社会安定期の政権担当能力1

安定成長=本来政治安定期になる筈の我が国が、逆に政治混迷期に陥っているように見えるのは何故でしょうか?
政治の基礎になるべき社会生活の安定性はこの約20年で際立って良くなっています。
交通事故死、犯罪率その他全ての基礎的指標が良くなる一方です。
(昔なら病死していた人が生きながらえることによる介護疲れによる虐待や殺人事件がありますが、それでも殺人罪や暴力の絶対数は減っています)
自殺者の増加・高位安定が問題視されていますが、これは生活基礎の安定に反する指標というよりは、病気になっても簡単に死ねない面が大きい・・医療の充実による療養長期化による面が無視出来ません。
我が国のバブル崩壊後の政治低迷は、我が国政治の舵取りの難しさにあります。
少子高齢化で世界トップを走っていることその他世界最先端生活水準に突入している我が国の場合、お手本になる先進国がありませんから、お手本を勉強するのに優れている秀才の言うとおりやれば良い簡単な国ではありません。
我が国政治決断には学者・評論家のような単純回路ではなく複雑回路が必要ですので、何事も単純回路で考えて明確な結論を出したがる学者・評論家の言うとおり実行する方が、誤りが大きいと思われます。
(学者の論文は、「その他の与件が一定とした場合こうなる」という単純な論法ですが、実際社会では与件が決まっていることは何一つありません)
中国のように我勝ちに電車に乗り込む社会では、日本のように並んで待ちましょうとか道路につばを吐かないようにしましょう、街を綺麗にしましょうという教育が簡単ですが、日本では現在社会で守るべき理想的道徳が自然に守られている社会ですから、これをこう変えたら社会が抜本的に良くなるという指導の余地が滅多にありません。
こう言う状態下では目覚ましい成果を得る政治家を求めるマスコミ風潮では誰が政治家になっても、無い物ねだりとなりますから、「誰がなっても同じだ」「投票したい人がいない」と言う政治家に対する不満(本当は当たり前のことです)が生じ易くなります。
この結果政策批判よりはマスコミが政治家のあら探しに終始して国民に不満を起こさせるようにしむけていて、これに国民が引っかかって来た・・政治不信を醸成されて来たのがこの約20〜30年であったように思います。
中国の改革解放化以降、ともすれば中国傾斜する日本の心理をアメリカが必死に引き止めるために、マスコミを利用して腹の太い有力政治家が出てきそうになると政策に関係のないあら探しで引きずりおろすことの繰り返しで、日本の政治は低迷を続けて来ました。
この間唯一小泉政権は、日米基軸で反中韓政策一本槍で分り良かったので(アメリカ支配の)マスコミからも喝采を浴びましたが、小泉氏の指名で政権を引き継いだ安倍氏は、就任直後先ず中国に飛んで日中修復に動きました。
郵政民営化もうやむやにする方向になって民営化に反対した議員の復党も認める方向になって行くなど全て小泉改革の逆方向へ舵を切ったのが安倍政権でした。
強気一点張りの政治は長く続かないので、ある程度修復の必要性があるのは仕方がない面もありますが、安倍氏の政策は表向きの意見とは違う逆方向・・うやむや政治になるのが安倍政権の特徴だったと言えるでしょうか?
今回の竹島や尖閣諸島騒動の沈静化に関しても、選挙戦での威勢のいい主張とは真逆で安倍政権になると日本側から関係修復のために先に特使派遣というのでは「?」と思う人が多いと思います。
これ以上日本側からこじらせる必要はない・・大人の対応は良いことだと思います。
ただ、今回は(・・これまでもいつも中韓からの仕掛けで始まったことが多いのですが・・)韓国や中国の仕掛けて来たことに日本人が腹を立てていることであって、日本から何もしていないのですから、向こうから「やり過ぎたとか、言い過ぎた」とかの陳謝なり何なりの沈静化特使を送って来て、日本がそれ以上追及しないでうやむやに終わらせるのは分りますが、相手が言いたい放題言っておいて知らんぷりなのに、何故日本が先に謝りに行くのでしょうか?
相手から特使が来るまでは、そんな失礼なことを言ったり、する国とは距離をおいて交際して行く・辛抱の継続で良いのではないでしょうか?
日本の体力では距離をおいて交際して行くことが出来なくなったから謝りに行くのでしょうか?
この辺の実態が素人には見えませんので政治家に委ねるしかないですが、もしも突っ張り合いしていると日本の方が参ってしまうという国力差があるのでしたら、始めっから喧嘩しなければ良いのです。
(実際対アメリカではこのスタンスでやってきました)
個人の場合も弱い方は喧嘩しないで始めっから尻尾を巻いて逃げるのが普通です。
しかし、自民党政権は何十年もこう言うやり方でうやむやにして来た前科があるので、日本の方が体力的に参ったから・・という推測が出来ません。
ホンの少し前まで中国は日本のGDPの4分の1程度だったのですが、それでも今までやられ放題でしたし、今でも対韓国では日本と大きな国力差があります。
自民党政権はこんなことの繰り返しばかりして来たから、中韓は何かやればその都度既成事実となって行く・・・味を占めて図々しくなる一方だとして国民が怒ってしまったのではないでしょうか。
話題を日米関係に戻しますと、どちらかと言うと小泉政権の日米蜜月から日中修復トレンド・・アジア寄り(アメリカ軽視)に舵を切ったのが、第一次安倍政権だったと言えます。
ネットで見ていると安倍氏支持層に重なる右翼による小泉経済政策批判・新自由主義経済路線・構造改革路線はアメリカに日本を売り渡すものだという論法・・現在のTPP批判論と共通する言い方ですから、安倍政権は日米同盟強化を標榜して、しかも真っ先にアメリカ訪問を言っている割に内容実質は安倍政権支持層の経済・思想観は反米親中国政権の実質を持っています。
左翼系グループ言論人も(もともと反米思想グループですから異とするにはあたりませんが)非正規雇用増加・格差批判論としてアメリカ渡来の新自由主義批判論を展開していることについては September 7, 2012「マイナス利回り2(消費信用1)」で紹介しました。
ナチスやファシストあるいは戦時中の右翼は極左と根は同じ思想であったと10/08/09「右翼と左翼4(市場経済の重要性1)」その他で書いたことがありますが、今でも同じです。

