内務留保の重要性と流動資金の関係4

経営者にとってはいざという時のための必要資金と思っていても、プロから見たら心配しすぎ・もっと少なくて良いという場合もあるでしょうが、(金融機関との間でいざという時には、例えば即時に500億円まで融資を受けられる融資枠契約をしておけば保証料だけ支払えばすみます・・こういう工夫の余地)こういうことはアナリスト等の個別分析が有効な分野であって、一般論で煽ることではありません。
個別企業分析能力のない一般エコノミストがアナリスト意見・市場の声(株価反映)を踏まえないで単に最高益に対するやっかみ的連載を繰り返すのは困りものです。
産業界は最高益更新に湧いているが庶民には関係がないという型通りのやっかみ報道に見えます。
長期好景気と言っても庶民には「実感がない」という根拠なき断定報道も同根です。
仮に一般論であるならば、日本の企業全体の総売り上げの推移と手元資金との比率変化を論じるべきですが、全体の売り上げがどうなっているかの比較記事を見たことがありません。
産業規模が大きくなれば絶対額が増えるのは当たり前ですから絶対額だけを煽っても意味がありません。
1昨日(土曜日)はせっかくの好天に誘われて佐倉の川村美術館に出かけてお気に入りのな庭園を見ながらゆっくり食事をして帰ってきたので、夜帰ってから新聞をちらっと見て驚き、今日もこの追加意見に追われていますがまだ昨日からまともに新聞を読んでいませんので読み間違いがあるかもしれません。
テレビ局のサンゴ礁に関するヤラセが大問題になりましたが、テレビ局がサンゴ礁についてどういう意見を発表しようと勝手としても(中立性違反の問題は別として)が、前提事実にやらせ・虚偽または誤りがあるのではまともな意見とは言えないでしょう。
私のように趣味で書いている個人のブログでも前提事実の記憶についてはうろ覚えなので大方自信がないと毎回のように断りながら書いていましたが、最近簡単にネット検索できるようになったので前提事実についてはできるだけ(その分煩雑になっていますが・・)引用する(・引用文を信用するかは引用先次第・読者におまかせする)ようにしています。
紙媒体の新聞の場合、そのままコピーできないので、文字をそのまま打ち直していますが・今回あまりにも数字が違いすぎるので引用ミスをしたかな?と心配してまだ捨てていない21日の新聞を読み返してみましたが、「日本企業が持っている現預金は200兆円あまりになっている。」とはっきり書かれていました。
日経新聞では「手元資金と現預金の意味を交換して表現すべし」という内規があるとした場合、記事中に「当社では、『現預金とは一般にいう手元資金』のことであり、『手元資金とは現預金』のことです」という説明が必要ではないでしょうか?
新聞・マスメデイアは社会の公器かフェイクニュース元か?
日本では朝日新聞の慰安婦報道以来・・・トランプ大統領のフェイクニュースの批判+ロシアによるメデイア操作疑惑もあって、大手メデイアの信用力はガタ落ちですが、このような唯我独尊的熟語悪用がまかり通ると、トランプ氏の意見の肩を持つ人が増えてくるでしょう。
ところで、25日朝刊では、「直近で」と一応根拠らしいものを示していますが、「直近」というだけで何のデータによるのか?かつ何月何日付けデータを根拠にしているのか不明です。
11月21〜22日に私が、たとえば手元資金必要額は原則として・売り上げ規模規模拡大や新規投資など資金を必要とする個別事情チェックした上での批判でないと合理的でないと書きました。
好業績が続くと増産投資を計画をするのが普通ですが、設備投資資金の蓄積や、納税資金や配当資金需要などの例外を見る必要がありますが、これも結局は月商規模に関連します。
こうした(私の意見など問題にしていないでしょうが、他に批判があったのでしょう?)批判に対応するためにか?26日に紹介した通り総資産が4割しか増えていないのに手元資金が8割増えているのが如何にも良くないかのような書き方になっています。
いかにも反論のように見えて実は比較対象が違う(・手元資金の必要額は資産と比較する意味がない)ので何の反論にもなっていません。
日々・毎月の決済資金の必要性は、資産規模に比例するのではなく売り上げ規模等を大きな要素にして(好業績が続くと増産投資を計画する企業が多い→2〜3期分の税引き配当後利益を蓄積して不足を社債等の発行で賄うなど)出入り資金必要性に比例すると書いてきたのであって、資産規模には直接の比例関係がありません。
百億円の不動産等の資産を有する人と10億円しか資産のない人が同じく月商1000万の飲食店を経営している場合、(新規出店資金需要や食中毒事故による特別損失出費等の予定がない場合)必要な手元資金は資産の多寡に比例せずに売り上げ規模に比例する(10億の資産しかない人も必要な手元資金は同じ)ことは明らかでしょう。
この数十年のトレンドは持たざる経営・できるだけリースその他資産規模圧縮・身軽経営・外注・アウトソーシング経営が合理的とされてきたので、企業は売り上げ規模拡大に比例して資産を増やさなくなってます。
売上でさえ規模拡大やシェア拡大を目指さずに、利益率を重視するようになっています。
個人も車など保有よりは必要に応じてレンタルやシェアーするなどのトレンドになっている現状を無視する変な比較をしていることになります。
25日掲載記事は好業績に関わらず投資しないで内部留保が溜まっている・これを投資に振り向けるべく・・内部留保課税を直接言わないものの相応の政治圧力が必要というイメージ論旨が満載です。
最高益なのに(内部留保していて)投資がその割合に少ないというイメージ論旨ですので、日本企業の最高益の実態がどのくらいになっているかについて日経新聞24日朝刊第一面掲載の「最高益の実相」を見てみると、以下の通りです。

