上海総合株価指数1

5月8日夕刊によれば、韓国中央銀行は韓国経済のマイナス成長に(耐え切れずに)対策として遂に韓国は0、25%金利を切り下げたという報道がありました。
昨年からのマイナス成長ですから4月7日にも下がるという観測でしたが、4月にはウオン暴落が怖くて下げられなかったのです。
ウオン暴落の不安もあるが、あまりの急激な景気落ち込みに耐え切れずに目先景気下支えのために(先のことは心配しても仕方ない・・)踏み切ったということでしょう。
中国政府も四月下旬ころに、貿易統計に短期資本取引が紛れ込んで統計の信用性に疑問が生じるので、近いうちに短期資本取引自由化を李克強氏が言明・あるいは示唆したと報じられていました。
(ただし、ネットで再確認しようとすると出なくなっています・・政治家は匂わせるだけのことが多く、記者が前後の文脈で解釈して報道することがある・・思い込み記事だったのでしょうか。)
中国政府による貿易収支発表が香港等相手国地域との発表とあまりにも食い違い過ぎるので、この言い訳のために貿易決済名目で外資が流入して来るのを明らかにする必要が生じて来た・・資本規制自体が無理になって来たという程度の発言だったのかも知れません。
「短期資本自由化近し・・」と誤解して記事にしてもらえば、株式市場活性化に繋がる面もあるのでいろんな意味にとれるように政治家は発言します。
長期の投資・・工場用地取得や設備新設資金を日本等が持ち込んで人民元に換えている場合、その資金で土地を買って工場設備を立ち上げて稼働し始めると簡単に引き上げられませんが、短期資本自由化による資金流入の場合、数分・数時間で株や債券など売って海外に逃げられますので、急激な外資の引き上げリスクが生じます。
中国はアジア危機の教訓によって短期資金取引を規制していましたが、ここに来てイキナリ自由化に踏み切る予定の示唆発言(匂わせるだけで実行するかは分りませんが・・)するのは、もしもこの発言が本当にあったのなら余程外資不足に陥っていると見るべきでしょう。
・・将来危険があっても(そんな心配をしている余裕がない・・)目先の外資を喉から手が出るほど資金が欲しくなっている・あるいは株式市場への資金流入を期待させて相場底入れをしないと株式市場がずるずる下がって行き持たないリスクが生じて来たので相場誘導する必要に迫られているからではないでしょうか?
人民元相場は4月28日に書いたように為替が管理されている関係で実態経済の遅行指数ですので、中国の経済力が下降局面に入ってもなお相場上昇圧力が続きます。
まして今は政治的にも対日、対フィリッピン、対ベトナム等々周囲と緊張関係にあって、アメリカが中国を真正面から敵視し始めたことから、人民元の人為的安値に対するアメリカの不満を少しでも柔らげたいのが中国の立場です。
この結果ここ1ヶ月間ばかり人民元の管理相場上限をジリジリと上げているのですが、その結果もともとベトナム等後発国からの挑戦に困っているところへ人民元高の追い打ちがあると、国際競争力が余計落ち込む展開になっています。
実体経済を反映する株式相場がさえない展開なって来るので、口先だけでも外資流入→株式買い入れ資金流入を匂わせて相場底入れを計りたいところでしょう。
公式統計は何とでも操作可能でしょうが、株式相場の操作は難しいので短期資本取引自由化→資金流入増近しと言う口先だけの示唆で、株式相場の底入れを計ったのではないかと疑われます。
短期資本取引自由化発言に気を良くしたらしく、4月末ころからここ10日間くらい上海の株式相場が上がっています。
中国の成長期待をバックにした外資の投資意欲の強さをバックに中国政府は長期投資しか受け付けないという強気の政治をしていたものの、長期投資・・工場進出等の資金流入が急激に細って来て国内で資金が回って行かなくなるリスクが出てきました。
その穴埋めのために急遽短期資本取引解禁に舵を切ろうとしていると言う口先介入(匂わせ)をした可能性があります。
実際に解禁・・自由化しなくとも、李首相がこのように発言・匂わせれば、株式市場への短期資金資金流入を期待して相場が上がるのは当然です。
短期資本取引解禁示唆発言は、中国政府による経済運営の自信の現れというよりは、(苦しまぎれの)背に腹を替えられないという判断の可能性の方が高いように思われます。
李克強氏は匂わせただけとすれば、短期資本自由化を近い将来実行しなくとも政治責任がありません。

中国経済の動向3(単純作業・模倣社会から抜け出せるか?1)

一般的な理解では「不透明社会では安心して投資出来ない」という構図になるべきですが、中国の場合、何故か大手マスコミが大躍進報道を続けて、何年後にはアメリカを追い越すという根拠のない報道に明け暮れています。
世界中のマスコミが投資競争に一刻も早く参加しないと損をすると煽り続けてくれるので、不透明なままの方があわてて投資する企業が多くて中国にとっては得だからこう言う不透明政策を続けていられるのです。
(減速どころかマイナス成長になっていると分ったら、投資資金流入が停まって大変なことになります)
赤字企業は社債発行を続けないと資金が続かないので、一旦粉飾決算を始めるとこれがバレて資金供給が途絶えると大変な崖っぷちに立たされるので粉飾決算を続けるしかありません。
為替相場について規制しているときに、イキナリ実勢相場に戻ると大暴落または大暴騰になってしまうので、戻れなくなる・・個人の生き方でも一旦嘘をつくと、嘘の上塗りを続けるしかないの同じ原理です。
中国経済は国内総生産が伸びて来たと言っても、その殆どが海外投資資金導入効果によるものであることについては、この後で薄煕来事件に関連して紹介します。
世上人口ボーナス論/オーナス論が盛んですが、私はこうした考え方に対してはAugust 4, 2012「マインドコントロール2( 人口ボーナス論の誤り2)」「労働力人口と国力」 January 23, 2013その他で反対してきました。
・・資金流入の増減と技術導入の成否こそが経済浮揚・減速の原因であり、それ以外には日本のような固有の技術文化を持つ国を除いては滅多にありません。
韓国の漢江の奇跡と言っても、日韓条約によって巨額資金と技術が日本から流入したことによって起きたことです。
土地成金・・農協が元気一杯であったのは、大都市の資金が近郊農家に流れ込んだ結果でしかないのと同じで、この流入が停まれば(潤沢な資金を利用して進学したり・なんらかの技術を身につけるなどしていない限り)土地成金のままではどら息子は直ぐに干上がってしまいます。
農家人口が多ければ農業が成長するならば、戦後の農業衰退はなかったでしょうし、各種産業の衰退に伴う余剰労働人口問題が起こりようがありません。
石炭産業が衰退したのは炭坑労働人口が減ったからではなく・我が国の石炭産業が時代にあわなくなったからです。
すべからく、その産業が興隆したことによって関連労働者が増えるのであってその逆はありません。
この意味でも先に弁護士や会計士を増やせば弁護士や会計士の需要が増えるだろうという倒錯した議論によって弁護士。会計士数を無茶に増やす政策決したのは、無茶苦茶過ぎてその咎めが今になって出ています。
スペインやギリシャでは失業率が4割に達していると報道されていますが、余剰労働力さえあれば経済成長するならば、苦労がない筈です。
中国でもインドでもインドネシアでも昔から人口は充分にあったのであって、最近興隆を始めたのは資金と技術が外国から入ったからです。
数十年前からグローバル化が進んだのは、組み立て工程が単純化されて技術蓄積の低い後進国でも設備さえ据え付ければ(ちょっとした教育で)世界最先端品でも直ぐに生産出来るようになったことによります。
パソコン・スマホなどの製品そのものは高度文明の産物ですが、その組み立て自体はもの凄い単純作業ですから中国等最低賃金国での生産に簡単にシフト出来ます。
単純作業工程だけ引き受けて世界の工場だと威張っていても、あるいは既存部品の組み合わせ工夫程度では時間の経過でもっと低賃金国へシフトして行きますので、その先がありません。
(これがいわゆる中進国の罠です)

遅行指数としての人民元相場1

公示価格のように為替・交換比率を実勢相場ではなく、政府裁定で決める仕組み(実勢に委ねないこと自体・・実勢と乖離することを目的にした制度ですから乖離 しているのは当然です)では、急激な変動を避けるために均らして上げようとしているに過ぎないというのが一般的言い訳です。
しかし、上がったり下がったりしているときには「ならす」ことに意味がありますが、急成長中で生産性が右肩上がりに上がる一方のトレンド(時には不景気で停滞もあるでしょうが・・)のときには、「ならす」余地がなく単に乖離が開く一方になります。
あまり開き過ぎるとアメリカ等からの不公正貿易国批判を避けるために、上がった分の何割かだけ遅れて少しずつ上げることになるので、結果的に遅行指数にならざるを得ません。(1割上がって1〜2%上げるようなことの繰り返しでは、差が開く一方です)
30〜50年単位で見れば、いつか成長が止まり実勢相場も下がる傾向に変わることもあるので結果的に均らせるかも知れませんが、10〜20年単位で見れば一国経済の上昇や下降傾向は大方同じ方向に動くのが原則です。
(新興国も時には不景気・・成長鈍化がありますが、長期的には先進国に追いつく方向で生産性の差が縮まります)
その結果実勢との乖離が開く一方になってしまい「ならす」余地がなく不公正貿易国の国際批判に一応答える意味で、遅れて少しずつ上げるしかないのが(規制している人民元の実情)普通です。
下がる一方の国の例としては、UKポンドは戦後下げる一方でしたし、USドルもニクソンショック以降は(途中小刻みな揺り戻しがあったとしても・・大方のトレンドでは)下がる一方でした。
こう言うときに無理に介入したり、規制によって実力以上の相場維持をしていると、投機筋の売り浴びせにあってダムの決壊のような酷い目に遭うことを、ポンド防衛の歴史シリーズで連載しました。
他方で上がる一方の国としては日本円が高度成長期以降はアベノミクスまでは上がる一方でしたので、為替介入は無理がありました。
今のところ人民元相場は実勢にかなり遅れて動いているので、成長力減速あるいは下降を始めてもまだ上がり切っていない分の調整エネルギーが残っています。
この結果、仮に中国経済が失速し始めても人民元はまだまだ遅れて上がる傾向にありますので、通貨相場が規制値上限に張り付いていることが人民元の現在の実力や経済減速傾向を反映していることにはなりません。
過去20年間で比喩的に言えば2〜3倍(200〜300%)の通貨相場になっているべき(貿易黒字の蓄積ばかりではなく外資流入分の蓄積も通貨上げ圧力です)ときに、規制の結果まだ2〜3割(20〜30%)しか上がっていない状態(実勢との差が7〜8割)として比喩してみます。
現時点で、経済失速して5〜10%のマイナス国内生産(あるいは外資流出)になっても、為替相場としてはなお規制値の20〜30%アップよりも実勢がはるかに高いのですから、(270ー5〜10=265〜260%の調整不足)270〜280%に達するまでの長期上昇トレンド・エネルギーが続くことになります。
年率10%ずつ裁定相場を引き上げて行き、他方で年率10%のマイナス成長(・あるいは外資流出が始まること)によって天井が低くなる結果、均衡点を突破して人民元が実勢で下がり始めるのはかなり先のことになります。
我が国では為替相場に規制がないのですが、それでも貿易赤字が始まっても海外からの利子配当等の送金収入があって総合収支黒字が続いている結果、直ぐには円が下落する地合になり難いのと似ていて、通貨相場は直ぐにはその時々の国力変化をストレートに表すものではありません。
まして、中国では短期資金の規制が厳しいので、短期資金(ホットマネー)はアングラ的流入資金でしかないので、韓国のように急激な売り浴びせがあっても、全体に占める規模・影響が小さいでしょうし、そもそも為替相場自体規制されているので上限〜下限の間でしか取引が成立しません。
為替相場が規制されている国の場合、通貨相場の動きを見ても数年〜5年程度の短期間での国力変化のメルクマールにはなりません。
(規制値上限を引き上げても引き上げても為替相場が上限に張り付いているとしても、上記のとおり過去の調整残りの差を埋めるエネルギ−があるので、貿易収支や資本収支がまだ黒字を維持しているとは限りません)

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC