中朝・修正装置なしの体制2(漢承秦制の原則)

昨日法家の思想を紹介しましたが、中国古代に統一国家ができるまでは、多国間競争があったので統治能力や文化の高さを競う必要があったので百家争鳴・・いわゆる諸子百家の個性豊かな思想家が活躍したのですが、統一国家になると多様な意見が全面的に(焚書坑儒)禁止されて、専制君主の命令が正しいかどうかの基準によらず皇帝の命令どおりに職務を果たしたかどうかを基準にする・正しいかどうかの議論を許さない社会になりました。
以来、彼の地では中国王朝政治の基本原則として漢承秦制の原則が言われて清朝崩壊まで来たようです。
漢承秦制の原則については04/10/05「不平等条約改正に対する日本政府と清朝の違い(漢承秦制の思想と社会の停滞)」以下で何回か紹介しました。
上記で引用した中国人の論文では異民族支配化に入った時も異民族は中元の地の政治文化を尊重して政治体制は漢承秦制の原則により同じ制度枠組みでやってきたことと、19世紀以降の欧米の新文化が入ってもこの強固な枠組みを変えずに小手先の技術導入で済まそうとしたので、遅れて欧米文化に接したにもかからず国家体制まで変えた日本に清朝は遅れをとってしまったという論文です。
ここで論者が言わんとしていることは、中国は小手先の技術導入だけではなく秦朝以来の国家枠組み(基本思想そのもの)も変える必要があると言いたいようでした。
上記論文は2005年の「自由と正義」に掲載されていたものですから、当時は改革開放が進み国民が豊かになれば、国家体制も人権を尊重し自由化に向かうだろうという楽観的欧米意見の援護論文だったとも言えます。
その後習近平政権になって中華の栄光の復活・・2000年来の漢承秦制の原則・・欧米技術は専制支配支配の道具に使えば良いという思想に戻った(先祖帰り)ようです。
公務員の肩書き(〇〇弁室〇〇だったか?)で書いていたあの中国人学者の運命がどうなったか・・日本に来てしまったかな?気になるところです。
清朝末期に欧米に対抗するために体制変革を目指した変法自強運動を起こし西太后に潰された康有為の超小型版でしょうか?
康有為の漢詩があった記憶ですのでネット検索して見ました。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~shici/fusang09.htm

戊戌八月 國變 紀事

歴歴たり  維新の 夢,
分明たり  百日の 中。
莊嚴  宣室に 對し,
哀痛  桐宮に 起る。
禍水  中夏に 滔(みなぎ)り,
堯臺  聖躬を 悼む。
小臣  東海に 涙して,
帝を 望めば  杜鵑 紅し。

私感註釈

※戊戌八月國變紀事:戊戌変法政変の記事。 *康有為、梁啓超、譚嗣同 、また、張之洞に詩作あり。 ・戊戌:1898年光緒二十四年のこと。ここでは、戊戌の変法を指す。八月國變紀事:戊戌変法が挫折した八月の出来事。戊戌の変法とは、1898年(光緒二十四年)に宣布された変法維新(欧化、近代化の改革運動)の政治運動。その由来は、アヘン戦争後、国威の衰頽が顕在化し、やがて、日清戦争(中国側の呼称:甲午戰爭)後、日本の欧化の優越性を目の当たりにしすることで、自国の後進性の改革の必要性と、西欧列強の対清朝中国蚕食という現実に直面して、危機感を持った先覚者が、政治の改革と軍備の改善を図り、日本の明治維新後の政府と帝政をモデルにした救国改良運動にある。康有為や梁啓超がその中心であった。やがて、1898年(光緒24年)に光緒帝によって宣布された変法維新は、百三日後、西太后慈禧のためにあえなく挫折する。それ故「百日維新」とも称される。なお、この政変の失敗後康有為や梁啓超は日本へ亡命、他の譚嗣同、楊鋭ら6人は処刑された。

この政変をテーマにしたというか、西太后を主役にした猿之助演出のお芝居を20年以上前に見たことがあります。
藤間紫主演の凄みのある西太后に圧倒された記憶・・いまだにその表情が目に浮かびます。
https://weblog.hochi.co.jp/uchino/2009/03/post-684f.html

2009年3月29日 (日)
藤間紫さんの「西太后」
紫さん訃報で思い出すのは舞台「西太后」の初演(95年)です。記者になってまだ数年目の若造でした。
あの時の新橋演舞場の張りつめた空気を忘れることができません。まさに観客が身を乗り出し、固唾をのんで見入るような。完成度の高い舞台だけに流れる、研ぎ澄まされた空間でした。 初演時、紫さんはすでに70歳をこえておられたわけですが、その女傑ぶりは劇場の空間をまさに圧倒し、支配するものでした。

上記によると新橋演舞場で見たようです。
やはり、文字の上で歴史を知るのと舞台で見るのとでは、記憶に刷り込まれる内容・深さが違います。
東京地裁のついで(当時いつもそうしていましたので)に妻と一緒に観劇したものですが、何やかやと言っても今のみやこは東京ですので、気楽に文化の粋に触れられるのはありがたいことです。
話題がそれましたので専制支配体制に戻ります。
普通の国では国内専制権力を持っても、隣国との競争に負けると困るので周囲の反応を気にして矯正せざるを得なかったのですが、秦朝統一後の中国には周囲に競争相手がなく、お隣の関係で矯正されるチャンスがなく現在に至ったのが世界史的に見れば特異な点でしょう。
中国現在の領域を前提にまず南部から考えると、南部方面はヒマラヤや雲南の険阻な山地によって隔てられ、しかも山地の向こうはさらに山地中心の地形であって人口が少ないので、中国地域に成立している王朝がいかにデタラメをしていようとも、その王朝の存立を脅かすような大兵力を要する国ができませんでした。

中国・修正装置なしの体制1

国内で人道に反しあるいは道徳的に許されない行為でも強ければ何をしてもそのまま通用し修正されない社会・・民度・昨日紹介したルーマニアのように行き着くところまで行き着くしかない社会できたのが中国社会です。
日本では社会構造の漸進的変化に合わせて、社会や村落集合体のあり方〜その連合的仕組みも緩やかに変化して現在に至っていますので無理がない・西欧のような人民の蹶起・ダム崩壊のような革命騒ぎが不要でした。
中国2千年の政権交代の歴史では、王朝の足元が崩れるような農民の流亡化=食えなくなって命を捨てることを惜しまなくなるまで王権の無茶な支配に対する修正が効かない社会です。
中国やその小型版専制支配体制の李氏朝鮮では、人道を踏み外した権力行使に対する修正装置が無いので、国民の多くが命もいらないという大暴動に発展しない限り王朝崩壊しない仕組み・・悲惨な歴史の繰り返しでした。
このようなことが可能であったのは、一旦専制支配体制が確立すると現在の中国地域は域外から干渉される心配のない閉鎖社会であったことによるでしょう。
悪政・失政が続くと対抗勢力に挑戦されて政権交代が起きるのが日本の歴史です。
中国朝鮮ではなぜ対抗勢力が育たないかの疑問ですが、内部的には秦の始皇帝以来専制支配体制確立によって内部批判ができないことだけではなく、失政悪政をする政権を脅かす健全な外部勢力が存在しなかったからです。
春秋戦国時代には、有力諸侯が並び立っていたので、内政・治世の巧拙や諸侯の人望が一国の浮沈を決したので諸侯は競って人材を登用し、君主の評判を高めるために意を尽くしたので、百家争鳴・いわゆる諸子百家が排出するの時代になったのです。
これが秦始皇帝によって統一されると焚書坑儒で知られるように余計な議論よりは法家の思想・皇帝の命じる「法」を守ればいいのだという社会になって以来2000年あまり経過してきました。
ちなみに日本でいう「法」は仏法僧の法であり人倫の道・宇宙の真理ですが、中国では内容いかんに関わらず、皇帝の命じるところが法です。
要するに正義を守るため(権力から守るため)の法ではなく統治の貫徹 ・いちいち具体的指図なしに百官吏僚が一糸乱れずロボットのように動くようにするための道具です。
現在中国が国民便利のためのIT~AI発展を目指すのではなく、10何億人民を24時間監視するために開発しようとしているのと同じ発想です。
法家の解説を見ておきましょう。
https://www.y-history.net/appendix/wh0203-061.html

