なんでも反対運動の行き詰まり

平和憲法を守れ→安保反対論が国民受けしなくなると、メデイア系文化人や大手メデイアは日本の経済成長政策の一々に反対や批判意見が格好良いとする風潮を煽るようになったようです。
なんでも反対運動が激しかったおかげで、日本は期せずして公害処理技術、省エネ技術等の先端技術開発の工夫動機を得たので良い方向に作用してきました。
しかし彼らが本来求めたのは基地、民間空港や高速道路、工場立地→生産力増強阻止自体が目的だったようなので高度成長が止まり歪みが解消されてくると、なんでも反対の弊害の方が目立ってきました。
高度成長が始まると、急激な工業化・都市化に伴う歪みがあったのも確かなので、地域共同体の崩壊や格差を含め程度高度成長の歪みに対する関心があったのでその修正必要性→反対にも意味がありました。
格差是正や公害防止技術、省エネ等の対策が進んできた後の昭和40年代以降の反対運動・・成田空港反対.高速道路反対や八ッ場ダムその他ダム工事反対運動、長和川井堰反対運動になってくると、反対の合理的理由がなくなったようです。
私が当時同僚先輩弁護士からオルグを受けた経験の限りでは、飛行機は軍事基地にするための準備だから反対とか、飛行機や高速道路は庶民が利用しない・庶民の犠牲によるお金持ちのための設備だという程度の説明ばかりでした。
その空港やダムが国家にとって有用かどうかの議論による反対ではなく、地元民が反対しているという反対運動が中心だったので地元の反対運動機運を盛り上げ組織化するのが当時の第一目標だったように見えます。
以前紹介したことがありますが、当時モータリゼーションが一般化し始めていて成田空港行きの高速道路開通に合わせて館山道との分岐点・・千葉市の大宮団地近くにインターチェンジ?ジャンクションを設けるのに対して、交通騒音や事故多発心配を理由に地元自治会を巻き込んだ工事反対運動展開中でその説明として聴いた話です。
その後の展開を見ると高速道路利用の大半がトラック系であり、飛行機利用者も底辺労働者利用が急増しました。
お盆休み頃限定の経験ですが、北海道旅行で家族で飛行機に乗ったところ、旅行客は私たち家族のみでその他はほぼ出稼ぎ労働者の帰省客らしい人たちでした。
労働者にとっては鈍行列車で2日間(往復4日)以上?かけて帰省するより、その分余計働いて日当をもらって飛行機で半日で帰省できる方が疲れないし、コストパフォーマンスが良かったのです。
結果的に団地からかなり離れた箇所にインターチェンジができたようですが、その団地は高速道路へのアクセス不便が発展のネックになって、今や超高齢団地なって衰退の一途です。
昭和50年代に入ると益々反対理由が庶民実感と噛み合わなくなってきて、なんでも反対の社会党というイメージになり、国民支持を期待する社会党の政治家の多くは新党結成に流出してしまい、社会党は解党したのかな?本部会館など資産を社民党が受け継いで現在に至っているようです。
結果的に0、何%への支持率低下をものともせず・・国民支持をそれほど重視しない?「反対政党」で今も頑張ってます。
ダムに限らずどのような政策でも被害を受ける分野がありますが、それは適正補償分野の問題です。
学校や公園拡張で立退く人もいるし道路拡張も皆同じです。
公共工事で被害を受ける人がいるのは当然の前提ですので、被害者がいるというだけでは、原則として政策を決める要素ではありません。
人口密集地買収の場合、補償額が巨額になりすぎて費用対効果でペイしないではないか?というのであればまともな議論です。
東京オリンピック時の高速道路敷設では短期間完成の必要から、買収時間の不要な道路上や河川上空優先だったことが、今になって日本橋上空の景観問題となり、高速道路地下化が必要になっている原因です。
費用対効果はあらゆる政策決定における議論の対象ですが、それを経てA地に立地すると決まった後の議論では被害者には原則として適正な被害補償をすればいいことで、被害者が納得していないということは議論の対象ではありません。
その補償額が低すぎるという場合には、その基準を決める会議で安すぎるなどの意見をいうべきで、鉄道やダム等の設置場所反対意見とはなりません。
補償を含めた巨額費用に見合う将来性があるか等の議論は重要ですが、そのステージの議論が終わったのちに地元反対を蒸し返すのは、国会で議論が尽きたのちの採決妨害のために不信任案連発と似たルール違反戦法というべきです。
民主主義・自由な言論の効用は目的共有者間でこそ成立するものです。
このため政治資金規正法では外国政府等からの寄付受け入を禁止しています。
民族の生産力アップ・生活水準向上を目指す各プロジェクトは議論段階と立地選択期間、用地買収や工事期間などなど完成開業までにほぼ10年単位の期間がかかり、実際役に立つには開業後数十年以上の利用が必要な長期の企画です。
議論の有用性は日本民族を守りたい点で一致していてその方法論が違うだけなら議論すれば相互理解が進みますが、日本の生活水準を落として行き政権の信頼を失墜させたい・生活困窮者が増えれば野党への支持が増えるので成長戦略にはなんでも妨害したい政党、中ソとの競争(軍備であれ生活水準であれ)に負けてほしい政党とではまともな前向き議論が進みません。
議論のテーマには段階・ステージがあって、ある論点の議論が終わって次のテーマに移ってから終わった議論を蒸し返すのはルール違反になります。

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