無理になっている・・市場に屈服したと言えます。
市場に対して一定期間の売買禁止するなどいろいろ強権発動してきましたがやればやるほど、却って国際社会からの信用をなくすだけです。
名目が独裁であろうと韓国のような民主制であろうと、市場の開放度・自由度に応じて実質が決まると言う・・財閥経済=民主化の実質はその程度に過ぎないと言う意見をこの2週間くらい前から書いて来たことの実証です。
市場原理に曝されるべきクルマの例で見ても、当時の年間需要の2倍の生産力まで増強していると5月ころに報道されていたことを、2015/05/10「中国過大投資の調整14(資金枯渇6とAIIB1)」前後で紹介しています。
その後月を追って売上減に見舞われ6月16%だったかな?7月の売上は26、何%減ですから、(今朝の日経新聞では8月約3%減と出ています)造ってしまった工場や従業員雇用・・これを前提にした販売会社のショールームの維持経費とその要員はどうなっているのやら・・。
商業活動目的の企業でさえ何故こんな過大投資が起きるのか自由主義国家から見れば不思議ですが、中国の場合、自動車業界大手と言っても全て国有企業だからこうなるのでしょう。
市場原理が働き難い上に国威発揚が関係する鉄道やその他インフラ関係では、この何倍もの無駄な投資が進んで来た・・・推して知るべしです。
客商売のクルマでこれならば、公共工事・・インフラは日本の鉄道延長を追い越したとか言うために、需要の3〜4倍くらい無駄に作った可能性があります。
出来上がったものの4分の3以上が無駄だった・・客がいないとなれば、これまでのGDP発表数字が仮に正しかったとしてもその4分の3が錆び付いてしまったことになります。
GDPが国力の物差しになるのはそれだけの継続需要のある社会であることを前提にして意味があるのですが、需要を無視して国威発揚のために一時に一斉に作ってその結果一時的にGDPだけ上がっても、その後が続かないのでは意味がありません。
出来上がったものが遊休施設になるだけではなく、機関車その他を作るための生産設備も作り過ぎの結果、その後の受注がパッタリなくなるなど関連産業全体が遊んでしまうなどマイナスです。
例えば千葉である工事を一斉にやれば1年でやれるが、5年ほど掛けて順番に何故やっているかと言えば一斉にやって間に合うように機械を新規購入し、大量採用して1年で仕事が終わると、その後で仕事がなくなる・例えば、5年のリースで仕入れた建設機械の支払が出来なくなってしまうし、余剰従業員に困るので規模拡張までして受注することが出来ません。
このために10kmの道路工事を1年に2kmづつ・・1年間に5分の1づつやって行くように発注すると聞いたことがあります。

計画経済=命令

計画経済とは(実際には計画など出来ないので)命令経済に過ぎなかったとソ連経済に関して誰かがが(日下公人だったかな?)書いていました。
(私の意見は、どこかで読んだ意見の受け売りをミックスした意見が多い筈ですが、どこで読んだのか憶えていなくて自分の意見のように書いていることが多いのです。)
今回の東電による計画停電実施の結果を見れば分るように、如何に緻密な計画をしても末端の各種産業あるいは病人その他の需要までの都合まで考えきれないので経済活動が大混乱になってしまい、自主節電に頼るしかなくなったのを見れば分ります。
自主的に個々人が自分の必要度に応じて節電する方が無駄がないことが今度の計画停電実施で分り、政府の計画とは、計画と言う名の命令・・強制は出来ても実際に末端までの合理的な計画することは、不可能なことが証明されました。
医療も自分の従来の患者だけなら精密なデータに基づいて巡回計画が立てようと思えばある程度可能ですが、平時でもそういうきめ細かいことをやっている病院はなく、客が自分の必要に応じて来るのを待っていただけですから、平時でももともと全員往診のスケジュールは建てようがない仕組みです。
ましてや、どこにどのような患者がいるかも分らない緊急状態でヤミクモに今日はどこの体育館、次はどこの体育館と言う程度の計画往診では、効率的な医療をするための計画のうちに入りません。
緊急避難でごった返している体育館巡りでは、医療機関の方が患者に合わせて計画的に巡回するのは不可能ですから、従来のかかりつけかどうかに関係なく「今日は内科医今日は耳鼻科医と一定間隔で特定の医師が巡回して患者の都合(人によっては1週間に一度で良い人も3〜4日に一度必要な人も色々いますが・・)を無視して応急的措置をして行くのがやっとになります。
単に医師の一日の行動予定が決まったと言う程度のことを計画往診と言っているのでしょう。
食料雑貨も同じで我が家は生協と別の企業の配達を利用していますが、コチラの注文に合わせて配達するから個々人の必要なものが行き渡るのであって、客の必要性が分らない状態での一律配給では、マトモな食事にならないのは同じです。
この画一的配給でさえ、ボランテイア等に頼っているのですが、関連の地元業者もまとまって予め用意した避難用地に一緒に避難出来るように準備していれば、別荘用地に建てた家から自分で好きなものを買い物に出かけたり、避難用地に一緒に避難した診療所や美容院などに通えば良いのでこうしたことが不要になります。
言わば地元の人たちが地元向け需要に応じて供給していた仕事(本来地元で十分間に合っていた作業・・地元の年齢構成需要に応じた医薬・介護その他事業が発達している筈です)をバラバラにした避難のために地元商店主やそこの従業員が仕事を失い、ボランティアが代わりに配給して歩いているのです。(結果的にボランティアに仕事を奪われている状態です)
仮設住居の入居辞退者には失業しているので、仮設住宅に入って配給がなくなると生活出来ない人も多くいるようですが、上記のように地元需要向け事業体が 100%一緒に移転すれば、その従事者(経営者も被雇用者も)は失業しないで済みます。
被害者と言っても交通事故の被害者と違って放射能の危険性に驚いて逃げただけで日常生活は自分で出来る元気な人が殆どですが、(放射能漏れによって病気や怪我をした人はまだいません)現在の避難方式は生活手段をずたずたにしてしまうから、失業・廃業したり生活出来なくなっている人が多く、このために食料などを配給する人その他よけいな行政経費がかかっています。
これらは、避難先に関する準備不足・・政治の貧困が、よけいな税負担を発生させ、他方で避難中の人を無駄に苦しめているものであって人災以外の何ものでもありません。
何時までに仮設住宅何戸を造るなどを総理の公約のごとくマスコミが流していますが、こんなことはその他の施設とセットで巨額資金をもらっていた各自治体が予め用意しておくべきことで、中央政府は、この過不足をヒアリングして場合によっては自治体間の調整をしその応援をしてやること・・バックアップ程度で良い筈です。

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