「18年3月期の純利益は2期連続で過去最高の見通し」「7%の壁ー上場企業の売り上げ高経常利益率は、今期バブル崩壊後初めて7%の壁を突破する」「企業が稼ぐ力を高めた要因は3つある。
1つは金融危機後事業の選択と集中を加速したことだ。」
「ソニーは、・・競争の激しい分野一方で量を追わない・得意分野に集中する戦略に転換したのが奏功する」

経常益更新・最高益の原因として日本業が無駄な資産を削ぎ落とした筋肉質経営に努力した結果、そこへ好景気と重なり好循環になってようやく平均利益率7%超えも視野にはいってきたという趣旨ですし、これが日本全体の常識的理解でしょう。
バブル期以来の好業績といっても7%を超える程度ですが、ここでの関心は投資が7%の高収益と比例しているかの比較でしょう。
さらに企業投資は国際化しているので、国内投資が国際連結利益アップと関連するわけではありませんから、企業の内部留保(最近では手元資金)がが多すぎるもっと投資しろと騒いでも国内に投資する保証はありません。
アメリカで車の販売が伸びればアメリカ等での増産投資が増えるのが普通ですし、中国やベトナムタイ等でコンビニが儲ければ現地出店が加速するのであって、国内出店投資が増える関係ではありません。
国際連結の利益率と国内投資額を比較するのは非合理であることは、子供でもわかる論理です。

内務留保の重要性と流動資金の関係3(メデイアと用語統一必要性)

昨日紹介した解説でも「手元資金」には「流動性の高い資金の総称」とあって現預金に限らないことが示され、短期有価証券を含むことが多いとなっています。
そもそも言葉の意味から考えても「現預金」の表現は現金と預金等の個別分類を表していますし、手元資金とか決済用資金・流動性資金等の使用目的による表現よりは範囲が狭いことが明らかで、下位概念の現預金の方が手元資金よりも多いとは(経済知識のない私のようなものでも)常識的に想定できません。
手元資金等はすぐに現預金化できる資産を含む=手元資金の方が現預金よりも多いことが経済用語としても明らかですが、日経新聞記事ではなぜ逆転した書き方になっているのか不思議ですが、私のような素人が食事や仕事に出る合間にちょっと読む程度の人間には思いがけない深い意味がこめられていのかもしれません。
仮に日経新聞で論説を書く人の経済用語理解が間違っているとした場合、日経新聞の21日記事と25日記事両方とも間違っていることってあるの?という疑問です。
仮に別の人が書いているとすれば2人とも逆に理解していることになるほか、両記事ともに内容からして情報収集して歩く新米記者が書ける執筆ではなく、ベテランのエコノミストによるものと思われますが、プロが2人も揃って経済用語の基礎知識を間違って逆に書くようなことがあるのでしょうか?
仮に執筆者が同じとしても・校正等の事務局が充実しているはずの大手新聞社の語句チェックが機能せずに2回も通っていることになりますが、(現預金が200兆円で手元資金117兆円と出れば普通は?おかしいぞ!と気がつくものです)2回目の記事では1回目と大幅な数字違いがあるのでこの時点で「どうして大きな数字違いがあるのか?」に気がついて見直せば、どちらかが間違っていることがすぐ分かる筈ですが、2回ともスルーしているとすれば関連部局のチェック能力に疑いが起きます。
事務局能力の名誉のために邪推?すると関連部局ではわかっていたが、世論誘導のために?意図的にスルーさせて逆の意味で書く必要があると判断したのでしょうか?
もしも世間常識と違う意味で熟語を意図的に使う場合には、誤解を招かないように「ここではこういう意味で書いています」と「断り書き」を入れるのが公平な立場でしょう。
ちなみに資金滞留批判のトーンは21日の「大機小機」に続いて24日の日経新聞の第1面に「最高益の実相」欄として大きく出ていて(1面の左約半分の大きさ)その続きで今問題にしている25日3pの記事になっていることがわかります。
今朝の日経第一面では「利益剰余金56%が最高」の大見出しでいかにも巨大な剰余金を溜め込んでいるかのようなイメージ強調の連載は終わっていません。
内容を見ると、設備投資の動きが紹介されていますが、以下の通りあくまで部分の紹介で全体の動きを期待するかのような書きぶりです。

