1党独裁2と汚職1(中国)

私の司法試験受験時の科目でもあった政治学原論では、(フルシチョフによるスターリン批判直後頃・昭和30年代前中頃に執筆された基本書だったのですが、粛清のおぞましさはスターリン個人の問題であり1党独裁の合理化・賛美が今も続いている)独裁は民意反映システムに乗っており民主主義制度であると習いました。
結果的にナチスドイツも民主的政党国家であり、中ソの共産党独裁は民主主義国家であり対日戦で米ソ手を組んでも民主主義国家群の連合だったというのでしょうが、形式的に合理化されている学問でした。
とはいえ英仏等革命後の政権運営は、民主的制度を整えただけ実質的に権力抑制の機能を果たせない状態・・結果的に独裁に道を譲るしかなかったのですから、素人政治家・権力者の個人的行き当たりばったりの恣意的政治決断をどうするかに行き着きます。
独裁権力者は自己保身のために正当化・批判を許さないためにほとんどの場合、政敵粛清へ流れて行くしかなくなるようです。
中国歴代王朝末期の大暴動の場合、高邁な革命理念がないまま食えなくなった民衆の本能のまま大暴動に発展して王朝崩壊を繰り返してきたのですが、暴動の混乱を制した新王朝はその都度旧来の儒教価値観継承し・・旧制度の復活を目指していくので、西欧の革命後に必然的に起こる混乱・粛清の恐怖政治に陥らずにその都度数百年安定した政権になっていたと思われます。
中国歴代の大暴動の始まりは食えなくなったことに不満があるだけであって、システム自体に不満を持っていないので一定期間の大動乱でくたびれきったところで誰かが統一してくれれば治まるのが普通でした。
・・しかも中国王朝末期の動乱の場合短くても数十年単位・5胡16国や5代10国のように長ければ数百年単位で動乱が続くのが普通ですから、(清朝末期の動乱もアヘン戦争から見れば現政権成立まで約100年です)人民人自身がこれ以上混乱が続くといよいよ食えなくなる限界が来るのでいい加減に終わりにしたくなって(くたびれて?)治る暴動でした。
くたびれた頃に混乱をまとめる武将が出て皇帝になるパターンの繰り返しですから、人民は治安回復さえすればいいので、新君主はできもしない新しい理念や政治を宣伝する必要がありません。
功労のある武将は対等し勢力間の連合ではなく配下武将ですから、功労に応じた地位の保証さえしてくれればいいのであってそれ以上に一旦決まった皇帝の地位を窺う気持ちはありません。
動乱後旧体制を復活する中国人民の知恵については「漢承秦制の思想」として2003/30/10「パックスアメリカーナから中国専制支配へ2」のシリーズで紹介しました。
中国で皇帝になった場合には皇帝は絶対権力であって説明責任がないし、皇帝の地位を狙うこと自体が反逆罪で謀反の疑いありですから、王朝末期の大動乱以外には次を脅かすナンバー2が出る心配がなく有能な人材抜擢が容易です。
昨日紹介したソ連崩壊による平均寿命低下の説明にあるようにその大きな原因のひとつに医療その他全ての分野で賄賂が必要であったことも上がっています。
賄賂といえば中国が本場です。
中国のワイロ政治は、古代から官吏の給与が低すぎて自前で袖の下の収入を稼がないとやっていけない・・低賃金のウエーターのチップみたいな習慣になったという解説が普通です。
しかし、ソ連の例でわかるように、独裁と賄賂はつきもの・・独裁と相まってさらに加速されたと見るべきです。
昨日紹介したロシアの平均寿命低下の解説に医療その他公的施設も賄賂資金がないと利用出来ないと書かれているように・独裁・・何をするにも許可がいる政治体制とこれに伴う供給不足との親和性が高いと見るべきでしょう。
サービスが行き渡っていれば供給側が低姿勢で賄賂を要求出来ませんが、何をするにも許可の必要な社会や恐怖政治によってサービス不足社会になると必然的に割り込み的行動が起きてきます。
共産党政権下での不自由な生活と古代からの習慣が相まって、中国では極端な賄賂社会になってしまったのではないでしょうか?
習近平氏は、今回の全人代とかの会議で世界強国を目指すという宣言をしたようですが、世界の覇者・支配をするには、それにふさわし価値観の確立が必要です。
目の前で振るえる腕力は限られているので、安定した支配者を続けるには「こうすればこうなる」というルールの刷り込みが必須です。
この能力がないために共産主義諸国での粛清による恐怖政治だったのでしょうが、ついに巨木ともいうべきソ連が崩壊し今や中国と北朝鮮が残っているだけです。
日本では身の回りからきっちり整理整頓し隅々まで掃除し(公衆道徳を守り)、同胞相いたわり個々人は名誉を大切にするなどの価値観が徹底しています。
日本人の温和な生き方がアニメの普及もあって今や理想的な生き方として世界で認知され始めました・これこそがソフトな世界支配の一歩です。
中国の場合、道理も何もテンから無視して腕力で公海に軍事基地を作ったり、政治の世界では民の為の政治ではなく、ただ相手を陥れるための権謀術数が優先し、一般人の行動原理では汚職や袖の下の要求と泥棒・サイバーテロなど・共通項は「ずるい」イメージしか湧きません。
ずるくたち回ることしか世界に誇れるものがない国が、ずるさで世界強国になれてもその支配が続くのでしょうか?
いまや中国では何をするにも賄賂提供が当然の前提となっていますから、今後成長が鈍化し始めると賄賂を出す能力のない階層にとってはロシア並みの地獄が来るでしょう。
独裁→賄賂次第での許認可・人治社会ですから、法的には賄賂ではなくとも庶民の就職活動どころか私企業の活動の隅々にまで賄賂/袖の下次第の社会になっています。
賄賂〜袖の下の実態は隠密裏に行うものですから客観性のある報道が難しいですが、中国の刑事立件数を見るだけでもその一端がわかります。
以下は日経新聞の記事ですからある程度客観性があるでしょう。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM13H15_T10C16A3FF8000/

中国、汚職公務員の摘発続く 15年は5万4249人
2016/3/13 19:0
【北京=永井央紀】中国最高人民検察院の曹建明検察長は13日、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、2015年に汚職で摘発された公務員が前年比1.5%減の5万4249人になったと公表した。贈収賄の金額が100万元(約1750万円)以上の大規模汚職は同22.5%増の4490件。全体の件数は減ったものの、大型の汚職を巡って厳格な摘発が続いていることを裏付けた。」

日経新聞によれば、以下のとおり16年の刑事処罰に至らない党・政府(いわば公務員)の処分件数は41・5万人というのですから(昨年比七人増などと書いている)日本社会から見れば天文学的数字です。https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H7L_W7A100C1FF2000/
中国、16年の汚職処分2割増 反腐敗へ新機関も 2017/1/6 21:34

北京=永井央紀】中国共産党の汚職摘発を担う中央規律検査委員会の全体会議が6日、北京で始まった。2016年の党・政府の規律違反処分は41.5万人と前年比2割増えた。習近平総書記(国家主席)は新たな最高指導部を選ぶ今秋の党大会をにらんで反腐敗運動の加速を指示した。新たな取り締まり機関の設置も検討中だ。

ちなみに日本の汚職摘発数は以下の通りです。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000328922.pdf

2.汚職事件について
(平成25年4月1日~平成26年3月31日)
この調査は、地方公共団体及び地方三公社、職員共済組合、公益的法人(以下「公社等」という。)において、平成25年度(平成25年4月1日から平成26年3月31日まで)に発覚した汚職事件の状況を把握するために実施したものである。
「平成25年度中に発覚した汚職事件の件数は112件(対前年度比9件増) 、これらの事件が発生した団体は99団体(対前年度比10団体増) 、当事者として汚職事件に関係した職員は112人(対前年度比7人増)である。」
汚職事件を種類別にみると、横領事件が85件(対前年度比2件増) 、収賄事件が15件(対前年度比4件増)であり、両者で全体の89.3%を占めている。
また、関係職員(当事者)数を種類別にみると、横領事件に85人(対前年度比2人増) 、収賄事件に15人(対前年度比3人増)が関係しており、これらの事件に関係した者が全体の89.3%を占めている。」

 

1党独裁とデータのデタラメさ1

ロシアの人口急減データを昨日紹介しましたが、中国の場合どうだったかと平均寿命で世界ネタ帳を見ると、1980年以降しか出ていないので大躍進時代の平均寿命変化は分かりません。
現在は10年に1度の国勢調査をしているようですが、人口自体が未だにはっきりわかっていない・数億単位(11〜12億から15億?)の誤差のある推定しかないと言われている状況です。
ソ連の経済統計の水増しも大変なものでしたが、人口や死亡年齢までごまかしていないだろうという気持ちで引用したものです。
18日に大躍進政策のウィキペデイアで紹介したように、地方政府や人民が中央の無理な政策に迎合して数字だけ合わせようとするのでその歪み(地方政府が大増産を達成したと虚偽報告していたように2人目の出生を届けないなど)が現れています。
本日現在の中華人民共和国に関するウィキペデイアの記事からです。
一人っ子政策の歪みは以下の通りです。
「戸籍上は子供を一人しか持たないようにするため、出産しても届出を行わないことによって黒孩子(ヘイハイズ)と呼ばれる戸籍を持たない子供が激増したり、貧乏な農家の子供たちが人身売買のバイヤー経由で裕福な家庭に売られるなど、新たな問題が発生した。また、統計上では総人口は約13億人であるが、黒孩子や盲民と言われる浮浪民の存在のため、潜在的な人口は15億人を超えているとも言われる[79]。また、清水美和東京新聞論説委員によると、10年ごとに行われている国勢調査では、2000年度調査は統計は13億人だったが、実際は15億人だったという。 」
人間というより生き物の基礎的権利ともいうべき出産の数にまで国家が介入する「何でも強制管理主義」の弊害です。
無理な強制があれば、無理に比例して公式数字と実態がかけ離れてきます。
いろんな統計数字が合わないというと趣味の問題のように見えますが、これにともなう実害は甚大です。
公式届出できない幽霊人口は、文字通りの幽霊であって人間扱いされていません・学校に行く資格もなければ(文盲のままです)保険もないし、就職するにも名前すらない・・正規な就職不能で学歴もなく一生涯日陰者です。
殺されても、交通事故にあってもそもそもその人間がいたことになっていないのですから、・それなりに救済する運動もあるでしょうが、原則と例外の関係を書いています・・人間扱いされていないどころの話ではありません。
内政の結果を総合的に表すバロメーターである(後漢末の混乱から曹操〜曹丕〜司馬懿による西晋王朝までに人口が10分の1に減ってしまったという推定例を数日前に書きました)ロシアの平均寿命低下の原因を19日に見てきましたが、社会混乱・・強権政治が綻びるとすぐに「1990年代前半だけで男性の殺人被害者は2倍に増えた。」結果男女の寿命差が開いたというのですから凄まじい社会です。
強圧的に抑えつける者がなくなると強盗等が横行して殺人被害が2倍になる社会レベルでは、何らかの強権政治が必須です。
いろんな場面で書いてきましたが、幼稚園児や小学低学年生〜中高校生を集めて「自主的に話し合って決めなさい」と言っても、年齢相応に決められる能力レベルがあって年齢能力を超えたテーマの場合には無理です。
民度というのは平均的レべルのことですから、場合によっては隔絶した偉大な人材が出て来ることがあります。
近現代史で見れば複雑なユーゴスラビアをチトー大統領のような人物がカリスマ支配ができる場合です。
以下はユーゴスラビアに関するウィキペデイアの記事からです。

「ユーゴスラビアは多民族国家であり、その統治の難しさは後に「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」と表現された。」

しかも混在が進んでいたために、一たび民族間紛争・殺し合いが始まるとそれぞれの民族集住地域にいる少数民族は悲惨なことになり、世界中が放って置けなくなったのがボスニア・ヘルツェゴビナその他次々と起きた紛争でした。
この大きな原因は、偉大な指導者いる場合、多種多様な矛盾関係を包容包摂してまとまっていることがおおいのですが、指導者がいなくなるとそれぞれ我慢していた利害集団が我も我もt「エゴ・我」を主張し始めると収拾がつかなくなります。
チトー死亡(1980)後ソ連が崩壊する共産主義の強制力・ソ連に対する恐怖がなくなったのを機会に帳尻合わせが一気に始まった印象です。
この結果、異民族混在のユーゴスラビアは四分五裂して凄惨な市街戦を繰り返して見るに見かねたEUの介入で漸く小民族に分かれて落ち着いたばかりです。
古代からの王国建国はこの種の突出した偉大な人材が出た時に成立したのではないでしょうか?
民度レベルとの格差に反比例して支配者には大きな権力を持てる代わりに権力者の自己抑制と民意を積極的に汲み取る能力教育→帝王学を身につけさせて、無茶をさせない慣習的ルールが成立していたのは能力格差を前提していたのでしょう。
西欧では(議会との)能力格差が縮まったことを反映してイギリスのマグナカルタ成立以来徐々に王権縮小過程にあったのに、大航海偉大〜重商主義時代の到来に気を良くした西欧各国で最後のあがきのように王権神授説を背景に絶対王政・・国王の権力再拡大を志向したので、(太平洋プレートの滑り込み圧力のエネルギーがたまって大規模地震が起きたような)反動が起きたのが英仏の革命だったと見ることが可能です。
幼児には自己決定能力がないのに比例して両親の指導強制力プラス深い慈愛が必要なのと同じで、上下の関係は能力格差に裏打ちされれているものです。
能力格差が低いのに権力だけ強いと革命が起きるし、能力差があるのにこれを無視して人権とか高邁な理念だけで平等論を主張するのは、裏付けになる能力差を無視した空論です。
実態無視の意見に煽られた単細胞グループが、親や上司、先生などなど目上のひとたちに日頃(自分の能力不足を補って)大事にされている現実を見ないで「造反有理」という言葉に酔いしれて文化革命騒動の真似事をしていたのが、その頃の日本学生運動でした。
中国の場合年の行かない少年を紅衛兵に仕上げ、これが全土に猛威をふるったのですから、正気の沙汰ではありませんが、実は中国人民の不満が爆発寸前にまで鬱積していたので、これを煽ってみたら成功したと見るべきでしょう。
文化大革命は時系列で見れば、大躍進政策の失敗による困窮不満でしたから、本来は元凶である毛沢東に向かうべきエネルギーを現政権への不満へと方向づけた毛沢東の手腕は恐るべきものでした。
少年兵/紅衛兵が暴れまわって大事な人間関係をぶち壊して見ても、ぶち壊した少年兵の方には上から下までそれぞれの分野で(ちょっとした宣伝に簡単に乗せられてしまう程度の低レベル)自立能力すらない・実際の運営能力がないために結局は大混乱しかなく最終的には独裁政治になるしかありません、
日本では、毛沢東語録を聞きかじり、造反有理と称して少しの疑問もなく、大学教授を根拠なく吊るし上げて学内の反対意見を蹴散らして大学自治会をスターリンのように独占支配して(いわゆる内ゲバ・粛清の行き着くところが浅間山荘事件で白日の下に曝されましたが、)百%実践してきたのがいわゆる3派10流と言われた全学連でした。
一応自治会選挙で選ばれたというのでしょうが、誰も寄り付けないようにしているのですから民主「的」かもしれませんが「民主的」運営でないことは結果から見ても誰の目にも明らかです。
革命後の独裁政治の場合、長年の権力行使に付随して発展してきた王権発動にあたっての抑制的システムまでぶち壊してしまって存在しなくなっているのが難点です。
クロムウエルやジャコバンの形式的な議会の議決、ソ連のスターリン独裁や現在進行中の中国の全人代の運営を見ても全て全会一致の採択ですから、権力抑制に対する実際的意味のある装置でなかったことは明らかです。

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