人口減と少数精鋭2

今後は人材の構成比率を知財や熟練工向けに品質を引き上げるしかないとすれば、(ヨドバシカメラなどに行くと商品知識の豊富さに驚かされますが・・サービス業でも一種の熟練が必須です)生産量・・出産をしぼるしかありません。
料理でも美容院でも量で勝負するよりは味やセンスで勝負するとなれば、労働者・調理師・美容師の数ではなく人材次第です。
今後我が国の将来を決めるのは人口の数ではなく、(数だけ増やして失業者を増やしても仕方がないでしょう・・)品質次第ですから、それをどう実現するかに着目すべきです。
出産段階で選別するのは当面無理だとすれば、大量生産よりは少量化するほど品質が上昇するのは生物の原理ですから、(だから果樹業者が摘果しているのです)もっと少子化に励めば、汎用品向け製造人材や現場労働向け、汎用的な事務・ホワイトカラー向け人材よりはもっと精巧な物作りや研究・知財に適した人材の構成率が上がる筈です。
現在の少子化議論(危機感の強調・煽り)・・「大変だ大変だ」と騒いでいるのは、適正人口に関するこれと言った議論をしないで(封じたまま)当然のことのように最大に延びきった2005年時点の約1億2776万人を適正としてこれを維持する前提で主張していることになります。
政府・マスコミが何を言おうとも動物的本能の結果、1950年頃から女性が本能に従って少子化に動き始め今も少子化が進んでいるのですが、中国やインドみたいに人口さえ多ければ良いと言う思想(・・しょっ中戦乱や災害が絶えなかった歴史によるだけでしょう。)から政府や学者も卒業する必要があるのではないでしょうか?
実は中国自身は一人っ子政策を採用したときから、人口を多くすることで国際競争しても意味がないと悟って人口増政策を綺麗さっぱり捨てているのですから、日本の方が何十年も意識が遅れているのです。
011-1-07「適正人口2」で紹介したとおり、人口では減少に転じ始めていますが、労働市場ではまだまだ定年延長や高齢者雇用の奨励・あるいは女性労働力の活用により、就労人口は伸び続けていることを労働需要減少と就労者増Posted on January 12, 2011のブログで紹介しました。
この方面では、まだ労働市場の縮小傾向に対して就労者人口減の方が追いついていないのです。
比喩的に言えば、定年延長により飲食店の客の滞在時間が延びているのに加えて店内のテーブルを10席から9〜8席に減らしているのが最近の国内生産縮小・経済状態による中間管理職減等になっているのですから、長寿化による滞在時間の延長に対応するだけではなく、国際情勢の変化も盛り込んだ人口政策が必要です。
長寿化による寿命の延長は限界が来始めて出生率の低下によって漸く人口自体は均衡し始めたのですが、労働力としての滞在期間の延長と需要の縮小はまだまだ続きそうな雰囲気です。
政府の方は年間支給時期を遅らせるためには、高齢者雇用をもっと促進したい構えですから、就労希望人口はまだまだ増え続けるでしょう。
なにしろ団塊世代が1年よけい働くとその分(200万前後もいます)若者の雇用の場が減るのですから大変です。
これが1月4日の飲食店の例で滞在時間が50分で安定するのか55分〜60分まで行くのかの見極めによって、昔誰かが考えた(上記の例で言えば30分滞在を前提にした)均衡すべき合計特殊出生率では、現状維持の筈が却って人口増になりますので、人口維持に必要な特殊出生率を再検討する必要があります。
前記の例で言えば、滞在時間増に比例して客席(職場)を増やして行って何とかなっていたのが高度成長期から昭和末頃までだったのですが、バブル崩壊後国内生産が縮小に転じても(客席数が減り始めても)同じ考えで客の入りを続けていたので、入口での滞留者(失業者)が増えるので、シェアー策として(相席ならぬ)非正規雇用が増えて行かざるを得なくなって来たのが現状です。
若者が働きやすくして希望を持たせるには、急激な高齢者雇用の延長と構造変化による中間管理職減少・国内生産縮小にあわせて、新規参入を減らす・・出生率を大幅に下げる工夫がまだまだ必要です。

人口減と少数精鋭1

企業はパソコンの普及開始後から再編を急ぎ事務系労働者や中間管理職が急激になくなり、シーマンショックで大胆なリストラ・スリム化を計っているのですから、国全体でも新たな産業構造に対応した人材供給政策・・不要になった汎用品製造向け労働者や単純事務作業や中間管理職向け人材過剰を解消する必要があるのは同じです。
企業の場合、割り増し退職金を払って企業外に出してしまえば解決ですが、国の場合移民支度金を払って戦前のように満州に押し出すことは出来ません。
出来ることは長期的な、人口調整政策しかありません。
今後の世界(科学技術の進歩)を見渡せば、同じ量の生産に必要な現場労働力と中間管理職が激減して行く方向であることは中国・インド等の台頭を抜きにしても同じことです。
産業革命以降生産性の向上に比例して同じ量の生産やサービスに必要な人員が減る一方であったのですが、(そこに着目してラッダイト運動が起きたことは歴史で習うところです)市場を国内だけではなく海外に広げることによって、先進国では労働者削減どころか不足気味に推移したのが植民地争奪戦から中国の解放までの時代でした。
世界の工場としての役割が韓国台湾等のニースから新興国の中国インド等に入れ替わって行くとすれば、国内生産は減ることがあっても増えることを期待するのは無理があります。
仮に現状維持でも生産性向上に比例して(生活水準の向上に比例して消費総量も増えますが・・)労働力過剰になるのは当然です。
1月16〜18日にかけて車や製鉄、国内総生産が大幅に伸びていることを紹介しましたが、それにもかかわらず就労人口が700万人も減っているのです。
これに加えて労賃の易い新興国が同じ生産設備を使って参入する時代が来たので、先進国の労賃はこれに引きずられて下がるか、(国際平準化傾向についてはこれまで何回も書きました)競争に負けて輸出国から輸入国になり国内需要分さえ生産出来ない時代が来る可能性があります。
中国やインドへの進出加速とは、言い換えれば国内工場が競争に負けて増設出来なくなり、閉鎖して行く過程の別表現とも言えます。
さしあたり国内工場が現状維持出来ているのは、新興国参入分だけ、その国での消費が増え続けているので新興国生産分がそっくり従来先進国生産分に置き換わらないからです。
その内新興国からの輸出が増加してくるでしょうから、先進国では汎用品大量生産型の工場縮小が続き、この分野でしか働けない労働者の失業がもっと深刻化する筈です。
この分野の労働者はずっと前から技術革新によって過剰になっているのですから、この分野向け外国人労働者の移入論は時代錯誤論だと言うのが私の年来の主張に繋がります。
先進国は当面付加価値の高い製品・・知財等で勝負するしかないので、汎用品向けの非熟練工や中間管理職までの末端ホワイトカラー向け人材供給を縮小して行くしかありません。

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