「スバルの・・社長は・・・『次元が変わる技術進化に備えこれまでできなかった設備投資や研究開発を増やす』と話す。溜め込んだお金をどう使うか一層のの説明を求められる」

と思わせぶりに書いています。
「思わせぶり」だけでカチッとした事実がないといえば、朝日新聞の記事の多くにその傾向が強くて歯ごたえがないので20年以上前に朝日新聞から日経新聞に変えて満足していたのですが、日経も最近ではムード報道中心になって来たのでしょうか?
事実の裏取り必要性といえば、最近では週刊文春の山尾志桜里氏の不倫騒動で見ても分かるように、(経済報道のように難しいことではなくスキャンダル的事実中心ですが・・)裏取り能力の高さに驚きます。
こうした手を変え品を変えての日経新聞報道の流れ(内部留保悪玉説の浸透努力?)を見ると、21日「大機小機」で小さく出して置いて(その間小刻みに何かを書いていたのかも知れませんが、私は気づきませんでした)24日は第1面大見出しと格上げして25日には3pで大きな記事にしてきた流れを見ると「大機小機」掲載時点から、社あげての目標設定によるシリーズ連載企画・・執筆者の個人プレーではなかったように見えます。
新聞社組織あげて(世論誘導したい)企画でありながら、この程度の基礎概念を押さえる必要性スラ認識できない組織レベルなの?という疑問です。
日経新聞の「経済欄はまるで議論の対象にならない・しっかりしているのは文化欄だけ」という口の悪い人の意見がネット上で流れていますが、以上を見ると驚くような低レベル組織になっているとの誹謗?もムベなるかな!という印象・誤解?(私の読み方が間違っているのかも知れませんが)を受けました。
もしも単語表記の単純ミス・現預金が117兆円で手元資金200兆円が正しいとすれば、(6ヶ月の誤差がありますが、10月末時点の現預金が私には不明なので)仮に同時期として計算すると200−118=82兆円が短期有価証券等保有であり、現預金ではなかったことになります。
世界企業で言えば、現預金は世界中に散らばった事業現場で日々支払いできる資金・現金払いの場合、預金払い戻し時間が必要ですが、大口支払いは振込等の操作で済むので時間誤差がほとんどありませんが、有価証券の場合どの銘柄をいくら売却して資金化するかの判断時間(売却優先順位を決めておくことでこの時間は短縮できます)が必要な他に売却指示後現金化できるまでの決済時間・・最短で5〜6日の誤差があります。
このために約1週間〜10日程度のタイムラグに耐えられる・+アフリカ現地で不足した場合に外貨両替して送金する時間差(為替リスクも考えある程度余裕を持った現地通貨保有)程度の現預金が現地出張所等に必要となっています。
短期処分可能な有価証券の利用とは、通常決済には十分であるが九州の震災等のような突発事態への二次的備えとして、預金よりマシな国債等への一時預けにしている数字が短期保有有価証券ですが、これは4〜5ヶ月先に予定されている大口決済資金(例えば配当までのプールとか工場用地取得契約や企業買収がまとまりそうな場合とか、本社ビル完成引渡し予定数ヶ月先にある)などがこの種の資金になってプールされます。
企業が必要もないのにゼロ金利下で不要な資金を現預金で持っていたくない点については意見相違がない(無駄に持っている方が良いという人は滅多にいない)のは明らかですから、新聞・言論機関が不要資金プールするのが合理的か否かを議論する必要はありません。
ある企業の保有資金が「過剰・無駄」かどうかこそが議論の対象ですが、それは個別企業の事情分析によるべきで抽象論で煽るのは間違いです。
希望の党の公約の一つ「不要不急のインフラ整備をやめる」という点についてこの後で書いて行く予定ですが、「不要不急の公共工事をした方が良い」という政党はありませんので「何が不要不急かの選択」を示さない公約ではどういう政治をする約束なのか意味不明なのと同様です。
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性がある・・
外部から見て一見多すぎるように見える場合にも個別企業によっては相応の必要がある可能性があります。
今朝の日経朝刊で紹介されていたスバルのように、この1〜2年好業績を背景に単なる増産投資ではなく、「次元が変わる技術進化に備えこれでまでできなかった設備投資や研究開発を増やす」ために準備している企業もあるのです。
・・本当に不要な資金なのか、近日中に大口決済が待っているか、配当支払い資金や設備投資計画の有無等の個別事情によりますから、個別企業の実情無視の日本全体の一般論に意味があるとは考えられません。