法家
諸子百家の一つ。性悪説に立ち、法による統治を重視する一派。
古代中国の戦国時代に活躍した諸子百家の一つ。孔子や孟子の儒家の説く礼によって国を治める徳治主義では人民を統治することは困難と考え、成文法によって罰則を定め、法と権力によって国家を治めようと考えたのが法家の人々である。彼らの思想で言えば、なによりも公正で厳格な法の執行が為政者にとってもっと必要なこととされた。そのような思想は斉の管仲、魏の李悝(りかい)、秦の商鞅など実務的な政治家によって行われていたが、理論化したのは儒家ではあったが孟子とは異なって性悪説にたった荀子とその弟子の韓非であった。法家の思想は、李斯が始皇帝に信任されて秦の統一国家建設の理念とされるが、秦の没落後は儒家の思想にその立場を奪われることとなる。

https://kotobank.jp/word/
法家(読み)ほうか(英語表記)fa jia
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

中国古代に興り,刑名法術を政治の手段として主張した学派。春秋時代の管仲が法家思想の祖とされ,戦国時代の李 悝 (りかい) ,商鞅,申不害,慎到らが法家の系列に属する。韓非子にいたってこの思想が集大成され,その著『韓非子』 20巻は先秦法思想の精華といわれる。法家は法と術とを重んじ,法は賞罰を明らかにして公開し,特に厳刑主義をとって人民に遵守を促すものであり,術は人主の胸中に秘して臨機応変,その意志に人民を従わせる統御術とされた。政治を道徳から切り離した実定法至上主義であり,儒家が徳治,礼治を強調したことと顕著に対立する。法家思想は秦代の政策のうえに大いに具現されたが,漢代以降,学派としては消滅した。漢代には儒法2家の融合をみて,儒家は法的制裁をかりて礼の実現に努め,礼と法とは表裏をなしつつ,その後の中国法の性格を形づくるものとなった。

有名な(私が知っているというだけのことですが)一節を紹介しておきます。
http://manapedia.jp/text/3878

「典冠。」
君因兼罪典衣与典冠。
其罪典衣、以為失其事也。
其罪典冠、以為超其職也。
非不悪寒也、以為侵官之害甚於寒。
故明主之畜臣、臣不得越官而有功、不得陳言而不当。
越官則死、不当則罪。
守業其官、所言者貞也、則群臣不得朋党相為矣。

昔者(むかし)、韓の昭侯酔ひて寝(い)ぬ。
典冠(てんかん)の者君の寒きを見るや、故に衣を君の上に加ふ。
寝より覚めて説(よろこ)び、左右に問ひて曰はく、
「誰か衣を加へし者ぞ。」と。
左右対(こた)へて曰はく、
「典冠なり。」と。
君因りて典衣と典冠とを兼ね罪せり。
其の典衣を罪せしは、以て其の事を失すと為せばなり。
其の典冠を罪せしは、以て其の職を越ゆと為せばなり。
寒きを悪(にく)まざるに非ず、以て官を侵すの害は寒きよりも甚だしと為せばなり。
故に明主の臣を蓄(やしな)ふや、臣は官を越えて功有るを得ず、言を陳(の)べて当たらざるを得ず。
官を越ゆれば則ち死(ころ)され、当たらざれば則ち罪せらる。
業を其の官に守り、言ふ所の者貞なれば、則ち群臣は朋党して相為すを得ず。

これが法家の応用事例として人口に膾炙している故事です。
「法」に従うといっても中国の「法」は内容が正しいかどうかではなく、人をロボットのように使う術を説く思想です。

発展を急ぐ社会1(中国の場合)

中国はいわゆるチャイナプラスワンによって国内経済成長失速が怖くて、焦って次々と次のレベルに突き進んでいるように見えます。

まだ使える機械類をもっと性能の良い機械に変える・・先進国がこれを行うときに、機械の場合には中古機械を後進国へ輸出すれば除却損を低減できますし・輸入国は高額投資しないで済むので中韓等が日本で陳腐化した最先端に近い半導体装置等を二束三文(日本企業としては持って行ってくれるだけでも廃棄コストが浮く)で入手して急速に生産を伸ばした事業モデルでした。

一般に知られているパターンでは、日本で古くなった電車車両等を後進国へ無料で提供しているのと同じ考え方です。機械と違って人間の場合、途中でいらなくなったからといって、タダでよその国へ押し付けられない点が違います。早く労働者を回転したいのに先進国より逆に高齢化のスピードが早いのが新興国の流れです。https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WB&d=LE00IN&c1=CN&c2=JP&s=&e=(世界ネタ帳)からの引用です

改革開放開始直後には平均寿命が67歳前後だったのが、16年では75歳を超えていて日本との差が約10歳から7歳前後に縮まっています。
https://spc.jst.go.jp/event/crc_study/downloads/study63.pdfによる中国の労働者の学歴分布です

上記によると求職者に占める中卒求職者の比率が200年で73%、2010年でもまだ4割を占めています。
20年後の2020年でも35歳労働者中で、中卒が73%、25歳の中卒40%です。
この膨大な中卒労働者が高度産業従事者にいきなり変身できるはずがありません。

社会の安定的変化には1世代以上の時間軸が必要ですが、この時間を待てない新興国が米国であり中国のようです。
中国の政治家は産業レベルの変化に付いていけない彼らの失職後=老後?をどうするかの展望がないママ・・・国民が次のステージに備えて十分な力を蓄えないうちに次々と産業のステージを引き上げて行くのに必死ですが、取り残される彼らの生活をどうするつもりでしょうか?
多くの新興国が「中進国のわな」段階で足踏みしている・・最低賃金をむやみに引き上げないのは、「無理しない方が良い」という相応の理由があるのです。
https://spc.jst.go.jp/event/crc_study/downloads/study63.pdfからの引用です。

中国の人口変動と労働市場の構造変化
厳善平(同志社大学)2013年8月29日(木)

上記は13年までの統計ですがhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2018/06/c29d7cd2530c6ef1.html2018年06月27日によれば、18年6月から深センでは月額2200元ですから、13年1620から25%くらい上がっていますし、時給も20、3元ですから、日本の千円前後の2倍になっています。

急激な引き上げによってチャイナプラスワンが進み、深圳等の万単位の工員を使って大量縫製していた工場がガランとしてしまった状況が映像報道されていました。
(バングラ等が今や大量生産基地になって久しい状況です)
現時点でもどんどん海外移転が進んでいます。
以下は中国企業自体の海外移転事例です。
https://diamond.jp/articles/-/179226?page=3

 

2018.9.10
深センで始まった工場移転、「世界の工場」を襲う人件費・家賃高騰
東莞からアフリカへ 5万人規模の工業団地を

このように最低賃金を引き上げると自国企業でさえ低賃金を求めて工場移転してしまうのですが、それに対し開き直って、ローエンドからハイエンド製品への産業構造変更・先進国が応じないならば自国開発を宣言したのが中国です。
そこらの後進国とは民度が違うという宣言です。

中国の比重アップと欧米の威信低下

ここ数日米国の世界経済における比率低下を見てきました。
それでも経済制裁が相応の効果があるのは、(対中貿易が30%で対米貿易20%の場合でも)その他の日欧が米国の制裁に大方強調することで、世界貿易量では圧倒的多数を占める制裁を受けるから威力があるのです。
米国が世界貿易の過半を占めているときにはその威力が絶対でしたが、上記のように比重が下がってくると「いじめっ子?」締め付けに周囲のどれだけが積極的に同調するかにその効力がかかってきます。
それには、「弱いものいじめなのか?」「大義があるのか」が重要です。
中国が対米対抗意識を燃やし始めると、米国に大義があろうとなかろうとロシアや北朝鮮のように中国が原油を買ってくれれば問題がないという国が出てきます。
17年の数値では北朝鮮輸出の95%前後が中国と言われています。
15年のデータでは以下の通りです。
https://www.newshonyaku.com/

北朝鮮の貿易国と輸出入について調べてみました。

2017.09.06

MITの経済複雑化観測所(Observatory of Economic Complexity)からの2015年のデータに基づいて、北朝鮮と取引する国が視覚化できるサイトを見つけたのでご紹介します。

主要輸出先トップ5

1.中国(23.4億ドル)
2.インド(9780万ドル)
3.パキスタン(4310万ドル)
4.ブルキナファソ(3280万ドル)
5.その他アジア(2670万ドル)

