アメリカの格差社会(フードスタンプ配給)

6月24日以来の格差社会論に戻りますと、鄧小平の言った有名な、格差容認論・・「◯◯の猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言う・・金持ちになれる人から豊かになって行くと言う格差容認論は前向きですから、儲けに遅れた人の夢・・励みになります。
アメリカで昔言われたアメリカンドリームもこれに似たものでした。
現在欧米の格差論は、新興国の挑戦を受けて単純労働に高額賃金を払えなくなって来た・・負け始めた以上は、等しく貧しくなるべきところをアップルやユニクロみたいにタマタマ成功した経営者や金融のプロあるいは資源利権により特定一握りの階層だけが逆に金持ちになって焼け太りになっている点が大違いです。
アメリカの格差不満を背景にするトランプ旋風の張本人自身が、大金持ちであることを自慢する歪んだ社会です。
西欧を追い越す途中の新興国だったアメリカや・・中国や新興国の格差は、先に儲けた人ですから、こう言う社会では後に続く予定の多くの国民には「アメリカンドリーム」であり、賄賂であろうと何であろうと、「中国の超金持ち」は(自分もその仲間に入れば良いと言う希望で)まだ儲けていない人に夢を与えて来ました。
現在の先進国の場合には水位がずるずる下がって行く中で、特定の成功者だけが天文学的利益を独り占めしているのですから,ビルゲイツやジョブズ氏のように仮に特別な才能のあって不公平ではないとしても一般人には夢がありません。
中国や新興国の明日への夢がしぼんで行くと共産党幹部(の場合能力差ですらないのですから)だけが良い思いをしていることに対して国民の不満が高まります。
先進国で新興国労働者と同じレベルの仕事しか出来ない人は、本来新興国労働者と同じ収入でいい筈ですが、先進国の場合上記の特定巨額収入者の納めた税金や過去の利権収入(海外進出企業からの送金など)でインフラや社会保障コストが補填されているので、なお新興国労働者の何倍もの生活が出来ています。
生活保護その他何らの給付も受けていないつもりでも、非課税者は言うに及ばず納付税額の少ない人は、納付額以上にインフラを利用出来る恩恵を受けている人が一杯います。
月10万円前後の収入で税を払っていない人が保育所利用している場合、その維持費として税で膨大なコスト負担しています。
保険制度に至っては納付保険料の何十倍も使っている人はざらでしょう。
このように格差と言っても直接収入格差は、インフラ次第で大幅に緩和される結果、本当の格差感は社会のインフラ充実度によります。
アメリカの一人当たりGDPが高いと言っても資源や石油利権収入、金融取引、知財収入等の平均ですから、平均収入の議論しても工場労働者やサービス業の平均賃金など詳細は)何も分りません。
アメリカは昨年あたりから末端労働者の賃金水準は中国の人件費に負けないと豪語しているくらいですから、工場労働者やストアー店員の個々人の給与は高くありません。
ですから金融資本や知財等海外からの収益による高額所得者がいる結果却って格差が激しくなるし、成功者の収入が下がって行くと格差は縮小するでしょうが、そうなると将来的に(社会保障を含めた)収入が下がって、本来の働きレベルに下がって行く不安があります。
知財収入や過去の遺産(利権収入)等の分配に頼るようになると受益者が少ない方が有利・・高齢者が退職金等の預貯金を90歳まで残せるか心配になるのと同じでいつまで続くかに関心が移って行きます。
この不安がイギリスの移民増加反対論・・分配対象を減らせと言う運動が盛り上がった現実です。
金融や知財のぼろ儲けや資源・石油利権等で、一人で何十億と言う収入のある人の払った税金や寄付で多くの国民がフードスタンプを配給されていると、国民は不満と言うよりも将来が不安でしょう。
非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。
アメリカではフードスタンプ受給者が増え過ぎていて、この数年支給を絞り始めています。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/09/food-stamp-enrollment_n_6441040.html
「ボーレン氏「2016年にはさらに多くの人びとが給付を失うことになるでしょう。たとえ、登録申請者数の動向が、これまで通りであっても」と述べた。
政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
ちょっとデータが古いですが別の解説によると以下のとおりです。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=279619
13/07/27 PM10
「四人家族で年収2万3314ドル(約230万円)という、国の定める貧困ライン以下で暮らす国民は現在4600万人、うち1600万人が子どもだ。失業率 は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という驚異的な数字となる。16歳から29歳までの若者の失業率を 見ると、2000年の33%から45%に上昇、経済的に自立できず親と同居している若者は600万人だ。」

フードスタンプは所帯単位で配給するので、約3億あまりの人口を割ると受給率は労働者3人に1人とも言われていますので大変な事態です。
たったの1、25ドルの食品購入券(1ヶ月分で所帯全員分とすると結構な額ですが・・)を貰うために夜中の12時に(何故か深夜に配布する仕組みらしい)並んでいる映像を見ると・・それが全米労働者の3人に1人と言うのでは、如何に格差が進んでいるかが分ります。
こんな夢のない生活で何年もよく我慢しているものだ・・中国よりも先に暴動が起きてもおかしくないような気がしますが・・。
トランプ氏の煽動に乗りたくなる人が増えているのは当然でしょう。

班田収授法の対象地

 

郡司から全領地を取り上げる(計画すら)出来ずに、旧豪族には既得権として一定領域の荘園(不輸不入の特権)の保持を認めて一部だけを解放させて国有化に協力お願いをするか、豪族の領地人民は全く手を付けずに、領内の人民登録・名簿の提出を求めて、名簿の数に割当てた賦役・納税を郡司に義務づけたくらいが関の山だったのではないでしょうか?
口分田・・土地の割当をすると簡単に教科書に書いていますが、その前提としての土地面積の測量・地番の特定等は明治時代でも大変な作業でしたから、これを短期間に全国的に実施出来たと見るのは無理です。
国家が土地の特定をして帳簿に登録する作業・・今で言えば登記簿作成作業については、09/09/09「旧登記法制定と戸長からの分離コラム」前後で紹介しましたが、地形や面積を特定しその位置関係を特定する作業は大変なことで、明治になって登記法が出来たのは漸く明治19年のことでした。
その後、土地測量の正確性確保のために今でも営々と(一筆調査と言って)測量が続けられている状態ですから、如何に土地の特定が困難な作業かが分るでしょう。
これだけ困難な事業を、古代に(まだ文字すら万葉がなを使い始めた程度の時代・・しかも紙もなく木簡竹簡の時期ですから、図面など作れません)に短期間に全国で仕上げたなどと想像すら出来ないことです。
いわゆる太閤検地すら歴史に残る大事業として普通の教科書に紹介されている有名な歴史事件です。
租税目的の太閤検地は測りっ放しで終わりですが、古代の班田収授法の時には土地特定後の口分田の割当作業・・・羊羹のように切り分けることも出来ずとても複雑な作業になりますが、全国農民に割り当て出来るほどの官僚組織もなかったし、記録する文字も未発達で紙すらありません。
コンピューターの発達した現在でも国民漏れなく帳簿管理して特定物を配給するのは難しいのですが、(年金の記載漏れ事件を想起して下さい)土地のような輪切りの出来ないものを切り分けて分配するなど、どうして円滑に出来たのでしょうか?
戦後何十年もかかって(重機を利用)実施した土地改良法による改良は、莫大な資金を投下して現在の条里制とも言うべき長方形の画一的な農地に作り直す作業でしたが、これは農機具を入れる機械化農業向けであってそれなりに経済合理性があります。
これに対して古代・農機具もマトモにない・・人力中心の作業環境で、莫大なコストを掛けて何のために四角い農地に作り直す必要があったか、それのコスト負担をどうしたかを考えても気の遠くなるような財政負担です。
実は一定規模以上の四角い農地を作るのは大変な測量技術が必要です。
水田は水を入れるので文字どおり水平に地盤を作らないと,浅いところと深いところが出来て、稲の生育に適しません。
ある稲苗が殆ど水没しある場所では殆ど水がないと言うような凹凸段差があるのでは困ります。
狭いところでは何とかなりますが、広くなると水平にするには一定の技術が必要です。
完全な班田収授法の摘用は、制度発足後新田開発を豪族に命じて、その分だけを理想通りの条里制にして国直轄の口分田にして行った可能性があります。
防火基準や耐震基準が出来ると、既存の建物には適用せずに新築分から適用するようなやり方です。
古代の租庸調は人頭税中心であったことを振り返ってみると、土地面積を基準に課税する前提がない・・地図もなければ測量技術もない時代であった実態が分ります。
また、人頭税を逃れるために、戸籍記載を逃れる浮浪者(無戸籍者)の増加が問題となり、男子が生まれても女子登録するなどがはびこっていたのは、間に郡司と言う有力者が介在しているから可能だったです。
各人が不正をするのは怖くて出来ないものですが、組織が二重帳簿を作るのは昔からどこでも簡単にあり得ることです。
徳川時代の大名の石高が、表高と実高で大きく違っていたのは石高に応じた各種負担・・結局は税を逃れるための智恵でした。
また租庸調逃れのために戸籍登録から逃れることが流行ったのは、裏返せば政府から農地を貰う必要性がなかったことが推測されます。
今考えれば税を逃れる代わりに農地を貰えなければ困る筈ですが、新田開発以外の既存農地はそのまま個人所有ないし豪族所有であったとすれば、くれると言われてもありがた迷惑だったことの説明がつきます。
耕すべき農地のないもの・・一種の失業者だけが口分田を貰うメリットがあったことになります。
現在は共働きなどがあるので5%失業と言っても一家で一人しか働かない時代に直せば2、5%失業以下ですが、昔は失業保険その他の社会保障システムがないので、失業=あっという間に飢え死にする時代ですから、完全失業者が5%もいたら大変です。
ですから農地のない一家があちこちのムラに数%もいたかどうかですから、この人たちだけが口分田配給で喜ぶ対象だったことになります。