内務留保の重要性と流動資金の関係2

内務留保の重要性と流動資金の関係2

11月22日に日経新聞21日大機小機掲載の「現預金200兆円あまり」の記事についてその数字が正しい前提で「200兆円もあるからいかにも無駄に保有しているかのように・・ひいては内部留保課税が正しいかのようなイメージを振りまくのは不合理な意見であるという意見を22〜23日に連載して一旦終わりにしていました。
ところが驚いたことに、17年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」欄には、「投資抑制で山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いています。
24日から日本の雇用形態がどうなっていくべきかのテーマで連載中ですが、ここで大きな数字の違いが昨日の新聞で出てきたので内部留保→流動性資金について改めて見直す必要を感じたので本日は流動性資金等について急遽再論・追記の割り込みをすることにしました。
25日の記事も21日の記事同様で、企業がせっかくの好業績によって得た資金を再投資しないで死蔵しているのでもっと投資させるべき・・そのためには内部留保課税で事実上投資を誘導する方向性を議論すべきだというイメージ植え付け方向では同じですが、日経新聞が11月21日に「日本企業の現預金200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円と、約半分あまりの数字に引き下げて議論を進めていることの違和感です。
大きな数字変化の意味はなんでしょうか?
手元資金と現預金の表現差にどのような違いがあるのでしょうか?
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc210.htmlによると以下の通りです。

金融経済用語
手元資金は、貸借対照表の現預金(現金、預金)と短期保有の有価証券を合わせたものをいいます。これは、企業が比較的自由に使える資産と位置づけられ、その額が有利子負債を上回っている場合を「実質無借金」と言い、そのような状況の企業を「実質無借金企業」と言います。
・・・・・・
※2008年-2009年の金融危機では、日本の企業は資金調達が難しくなった経験から、手元資金の重要性を認識させられ、その後、自己防衛として手元資金を積み上げるようになった。

上記によると11月21日の大機小機記載の「現預金」の単語と25日記載の「手元資金」との違いは企業保有の短期有価証券等を含めるかどうかの違いらしいです。
そうとすると、もしもこの間の基礎数字の激変がない限り・・あるいは同時期であれば手元資金の方が、現預金合計よりも大きいはずです。
16年度末(3月末?)からわずか(直近とは10月末?)6〜7ヶ月経過で現預金だけではなく、好業績発表の続いている経済状況下で有価証券保有を含めても4割も減ったとは想定できません。
しかも同記事には「過去最高」とも書いていますので、その間に減ったとは考えられないのでどちらかが間違っていることになりそうです。
21〜23日に書いていた時には新聞記事の事実記載についてはこれを信用して200兆円が正しい前提で「意見」相違を書いていたのですが、同一新聞社の記事にこれほど矛盾がある?大幅に違っていると議論の前提である200兆円の数字が誤りなのか、それとも「現預金」の熟語表記があやまりなのかを明らかにする必要があります。
そこで前提数字自体を見てみる必要を感じて検索してみると以下の資料が出てきました。http://www.murc.jp/thinktank/economy/overall/japan_reg/watch_1703.pdfによると以下の通りです。
三菱UFJリサーチ&コンサルテイング2017年3月17日

上記は出所も計算方法も明記していて信用性の高そうなものですが、これによると16年度末200兆円という数字自体は大方あっていてこれを現預金ではなく手元流動資金と分類していますが、21日新聞記事では、この数字を「現預金」と表記したことが間違っていた可能性があります。
不思議なことに25日記事では手元資金が117兆円という表示ですが、これは逆に現預金のこととすれば上記グラフと辻褄が合いますが、25日の記事で用語訂正のつもりであれば、25日記事で「現預金117兆円」とすべきだったように思えます。
そうすれば「あゝ21日の現預金の表示が間違っていたと気づいたのかな?」と素直に理解可能ですが、25日表記が逆に「手元資金117兆円」(双方の用語利用が正しいものとして理解するには、「手元資金の方が現預金より少ない」と読まないと混乱します)と書いているのが不思議です。
上記金融経済用語の解説が間違っているのでしょうか?
念のために別の用語解説ものぞいて見ました。
https://kotobank.jp/word/%E6%89%8B%E5%85%83%E8%B3%87%E9%87%91-668563