合計25、404億ドルでそのうち中国が23、4億ですから約92%を占めています。
こういう場合、世界中から経済制裁を受ければ受けるほど中国に頼るようになるし、中国が制裁に協力しなければ経済制裁はほとんど効力がありません。
中国に対する輸出比率が上がれば、中国の影響力が増す一方です。
ロシア原油その他ロシア製品全量買う国力が中国にあるとしても、ロシアやモンゴル等は中国に生命線を握られるのは怖いのでできれば避けたいでしょうが、(原油その他資源買い手が消滅するよりは)緊急的でみれば頼るしかないでしょう。
中小国では、懐の大きくなった中国が「引き受けた」と言ってくれれば、中国の方が米国より怖くてもその場は助かるようになってきました。
今のイランの強気もそこにあります。
こうなってくるとブラックホールみたいになっている「中国経済自体を縮小させるしかない」というのが、トランプ政権の目的で今度の対中対決が始まったのでしょう。
1月14日に引用紹介しや同じ情報源ですが、世界の対中ランキング表では
http://www.camri.or.jp/files/libs/1156/201810011524292185.pdfによると以下の通りです。(表の一部引用です)

(図表2)対中輸出比率ランキング、上位20カ国・地域(2017年)
順位      国・      対中輸出比率    最大輸出品目
1      南スーダン      96%        原油
2      北朝鮮        87%        石炭
3      モンゴル       85%        銅鉱
4     トルクメニスタン    83%        石油ガス
5      ソロモン諸島     65%        木材
6      エリトリア      62%        銅鉱
7      アンゴラ       61%        原油
8      香港         54%        集積回路
9      コンゴ共和国     54%       原油
10    オマーン        44%  非環式アルコール及びその誘導体
11     コンゴ民主共和国     40%         精製銅
12     ミャンマー       39%         石油ガス
13     ガボン         37%         原油
14     ギニア         36%     アルミニウム鉱
15     モーリタリア      35%        鉄鉱
16     豪州          33%        鉄鉱
17     ラオス         29%        銅鉱
18     赤道ギニア       28%        原油
以下省略

上記のように上位国は貧困国〜経済規模の小さい国ばかりなので恐るべき高占有率です。
ちょっと買ってやると小国では7〜80%等の占有率になるので圧倒的影響力を握れる・国連では同じ1票ですから中国はこれを戦略的に狙っているのでしょうか?
輸出に限らず融資攻勢でも同様で、工事のような融資によるインフラ整備の誘導→融資付による工事代金未払い→軍事的要衝等のインフラ(港湾)運営権の中国への譲渡(代物弁済)などの弊害があちこちで起きています。
賄賂攻勢の変形で公式買収ともいうべき状態です。
これにやられている米国が国連やユネスコ等の国際機関ボイコットの動きになっているのであって、トータルで見ると必ずしも正義に反している訳ではありません。
世界中で対米貿易の比率が下がっている以上は、経済制裁をしても協力国の数の多さがその決め手になるのですが、同盟国・・すぐに追随してくれる国の協力意欲を減退させる方向の政治ばかりしているとアメリカの威信は下がる一方です。
トランプ氏が力めば力むほどその威令・信用低下が進んでいる・ひいては協力度合いが下がっていくのに気がつかないのでしょうか?
例えば秀吉が天下人になった以降に惣無事令で私戦禁止したのに反して、北条氏が(上野国の沼田)真田領を攻めたことで小田原攻めに発展したものです。
真田昌幸と幸村の父子が、この恩義・豊臣政権の威令が行き届いたことに感じた・恩義に報いないのは武士道に反するという美学によって、最後まで豊臣家のために奮闘したのです。
今日現在のウイキペデイアによると以下の通りです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%A3%E7%84%A1%E4%BA%8B%E4%BB%A4

豊臣平和令のうち、大名間の私的な領土紛争を禁止するものが惣無事令とされる。つまり、領土紛争においては、全て豊臣政権がその最高処理機関として処理にあたり、これに違反する大名には厳しい処分を下すという法令である。また、秀吉は関白の立場を明確に示す形で、あくまでも天皇の命令(勅定)によって私闘禁止(天下静謐)を指令するという立場を掲げた。[2]
惣無事令は、1585年(天正13年10月)に九州地方、1587年(天正15年12月)に関東・奥羽地方に向けて制定された。惣無事令の発令は、九州征伐や小田原征伐の大義名分を与えた。特に真田氏を侵略した後北条氏は討伐され北条氏政の切腹に至り、また伊達政宗、南部信直、最上義光らを帰順させる事に繋がった(奥州仕置)とされる。この惣無事令によって、天正十六年の後陽成天皇の聚楽第御幸の際など、参集した全国の諸大名から関白である秀吉への絶対服従を確約する誓紙を納めさせ、その違背に対して軍を動員した包囲攻撃のみならず、一族皆殺しを含む死罪・所領没収ないし減封・転封といった厳罰を与えた。いわば、天下統一は惣無事令で成り立ち、豊臣政権の支配原理となったのである。[3]

EU(ドイツ)と中国の関係1

16年9月の中国杭州でのG20の記念撮影では、オバマが端っこに追いやられ、習近平の右隣がドイツのメルケル首相、左隣がトルコのエルドアン大統領だったことについて、中国が外交儀礼を守れない礼儀知らずのイメージで報道されていましたが、そうとばかり言い切れません。
この原稿は16年9月G20の頃に書いておいたものですが、奇しくも17年7月7日のドイツG20では、メルケルが隣に習近平氏とし、トランプ大統領を端っこに立たせたことを紹介したばかりです。
16年の返礼だったのでしょうか?
ドイツが中国に優遇されているのは(対日戦勝記念式典参加で厚遇されたパク前大統同様に気持ちが落ちつかなかったでしょうが・・)中国に肩入れし過ぎて今更引くに引けない立場を表しています。
(フォルクスワーゲンもEUを除けば中国で多く売れているだけです)中国としては、日米を敵に回している結果、今後唯一の技術導入国としてドイツを重宝したい関係を表しています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HWY_Y6A720C1EA2000/

世界自動車大手の2016年1~6月期販売実績が28日、出そろった。2年連続の首位となった独フォルクスワーゲン(VW)は511万6800台と前年同期比1.5%伸ばした。排ガス不正問題が懸念材料となっているが、中国での拡大など需要の底堅さを示した。
世界最大市場となった中国での事業展開が差を生んだ要因の一つとなっている。景気対策の小型車減税の恩恵を受けトップ3社は販売を大きく伸ばし、増加率は トヨタが15.5%と最大だった。だが中国で先行するVWやGMの事業規模はトヨタの3倍強に達し、追い風もより大きくなった。」
上記によればトヨタの方が増加率が高くてもワーゲンの方が先行している関係で中国での存在が3倍も大きい・・その分中国に気を使う関係です。
両者の世界での年間販売数はほぼ同数ですから、トヨタにとって中国販売が世界販売の1割とすればワーゲンにとって3割,トヨタが2割とすればワーゲンにとっては6割と言う巨大な関係です。
この原稿の基本は16年7月16〜17日頃に書いていたものですが、同月18日日経朝刊4pを見ると、2015年ワーゲンの世界販売が1005万台で、内訳が、EU349万台、中国376万台となっています。
本拠地のEUよりも中国での販売の方が多い状態になっています。
上記記事によれば、燃費不正問題の世界的な逆風に対して「VWに助け舟を出したのは中国。現地で不正があまり話題にならなかった」となっています。
情報規制の厳しい中国で政府支援を受けるかどうかは大きな違いです。
燃費不正事件が報道されず、中国で伸びたことで打撃を防げたイメージの記事です。
人権や国際商慣習破りをどこかの首脳が批判するとすぐにその国の企業が狙い撃ち摘発や不正キャンペインが起きるのが中国のやり方です。
(数年前にマクドナルドが狙い撃ちされて以来業績低迷に陥っていました・・日本ではこの1年余りで急速に持ち直しましたが・・。)
消費者にとって、大関心のある燃費不正に対する中国の報道規制はVWに対する望外な援助になったでしょう。
報道規制どころか、ワーゲン救済を狙った特定車種向けの補助金政策で・・この逆張りを受けている(・・韓国系企業の電池使用を補助金対象から外していると言う噂)のが、ミサイル防衛用のサード配置で中国の逆鱗に触れた韓国現代自動車で、惨憺たる業績になっています。
http://www.recordchina.co.jp/a130248.html
「2016年3月1日、韓国の現代自動車と傘下の起亜自動車の中国での販売が急減していることについて、中国市場の変化に対応できなかったためとの分析が出ている。中国・環球網が伝えた。
韓国・聯合ニュースによると、現代・起亜の1月の中国販売台数は12万4495台で、前年同月に比べ約21.9%減少した。現代が7万5236台 で27.2%減、起亜は4万9259台で12.2%減だった。現代・起亜の中国市場シェアは6.1%と、2007年以来8年ぶりに最低水準となった。」
この記事を書いていた1昨年から2年近くもたってしまったので、その後の動きを紹介しておきましょう。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2017
国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数) (*)

2017年12月 2017年1-12月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 129.36 48.75 3.41 1,087.23 43.98 3.26
日系 37.66 14.19 -3.46 420.49 17.01 10.90
独系 40.12 15.12 5.97 484.97 19.62 7.52
米国系 33.15 12.49 1.50 303.95 12.30 2.53
韓国系 17.52 6.60 -21.36 114.46 4.63 -36.13
仏系 5.60 2.11 -35.41 45.58 1.84 -29.22

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より
(*)台数を修正いたしました。(2018年1月15日)

https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_201811月の中国新車販売は前年同月比13.9%減の254.8万台
2018年11月、自動車生産・販売の前月比はいずれもやや増加し、前年同月比の減少幅は依然として顕著であった。1-11月の自動車生産・販売の前年同期比は引き続き減少し、減少幅は1-10月に比べて拡大している。

国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数)

2018年11月 2018年1-11月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 90.99 41.86 -23.29 900.10 41.91 -6.03
日系 43.85 20.17 8.11 403.13 18.77 5.30
独系 46.36 21.33 0.32 463.90 21.60 4.28
米国系 21.37 9.83 -32.67 227.78 10.61 -15.89
韓国系 11.10 5.11 -23.40 102.03 4.75 5.25
仏系 1.69 0.78 -70.04 29.10 1.35 -27.21

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より

ついでに15年末のデータと18年11月の比較をして見ましょう。
15年末にはドイツ系シェアーが15,0%韓国系が8,11%だったのが18年11月ではそれぞれ、21,33と5、11%に変わっていて日系は17、4%が20、17%に変わっています。
中国としては、韓国が逆らうとこんな目にあうぞ!という見せしめのつもりでしょう。
国別ブランド乗用車販売シェア (工場出荷台数)

国別ブランド乗用車販売シェア(工場出荷台数)

2015年12月 2015年1-12月累計
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同月比(%)
台数
(万台)
シェア(%) 前年
同期比(%)
民族系 103.64 42.4 21.6 873.76 41.3 15.3
日系 42.58 17.4 8.1 336.43 15.9 8.7
独系 36.70 15.0 24.6 399.82 18.9 1.5
米国系 31.22 12.8 16.7 259.57 12.3 2.8
韓国系 21.47 8.8 17.5 167.88 7.9 -4.9
仏系 7.72 3.2 19.1 72.93 3.5 0.3

資料:中国汽車工業協会発表、各種報道より

http://news.nicovideo.jp/watch/nw2783338
中国のロッテマートがウェブサイトを再開
・現在も中国のロッテマートは9割が閉店
・THAADを配置させたことにより中国からバッシング中国のロッテマートがウェブサイトを再開
http://www.sankei.com/premium/news/170204/prm1702040027-n1.html洋式便器までダメ…中国のしつこい韓国「報復」 ミサイル配備の嫌がらせ露骨に 「春節」商戦あがったり
中国の嫌がらせはロッテに対する外「何でもあり」になっていることが分かります。
対中蜜月のフォルクスワーゲンは逆に大幅な伸びで、EU域外・・中国以外では殆ど売れていない・・独裁者の恣意的な恩恵に頼らないと国際競争力がない・・こうなると麻薬漬けになったような弱みがあります。
ドイツが言うことを聞かないとすぐに韓国のようなひどい目にあいます。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFD30H0Q_Q7A130C1000000/
VW、中国市場で稼ぐ 販売比率は欧州並み4割に (2016/12/29 0:43)
16年末でも約4割が中国販売です。

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