学問の自由と社会の利益

「原発をやめたら大変なことになる」というムード的宣伝ばかりで、誰一人具体的な積算をしない・しているかもしれないが、(何かが怖くて?)発表しない現状では、原発の方が安いという宣伝を信じる人の方が少ない筈です。
裸の王様の話みたいで、すべての学者あるいはマスコミ・政治家が東電あるいは電気業界・・あるいはそこに納入している関連業界・・膨大な裾野業界から献金され、研究費・広告費をもらったり何らかの恩恵を受けているとすれば、みんな沈黙するしかありません。
どこからも声の掛からない研究者というのでは食べて行けないので(どこからも声のかからない若手研究者も彼の属している研究所・研究室のボスが大手企業からたんまり研究費をもらっていると勝手な発表が出来ません)声のかからない研究者が今では独立して存在しないのです。
今後の出世名声には関心のなくなった一定年齢の研究者以外(・・安定した給与がもらえるようになった人・・中部大学教授の武田氏くらいか?)支配層に不都合な意見発表が出来ないのでは、独裁国家とそれほど変わりません。
しかし、電力業界にとっても、本当のコストを知るのは自分たちの経営ためにも必要な筈ですし、原発の方がコストが高くて損な事業なら原子力業界自体がやめたくなっても良い筈ですから、業界自身が正確なコスト研究結果を知りたい立場なのではないでしょうか?
本当のことが明らかになると真実のコストを隠蔽して「これはコストが安いぞ」と推進して来た立場の人にとっては困ったことでしょうが、真実を知ることは結果的に企業や組織自体の利益になることですから、トキの権力者・実力者に不都合なことでも研究したり発表したりする学問の自由・思想表現の自由が憲法で保障されているのです。

憲法

第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

学問の自由・大学の自治などはこの思想良心の自由から派生して認められるようになったカテゴリーでしょう。
ところで「自由」とは言っても妨害さえしなければ良いという消極的な自由ではなく、昨日書いたように研究費が出ないと研究者が調査出来ない・研究室全体の方向に反した意見では研究機関に居づらくなると食べて行けないのです。
昔は領地・恒産のある貴族階層またはその子弟などが研究していたので、生活や昇進保障しなくとも思想良心の自由などや裁判官の身分保障などだけ決めて、積極的な迫害禁止だけを問題にすれば良かったのです。
今は誰もが自給自足出来ませんから、研究費や生活費の元になる研究室などでクビにならない、あるいは出世出来ない・具体的な研究調査費が出ないなどが現在的問題です。
裁判官の独立に関して、転勤拒否出来る・減給されないという憲法の規定では、戦後物価上昇が普通であった時期にはまるで地位の保障にならなかったし、年齢によって昇級昇格して行くのが普通の我が国では、降格されないという地位の保障だけではどうにもならないという意見を、07/04/03「法曹一元 3(判事の行政庁出向1)(政権の巻き返し1)」その他で書いたことがありますが、学問・研究の自由にも当てはまることです。
現在の研究者は親の遺産で生活しているのではなく、どこかに所属しないと生活費も入りません。
仮に武田薬品や富士通の研究所に就職すれば、その会社というよりはその支配層からこのテーマの研究をしてくれと言われたらやるしかないでしょう。
逆に支配層の嫌がるテーマをあえて研究調査したいと申し出る勇気のある人は滅多にいないでしょう。

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