不公正貿易国の認定による正常取引社会からの閉め出し(強行策)が打てないとすれば、中国に好きなように黒字を溜めさせるのも一手です。
私の交渉術の基本ですが、相手の主張にそのまま乗っていつの間にか自分の主張を通す・・柔道のようなやり方です。
・・・長期にわたる貿易黒字で貯めたドルを強制的に減価させる・・中国の外貨準備のドル通貨を時々3割くらい下落させることによって、その間の貿易黒字累積をパーにしてしまう強行策を取るのも面白いでしょう。
中国や日本は、値下がり傾向のあるドルのポジション(外貨準備比率)を減らしたいのに、貿易黒字が続けば逆にドル外貨準備が増える仕組みになっています。
たとえば、一定期間の貿易黒字蓄積の結果、ある国の外貨準備が7000億ドルになったときに、黒字国は市場に委ねれば本来切り上がるべき自国通貨の切り上げを介入等で阻止するとドルを外為市場で買い上げる分貿易黒字額以上にドルが貯まってしまいます。
自国通貨安を維持して貿易黒字を続けた結果、外貨準備が更に増えて1兆ドルになった場合を想定しましょう。
アメリカが今度はドル安政策だと宣言して3割切り下げれば1兆ドルの外貨準備の額面は同じですが、対円やユーロでは、3割減になってしまうことになって、その間に溜め込んだ1兆ドルが7000億の価値に減ってしまうので、3000億ドルの評価損になります。
それでもほぼドル連動するように為替管理している中国はアメリカドルと一緒に3割下がるので、その後も対アメリカ貿易競争力が変わるどころかUSドルに対して為替相場の上がった諸外国よりも競争上有利になります。
これがリーマンショック以降、ドルが全世界に対して一律減価しているのに中国元だけがほぼ連動する結果、中国が世界に大きな存在感を示せるようになった原因です。
自国通貨安政策は貿易上有利ですが、事故通貨安=低賃金・国民窮乏化政策ですから、中国人民の不満が沸点に達して暴動が頻発している現状に陥っています。
同一通貨圏内・あるいはドル連動制の国に対しては、域内の発展不均等・あるいは貿易収支偏り是正のために通貨相場の上下で交易の偏りを調整出来ないので、黒字国は債権が膨らみ過ぎる=赤字国は同額の債務が膨らみ続けることになります。
ペッグ制によってどこまでも為替相場が米中一緒になると、債権が膨らみ過ぎるのを放置する=最終的には債務者の支払能力がなくなる・・貿易赤字国の通貨や国債・債権相場の下落・デフォルトの結果・・どちらも破綻するまで待つしかありません。
一蓮托生と言えば、それまですが、歴史経験を無視し過ぎ・・能がなさ過ぎます。
ナチスのように民主的手続きを践めば民主主義の息の根を止めることも許されるのでは困るので、戦後は民主主義を否定する思想は民主主義国で許容される思想の自由の範囲外である・・許されないと定義し直されて戦後教育で習いました。
自由主義経済と言っても、自分だけ相手に参入するのが自由で、自国経済は資本取引や為替その他いくら閉鎖していても良いというのでは身勝手過ぎます。
自由貿易の基礎ルールを守らないならば、自由主義国の恩恵を受けられない・・WTOその他の貿易システムから除外するくらいの制裁が必要でしょう。
せっかく世界に根付いた人類の智恵である変動相場制を台無しする装置が、EUの共通通貨制でしたから、今のギリシャ・キプロス等で支払能力不足・・南欧危機が生じているのです。
国内の貨幣共通化制度・・・東京等大都市と青森等東北諸県や九州・四国等の僻地との格差については、地方交付金等による所得再分配等の修正装置がることを以前から書いています。
EUのように外国との間で通貨だけ共通にすると、こうしたフォロー制度がないままで通貨共通・・固定制にするから危機が起きてしまうのは理の当然であることについてイタリア等の危機が生じた頃に書きました。
最近、EUもこのままではまずいことになってしまった・・離脱が生じるのでは困るので、一生懸命に金融制度の補完制度を考えるようになっているようですが・・。