外資流入によって支えられる中国経済3

人口が多くて将来性があると言う宣伝に乗って世界中から集まったお金を中国政府は湯水のように使えていて、一見豊かになったように見えたのですが、賃上げと同時に反日暴動や露骨な膨張主義が始まって世界中から高リスク国と見られるようになって、資金流入減が始まりました。
これが一過性ではなく恒常的減少に転じる傾向があるかどうかが中国経済の先行きを占うのに重要な指標です。
もしも資金流入が恒常的減少に転じると他人のお金を懐にして大金持ちになった気分の近郊農家同様にお花見気分で大判振る舞い(・・内需的には不動産バブル化)していた咎めがその内出て来るのは必至です。
近郊農家でも流入資金を活用して事業家に転進成功した人が全くいない訳ではありませんが、大方の人は農業漁業を棄てた代わりにこの間に得た職としては現場労働くらいしかなくて、一過性の資金流入が途絶えると、元の低所得階層に逆戻りしました。
中国も資金流入が止まると、元々の停滞した・・国民の能力に応じた国に戻るしかないのかも知れません。
ネット報道等では不動産バブルを懸念していますが、我が国の不動産バブルしか知らないからこうした報道が目立つだけであって、不動産に限らず高官の巨額収賄も工場やスーパー等の過熱立地・海外投資・援助も全て外資が奔流のように入って来た結果生じたバブル狂騒曲であった可能性が高いのです。
ゴールドラッシュでその地域に住居や娯楽施設が溢れるように出来ても、採掘が終われば全て消えてしまったように・・中国の場合規模が大きかったのでゴールドラッシュとの違いが分り難くなっているだけではないでしょうか?
November 8, 2011利子・配当収入(鉱物資源)で生活する社会2」前後でナウル共和国の例を引いて書いたことがありますが、石油資源や土地代等の外資流入に頼る経済になっていると、資源枯渇その他の理由で資金流入が縮小〜止まると大変なことになるのはどこでも同じです。
最近頻発するアラブの春についても、マスコミが美化しているように民主化要求のレベルが上がったというよりは、資源収入の減少・・分配が機能しなくなったことが引き金になっているのではないかと言う意見を書いてきました。
農家への流入資金を元手に元気のよかった農協系金融機関は流入が止まると軒並み失速して、バブル崩壊後の金融危機の元凶になったことも記憶に新しいところです。
今のところ中国への資金流入額が以前より減り始めたというだけでマイナス・・資金引き揚げの方が多くはなっていませんが、流入が減少するだけでも継続流入を前提にしていた経済が失速します。
アラブ産油国の場合、原油産出がイキナリゼロにならないまでも前年比減になれば、財政が回らなくなり始めると言えば分りよいでしょう。
原油の場合枯渇しても以前買った原油代金を(購入者は購入した原油を消費してしまっているので)買い戻せとは言われませんし、原油の叩き売りもありません(逆に産出が減ると値上がりすることがあります)が、投資資金・土地代金等として入った資金の場合、購入者は土地やマンション・店舗・工場所有者等・投資家になっています。
権利者としては、バブル崩壊を境に不動産や各種施設の叩き売り→資金引き揚げが可能ですので、先行き危ないとなれば引き上げ行動が加速します。
引き上げの方が多くなってトータルマイナスが始まったら産油国の資源枯渇よりもっと大変です。
豊富な外貨準備があるのでこれを買い支えられると言っても、中国の場合外貨準備額の発表自体本当のところどれだけあるか分りません。
(統計の信用性が殆どない外に、中韓等は自国金利が高いために低金利のアメリカ国債等を買うと逆ざやになるので、もっと高利なリスク資産を多く買っている問題があります。)
イザとなれば高リスク資産中心ですと額面どおりの価値があるか不明の問題があることを「外貨準備の内実」2013/04/24で書きました。
6月9日の日経新聞朝刊6面によると中国は(本当は1〜2年前から)景気急減速にもかかわらず、短期金利が急騰して9%台になったと報じています。
(ちなみに今朝・6月10日の相場を見ると頭出ししか見られなくてそれ以上の「詳細は登録会員のみ」となっていますので、以下数日前の記事を転載しますと
「短期9時30分 翌日物は0.070~0.075%が中心 当預残高70兆円超2013/6/7 9:56」
となっています。
我が国などの低金利に比べて中国金利の高さ・・約120倍以上の高金利に驚くべきです・・金利は借り手の信用に反比例しますので中国礼賛のマスコミ報道にもかかわらずこれだけ信用度が低いと言うことです。
あるいは金利も商品として需給に比例しますので、それほど中国では資金が不足していることを表しています。
(本当に言うほどの巨額外貨準備があるのか?疑問に思う所以です。)
銀行間取引の短期金利は値幅制限がないので自由な結果が出る仕組み・・市場原理が反映しますが、政府はこれを誘導するために買いオペその他を実施して金融政策を実施しています。
ところが、中国では今、不動産バブル状態が激しいためにこれの抑制上買いオペ(資金供給)して下げるに下げられない状態になっていることがその紙面では報告されています。
バブル加速を煽っているのが政府自身・・これで成り立っているのが中国地方政府の錬金術/高額収賄の資金源であることは良く知られているとおりですから、バブルは破裂さえ先送り出来ればバブル膨張自体は共産党幹部の望むところです。
不動産価格上昇のために金利を下げられないという格好を付けた報道は、マスコミによる中国経済擁護論の1種と言うべきです。
高金利・高配当だからこそハイリスクハイリターンを求める外資が入るし、危ないと言われながらもまだ逃げないで残っているのですから、高金利維持政策は中国の人件費上昇による投資資金の流出傾向を引き止めるのに必要な関係です。
低金利・低リターンになれば、外資の引き揚げが加速しますので、怖くて金利利下げ誘導出来ないのが本音のところでしょう。
その内、(鉄鋼製品は作り過ぎて在庫の山らしいですが、)不景気による生産落ち込みが隠せなくなって来ると、環境保護のために生産抑制している・とても環境意識の進んだ国だという美化したマスコミ報道が出て来るのかな?
何でもモノは言いようです。

外資流入によって支えられる中国経済2

6月8日に紹介した勝又氏の紹介記事は中国政府公式発表を前提にしたものですが、中国政府発表数字はすべて信用出来ないのが今では世界中の共通認識になっているので、この数字自体元々操作した怪しい数字です。
外資流入が減ってくれば、外見を繕うために外資流入減を少なく見せるために今度は多めに発表する・・比喩的に言えば1〜2割外資流入が減れば、従来実際より2〜3割少なめに発表していたのを1〜2割少なめ程度の操作にとどめるなどの操作で発表すると表向きの流入規模が変わらないこといなります。
世界中から虚偽でデータではないか?との批判の大きかった貿易黒字額を5月収支分から実態に少し合わせたことを昨日(6月8日)紹介しました。
この裏側として今まで分っていたのにあえて統計に乗せていなかったヤミ流入資金を5月からイキナリ表に出すことになりますから、貿易黒字額が虚偽データでないかと言う世界中からの批判をかわすついでに、外資流入分合計にこのヤミ資金摘発分を上乗せ出来るので「外資流入に頼っていた中国経済は流入減が始まってもう駄目だ」という世評を阻止する・・一石二鳥の効果を狙ったことになります。
中国の貿易黒字発表が相手国の収支とまるで合わないと世界中の大手マスコミが取り上げ始めてから、1ヶ月もしない短期間で直ぐにヤミ流入分を貿易黒字から除外出来るのは・・実は前から分っていながら黙認していて統計に乗せていなかったからこそ、その分を貿易黒字から直ぐに減らすことが出来たのでしょう。
実際の流入増減の統計発表自体あまりあてにならないのですが、その上に流入減を誤摩化すには、ヤミ摘発数字を多くすれば良いのですから、当面どうにでもなる数字ですから中国政府の発表を基準に議論しても始まらないところがあります。
正確性は別として勝又氏の引用する記事によれば、ここ数年は公式発表でも11000億ドル以上の外資流入が続いていたことが分ります。
中国では,巨額外資継続流入の御陰で言わば貿易赤字が約1100億ドル(約11兆円)以下の場合でも、外資流入の方が多いので中国の外貨準備が増え続ける計算です。
もしも公式発表どおりに巨額貿易黒字があるのならば、僅か3、7%の流入減が昨年始まっただけでは、本来大したことはありません。
中国の通貨高トレンドと言っても、内実は絶えざる外資流入によって均衡以上の為替相場を維持していた・支えられていたに過ぎないとすれば、外資引き揚げがなくとも流入が細るだけで大変な事態になり兼ねません。
あるいはチャイナマネーでアフリカやベトナム、ミャンマーなど世界中に投資していたその元手は、中国の貿易黒字によるのではなく、日本などの外資流入金の転用ですから日本等がこれをが支えて・・応援していたことになります。
上記記事でも分りますが、中国からアフリカ等への対外投資が最近増えていると言っても流入した外資の一部流用しかしていません。
最近何かの記事で見ましたが中国の最近何年間かのアフリカ向け巨額投資になっていると言っても、この間の累積金は、この間の日本による対中ODA総額とほぼ同額らしいです。
(自前資金による対外投資が出来ていないどころか、日本からの援助資金をそのままアフリカ援助に振り向けていて、援助してもらっている日本には何のお礼も言わないどころか敵対しているのです)
日本攻撃を公言して領海侵犯を繰り返し、日本批判を繰り返す中国に対して、中国の味方を増やすための世界工作資金として、何故日本が経済援助を続けているのか不思議ですが・・。
ところで、本来中国が公的発表どおりに巨額貿易黒字が累積していれば,外資流入が減ったくらいで(現状は追加流入が減ったと言うだけで、なお今でも1117億ドルもの巨額流入超になっていれば何の問題もないことになるでしょう。
資金流入と土地成金の関係を「専制君主制と虚偽データ2」 May 25, 2013で書きましたが、中国は外資流入の御陰で資金流入の続いていた日本の都市近郊農家のように資金あまりで大判振る舞い出来ていた面があること・・これが減少に転じるとこれまでのような経済運営が出来なくなるリスクを軽視出来ません。

外資流入によって支えられる中国経済1

話題がそれましたが、虚偽データ社会に戻しますと、研究者・エコノミストは、5月26日まで書いて来た中国の虚偽に満ちたデータの性質を理解すれば、中国政府発表数字だけで議論していられない筈です。
ところで、このコラムがデータねつ造問題から少し遠ざかっている僅か10日間ほどの間に大手マスコミでも中国のデータの虚偽性を堂々と論じるようになって来て、この種の記事が遠慮なく出るようになってきました。
昔とは違い、今では実際に多くの人が中国に出入りしているので、そこで受ける実感・・製品在庫の山等の目撃情報を無視出来ません。
実感では経済は成長どころかマイナス成長イメージなのに、大手マスコミだけが中国政府発表どおりに、毎年7〜8%も成長している・・景気が良いから早く進出しないと損だと煽り続けるのは無理になって来たからでしょう。
マスコミやエコノミストは世界主要国の対中投資額や貿易収支の合計と中国発表額の突き合わせ、その他の努力を(外貨準備額であれ何であれ・・)すべきでしょう。
私のような弁護士の仕事の合間にコラムを思いつきで書いているアマチュアには、諸外国データと突き合わせる作業は難しいですが、エコノミストは経済分析を専門にして生活して(収入を得て)いる以上は、その程度の労力を惜しむべきではありません。
中国の外資流入額に関しては2013/05/24「外資流入減5(虚偽データ1)」のコラムで外資流入額推移に関するグラフを紹介しましたが、何故か2010年以降のグラフがネット上ではまだ出ません。
上記グラフは政府統計ですからそれ自体怪しい(信憑性が乏しい)のですが、その上に権力による実需に反した規制があれば、やみ取り引き・資金流入が規制の強さに比例して多くなるのが原則です。
最近中国の貿易黒字が相手国の発表に比べて大きすぎるという世界批判・・従来は日本のネトウヨがネットで批判している程度でしたが、・・今はこれが世界世論になって来て無視出来なくなったのでこれに答える形で、輸出代金受取に仮装したヤミ短期資金の流入があると公式に認めるようになってきました。
政府が貿易収支を操作して発表していると認めたくないので、こうした形で言い訳を始めた・・一部事実でしょうから一応の言い訳になっています・・。
この結果、中国政府としては格好のつく形で貿易収支大幅黒字の修正に動き始めたので、4月までの毎月の貿易黒字14〜5%増から一転して5月の収支は僅か1%増という発表になりました。
中国政府の言い訳どおり(統計を操作していたのではなく投機資金が紛れていただけ)としても、いずれにせよ貿易黒字は見かけより少なく、実際の外資流入は上記グラフ以上にあったことになります。
最近の数字については以下の意見が参考になります。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-11471030607.html
勝又壽良氏の経済時評2013-02-20 04:13:00によれば以下のとおりです。

「資本流入に異変起こる」
『ブルームバーグ』(1月17日付け)は、次のように伝えている。
①「中国商務省が発表した2012年の海外から中国への直接投資は前年比3.7%減の1117億ドル(約9兆8500億円)となり、2009年以降で初の減少となった。
景気減速に加え、製造業者がより労働力の安価な市場に拠点を移したことが響いた。一方、中国から海外への直接投資(金融除く)は28.6%増の772億ドルと過去最高を記録した」。

上記紹介した勝又氏の記事によれば、外資流入が減り始めたことは分りますが、前年比3、7%減っても1117億ドルの流入があったと言うのですから、2011年には(公式発表だけでも)1159,9億ドルの流入があったことになります。

外資流入減5(虚偽データ1)

人件費が上がっても既存工場では生き残りのためにレベルアップを目指す努力をしますし、効果はいくらか生まれて来ることは確かでしょうが、レベルアップに成功するのはせいぜい全企業の何%単位に過ぎないことが多いでしょう。
レベルアップに成功した分野では最低レベル労働を前提とするマンモスと評される1工場何千〜万人単位の大規模労働者を必要としません。
そこで国民不満を緩和する意味からも、国際競争力低下による輸出用製造業縮小の穴埋めには内需拡大しかないので、リーマンショック直後に5〜60兆円に上る国内投資をしました。
いきなり内需向け生産と言っても,これまで(幹部の懐を肥やすばかりで使い切れない分は海外秘密預金)国民を豊かにして来なかったために、国民に購買力がないので新幹線網やゴーストタウン等無駄な建設投資に走ったのですが、これらも出来上がって来ると客がいなくて困っています。
そこで購買力を付ける必要→本来は年間1000億ドル・約10兆円も入って来る外資分を国民に配れば良いのですが、これが勿体ない(幹部は海外に隠し預金にしたい)ので最低賃金引き上げに走りました。
最低賃金引き揚げの結果収入が増えれば国民も喜んで不満が減るし、海外流出する雇用分を購買力が増えた内需向け製造業や販売業が雇用を増やして穴埋め出来れば理想的です。
例えば、近年の日系企業の進出内容は,中国で製造して輸出するような企業ばかりではなく、中国国内需要向け紙おむつ・生理用品等の製造や、国内サ−ビス部門(コンビニ・スーパー等)への投資が増えているのはこの結果です。
問題は輸出製品製造向けの大規模工場の縮小による雇用減少に、内需関連雇用増が見合うほどの規模になるか?です。
世界最低人件費に基礎を置く輸出用低レベル製造工場・工員が、ベトナム・バングラデッシュ等との競争に徐々に負けて行き雇用減少に転じていますが、・・この分野の労働者は桁違いに多いのですから、コンビニ等の出店程度ではカバー出来ませんので、大変な失業問題に発展します。
元々スーパーやコンビニが出店しなくとも中国国内には前近代的小規模店舗・サービス業従事者が無数にあったのですから、ス−パー等の進出はこれらが淘汰されるだけであって、サービス業全体で雇用が増えるどころか合理化の結果減る可能性すらあります。
とすれば内需用工場・・日本から輸入していた紙おむつやマスク製造等が現地生産として中国国内に新設されるくらいが希望になります。
これだって、ベトナム等で造った方が安いとなれば、早晩ベトナム等からの輸入品に取って代わられるでしょう。
結局人件費を引き上げても雇用が減らないようにするには、これに匹敵するようなレベルアップが必要・・ノーワークノーペイ・・働き以上の収入を求めるのは権力を持ってしても無理が出るということです。
中国では、レアアースの禁輸に際しても中国は第一次産業的な資源採掘だけではなく、一段レベル上の国内製造工場を誘致するためだと表向き主張していましたが、(その言=建前や良し・・)経済原理に反して強制した結果はどうなったでしょうか?
日本の大勢は中国に生産移管するのではなく、(一部企業では中国の要求どおりに中国へ生産移管を始めているようですが・・大勢ではありません)中国外での資源開発やレアアース代替品開発に次々と成功しています。
結果的に、レアアース買い手の減少→価格の暴落で中国のレアース大手企業がつぶれたり散々な結果に終わっています。
この辺で、対中国の外資流入額とその推移を見ておきましょう。
以下は、2009年までの外資流入額の推移です。
2010〜2012年までの推移は、この後に勝又氏の論文からの引用で紹介します。http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/5234.pdf記載のグラフの引用です。

最低賃金引き揚げ4と外資流入減4

中国国民不満の激しさについては別に機会があるときに譲って、外資流入減問題に戻ります。
地方政府・幹部→中央の大幹部の搾取・私腹を肥やす構造をそのままにして、庶民の不満解消のために外資(に限らず国内企業も含めて)に賃上げを要求・強制するのでは、外資(国内企業)にとって投資効率が悪くなってしまいます。
諸外国との賃金格差があってそのコスト計算の結果、巨額の初期投資をしてもペイするので外資が中国に投資するのですから、工場・店舗等立ち上げ後操業時に高騰した賃金を払うリスクや暴動リスクが出て来ると、外資は新規投資をやめるか抑える・・慎重方向になります。
(中国国内資本でも外国へ逃げ出す余力のある企業は、国内新規投資・第2〜3工場増設よりはベトナム等に生産工場を一部新設する方向になります)
借地や家賃で言えば、賃料が安ければ契約時の権利金支払が割高でも良いが、賃料が高額ならば、契約時に支払う権利金・保証金等初期投資を少なくしないと借りないでしょう。
工場用地や店舗用地購入金額・初期投資資金も、操業後の収益を計算して行なうものですから、初期投資金とその後の収益予想(工員・店員等の給与水準あるいはその後の暴動リスクを含めた収益率)とは相関係数になります。
最低賃金の強制的引き揚げ政策は・・結果的に地方政府に支払う土地代金や幹部への裏金その他の初期資金=外資導入額が減る方向になるので、結果的に共産党幹部の懐に入るお金が減り・・格差率が下がる方向に落ち着くのでしょう。
共産党大幹部相手に難しい汚職撲滅運動・・時々見せしめ的に高級幹部の摘発をするよりは、最低賃金引き上げを企業に強制する方が・・これが大量失業を引き起こさないで成功した場合のことですが、実は幹部の汚職縮小・・格差是正に効果が高いことになります。
実際には賃上げによって経済が縮小して失業が増え、他方で末端・部下・汚職協力者への分配金が減ることによる忠誠心喪失となり、却って社会不安が増大します。
失業増大も見方を変えれば,所得分配機能の喪失状態と言えます。
所得分配構造が機能しなくなってリビヤやチュニジュアの春その他アラブで騒乱が起き始めたことをこれまで書いてきました。
ちなみに、人件費上昇分として土地代・初期投資が下がれば良いというのは、個人経営の場合のことで、法人企業の場合はそうでもありません。
企業決算では、土地等はバランスシート上取得資金がそのまま資産計上されるので経費(マイナス)になりませんから、土地購入代金の上下は(評価損を計上しなければならない場合以外)短期的には原則として決算には何ら反映されない・・中立項目です。
短期的には操業後のフローコストの方が、企業収益発表(株主対策)にとって重要です。
土地購入資金が半値〜3分の1に下がっても、(評価損を計上しなくて良い限度では)法人のバランスシート上は中立ですから(ただし初期投資資金が借入による場合、各年度の金利負担は減るでしょうが・・その程度の誤差です)労賃が高くなって経費率が上がると、各年度の決算上は労賃の上がった分だけ利益率が下がり・もしかしたら赤字になります。
法人企業にとっては、初期投資資金が安くなれば、その分開業後の賃金が高くなっても良いとは言い切れません。
地元政府にとっても同じで、苦労して誘致しても初期投資が減ると地元政府に入る公式資金が減るだけではなく、幹部の懐に入る裏金が比例して減るので、地元政府・幹部の誘致熱意が以前よりも下がります。
あれやこれやで、ローエンド工場向け外資流入が減り、この種工場が逆に中国から出て行く一方になりつつあります。
他方で中級品工場設置目当てに入って来る外資が増えるならばバランスが取れますが、まだ中国では中級品製造技術が殆ど成長していないので、逆に資金流入が下火・減少して来たのが、この1〜2年の傾向でした。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC