総選挙と民度6(合流の奇策→愚策5)

第二部(国政に関する)記者会見が始まると小池知事からこの同じ記者を自ら指名した上で、小池知事からすすんでこのテーマでの意見を開陳したい意欲が表明されて「さらさらない」というおまけまで自分から言い出したやり取りも出ていた記憶(別のネット記事だったかアエラだったか不明?)ですが、なぜか本日現在の引用記事では出ていません。
小池知事の記者会見のやり方は自分が指名した記者しか質問させない独裁者スタイルらしいですから、(このためにこの記者は遠慮なく突っ込んでくるので半年も干されていたと言うのです)嫌な質問だったならば同じ記者が第二部で手をあげても指名しなければよかったのですが、自分の方から先ほどの質問ですが・・というような言い方で話題を向けていったらしいのですから、異例でした。
小池氏が民進党の候補者と資金を必要としていたものの、一方で野合批判も恐れて民進党ともすり合わせの上で両党揃って進んでアッピールする必要に迫られていた流れは以下の通りです。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170930/ddm/003/010/105000c

希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は民進党からの合流について基本政策が一致しない場合は「排除する」と明言した。新党に民進党色がつき、清新さが薄れるのを嫌ったためだが、選別しすぎれば候補者が不足するジレンマもある。民進党内には安全保障政策などを理由に選別を進める「排除の論理」への反発が広がっている。
「私どもの政策に合致するのかどうか、さまざまな観点から絞り込みをしていきたい。全員を受け入れるということはさらさらない」
29日午前、東京・新宿のホテルで民進党の前原誠司代表との会談を終えた小池氏は民進党の候補者の受け入れについて、記者団にこう述べた。小池氏側は前原氏から前日の28日、希望の党からの立候補を望む前職、元職、新人のリストを受け取っていたが、小池氏は安全保障法制や憲法改正などへの賛同など、一定の条件を満たした候補者のみ合流を認める「排除の論理」を強調した。
・・希望の党には排除の論理だけを貫けない事情もある。基本的に候補者数が不足しているためだ。小池氏は「突然の選挙で候補予定の方が、特に新人がなかなか(集まらず)現実の壁になっている」と話す
民進党の候補予定者全員を受け入れれば衆院定数の過半数となる233人以上の擁立も容易になる。豊富な資金と候補予定者を抱える民進党との合流は、小池氏にとっては助け舟だった側面もある。
それでも「排除の論理」を強調するのは、与党からの「野合」批判を懸念しているためだ。候補者不足を補うためには、できるだけ多くの民進党候補者を取り入れたいのが本音だが、かといって「民進党色」が強まればイメージダウンになるジレンマを抱える。
・・・ 小池氏は29日、菅、野田両氏の排除について「一つの考え方だ」と否定しなかった。旧民主党政権を担った民進党の「象徴」の参加を拒絶することで、「小池氏主導で厳しく選別した」とアピールする狙いがある。

選挙結果で見れば、小池氏立候補当初から行動を共にしてきた現職衆議院議員(元自民党員)であった若狭氏を自分が衆議院議員当時の地盤であった選挙区で立候補させたのにその本拠地でさえ彼が落選し、いわゆる小池チルドレンが比例以外には一人も当選できない惨憺たる結果を見れば、小池フィーバーの支持基盤がもともと何系だったかがわかります。
架空の想定ですが、自民党有力者が何名かのグループを伴って脱党して民進党党首に担がれた・・あるいは民進党と新党結成したような結果になれば、左右の票の足し算にならず元々の支持者すら離れるのが普通です。
小池氏が都知事選に出たことによって、小池氏の地盤を受け継いだ若狭氏すら落選ですから、もしかして小池氏本人が立候補していても自民党を裏切って民進党のための立候補と分かれば、落ちていた可能性があります。
西欧では領主の宗派が変わると領民も皆同じ宗派に変わるしくみだった結果、宗教戦争が苛烈になったのですが、日本の場合領主や代議士は地元民の意向によって動くのであって、代議士の行く方に地元民が動くのではありません。

http://www.tokyo-np.co.jp/senkyo/shuin2017/kaihyo/touha.htmlによれば以下の通り小選挙区での新人当選が全国で一人だけです。

小選挙区          合計    前    元    新
希 望           18      14    3    1

選挙結果を見れば、小池フィーバーによる浮動票のほとんどが投票時には逃げてしまっていたことがわかります。
解散直後は、いかにして逃げ始めた浮動層を引きとめるかについて多分裏で前原氏(バックの民進党重鎮を含め)や小池氏との緊急すり合わせの結果、小池氏らは「反安保法制・憲法改正反対の人は公認しない」といわゆる「排除の論理」を表明するしかなくなった・・この時点で追い詰められてしまったものと見えます。
今になると小池氏の「排除の論理がきつ過ぎた」とマスメデイアは一斉に批判していますが、民進党系の合流担当者(前原氏や細野氏や民進党の窓口玄葉氏など)と小池側でこの程度まではっきり言わないと逃げ始めた保守票・浮動票の動きがとまらないと見た合意の上でしょう。
上記発言は前原氏らとの会談直後に待ち構えていた記者団への発表が始まりですから、慎重にすり合わせの結果発表と見るべきです。
その証拠にこの「排除論理」表明直後にこの解釈をするためにか「少なくとも3権の長経験者には遠慮していただく必要がある」という細野氏だったかが民進党の希望の党への合流担当幹部だったか忘れましたが、解説意見が出ています。
大物が大挙して入ると新党運営が牛耳られてしまうという浮動票の危惧に対する回答(大物さえ入らなければいいというう甘い考え?・せっかく先発参入で地位を得ているのに後から来た大物に遠慮するのは困る?)というべきです。
この合流基準原則表明によって凝り固まった10数人程度の護憲勢力と元総理や党代表を入れて浮動票をそっくり失うより(それだと民進党支持者からの票しかないので)は彼らを切り捨てても、小池人気を利用してそれ以上の保守系の浮動票を取り込んだ方がトータルプラスと見たのでしょう。
前原氏のグループとすれば民主党以来対立してきた左翼系をこの機会に切り捨てて、右寄りスタンスをはっきりした方が得策とみたとのは、もともと前原氏は左翼ガチガチを切り捨てないとまともな党運営ができないと考えていた節があります。
保守系の票を小池新党に何割か取り込んで切り捨てた中核護憲派以上の当選を見込めればお釣りがくるし、自民党当選者がその分減り・自民党政権が続くとしても安倍氏退陣・政変に繋がるという読みだったと思われます。
小池氏とすれば、当面の目的・最大野党になれれば、保守票の分裂で自民党の得票を減らし与党過半数割れあるいは過半数ギリギリになれば、安倍政権退陣→保守連立政権に入ってあわよくば細川氏のように「総理になる夢がないわけではない」というメデイアの景気の良い予想が飛び交っていました。
そのためには保守系でないと石破氏らとの連携作戦が不可能ですから小池氏は保守系の看板を下ろすわけにはいかなかったでしょうから左派だけでも「切り捨てる」と言わせてくれという立場で妥協したのでしょう。

総選挙と民度5(合流の奇策→愚策4)

「排除発言を引き出したと言われる殊勲?記者により、そのやりとりがネットに出ていますが、これによると質問者に挑発されて迂闊に発言したというよりは、自らこの問題を質問していた記者を再指名して発言を始めていますので、一刻も早く「民主党内左派の合流を認めないから心配するな!」というアッピールをメデイアで緊急拡散して欲しくて急いだ形跡がみえます。
それでも足りないと思ったらしく急いで「サラサラない」とまで追加的に大見得を切る必要に迫られた印象です。
野合批判・・小池支持層の基礎票である浮動票が逃げ始めたことにたいする緊急協議の結果、希望の党の政治スタンスは民進党内の右派と中道との合流による穏健な保守新党であって、非現実的主張を繰り返す左派系切り捨てたことを明確にして活路を求めたということでしょう。
もともと、前原氏は代表になっても原理主義的左派系との同居では民進党の改革(政策提言していく政党への脱皮)が不可能という意識が強かったと思いますので、代表選に出る段階で左派を残して小池氏との合流を予定していたとしてもおかしくないと思っています。
両院議員総会ではそこまで言えず「全員合流」というしかなかった・・議員総会で合流了承の直後に左派を切り捨てて合流する流れが出たので反発が広がったように見えます。
「前原氏(民進党員を)が騙したのか、(小池氏に)騙されたのか?」という質問に小池氏が「ニヤリと笑った」その瞬間の動画が「緑のたぬき」の表現で出回っているようですが、ここが真相をついた質問であったのでしょう。
小池氏が結党前から正々堂々と民主党内の意見の合う人(中道系)と新党結成したいとアナウンスし、前原氏も党代表にならずに共鳴して離党しただけならば世論も冷静に受け入れたし、排除論理のひとり歩きもなかったでしょう。
一般的に言えば、党内対立で我慢で抜き差しならないときには、自分のグループが離党するか相手のグループが離党するしかないのですが、どちらも離党したくない膠着状態になっていたのは、離党すると党員でないから目の目に迫っている選挙資金が党から出ない・・合流決定前に離党した人たちは党員ではないので手弁当での選挙になります。
今回小池新党のイメージがガラガラポンになった無理虚構の始まりは、民進党内に当時140〜50億円あったと言われる資金をいかにして希望の党に移すかのカラクリにあったように思われます。
保守中道系グループが大挙出ていった場合に彼らは選挙資金に困る関係・細野氏がグループ全員を引き連れて出られなかったのはグループ全員の選挙資金(党から出る資金での不足分の補充くらいできても)全額の面倒を見られなかったからでしょう。
希望の党が民進党の合流を求めた大きな要因として選挙資金がなくて困っていたことが知られていますが、この裏返しの関係で単純に離党して無一文ばかり200人も来られたのでは困るし、民進党員も離党したくとも党から選挙資金が出なくなるのは困る関係があったからです。
資金移動のカラクリが今回のミソ(今風にいうとキモ?)であったように思われます。
党公認の離党であれば、嫁入り支度のように大金が配布される・・・実際に合流決定後全国支部長(公認候補は普通支部長になっています)宛にまず一人2000万円ずつ配布されたと報道されています。(約4〜50億円?)
満場一致で合流決定した時に将来的に解党が予定されていたので、いわば民進党解党時の余剰金の一部(参議院や地方議員等組織維持費を残して・/約150億のうち衆議院議員選挙資金として4〜50億、来年の参議院の選挙時に選挙資金としてほぼ同額分配してから合流するのこり3〜40億はその間の組織維持費)を前もって分配したようなやり方ですから、全員合流できるならば持参金として希望の党に持っていくことに誰も反対しなかったからです。
この資金分配後の希望の党公認には一定額の資金拠出を条件付けていたと報道されていますので、政党間の巧妙な資金移動計画・・これをやるには前原氏が代表になる必要があったのでしょう。
排除論理発表後でもこの資金移動に不満が全く出ていないのは、左右を問わず一律の資金分配だったからです。
(もとは政党交付金なので残った資金は国庫帰属になるべきと言われていますが・・詳しくは知りません・・その脱法行為?)
「排除」発言を引き出した時のやり取りは以下 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53285の通りです。

「排除」発言を引き出した記者が見た「小池百合子の400日」
私は小池氏が都知事に就任した昨年8月以降、毎週金曜日の14時に行われる小池都知事の定例会見に、できる限り出席するようにしてきた。
しかし、小池氏の「記者選別」はトランプ大統領並みで、詳しくは後述するが、質疑の際には「お気に入り」の記者を明らかに優先して指すのである。フリーランスで、なおかつ小池氏にとって耳の痛い質問をすることが多い私は指されないことがほとんどだったが、この日は偶然か、半年ぶりに指名された。
横田:前原代表が昨日、所属議員向けに「希望の党に公認申請をすれば、排除されない」という説明をしたのですが、一方で(小池)知事、(希望)代表は「安保、改憲を考慮して一致しない人は公認しない」と(報道機関に話している)。(前原代表と)言っていることが違うと思うのですが、前原代表を騙したのでしょうか。それとも共謀して、そういうことを言ったのでしょうか。二人の言っていることが違うのですが。
小池知事:すいません。その質問は場所を転換してからお答えさせていただいた方がいいと思いますし、(筆者が?)「独特の言語」を使っていらっしゃるなと今思ったところです。
4日前に小池知事が希望の党代表に就任したために、この日の定例会見は2部制(前半が都政関連、後半が国政関連)になっていた。そこで私は第1部での質疑応答を止め、第2部で再び同じ質問を繰り返した。
横田:前原代表が昨日(28日)発言した「(希望の党に)公認申請をすれば、排除されない」ということについて。小池知事・代表は、安保・改憲で一致する人のみを公認すると。前原代表を騙したのでしょうか。共謀して「リベラル派大量虐殺、公認拒否」(を企てた)とも言われているのですが。
小池知事(=代表):前原代表がどういう発言をしたのか、承知をいたしていませんが、『排除されない』ということはございませんで、排除いたします。取捨(選択)というか、絞らせていただきます。
それは、安全保障、そして憲法観といった根幹の部分で一致していることが政党としての、政党を構成する構成員としての必要最低限のことではないかと思っておりますので、それまでの考えであったり、そういったことも踏まえながら判断をしたいと思います。
現下の北朝鮮情勢などで、これまでの議論に加えてリアルな対応を取っていこうと考える方々もいらっしゃるので、そういったところもしっかり皆様、希望の党から出馬されたいという方を絞り込ませていただくことでございます。ちなみに、その作業は私どもの方では若狭(勝)議員、そして民進の方から玄葉(光一郎)議員が絞り込みの作業に入るということで基本的に任せているところです。」

総選挙と民度3(合流の奇策→愚策3)

看板だけ希望の党で代表もそのままにしておいて内部を牛耳る民進党の戦略はいわば保守票を護憲派支持かのようにすり替える(ズルすぎる)妙薬です。
10月31日に書いたように民進党と組むことによって(組むだけでなく乗っ取られそうなことか3ら)、反民進党(保守系)票が脱兎のごとく逃げる効果・「国民を馬鹿にしてはいけない」ことを読み誤ったと思われます。
小池氏が民進党の看板(娘?)になってしまう・・民進党による「希望の党」乗っ取り計画があまりにも見え透いていたので小池氏の支持層であった保守系浮動票が早速逃げ始めました。
選挙までの期間が短いから「ごまかしが効く」と想定したのでしょうが、この程度の「見え透いた戦略」は誰でも想定がつくことです。
都知事選以来小池氏を応援していた人々にとっては、政権取りのためには左翼とも組む小池氏の心変わり・内部での風向きが変わったこと(協力の必要な民進出身者細野氏らの厚遇・発言力アップ)を肌で感じていたでしょうから、彼らのマイナス拡散力もバカになりません。
メデイア界では「排除の論理」が一気に支持を失った原因と最大限批判していましたが、それを前面に打ち出さざるを得なくなったほど小池氏自身が政権取り・権力欲実現のためには反安保・違憲論者の支持を得る方向へウイングを広げたことに対する都知事選で支持に回った浮動層に対するショックの方が先に進んでいたのです。
小池氏は、元々の政治スタイルからして無用になった(希望の党立ち上げ後必要な資源は、全国展開に必要な資金力・立候補のタマと組織力です)内部の保守系支持者の使い捨てを気にしなかったでしょうが、これが思わぬ波及・・肝心の浮動票の離反が始まっていたのです。
小池氏としては希望の党が安倍政権を脅かし連立相手にしてもらうには、大量立候補者と資金力が必須でしたが、あくまで保守系に軸足を置いて国政(連立)に参加したいのであって、非武装平和論の左翼系のスターになるつもりはなかったでしょう。
しかし大量立候補者を手早く集めるためには、民進党のコマを使うしかないとすれば、選挙後党内多数派を占める彼らの発言力に影響されるしかないジレンマです。
文字通り魂を敵に売ってでも権力欲の赴くままに突き進むか、ここはじっと我慢・都政で実績を積みながら数年かけて地道に勢力を広げるかの思案どころであったはずです。
小池氏はここで、政治家として必須の魂を売ってしまったのを身近にいた支持者に見抜かれてしまったのだと思われます。
希望の党のフィーバー原動力であった保守系浮動票の大方が、「この人は天下国家のために動く政治家ではなく、我欲だけで動いているのだ」と見抜いてしまい潮が引くように逃げ始めました。
浮動票に逃げられたのでは、浮動票による底上げ期待の民進党員にとっては希望の党に合流する意味がないし・・小池氏にとっても民進党支持者しか投票してくれないのでは立候補者を全国で立てる意味がない・・無意味な旗揚げだったことになり場合によっては政治生命を失いかねない事態になってきました。
メデイアは反安保思想が主流ですから、つい数ヶ月前まで安保法制違憲主張をしていた民進党議員が安保法制強化を主張してきた希望の党への合流させてもらうために節を曲げて安保法制/憲法改正賛成に署名する姿を想定して節操のなさを嘆いていましたが、実は民進党支持者も保守系浮動層も、誓約書などに重きを置かずその後の党内勢力関係に重きを置いていたことが選挙結果でわかります。
選挙結果を見るとhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102302000252.htmlによると以下の通りです。

希望、東京で1勝22敗 選挙区 自民、首都圏も堅調
小池百合子東京都知事が率いる希望の党は三都県の三議席にとどまり、お膝元の都内は一勝二十二敗だった。
希望は八十選挙区に候補者を立てたが、半数以上が新人で苦戦。都内は前職長島昭久氏(東京21区)が議席を得たが、小池氏側近の前職若狭勝氏(東京10区)は選挙区は届かなかった。

小池氏のお膝元である都内たった一人の当選者は元民進党の有力者長嶋氏ですから、彼ならば無所属でも当選した可能性が高かったでしょう。
この結果によれば、小池フィーバーによる当選者ゼロで元々の民進党支持者の固い票で当選しただけという印象ですから、これでは保守系政党と言える実質がありません。
メデイアは「排除の論理を引き出された失敗が大敗の原因である」とあたかも左翼系の票が逃げてしまったかのように今も吹聴していますが、流れは逆でしょう。
民進党支持者の方が選挙後どうなるかよく知っていて当面表向き安保法制賛成と書いても一時的でしかない・・党内多数を握ればなし崩し的に元民進党系の意見になって行くに違いないと読んでいてトクな取引と考えて長島氏支持を変えなかった様子が見えますし、同様に選挙後乗っ取られるのがわかっている保守系の票がほぼ100%逃げてしまった結果が見えます。
メデイアの宣伝とは違い、排除の論理強調によって左翼系の票が逃げたのではなく、排除の論理強調にもかかわらず排除の論理強調にもかかわらず保守系浮動層の引き止めができなかったのが真相でしょうし、元々の民進党支持層もそれぞれ合流の結果がもたらす実態をよく見ていたのです。
小池氏は政権取りの我欲に負けて民進党の人材と資金力・そして連合の運動員提供の甘言に頼ってしまった・・魂を売ったのですから「いいとこ取り」できない失うべきものを失ったのはあたりまえです。
ただしそこはプロですから、合流発表直後から始まった浮動票離反の風を感じた小池氏も前原氏も焦ったものと思われます。
この焦りが両者会談直後の安保法制・憲法改正賛成とこれに応じる誓約書提出要求・応じない民進党議員の合流拒否・・「排除論理」を強調して表明せざるを得なくなった・・このくらいはっきり言わないと逃げ始めた動きを止められない・・焦りが背景・真相でしょう。
排除発言は小池氏と前原会談直後の記者団に対する表明が最初のようですから、十分な擦り合わせの結果であったと思われます。
このあと希望の党の重鎮になっていたこの夏ころに離党していた民進党の細野豪志だったか(受け入れリスト作り担当?)が、すかさず「三権の長経験者には少なくともご遠慮いただきたい」ような発言をしています。
実力者がいっぱい入ってくると元民主党系同士でも大先輩に主導権を奪われるのを嫌ったからでしょう。

総選挙と民度3(合流の奇策→愚策2)

小池氏旗揚げ時の支持母体を見ていきます。
http://www.sankei.com/politics/news/171006/plt1710060114-n1.html

希望の党から衆院選比例代表九州ブロックに立候補する中山成彬元文部科学相は6日、宮崎県庁内で記者会見し、首相に望ましい人物について「小池百合子代表が(衆院選に)出ないなら、安倍晋三さんがいい」と述べた。希望の党は「安倍政権打倒」を掲げているが、中山氏は、小池氏が安倍首相の交代を求めている点にも触れ「そこまで(党内で)意思統一ができていない」と語った。希望の党で出馬の中山成彬元文科相「安倍晋三首相がいい」・・中山氏は、希望の党に参加した中山恭子・日本のこころ前代表(参院議員)の夫で、自民党衆院議員として文科相や国土交通相を歴任。

中山恭子氏は保守論壇の寵児であり、自民党内超保守系のホープとして有名です。
ウィキペデイアによる中山恭子の経歴は以下の通りで、麻生内閣で拉致担当相をはずされると批判殺到で拉致問題担当補佐官として復活した経緯からも保守系の人気ぶりが分かる経歴です。

2007年(平成19年)7月に第21回参議院議員通常選挙へ自由民主党から比例区で立候補し、385,909票を獲得して党内得票数第3位で初当選した。同年8月27日に発足した第1次安倍改造内閣で留任、同年9月7日に拉致問題対策本部事務局長職を離任した。同年9月26日に発足した福田内閣でも内閣総理大臣補佐官(北朝鮮による拉致問題担当)に再任。11月15日、町村派に入会。
2008年(平成20年)、福田康夫改造内閣にて、内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画担当)として初入閣を果たした。さらに、福田康夫改造内閣では、特命事項として拉致問題担当と公文書管理担当が発令され、国務大臣として同時に兼任した。しかしおよそ1ヶ月後の内閣総辞職に伴い内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画担当)および拉致問題担当、公文書管理担当を退任。
同年9月24日に発足した麻生内閣では中山の入閣は見送られ、拉致問題担当の特命事項は内閣官房長官の河村建夫が兼任することになった。拉致問題担当の国務大臣に中山を任命しなかったことに対して総理大臣官邸に批判が殺到したため[7]、中山は内閣総理大臣補佐官(北朝鮮による拉致問題担当)に再任。
2010年(平成22年)6月18日、夫・成彬が同年7月の第22回参議院議員通常選挙にたちあがれ日本から出馬することが確実になったことを受け、「夫を支援するため」として、自民党に離党届を提出し[8][9][10]、6月21日、夫と共にたちあがれ日本へ入党した[11
2015年(平成27年)10月1日に次世代の党代表に就任[12]。12月21日、党名を「日本のこころを大切にする党」と改称。2017年(平成29年)2月7日、日本のこころに党名を変更した[13]。
2016年(平成28年)9月、党代表のまま党政策調査会長を兼任[14]。
2017年(平成29年)9月、無投票で党代表に再選[15]。同月24日、夫と共に希望の党へ参加する意向を示し[16]、翌25日、日本のこころに離党届を提出し受理された[17]。同月27日、小池百合子東京都知事を代表とする新党「希望の党」設立会見に、結党メンバーとなる国会議員14人の一人として参加した。

中山恭子氏の希望の党参加でわかるように、もともと小池氏の都知事立候補は中山氏を教祖のように信奉する保守系運動家が中心になって動き出し超保守にとどまらず幅広く保守浮動票に広がって成功したものです。
小池氏の都政への挑戦は、もともとメデイアの支持を受けた左翼系鳥越俊太郎氏に対する対抗馬として始まったもので、左翼系の支持を標的にして拡大したものです。
都知事選で対する鳥越俊太郎氏はもともと民主党系のメデイアの寵児としての著名人で、彼に関するウィキペデイアの記事は以下の通りです。

2014年8月15日にNHKで放映された「戦後69年 いま“ニッポンの平和”を考える」で、集団的自衛権について政治家や有識者と公開討論している。その番組内で、現在皆さんの安全が脅かされているという前提でお話されておりますが、そんなの虚構ですと述べ、北朝鮮ミサイル問題や尖閣問題がありますとの意見に対して、「どこの国が日本に攻めてくるんですか?必要ないでしょ」として、集団的自衛権や米軍は不要であるとの考えを示している。
日本未来の党が解党した後は民進党を支援しており、2016年には、4月の衆議院北海道第5区補欠選挙で敗れた池田真紀の応援演説や、7月の参議院選挙長野県選挙区で当選した杉尾秀哉の応援演説を行うとともに、民進党のポスターにも登場している[25][26]。
2005年4月5日、呼びかけ人の一人として『マスコミ九条の会』結成に参加[3]。
2007年2月、民主党が東京都知事候補としての擁立を打診するも、自身が依然として癌療養中であるため、「(任期の)4年間に責任を持てない」として打診を断る[4]
2016年7月12日、東京都知事選挙への立候補を表明する
都知事選立候補者に関するウィキぺデアの記事中鳥越俊太郎氏関する記事からです。
鳥越俊太郎
(とりごえ しゅんたろう) 76 無所属
(民進党・日本共産党・社会民主党・生活の党と山本太郎となかまたち・新社会党・緑の党グリーンズジャパン・東京・生活者ネットワーク 推薦)

都知事選での小池フィーバーの基礎票・主役は、反メデイア+保守系の中でも右寄り勢力だったのに、民進党が丸ごと合流した場合小池氏の都知事選立候補時から協力してきた右翼系グループの意見と相容れないことが明白です。
ここで小池氏が目先の候補者と資金と運動員ほしさに民進党の全面受け入れを決めた時点で、都知事選立候補に際して中山氏らに協力を求めたときの政治理念の変質を前提にしていた・・中山氏ら(結党メンバー14人自体が民進党離党したメンバーがすでに多数を占めるようになっています)が選挙後は圧倒的少数派に転落し党内孤立・居心地が悪ければ離党していけば良い・切り捨て方針を明白にしたことになります。
都知事選開始当時はっきり小池氏を支持していたネット発信者の意見が、都議選の頃から「用済み扱い」されている雰囲気に微妙に変わってきていました。
都議選後自信を持った小池氏が国政に出るには「大量立候補者と資金・運動員が必須」という現実が待っていました。
そこで表向き当初から支持さになっていた有名人である中山氏ら既存政治家の比例上位優遇を示しながらも、彼ら数人程度選挙後党に残っても圧倒的多数の民進党系の主張に黙るしかない・離党すれば比例候補だから代議士の地位を失う・次順位民進党系候補に継承されるだけという結果が待っています。
小池氏はメデイア界で有名なだけで政治家同士では個人的に信奉する人が皆無・あまりにも露骨に切り捨てすぎる評価が言われていますが、あまりにも短期間にどんどん切り捨てていくやり方が露骨すぎました。
小池氏は民進党内極左グループ「排除の論理」発表以前にその日まで一生懸命に自分を盛り上げてくれていた仲間を切り捨てる方針を先に示していたのです。

総選挙と民度2(奇策→愚策)

民進党に限らずメデイア等左翼系支持者にとっては、次のような政治効果を期待していたと思われます。
もしも民進党のままで選挙になれば、得票率が6〜7%・・・26年選挙の得票率18%あまりに比較すると約3割しかない・当選者数もこれに概ね比例して大幅減の見込みでしたが、保守・浮動票を取り込む小池新党が立ち上がった結果、都議選の結果を見れば東京だけでも自民党惨敗が予想され、これが全国的立候補になれば、もしかすると大敗どころか過半数割れも夢ではないという予想でした。
大敗しても第1党である限り自民党は簡単に政権を手放さない・・その時の連立組み合わせ候補として小池新党が、最有力の地位を得ることになるシュミレーションが一般的解説でした。
メデイアの多くが小池新党を保守系として(自民党支持者を食う前提)連立組み合わせ想定していた前提から分かるように、希望の党の支持者は民進党支持者と被っていません。
企業合併・買収.提携ならば、同業であるが店舗網が競合しないとか、若者ターゲットの商品に強い企業とミドルに強い企業が提携したり関東に強いが関西に弱いときに地域割り(希望の党と大阪維新の相互協定)すれば、補完作用が期待されます。
民進党で公認した候補が希望の党に合流・希望の党公認で立候補すれば、小池フィーバーの浮動票をいただける・・こんなうまい話はあるのでしょうか?
「下手な考え休むに似たり」と言いますが、左系と右系の政党が合流すれば双方の票が入るのでしょうか?
もしも左右双方から票を得られれば、希望の党の公認で立候補した結果、元民進党公認候補の支持率6〜7%しかないところ3〜40%の得票率になって当選率があっぷするとすれば、保守系プラス浮動票の支持によって当選したことになるのに、民進党系議員の反安保・護憲意見が支持されたとしてすり替え主張することができるメリットがあります。
そして民進党系当選者が希望の党の5〜6割を占めれば、5〜6割の元民進党議員意見が10割の意見・希望の党の公式意見になりますから、仮に希望の党が国会議席の3割をしめる選挙結果になると、もともと7%前後の支持で低迷していた元民進党グループの反安保等の意見を国民3割の意見と主張できる・・錬金術のように膨らませていける勘定です。
「こんなうまい話に乗らない手はない」とばかりに民進党両院議員総会では政策すり合わせの議論もなく「意図的?に素通りして』満場一致で賛成したことになります。
企業の場合、大々的に提携・合併・買収メリットが公表されますが、双方の票をいただきたいという肝心の点を「ほっかむり」しなけれならないところが「後ろめたさ」を表しています。
今回の選挙結果を見ると、以下の通り希望の党50名当選者中45名が民進党出身者というのですから保守系から希望の党に走って当選した中山氏など元々の保守系政治家の意見が希望の党の党議決定でとおる見込みはありません。
上記結果は小池フィーバーが失速した結果によるものですが、仮に小池フィーバーが投票時まで続いて根っからの新人が数十人多く当選していても、その比率で民進党系の落選も減り当選者はも増えるの党内力学はほとんど変わらないでしょう。
都民ファーストに集い希望の党に参加しニワカ研修を受けて選抜される新人はほとんど全部素人・議員経験なしですから、選挙後の党運営は経験のある民進党出身者が党の要職を占めて発言力が高くなる・要は簡単に乗っ取れることが想定されました。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171004/k00/00m/010/174000cには希望の党の第一次公認内訳が出ていますが、これによると民進党出身が110人、希望の党が74人で民進党公認だった候補者が6割以上を占めているほか、その分類説明によると、民進党を先に離党して希望の党に入っているメンバーは・・例えば、細野豪志氏などは希望の党出身と分類されています。
詳しい名簿に関心のある方は上記を直接ご覧ください。
小池フィーバーは元々革新系+メデイアの推す鳥越俊太郎氏に対するアンチ勢力として保守系支持(だからこそ自民党の票が食われる)をコアにして広まったものでしたから、民進党公認候補の丸ごと合流計画はこれを民進党がそっくり乗っ取る戦略表明にほかなりません。
これが鮮明になった結果保守系浮動票がほとんど引いてしまい、希望の党への投票者自体が民進党支持者に限定されていった結果でもあるでしょう。
民進党が共産党と共闘すると共産党支持の投票が増えるが、その分反共系の票が減ると言われるように、希望の党が民進党と合流すると反民進党系の浮動票が逃げます。
小池フィーバーの浮動票が逃げない場合、比喩的に言えばメデイアによる煽り・フィーバーによる得票数が当選に数%不足の場合、浮動票しかない新人より民進党出身者には6%のコア支持者・・下駄を履ける分だけ民進出身者に有利です。
選挙結果・・希望の党当選者50名であったことは周知の通りですが、50名中民進党出身者が45名も占めていることについてはhttp://www.sankei.com/politics/news/171024/plt1710240045-n1.htmlによると以下の通りです。

民進に所属していた前職、衆院解散時に党の公認候補予想者だった元職、新人を民進出身候補者と分類すると、当選者は希望の党が最多の45人で、立憲民主党40人、無所属20人となった。

・・民進党議員総会で政策方向についてのまともな議論もなく(今頃「節を曲げない」と自慢している立憲民主党議員も含め)満場一致で合流を決めた裏には、(議論すると乗っとり作戦が表に出てしまうので、あえて議論しなかった)公然の秘密として選挙後はほぼ100%民進党系が党内ヘゲモニーを握れる読み・小池政治の保守・浮動票を護憲派支持に擦り変える目論見があったと見るべきでしょうし、私はそのように理解しました。
左右の合流で選挙後左右どちらになるのか政策目標をはっきりさせない合流で、左右双方から支持を得られる・・ごまかせると思ったのでしょうか?
ここで都知事選挙での小池氏支持母体の構図を見直しておく必要があります。
そもそも小池氏は自民党国会議員として経歴を積み防衛大臣まで勤めた人ですし、立候補し当選したのちも自民党籍を残したままでした。
小池氏が組織らしきものもなく都知事選立候補を表明した当初は、自民党候補では飽き足らないもっと右寄りの反中韓意見を主張している人物らが当初選挙運動の中核を担っていたもので、いわゆる「熱心保守系」支持を受けて選挙戦を展開する内に日毎に一般保守に支持を広げて圧倒的勝利を得たものでした。

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