ジェンダー論3(軍事政権化と男子支配)

超古代・・縄文時代から稲作開始にかけての有史以前の集団生活は、もともとは女性集団が築いた生活基盤であるのにオスが次第に常駐するようになってこれを乗っ取ってしまったのではないかと考えられます。
古代から続く軍事政権・・軍事統制権に基づいて女性集団の支配権を獲得した構造・・これを大は王朝から豪族・地域小権力→小さな武士の集団→庶民の男子が家の諸権利の形式的主宰者になってしまっている後ろめたさ(・・実際に集団を担って働いているのは女性集団なのに)に対する正当化の論理として、「女性が子を産み育てる間働けないから、男子の稼ぎに頼るようなった」と言うフィクションが造られてまことしやかな説明が一般化して来たのだと思われます。
しかし、農村社会では女性グループの助け合いで十分機能するので、一人の女性が一定期間働けなくともどうってことはありません。
このことは集団内で一定期間誰かが病気しても集団(男がいなくとも)で管理している限り農作物を育てることが可能なことから見ても明らかです。
後にグループ生活・ルームシェアーなど書いて行きますが、産院や保育所や幼稚園は女性が主として担っていることから見ても、女性グループだけで維持出来ないことはあり得ません。
 (園長さんや理事長さんだけが男性である意味がないでしょう)
元々男集団が時々狩り(放浪の旅)から帰って来て種付けに来るだけで、その他の期間は女性集団の労働だけでなり立っていたのが漁労採集の時代でした。
出産育児中の生活も(昔も当然女性は子供を産みましたよ!)男が定着する前から女性同士の助け合いで成り立っていたのですから、妊娠出産育児中に身動き出来ないメスのために小鳥のようにオスが餌を運ぶような現在の擬制(フィクション)は誤りです。
その内日本列島も中国の商業社会に組み込まれて行くと縄ばり争いが始まり、稲作適地が減って来るとその分捕りあいが始まりますし、農耕も空き地を利用して始まったうちは良いのですが、(卑弥呼の時代には)集団間の抗争が頻発するようになり、用心棒として臨時的に採用した男がトキの経過で継続的に駐留するようになります。
緊張状態の継続で一種の軍事政権が成立し、継続的にその集団内の指揮命令権を掌握し、ひいては食料その他財物の分配権も掌握し乗っ取ってしまったものと思われます。
国難に際して外敵撃退のために一時的に軍政権を委ねた男が掌握した軍事力を利用して、(古代ローマのカイザルの例や、フランス革命時のナポレオンが有名です)そのまま支配者に居座ってしまったようなことが規模の大小の違いはあれ、小さな集落にも発生していたことになります。
江戸時代の庶民の例で言えば、生産に従事しない(勿論タマに手伝うでしょうが・・・)農村の男はすることがなくてお祭りの準備や博打にうつつを抜かしていて、生産活動の多くは実際には女性が担っていたのが実情でした。
それでも男名義ですべて経営される仕組みでしたが、働き手の女性の地位は実質的に高かったのです。
(これに対して遊牧・長距離交易社会では女性の地位が名実ともに低いのは、生産活動の主役ではなかったからです)
明治以降賃労働(給与所得)に変化すると、農業と違って寝ている間にも稲が育つ関係ではなく、出産前後・子育て期間(農業の場合、野口英世の例にあるように)母親は子供をおんぶして家事労働したり畑の近くに転がしておいて農作業していたものでしたが、賃労働ではそうはいきません・・仕事に出られなければ直ちに収入がなくなります。
今でも自営以外で子供をおんぶしながらできる仕事は、滅多にありません。
賃労働→結婚退職・・子を産んだ女性の恒常的失業状態が一般化してしまったのです。
農業社会では、男が家出してしまっても残った家族の農業収入に殆ど変化がありませんが、給与所得社会では女性が子育て中で失業状態下ですから、給与収入を得ている夫が帰って来なくなるとたちまち家族が飢えてしまいます。

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