キリスト教国の国際条約6(ハーグ陸戦条約)

日米戦争でのアメリカの戦時条約違反を主張する声が多く聞かれるものの、条約自体をみた方が少ないかも知れませんので、以下現代版ウエストファーリア条約であるハーグ条約を紹介しておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki

ハーグ陸戦条約
1899年にオランダ・ハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(英: Convention respecting the Laws and Customs of War on Land, 仏: Convention concernant les lois et coutumes de la guerre sur terre)」並びに同附属書「陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則」のこと。

我が国は1907年の改訂条約から参加していますので以下この条文の一部を紹介します。
アメリカの2度にわたる原爆投下実験その市街を取り囲むように火をつけてからに順に中心部に焼夷弾を投下して住民が逃げられないようにした攻撃など元々住民大量殺戮を目的にした戦争犯罪に関心のある方が多いでしょうから、参考までに陸戦条約の条文を部分的に紹介しておきます。
前文は如何に抜粋するように条文化していなくとも人倫に反する行為をしないことを約束したものです。

「一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ、締約国ハ、其ノ採用シタル条規ニ含マレサル場合ニ於テモ、人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ 存立スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適当ト認ム。」

以下はhttp://1st.geocities.jp/nmwgip/Treaties/Laws_and_Customs_of_War_on_Land.htmlの部分引用です

陸戰ノ法規慣例ニ關スル條約
Hague Convention IV – Laws and Customs of War on Land
一九〇七年(明治四〇年)一〇月一八日海牙ニテ調印
独逸皇帝普魯西国皇帝陛下〔以下締約国元首名省略〕ハ、平和ヲ維持シ且諸国問ノ戦争ヲ防止スルノ方法ヲ講スルト同時ニ、其ノ所期ニ反シ避クルコト能ハサル 事件ノ為兵力ニ訴フルコトアルヘキ場合ニ付攻究ヲ為スノ必要ナルコトヲ考慮シ、斯ノ如キ非常ノ場合ニ於テモ尚能ク人類ノ福利ト文明ノ駸駸トシテ止ムコトナ キ要求トニ副ハムコトヲ希望シ、之カ為戦争ニ関スル一般ノ法規慣例ハ一層之ヲ精確ナラシムルヲ目的トシ、又ハ成ルヘク戦争ノ惨害ヲ減殺スヘキ制限ヲ設クル ヲ目的トシテ、之ヲ修正スルノ必要ヲ認メ、千八百七十四年ノ比律悉会議ノ後ニ於テ、聰明仁慈ナル先見ヨリ出テタル前記ノ思想ヲ体シテ、陸戦ノ慣習ヲ制定ス ルヲ以テ目的トスル諸条規ヲ採用シタル第一回平和会議ノ事業ヲ或点ニ於テ補充シ、且精確ニスルヲ必要ト判定セリ。

一層完備シタル戦争法規ニ関スル法典ノ制定セラルルニ至ル迄ハ、締約国ハ、其ノ採用シタル条規ニ含マレサル場合ニ於テモ、人民及交戦者カ依然文明国ノ間ニ 存立スル慣習、人道ノ法則及公共良心ノ要求ヨリ生スル国際法ノ原則ノ保護及支配ノ下ニ立ツコトヲ確認スルヲ以テ適当ト認ム。
締約国ハ、採用セラレタル規則ノ第一条及第二条ハ、特ニ右ノ趣旨ヲ以テ之ヲ解スヘキモノナルコトヲ宣言ス。
〔全権委員名省略〕
因テ各全権委員ハ、其ノ良好妥当ナリト認メラレタル委任状ヲ寄託シタル後、左ノ条項ヲ協定セリ。
第一款 交戰者
SECTION I ON BELLIGERENTS
第二章 俘虜
CHAPTER II Prisoners of war
第二款 戰闘
SECTION II HOSTILITIES
第二二條 交戰者ハ害敵手段ノ選擇ニ付無制限ノ權利ヲ有スルモノニ非ス
Art. 22. The right of belligerents to adopt means of injuring the enemy is not unlimited.
ホ 不必要ノ苦痛ヲ與フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト
(e) To employ arms, projectiles, or material calculated to cause unnecessary suffering;
第二五條 防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何ナル手段ニ依ルモ之ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス
Art. 25. The attack or bombardment, by whatever means, of towns, villages, dwellings, or buildings which are undefended is prohibited.
第二七條 攻撃及砲撃ヲ爲スニ當リテハ宗教、技藝、學術及慈善ノ用ニ供セラルル建物、歴史上ノ記念建造物、病院竝病者及傷者ノ収容所ハ同時ニ軍事上ノ目的ニ使用セラレサル限之ヲシテ成ルヘク損害ヲ免レシムル爲必要ナル一切ノ手段ヲ執ルヘキモノトス
被圍者ハ看易キ特別ノ徽章ヲ以テ右建物又ハ収容所ヲ表示スルノ義務ヲ負フ右徽章ハ予メ之ヲ攻圍者ニ通告スヘシ

 

キリスト教国の国際条約5(異教徒は守る気になれるか?2)

日本では一帯一路構想は中国の孤立した野心で失敗するだろうとの位置付けですが、上海協力機構外形だけ見ると中露を軸に着々と地歩を固めつつある様子です。
中国は国内不採算投資拡大の限界→外貨準備枯渇の心配から、自由に支配できる自前の国際機構を作り(本部中国で他国の理事は名目だけにして、常駐しないので国際資金を事実上中国の思うように使える仕組み)そこに外資を入れてその資金を自国のために流用したいという狡猾な思惑から、一帯一路構想をぶち上げました。
中央アジア諸国は概ね人口まばらな経済力のない国々ですから、(その分、採算性が低いので民間投資が望みにくい地域です)中国による巨額投資の計画は夢のように映ったでしょう。
上記のように国際的資金を導入して対外的には資金バラマキを餌に一帯一路沿線国に夢を与え賛同者を募った面があるので、資金出し手予定の日米が入らない(知らんプリ)と軍資金が続かない弱点が致命的です・・。
もともと中国の自己資金は見せ金でしかなく日米の資金をかすめ取ろうというものでしたから、日米がそっぽを向いたまま設立後時間がたてば経つほど資金が続かなくなってきた(背に腹を変えられずにアコギな取り立てに回るしかなくなり、国際信用がガタ落ちになってきた)ところへ、米中経済戦争勃発で、(将来的にはトルコ並みの通貨暴落対象になりかねない状態で)泣きっ面に蜂の状態です。
https://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20181013.html
2018-10-13 05:00:00
中国、「貿易戦争」立ち向かう原動力は債務依存で「手詰まり感」

中国は、よく資金が豊富だという。「一帯一路」で各国へ資金を貸し付けていることを見てそう言われているのだ。それは、間違いである。本来の対外直接投資資金は、経常収支の黒字で賄うべきもの。それを計る尺度が、対GDPの経常収支黒字比率である。中国は今、これが急速に低下している。今年は、1%を割る懸念が強い。その背景にあるのが、先の限界資本係数の上昇だ。非効率経済ゆえに、対GDPの経常収支黒字比率を引下げている。対外直接投資を自前の経常収支黒字で賄えない状態である。だから、中国は「一帯一路」で日本へ資金的な協力を求めてきたのである。中国は、決して資金豊富な国ではない。

『サーチナ』(10月1日付)は、「リーマン・ショックから10年、高まる中国の金融リスクー大和総研調査」を掲載した。
(3)「BIS(国際決済銀行)統計によると、中国は、債務残高のGDP比が2008年末の141.3%から2017年末に255.7%へ急上昇した。この水準や上昇ペースの速さは、かつて金融危機に陥ったり、バランスシート調整による景気急減速を余儀なくされた国々に匹敵している」

昨日見たように、中露が派手な軍事演習をしたり、公海を埋め立てて軍事基地を作って威勢を示しても、軍資金が続かないのでは文字通りコケ脅しでしかなく、どうにもならないでしょう。
中国は覇を唱えるための対外援助どころか、通貨マフィアの標的にされかねない危機的状態になっているのです。
このために中国は膝を屈して日本にすり寄っている状態です。
ところできれいごとと言うか西欧で理性に基づいて一歩一歩組み立てて来た国際政治上の約束事(ウエストファーリア条約以降の漸進的向上/国際通商条約)にロシアを含めた周辺ないし新興国指導者はごもっともと言うことで反対出来ないから条約参加してきました。
しかし、身近な生活では暴力的解決が普通の社会で、国連の掲げる高邁な人権思想にそのままついて行けない現実が先進国アメリカでさえ)吹き出した印象です。
アメリカの場合、国(国家理性)としては自由民主制で、人権重視ですが、死刑制度がない代わりに犯罪処理現場では黒人に対する射殺が日常化している実態・・これが実質の二重基準です。
日米戦では異教徒の日本に対しては国際法を守らなくとも良いという戦争方法であっただけではなく、国内でもアメリカ国籍を持つ日系人を迫害し、黒人と白人では国内でも扱いが今でも違うのです。
格差拡大・・トランプ氏の1国主義の主張・・それらは全て「国民レベルでは、優等生を演じ切れない」と言う悲鳴にも聞こえます。
米軍が、欧州戦線で解放軍というメデイアの宣伝にも関わらず、強姦魔になっていたことを12日に紹介しましたが、綺麗事に国民がついていけない実態があります。
アメリカ自身も西欧から見ればロシア同様の西欧文化の周縁国ですから、いざとなれば野蛮な本性を出してしまうのでしょう。
平安末期の公卿社会からすれば、勃興してきた地方の粗野な武士団とは気が合わないが、利用できる限度で無視できないので、粗野な武士同士で争っていればいいという源平時代の摂関家のような気持ちが、20世紀以来の西欧の姿勢でしょう。
もしかしたらトランプ氏の無茶な要求は、アメリカの草の根の本音・・上海協力機構に参加すれば価値観や気持ちが一致するかもしれません。
実はアメリカは、本音に従って?上海協力機構にオブザーバー参加申請したところ、拒否されているらしいのです。
上海協力機構に関するウイキペデイア引用の続きです。

SCOはアメリカのオブザーバー加盟申請を拒否した他[2]、アフガニスタンのカルザイ政権が半ば「アメリカの傀儡」である事を理由に加盟申請を拒否したり、加盟国ウズベキスタンからの駐留米軍撤退を要求するなど、米国との対立路線を形成しつつある。過去のサミット(2007年のビシュケク・サミットを含む)では、たびたび間接的に「ワシントンへの反感」が示されている。

キリスト教徒は嫌・お断りということでしょうか?
ところできれいごとと言うか西欧で理性に基づいて一歩一歩組み立てて来た国際政治上の約束事(ウエストファーリア条約以降の漸進的向上や各種国際通商条約)にロシアを含めた周辺ないし新興国指導者はごもっともと言うことで反対出来ないから条約参加してきました。
しかし、身近な生活では暴力的解決が普通の社会で、強盗も泥棒も蔓延している社会で国連の掲げる高邁な人権思想にそのままついて行けない現実が先進国?アメリカでさえ吹き出した印象です。
アメリカの場合、国(国家理性)としては自由民主制で、人権重視ですが、死刑制度がない代わりに犯罪処理現場では黒人に対する射殺が日常化している実態・・これが実質の二重基準です。
格差社会は経済用語ですが、実はその基礎には文化度の二重構造があるとみるべきです。
日米戦では異教徒の日本に対しては国際法を守らなくとも良いという戦争方法であっただけではなく、国内でもアメリカ国籍を持つ日系人を迫害し、黒人と白人では国内でも扱いが今でも違っている、二重基準の社会です。

キリスト教国の国際条約4(異教徒は守る気になれるか?1)

「人としてやって良いこと悪いこと」の内発的価値観がない・・仕返しを恐れるだけの場合、勝てばそのチャンスに相手が仕返し出来ないほどとどめを刺すしかない・・徹底的に痛めつける・・インデアンに対するように民族として生き残れないほど弱体化させてしまう・ジェノサイドが普通のやり方になって行きます。
こう言う価値観で欧米人が世界支配した近代〜20世紀は弱肉強食の世界になってしまったのは、仕方ないところです。
ここで16年8月以来中断している(17年1月16日にも若干触れています)ウエストファーリア条約の本質・キリスト教徒間だけで人道主義が語られて来たテーマに戻ります。
ギリシャ・ロ−マの民主制と言っても「市民」だけだったように、欧米の人道主義は「ブルジョア」の市民から始りキリスト教徒一般に枠を広げただけのことでした。
フランス革命もブルジョアジーだけの自由人権でした。
このきれいごとと言うか実質のない欧米の民主主義や人権思想に異議を唱え始めたのが最近のイスラム教徒の難民を含めた「乱」の本質と言えそうです。
異教徒除外の人権思想に最初に公式の会議で異を唱えたのが日本で、第一次世界大戦後国連でこれを主張したことが英米の怒りを買い・・「報復のための戦争」植民地支配にモンクを言った現地人を見せしめに「縛りクビ」にするのと同じ懲罰戦争に引きずり込まれたことを書いてきました。
条約の発展に戻りますと、その後名誉白人?日本も対等者としての戦時条約に参加をするようになり、今では世界中でいろんな国が参加する条約社会になっていますので、本来的にキリスト教徒オンリーの原則が見え難くなっているので、ここでその本質・・由来を書いておく必要があると思って書いています。
ただ戦争等の極限状態になると、欧米人はキリスト教徒オンリーの本音が表面化し易いから物事の理解には由来が重要です。
アメリカは戦時陸戦条約・・ハーグ条約に加盟していたのに対日戦争での残虐行為・・相手の武装解除を良いことに降伏条件を超えた無法な支配した・・臆面もなく実行して来たのは、この歴史・・異教徒にはどんな残虐なことでも背信行為をしても良いと言う意識が根深くのこっていたからではないかと言うのが私の憶測です。
キリスト教徒か否かで差を付ける考え方は、ドイツのユダヤに対する差別、アメリカで日系人が全財産没収されて荒野の収容所に収容されたのは、ドイツでのユダヤの処遇と共通です。
ただアメリカは食糧が豊富だったので飢え死にさせなかった違いだけを理由に、ナチスドイツ批判しているのですが、根本の発想は同じでしょう。
日米戦争が始まった時のヒットラーのルーズベルトに対する祝電(日独同盟よりも人種差別優先・露骨に表現した非白人をたたきのめせ!と言うような祝電でした)を紹介しましたが、英米独ソの戦いの次元は異教徒との戦いより低いものだったので、もしかしたらルーズベルトがナチスのユダヤ系収容開始に祝電を送っていた資料がその内出て来るかも知れません。共産主義対自由主義の戦いも異教徒日本との戦いよりは次元の低い争いです。
ルーズベルトにとっては、共産主義対自由主義の戦いも、異教徒日本との戦いの方が優先だったし、日独同盟よりはアジア人撃滅の方位が優先していたのです。
ヒットラーの祝電が今になると探せませんが、10月6日に紹介した以下の記事はかなり詳しい分析です。
http://bewithgods.com/hope/japan/14.html

「日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』から

という題名ですが、内容はフーバー回顧録の要約にとどまらず、ミアーズ論文の要約がかなりを占めていますが、そこには私の年来の主張とほぼ同旨の主張が網羅的に引用され主張されているのに驚きます。
私の意見といっても、多くはあちこちに発表されれている意見・主張を無意識のうちに飲み込んだ上で、自分の意見であるかのように思い込んでいることが多い(と時折書いていますが・・)ことの例証かもしれません。
戦時に関する条約に留まらず今や商取引・知財、犯罪人引き渡し条約その他いろんな種類の国際条約が締結されるようになっていることは周知のとおりですが、これら条約が発達するとこれをも守らせるための判定機関として国際司法裁判所,海事・商事裁判所などが設置されるようになっています。
こうした先例や条約・ルールを守れというというルールも先進国による後進国支配道具に使われている実態も上記に紹介されています。
徐々に国際的に「法の支配」が行き渡り始めたように見えましたが、14年にロシアによるクリミヤの武力編入+ウクライナ侵攻が行なわれ、西側世界が反発してもロシアは一歩も引かないでそのままですし、フィリッピンが南シナ海で領海問題で中国を訴えていた結果、フィリッピン完勝の裁定が出ましたが、中国はこんなの「認めない」と宣言しています。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016071200762&g=int

「南シナ海をめぐる仲裁裁判の判決は、中国が習近平政権下で積極的に進めてきた同海への進出の法的な正当性を明確に否定した。中国外務省は、声明で「判決は無効で拘束力はなく、受け入れず、認めない」と判決を拒否。

他方で、(16年7月ころ原稿記載ですから今になるといつか不明です)フィリッピン大統領が「覚せい剤等の犯罪者をドンドン射殺しろ」と命じたか、選挙公約だったかの結果、短期間に射殺された公式発表だけで6000人以上に達している事態らしいですが、これに対する、国連の人権侵害批判に対して同大統領は、(モンクあるなら)「国連脱退して中国と新たな国際組織を作る」とまで公式発言して大騒ぎになっています・・直ぐに外務大臣が火消しに努めているようですが・・。
本来フィリッピンと中国の領海争いでフィリッピン完勝・・有利に出た裁決ですが、これを守らないと言い放つ中国の宣言はフィリッピンに不利な発言ですから対決すべき状況ですが、ドーテルテ大統領はせっかくの判決の成果を無視して就任後中国寄り姿勢を明確化しています。
国益と関係なく現行国際秩序無視の中国と連帯・あるいは利用した方が自己保身に有利と言う読みでしょうか。
トルコも歴史的な大宿敵ロシアに対抗するためにNATOに加入しその軍事力の大きな部分をになっているし、EU加盟を熱心に運動して来た経緯があります。
ところがいつまでもEU加盟を認められない・・(本質はキリスト教国ではないからです)のに業を煮やしたのか、シリア難民問題でドスをEUに突きつけた関係になり、更にはクーデター未遂事件以降、大規模国内弾圧を繰り返していわゆる西欧的価値観・・民主国家の仲間から離れて行く勢いです。
以上は16年夏〜秋ころの原稿意見でしたが、その後もトルコは欧米離れの方向性が激しくなる一方です。

立憲主義は何のため?

憲法は国家をよりよくするために制定しているものであって、「個人の人権さえ守れれば国が滅びても良い」という制度ではありません。
立憲主義の主張は本来国家あってのことであるべきですが、立憲主義の論旨を見ていると国家の存立はどうあるべきかの視点が欠けている傾向・・印象があるように見えます。
中国のシャープパワーが議論されるようになってその防衛のためかどうか分かりませんが「表現の自由」は個人の幸福追求権のための権利であるという主張のウエートが上がってきたように見えます。
「法曹実務にとっての近代立憲主義」の本を12月19日頃から紹介していますが、これを読んでいると「表現の自由が結果的に国家社会発展の基礎である」という私が憲法をならったころの要素が何となく背景に退き、社会のために役立つ側面よりは「個人の人権そのもの・憲法13条の幸福追求権を重視すべきである」という主張が大きくなっていきた印象です。
このような重心移動が重きをなしてきた背景は、国家社会発展のために表現の自由が重視される点をできるだけ背景に押し込んでいき、個人は所属社会・民族や組織の枠から外れた発言主張をしても不利益扱いされるのはおかしい・・・国歌斉唱起立拒否やピアノ演奏に応じないことが職務違反に問われるのは可笑しいという結論を導きたい意欲・イメージが濃厚です。
シャープパワー被害でいえば「何処から資金が出ているかどこの国のために意見を言うかも、個人の人権だ・・問題視するな」という立場の間接的な応援論でしょうか?
私には要約する能力がありませんが、第二章では、思想・良心の自由に関して、人権は何のためにあるのかという設問を通じて、ピアノ伴奏拒否事件や国歌斉唱時の起立命令違反事件を論じて公共的側面論が個人の内心の思想信条を踏みにじって良いのか?というような(私の理解不足かも知れませんが)批判をしています。
公共的側面とは何かというと、平たく言えば「公務に従事する以上は公務優先論」という意味でしょうが、素人的に読むと、企業その他組織に入った以上、組織企業人として行動する時には組織・企業の目指す方向へ協力義務があるのは当然です。
車社会反対思想を持っているからと言って車製造業務を拒否できない、あるいは結婚式場や葬儀屋に就職しながら、宗教が違うからと葬儀や結婚式の準備を拒否したり、居酒屋店員が、菜食主義だからと就業拒否したり、車の製造業務に従事するのを拒否するのは許されないのは当然・個人の思想の自由論とは次元が違うように思われます。
自衛隊に応募しておきながら非武装論者ですからと言って、兵器操作訓練を拒否するのも同じです。
思想良心の自由の重要性を説いて、業務命令を拒否できるかのような(期待を込めた)主張を読むと「前提が違うなあ!とまず驚いてしまいます。
続いて第3章47pには「表現の自由は民主主義社会の維持保全にとって必要な権利であるとし、「民主主義国家の政治的基盤をなし国民の基本的人権の中でもとりわけ重要なものである」という最高裁判決を引用して説明しているのは、従来型公共論でもあるでしょう。
「民主社会維持にとって不可欠なものである」とも書いていますが、そうであるならば、社会利益の範囲を考慮する必要があります。
「思想・良心の自由・内心でどう考えているかはいかなる権力もこれ犯せない」という大前提を論じた上で、表現の自由はこの外部表現であるから、これが侵されれば「内心の侵すべからざる自由を侵害する」ことになるという論建てで、「何を表現しようと勝手だ」と言わんばかり・・当然プロの学者がこんな乱暴な意見をはっきり書いている訳ではありません・・の全体から受けた印象です。
しかし、憲法の保障する人権は国家存立あっての権利であるにすぎません。
そもそも権利とは何か?といえば国法で保護されている利益・法益のことです。
国法の保護があって成り立っている権利が国家の存立を危うくする権利があると言うのは背理です。
何を計画しようと勝手だというのではなく、殺人計画やテロの計画の自由はないはずです。
この本の基調は、勘ぐれば中国のシャープパワー脅威論によって「日本人である以上そんな主張をして良いのか!」論を封じるための基礎刷り込み論のように思われます。
英エコノミスト誌の転載記事によるとシャープパワーの弊害があっても規制には慎重であるべきという意見がまだ先進国では基本的立場であるように見えますが、憲法13条の個人の権利を最重視するかどうかが背景的に大きな論点になって行きそうなイメージです。
今は規制がない上に規制をするにしても難しいことに中国がつけ込んで、諸外国での抱き込み活動・シャープパワーの脅威が目に余るようになってきたので12月21日紹介した新聞記事になって来たのです。
こうなると「良心のみに委ねておけない」ので、憲法との関連で難しいですが何らかの規制の必要な時代が来ています。
上記エコノミスト誌転載の日経新聞記事は、「魔女狩りのような摘発に乗り出すと法の支配が自滅する」と書いて「そういう土俵に乗ると中国に負けてしまう」と書いていますが、何もしない、できないイメージを流布する提案すること自体中国の息がかかっているのかの疑問があります。
中国の基本戦略は古代から戦わずして勝つ・相手が抵抗する意欲を喪失させるのが究極の目的です。
日清戦争時でもよく言われるように当時アジア最先端軍鑑「定遠」を日本に回航して、戦わずして日本が戦意喪失するように仕向けたのもその一端です。
定遠に関するウイキペデイアの記事からです。

「清国北洋水師の旗艦を務め、1886年(明治19年)には示威を兼ねて朝鮮、ロシア、日本を歴訪した。日本訪問の際には、その強大さと船員の乱行(長崎事件)から日本社会にとって大きな脅威として受け止められた。」

兵力が優っていると思うとあっさりと暴動.略奪事件を起こす点でも、当時から民度・兵のレベルがまるで違っています。
日本人は脅されると却って戦意高揚する民族性ですから、急いで海軍増強に励み日清戦争になると戦意にまさる日本が圧勝したのですが、中国人の国民性は古来から徴用された(自発性のない兵ですから)「兵はいかにして先に逃げるかに意を注ぐ」先陣の次に控える第二軍は逃亡兵を背後から撃つのが主たる任務になっている国民性を前提とした行動ですが、対日本では逆効果でした。
最近相次いでいる北朝鮮兵の逃亡事件では、北の軍が背後から逃亡兵を銃撃する光景が報道されていますが、これが中国や朝鮮の国民性です。
https://www.asahi.com/articles/ASKCQ34DHKCQUHBI013.html

兵士脱北時の映像を公開 追跡兵、軍事境界線越える
ソウル=牧野愛博
2017年11月22日14時30
事件発生当時、兵士が乗った小型四輪駆動車が高速で板門店に突入したが、軍事境界線から約10メートル手前の地点で脱輪し、兵士は走って韓国側に逃走した。北朝鮮軍兵士4人が計四十数発を発射し、一部の銃弾は軍事境界線を越えた。追跡した北朝鮮軍兵士の1人は数秒間、軍事境界線を越えて韓国側に入っていた。

2〜3日前にも似たような事が起きています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/post-9174.php

また北朝鮮兵士が亡命 軍事境界線に接近した捜索隊に韓国軍が射撃
2017年12月21日(木)13時31分

中韓・・中進国の罠9(マンション価格高止まり)

大分横道にズレましたが、中韓のバブル・・マンション高値相場に戻ります。
17日頃から連載して来たように、賃金相場が韓国では日本の7割程度・・実質では5割以下しかないのに、日本の平均的サラリーマンですら買えない価格である6000万円のマンションが韓国では平均価格になっていることの不思議さです。
元々中国人と違って、韓国人は投機性が低い国民性です。
中国人のように転売目的で2戸め3戸めを買い進めて価格高騰したのではありません。
実質日本の何分の1の賃金で平均価格6000万平均まで買えたかですが、これはローンの仕組みによるようです。
12日に紹介したとおり、韓国のローンでは金利だけ払えば良いと言う不思議な制度らしい点が、(上記記事では「満期が集中している2019年には元金をも払わないといけないので・・」と書いていることから見ると当初の一定期間・5~6年間だけ元金を払わないで良い据え置き型か?)日本よりも巨額ローン設定を可能にしている原因かも知れません。
元金を払わないで金利だけ払えば済むのと元利均等払いとを比較すれば、金利だけ払えば良いならば日本の何倍もの高額物件でも、毎月の支払いが日本より少なくて済む可能性があります。
まして低金利化が進むとなおさらです。
5%の金利のときと1%の金利とでは、物件価格5倍まで買っても毎月の支払額は同じです。
金利が下がった分だけ物件価格が高くても買える=売れるし、高価格を維持出来る仕組みです。
これが元金も平行して払う仕組みですと金利が半分になっても(元金部分の支払が同じですから)支払額が半分になりません
金利がマンション相場の底値維持に大きな役割を果たしていることが分ります。
逆に言えば金利が1%から2%になると毎月のローン支払が2倍になり、支払い能力ギリギリで買った人は支払不能になってしまいます。
中国のマンションバブルに関して米国金利アップに合わせて中国も金利を上げるしかなくなったのですが、金利アップと同時にマネーサプライを潤沢にして景気の下支えを図っても金利動向がマンション相場にモロに影響すると書いた所以です。
韓国のマンション相場を見ると日本の価値観では危機ライン突破状態ですが、金利だけ支払えば良いのであれば、金利さえ上がらなければ何とか維持していけます。
米国金利上げによって中国だけではなく韓国も上げざるを得ない状態ですから、それで困る人が増えて来たところです。
ただ、永久に金利だけ払えば良いのではなく、一定期間据え置きと言うだけらしいですから、この据え置き期間満了と今回の金利上げと同時になって来たようです。
この間にかなりの給与アップしていないと据え置き期間満了が来ると大変になります。
ところが韓国ではこの数年成長率が2〜3%前後で低迷している・リーマンショック前の5%前後の成長ではなくなってしまっているのです。
世界ネタ帳からの引用です。
10   11 12  13   14  15  16  17
6.50   3.68  2.29  2.90   3.34   2.79  2.83    2.68
単位: %(17年は予測)
個々の事情による凸凹があるとしても成長率に比例して収入が増えるものですから、5年前後の据え置き期間中に大幅に賃金が上がる前提でいたのに成長率が鈍化したところで金利が上がり元金部分の支払が増えると困ってしまいます。
ただ、直ぐに損切り→売却に動かない=暴落しないのが投機慣れした中国との違い・・その前に高利貸しが繁盛する社会特性があります。
中国では古代から投機が好きですし、韓国では、高利貸しが得意、借りるのも好きと言う民族性の違いがあります。
そこで無理して買ったもののローンを払えない人が増えて来た・・高利金融依存・海外売春攻勢(→慰安婦攻勢もこの一種?)となって来たのですが、これでは庶民の不満が発火点になるのは当然です。
韓国では、これまで何回も借金棒引き政策・・一種の徳政令・・幸福基金と称するものが行われて来ましたが、文新大統領も選挙公約にこれを掲げていたので、この発令を検討しているようなニュースが出ていました。
http://www.sankei.com/west/news/170528/wst1705280029-n1.html
2017.5.28 15:00
「韓国でまもなく“徳政令”…借金帳消しは経済崩壊の序曲か
韓国で新大統領・文在寅(ムン・ジェイン)氏の選挙公約が実現に向け動き出した。そのひとつが借金棒引きの“徳政令” だ。100万円以下の借金を10年以上借り続ける人々を対象に、その借金と利息の全額を帳消しにするというもの。対象は43万7000人とされ、実現は簡単ではないが、実現した後にもいばらの道が待っていそうだ。(岡田敏彦)」
「李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の政権下で計画、実施されたもので、国民約280万人の債権を買い入れ、うち57万人の約6兆3000億ウォン(約6300億円)の元金と利子を減免するなど債務を調整する役割を担ってきた。」
「・・文氏は、この救済策を上回る「全額帳消し」を公約として大統領選に当選した。10年以上にわたって1000万ウォン(100万円)以下の借金を抱え、返済のままならない人々の借金を全額、国が肩代わりするというプランだ。」
借金帳消し政策が慣例化している結果、大統領就任ごとにこれを期待する国民が多く・・就任後これを無視出来ない・・仕方なしに繰り返されて来た(幸福基金と言う名称は李明博大統領のトキからです)様子です。
元々約束を守る気持ちの乏しい国民性・・騒げば何となると言う前近代的精神状態で来たのですが、だからこそヤクザによる厳しい取り立てしかない風土→国外売春出稼ぎに走るしかない土壌ですが、この繰り返しでは、自発的に約束を守る気持ちがいつまでたっても育たないでしょう。
ここまで中韓の行き詰まりを書いて来ましたが、だからと言ってこう言う状態をバカにしているのは危険です。
・・この危機感が反日行動に向かう原動力になったように、今度こそ新機軸を打ち出すバネになることもあり得るので日本は要警戒です。
抜本的構造改革を怠って不満のはけ口・反日運動されるのは日本人にとって腹が立つかも知れませんが、本筋を外している限り日本に追いつくのがその分遅くなるので、長期的には日本にとって逆に有利です。
さすがの韓国も反日感情を煽っているだけではどうにもならないので、韓進海運破綻以来国費を投じて応援に動き出したようです。
国費投入をバックに価格攻勢などに動き出したといわれていますので、バカに出来ません・・中国が国有企業に追い貸しを続けては鉄鋼ダンピング輸出をさせているのと同じような・中国のマネでしょうか?波乱要因になって来ました。
北朝鮮崩壊など近隣で大混乱が起きると難民が押し寄せる損害が懸念されますが、経済分野も苦し紛れに何をするか分らない・・国が近くにあると混乱の元ですから要注意です。
ダンピングだけなら(技術アップに結びつかないので)大したことはないでしょうが、国を挙げて技術アップに正面から取り組むようになると本当の競争相手になるリスクが出て来ます。
慰安婦や根拠のない陰口を言う程度では、韓国の国力アップにはなりませんが、マトモに技術アップに取り組むようになる方が日本にとっては手強いことになります。

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