デジタル大辞泉の解説
てもと‐しきん【手元資金】
代金の支払いなどにいつでも使用できる、流動性の高い資金の総称。現金や普通預金が代表的だが、満期が3か月以内の有価証券・定期預金等を加える場合もある。手元資金を潤沢に保有することで不測の事態に対処しやすくなるが、利子がほぼ付かないため、必要以上の確保は資金効率の面で望ましくないとされる。

上記によっても手元資金の方が現預金よりよりも大きいことが明らかで、日経新聞が独自の用語利用していることがわかります。

内務留保の重要性と流動資金の関係1

リーマンショックの大幅落ち込みから企業規模が回復膨張している現状から、産業界全体で急激に手元資金が増えているのは理の当然です。
その他発行済社債の満期決済用準備金や新規投資案件用の準備資金・・トヨタがEV化に乗り遅れないように数日前にもどこかの企業に何百億円出資したと最近報道されているように、近年では機動的出資資金の用意も必要ですし、急激な環境変化に対する予備資金も必須です。
任天堂やソニーが長期の赤字に耐えて見事に復活できたのは、豊富な蓄積があったからです。
利益を毎年残さず全部吐き出して蓄積ゼロでは、リーマンショックのようなことがあると国中の企業がほとんど全部倒産する事態になります。
トヨタでさえもショック前に比べて約3割売り上げ減のまま低迷していたことが分かりますが、一般に売り上げの5%前後しか純利益がないとすれば、3年以上も3割減のままであれば、巨大な赤字決算が続いてた可能性があります。
少し前年比プラスに回復を始めたところで、トドメを刺すように米国ではトヨタパッシングが起きてこれが12年のマイナスになったのでしょうか?
時期的にいつだったかを見ると以下の通りです。
http://uskeizai.com/article/156383418.html

2010年07月15日
2009年から今年のはじめまで、世間を騒がしたトヨタのリコール問題。覚えていますか?
2010年2月28日 トヨタリコール問題 アメリカの国策的日本いじめ
あれの騒ぎから半年が経とうとしていますが、自動車道路交通安全局(NHTSA)は、第三者機関によるトヨタ不具合の調査結果が報道されていました。ウォールストリートジャーナルによると、NHTSAがうけたトヨタ車の不具合報告は、3000件以上。このうち、93人が亡くなった死亡事故が75件ありました。
ここでクイズです。
このトヨタ車の不具合報告を受けた死亡事故のうち、トヨタ側の欠陥によって起きた死亡事故は、75件中何件だったのでしょうか?
答え 1件
2009年8月28日、サンディエゴのフリーウェイで3人を乗せたレクサス車は、アクセルがブレーキマットにはさまり車が加速して事故となりました。この1件です。
あとの74件は「運転ミス」だったとか。
トヨタ問題で火がついているときは、「ブレーキだけの問題なのか」「電気系統に不具合があったのではないか」などいろいろなことが政治家、メディアで騒がれました。
■ ラフォード運輸長官は、「トヨタ車を運転しないほうがいい」と発言。
メディアで騒がれていた後に、ブレーキが踏まれた形跡も電気系統が誤作動した痕跡もなく、結局ウソだということは分かった。この運転手は自己破産寸前で、訴訟を目的に騒ぎをおこしたのではないかともいわれています。
さんざん政治家から、メディア、そしてアメリカ人が騒ぎ立てた挙句、問題のほとんどが「運転ミス」だったとは。
トヨタは世界中の車で800万台のアクセルペダルとブレーキマットをリコールしました。
いったい、このトヨタリコール問題は、なんだったのでしょうか?」

やり方は違っても結果から見ると中国の反日暴動〜焼き討ちと同じです。
個別企業で見ると松下電器に対する中国での暴動などが起きると一定期間の損金計上に耐えられる予備資金がないとすぐに倒産危機で(株暴落)海外企業に安く買収されてしまいます。
あるいは地震による操業停止など大規模損害はいつ起きるかしれません。
個人の場合で言えば、物損被害背保険あG出ればなんとかなりますが、(勤務先が潰れない限り収入は以前同様ですから)企業の場合、工場が破壊される物損の保険では補填できない・・半年から1年以上操業できない(人件費等の固定経費はかかります)損失・・この間顧客が競合他社に逃げて顧客を失うなど)損害が巨大です。
今回の神戸製鋼に始まる日産等の検査不祥事でもすぐに経営危機にならないのは手厚い予備資金・・長年の利益蓄積があるからです。
危機対応能力を磨いておくべきだとか、不祥事を起こさない体質にすることこそが優先課題という反論があるでしょうが、それは次元の違ったすり替え議論です。
世界展開に合わせてあちこち網ののように広がったあちこちの出先で日々の支払いが必要ですので手元流動資金が増えて行くのは当然です。
個人でも同じで一定の年齢になれば、収入全部を毎年使いきっている人・病気したらすぐに生活保護申請という人は滅多にいないし賞賛される生き方ではありませんし、中小企業でも同じです。
メデイアが内部留保拡大を問題視して繰り替えし報道するならば、ここ約10年の企業規模の変化率及び、個々の企業にとっては近々満期のくる社債決済資金の積立や企業買収資金を準備するなどのいろんな事情を総合してもおおすぎるかどうかの個別判断を示すべきでしょう。
産業界全体で見れば一定額が溜まっていても、個々の企業別に見れば配当や納税予定資金や大型社債等決済時期の違いに合わせてそれぞれの企業が準備金を保有している違いがあります。
大口決済期が過ぎたり買収案件が一段落すれば、その企業では保有現預金が激減していても、産業界全体ではいつも大きな資金が滞留しているのは当然です。
結局産業界の規模拡大に合わせて資金が動くようになれば、1国の産業界全体の滞留(準備)資金が大きくなるのは当然です。
この種のデータの推移を見ながら、議論をしないと意味がありません。
日経新聞の大機少機に書いている200兆円という現預金の計算方法が書いていませんが、「16年度末」とだけあるので、仮に上場企業の決算期末残高を単純合計したとすれば、3月末決算企業だけの合計でしょうか?
全上場企業合計とすれば、それぞれ決算期が違うので3月末の基準日で(決算書もなしに)どうやって集計したのか不明です。
しかも、企業は決算確定後に納税や配当等を実施するのですから、決算直後の資金準備が必要でこの段階の数字の場合もあります。
企業によっては4半期ごとの速報をしていますが、4半期の開始時期が企業によって違うと時期的な食い違いがおきます。
参考までにトヨタの第2四半期の(売り上げとキャッシュフロー関係の)データを見ると以下の通りです。http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/library/negotiable/2017_9/business.pdf

当第2四半期連結累計期間の業績については、次のとおりです。
・・・・売上高は7,688億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて2,360億円 (44.3%)
の増収となり、営業利益は364億円と、前年同四半期連結累計期間に比べて92億円 (34.0%) の増益となりました。
2017年8月 マツダ(株)と業務資本提携
売上高 14兆1,912億円 ( 前年同期比増減 1兆1,206億円 ( 8.6%) )
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は2兆8,143億円と、前連結会計年度末に比べて1,807億円 (6.0%) の減少となりました。・・・・

トヨタの第二4半期速報によると同社のキャッシュフローはこれまで書いてきた通り、概ね月商の1〜2ヶ月以内でむしろ少なめで売り上げ相応の必要資金・2〜3兆円前後で推移していることがわかります。
特に過剰な(無駄な)キャッシュフローを有しているわけではなさそうです。
内部留保とは、納税後かつ配当後の残高の過去数十年以上の積算合計ですから、即応決済用(納税・配当時期直前には納税・配当資金を準備し大型工事竣工予定で支払いの直前など)のキャッシュフローとは基礎数字が違います。
内部留保とは言っても「工場などの資産になっているのが普通」という反論がある時に、内部留保中に現預金が200兆円もあるとは書いていないものの、なんら限定なしに企業に現預金が200兆円もあるから、「これを投資に回すべき」という意見を書くと、内部留保の一部か?と誤解する人が出るでしょう。
ロッキード事件で500万円もらった人について当時メデイアでは「庶民感覚では途方もない巨額」と報道し、街の声として「我々庶民には・という「怒りの」声を報道していました。
希望の党の結党に当たって数十億円単位の資金が必要なことが合流の資金的背景と書いてきましたが、個々人がレストラン等で消費するのとは違った規模の資金が政治家のボスには必要であり(個人の懐に入れるお金ではありません)、必要なので個人の金銭感覚と比較しても意味のないことです。
同様にメデイアは200兆円という巨大な数字を上げて鬼面人を驚かすような書き方ですが、日本の経済規模を土台にして200兆円が多すぎるかどうかを論じないと合理的でありません。
大機小機欄は、データ根拠まで書けない小欄ですが、誤解を招かないような書き方が必要です。
内部留保の一部とは書いていないのに誤解するとは思わなかったということでしょうが・・ちょっと立ち読み的に読んだ人は「なんだ現預金が200兆円もあるのか?」と驚き誤解しがちです。
内部留保と言ってもそれは「現金ではな工場等の資産になっている」と一般に反論されている時に、関係のない記事でそれとなく「現預金が200兆円以上もある(利用されないで眠っているかのような書き方)のは問題」という書き方をしていると国民を誤解させる効果が大きいでしょう。
日本全体で見れば決済用資金としてみれば200兆円規模が必要か否かは個別企業の決算内容を精査しないと不明なことですが、このチェックがなく一方的に手元流動資金が増え続けている(企業規模拡大すれば比例して増えるのはあたりまえです)という垂れ流しでは、企業が無駄に資金を溜め込んでいるかのようなイメージ刷り込みになります。

※ 11年11月25日の日経朝刊3P「最高益の実相」には、「山に積み上がった手元資金だ。直近で過去最高の117兆円と00年度に比べて8割増えた。総資産の増加率(4割)より多い)」と書いていて、同じ日経新聞が「日本企業の現預金11月21日に200兆円あまり」と書き、その4日後に手元資金が過去最高の117兆円という約半分の数字を基礎に議論を進めていることがわかりました。
同一新聞でありながら大幅にに違う数字を上げている点については26日に追記・再論として掲載しましたのでこのコラムの続きとしてお読みください。

ゼロ金利下で企業が資金を有効運用しないで無駄に寝かしていると株主にまともな配当をできないし、多くの企業は銀行からの借り入れや社債発行等で有利子債務負担をしているので、(優良企業のトヨタでもしょっちゅう社債発行しています)使用目的もない資金を社内に寝かしておく余裕がないのが普通です。
企業性悪説のようなムード報道ばかりしないで企業が無駄に資金を持っているというならば、その根拠を企業別に具体的に示すべきでしょう。
ゼロ金利下で利用目的もなく資金が社内に本当に無駄に寝かしているのならば、そもそも株主利益に敏感なアナリストや機関投資家・株主が承知しないでしょう。
内部留保や手元流動性が多すぎるかどうかは、本来は個別帳簿を日々精査チェックしているアナリスト等の評価・・これを反映した市場の評価に委ねるべき分野であって、素人のメデイアがつまみ食い的に世論を煽るべき分野ではありません。
言論の自由・批判が必要とは言えその分野の専門家がいるのですから、専門家の市場意見・彼らの意見総合によって相場が動いている点ををまず尊重すべきでしょう。

アメリカの自治体3(州・地方政府の関係)

今回のシリーズでは自治体にどのような権限があるのか?ですが、外国制度は理解に時間がかかりますが、順を踏んで行くしかありません。
まずは連邦と州の関係を見ておきましょう。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk079/zk079_02.pdfによれば以下の通りです。
65第2章アメリカにおける連邦・州・地方の役割分担
橋都由加子
1.アメリカの政府構造
アメリカの政府は、合衆国憲法に根拠規定をおく、それぞれ主権を持つ連邦政府と州政府と、州の下部単位である地方政府から成っている。
2. 連邦・州・地方の法的な役割分担
2.1 合衆国憲法
合衆国憲法における地方自治の規定は、1791年に成立した憲法修正第10条による。
ここでは「憲法が合衆国に委任し、または州に対して禁止していない権限はそれぞれの州または人民に留保されている」と定めていることから、連邦と州の間での役割分担は、連邦の権限が具体的に列挙されて州が残余権を有するという、州権の強い形となっている。
2.1.1 連邦の立法権
連邦の立法権は、第1条第8節に列挙されている。
・・列挙事項省略・・稲垣
2.1.2 州の立法権
州は一般的に州域のすべての事項について権限を持つが、その権限は合衆国憲法によりいくつかの制限を受けている。
まず、第1条第10節第1項には、以下の州への禁止事項が列挙されている。
1 条約・同盟・連合の締結
2 捕獲免許状の付与
3 貨幣の鋳造、信用証券の発行、金貨・銀貨以外による債務弁済
4 私権剥奪法・遡及処罰法もしくは契約上の債権債務関係を害する法律の制定
5 貴族の称号の授与また、同節の第
2 項と第3項では、以下の州の一定の行為は連邦の同意を必要とするとされている。
1 物品検査法執行のために絶対必要な場合を除き、輸入税または関税を賦課すること
2 トン税の賦課
3 平時における軍隊もしくは軍艦の保持
4 他州もしくは外国との協約もしくは協定の締結
5 現実に侵略を受けたときもしくは猶予しがたい緊迫の危険があるときを除き、戦争行為
2.3 州憲法・州法における地方政府条項
2.3. 1地方政府条項13
州憲法における地方政府や地方自治の規定は州によって異なっている。例えば、アラスカ州憲法では「地方自治」が明確に規定されており、オクラホマ州憲法には地方政府に関する制約や規制に関する条項が多く盛り込まれている。一方で、州によっては、「地方政府」に関する条項や「地方自治」に関する条項が規定されていないものもある。しかし、それらの州憲法にも「収入支出制限条項」があり、カウンティや市などの地方政府について言及しているため、地方政府について全く規定がないわけではない

上記によれば一般に言われている「州兵保持」と連邦憲法の関係がどういう関係になるのか・個別同意によるという程度の弱いもののようです。
日本の幕藩体制では、各大名家保有の兵力は天賦不可譲の権利の扱いでしたが、アメリカの場合連邦政府結成の条約で連邦政府の同意によってのみ州が独自の軍を保有できる弱い関係になっていたことがわかります。
もしかしたら南北戦争で懲り懲りしたので再度の内乱を恐れてこうなったのかもしれません。
同意が必要と言っても、事実上全部同意する前提で憲法が成立したのでしょうが、いざとなれば(州の独立運動になれば)同意を取り消せるのかもしれません。
日本では武士以外の刀狩がありましたが、アメリカの場合(10日ほど前にもラスベガスで大規模な銃乱射事件が起きましたが)個々人の武装権の放棄が進んでいない点は周知の通りです。
州と連邦の関係では、独立戦争時には州から出す兵力中心で連邦政府軍自体がないのですから州軍の存在価値が高かったでしょうが、連邦政府軍が充実していくと各州が独自兵力保持する必要がなくなっていきます。
せいぜい州内の大規模騒乱鎮圧の仕事?くらいですから、日本の警察の有している機動隊程度で十分です。
対外兵器である大陸間弾道弾や核兵器や戦闘機をいっぱい作っても内政に寄与しません・内政が充実していない・・これが端的に現れるのは道義の退廃・治安悪化の結果個々人の自衛権を放棄させられない現状を表しています。
日本で秀吉の刀狩りが成功し明治の廃刀令が浸透したのは、もともと応仁の乱〜戦国時代と言われますが、武士団同士の領域争いであって、庶民はおにぎりを食べながら合戦を見物していたような「のどかで・安全な社会」が続いていました。
刀狩りがあっても庶民が身の安全を守るためにはそんなに困らなかったのでその通り従ったし、明治維新後の廃刀令がそのまま受け入れられたのも、当時治安が良くて武器携行義務の方が武士にとって重荷になっていたからです。
アメリカは国の外形を腕力で大きく囲ったが、(文字通り大ふろしきを広げただけ)未開の原野を広く囲っただけの国土でしたから、(中東やアフリカ等で人為的地図上の直線の国境線びき同様)その中身がスカスカ状態で始まっている点が特徴です。
スカスカの原野に一定の集落・コミュニュテイーができたらその都度申請によって自治・組織体を認めるという仕組みで、日本などと発展の順序が逆である点に問題があると見るべきでしょう。
日本の場合、・・・濃密で阿吽の呼吸で理解し合える信頼関係のある原始氏族共同体〜生活規模の拡大に応じて順次協調していき、氏族を超えた集落共同体へ〜ムラ社会〜と一体感を育成し、必要に応じて市が立ちさらに遠隔地の集団と折り合いをつけながら生活ルールの共通化を図ってきました。
城下町や門前町の発達〜幕藩体制になりましたが、各大名家間の往来が頻繁でしたから御定書のシリーズで10年ほど前に書きましたが幕府の判例を各大名家が導入参考にするなど事実上価値観一体化が進んでいました。
だから、廃藩置県で多くの藩が一つの県になるのをスムースに受け入れ、ほとんどの県で一緒になった住民間でも違和感を感じず民族的軋轢が生じなかったのです。
(部分的に長野県では南信地域と北信地域の反感が根強いことと福島県では会津を中心とする山間部と海岸線の文化の違い・いわゆる「浜通りと中通り」に分かれている程度でしょう)
このように日本列島では、近代〜広域自治体へと順次発展し・民族一体感を築き上げてきた社会ですが・・アメリカの国づくりは何もないところに広大な領域だけ囲った・集落関係は自治体はまだ原始的初歩段階にあると11日のコラム末尾に少し書きました。
その弱み・・空白地帯の大きさ〜コミュニュティ関係の一体感欠如が治安問題に端的に現れていることがわかります。
この後で事例紹介しますが、警察署設置のためだけの自治体結成が行われている事実・・必要に迫られていることからも分かります。
10月12日に引用文で紹介しましたが、環境その他広域処理しなくてはならない事項がどんどん発生しているのに、我が国のような広域連合構想や自治体広域化のこころみが全て挫折している・各自治体のエゴ主張が強くてまとまらない・・現状にも現れています。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC