米国の高家賃(収益還元法に頼る危険)1

住宅価格が家賃収益還元の範囲内なら安泰か(理論整合性だけで良いか?)というとそうではないでしょう。
私は日本のバブルの頃から、こんなに上がれば家賃やローンを払えなくなる・支払い能力を超えているからそのうち収まるはずだという信念があり、(その頃バブルという流行語が出回る前で知りませんでしたが)ローンや家賃支払い能力が不動産価格の限界値という考え方で生きてきました。
住宅価格急低下を防ぐために・・例えば金利を5%から2、5%に下げると2000万円しかローンを組めない人が4000万円まで借りても月額支払額が同じになるという面を利用した住宅価格維持政策です。
厳密には元金返済分増額になりますが、バブル崩壊後返済開始後5年間は利息のみ支払い可のローンが一般化していた記憶です。
固定資産評価では基本的スタンスは収益還元を基本に取引価格等を副次的に見るべきという個人的意見です。
この観点から言えば、バブル的取引事例による固定資産評価をするのは高過ぎないか?という基本的スタンスでしたが、もちろん実務はいろんな価値観や過去の経緯等総合的落ち着き等の総合ですので、結果的にいろんな要素の複合結果・・不動産鑑定理論に収束して行く運用になっています・・・ご安心ください。
日本では借地借家契約は契約期間満了しても原則更新して続いていく仕組み(正当自由がないと解約申し入れが無効)ですから、アメリカのように数年置きの契約期限がきたら「契約終了しました。住み続けたいならば5万円アップの新契約しなさい・応じないなら新契約に応じないなら出て行け」という追い出し策が不可能です。
日本では契約中の地代家賃値上げは一方的に出来ない・・・借家人等が応じなければ追い出せるのではなく、(借家人は自分が正しいと思う金額を供託すれば家賃を払ったことにしてくれるので未払いになりません)訴訟手続きが必要なので多くの場合家主の方が諦めます。

借地借家法
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(借賃増減請求権)
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

この手続きでは経済理論通りではなく過去の経緯や居住者の収入状況等を重視して土地価格が仮に2倍になっていても金利保証論だけで家賃や地代を2倍にするのではなくほんの微々たる値上げしか認めないのが原則的運用です。
こうした運用から一旦貸すと長期に渡って賃料が事実上固定される社会が出来上がっています。
地代家賃値上げに関する運用同様に、固定資産税の課税では激変緩和措置といって、評価が仮に2倍になってもすぐに税額も2倍にならない制度が用意されています。
雇用も事実上終身制になっている(よほどのことがないと解雇を認めない判例定着)のもこの一環です。
このように、日本社会は持続性を基本として運営されている・・その時々の経済成長などの勢いで全てやってしまわない・・支配者(権力)意見・理論や思想どおりに直ぐに決めつけていかない・・改革には時間のかかる社会ですが、その分手堅いしゴリ押しのない「納得」を前提として動く社会でやってきました。
社会制度を見ても律令制は日本社会に合わないと思っても直ぐに廃止するのではなく時間をかけて徐々になし崩しにして行ったし、武士の時代が来たからと言ってイキナリ貴族の荘園を取り上げるのではなく、なし崩し的に荘園管理に武士が浸透して行っただけで制度大変革をしてきませんでした。
神仏習合その他こういうやり方は、国内矛盾を温存する融通むげな社会です。
後白河院のよって立つ経済基盤であった八条院領が鎌倉時代が終わった建武の新政を始めた後醍醐天皇の経済基盤になっていたことを、皇室経費問題テーマで1月下旬頃紹介したばかりです。
日本人は懐が深いというか?幕府と朝廷の二重権力並存など矛盾関係でそのままやって行ける社会です。
この矛盾を主張したのが「隅々まで皇帝の威令を貫徹しないと気が済まない」・・専制支配を勉強した水戸学であり、明治維新の王政復古の号令であり廃仏毀釈でしょう。
そもそも専制支配は秦の始皇帝の始めたものですが、そのよって立つ支配原理は法家の思想でした。
法家の思想はいわゆる性悪説にたつ荀子等の思想を純化して行って、韓非子によって完成され秦の専制国家体制の支配理念を作ったものでした。
皇帝がうたた寝したので侍っていたものが、布団(漢文では御衣(おんぞ)と書いていますが・・私の日本語翻訳です)をかけたところ「役割外のことをした」という形式論で処罰されたという故事で有名です。
今の議論はこれに似ていないかの疑問です。
現在毎月勤労統計が(平均賃金データ)「不正問題」と銘打って政争テーマになっていますが、これは形式「論理を一貫しないと許せない」という偏狭な議論が基礎にあるように思われます。
報道によれば昔は五百人以上の大企業の全数調査が決まっていたのに、東京都は04年以来サンプル調査しかしていなかったという「不正」追求です。
「全数調査を続けるべきだったどうか」の本質的議論が全くなく、必要な変更手続きをしていなかったという「不正」追求です。
野党・メデイアと組んだ「不正」追求論は、法改正か規則改正で変更すべきだったという教条論のようですが、こういう形式論で国民の多く(庶民は知恵があるのです)が国会審議を止めて現在の内閣の政治責任を追求するべきと思っているかの疑問があります。

巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)3

だいぶ間に挟まりましたが、July 18, 2017「巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)2」の続きです。
大量生産・汎用品生産競争では賃金の安い新興国に叶わない・・価格競争に参加するならば,おなじ賃金水準にするだけではなく,インフラ全般を含めて生活水準を新興国並みに下げる覚悟がいります。
インフラを含めた生活水準を新興国の3倍も高く維持しながら、賃金だけを新興国と同じに引き下げてもコスト競争には勝てません。
値下げ競争に参加すると先発企業ほど不利になります。
後発企業・レストランで言えば、低価格路線でペイするように店の立地しつらえまでずべて見た目だけ垢抜けているものの全て張りっポテで安くあげているのに対し、先発レストラン・・例えば1万円前後単価の店はグラスやお皿に至るまで全て 高級仕様で人件費以外のランニングコストがかなり高くなっているので、人件費と食材レベルだけ下げても太刀打ちできません。
インフラコスト負担の弱点を緩和するためには、アメリカは腕力による・・中国並みに個別企業強迫の繰り返しによる不当利益・・江戸時代的運営で言えば時々御用金を召し上げるしかない偶発的利益主義政策に頼っています。
実はこれもここ4〜5年課徴金等で,巨額罰金をとり始めている政策ですから、トランプ氏はこの拡大をする程度のことでしょうから、実は従前とあまり変わりません。
フランスの銀行から兆円単位を取りクルマでは,ほぼ言いがかり式にトヨタ叩きをし,フォルクスワーゲンの燃費偽装は本当のこととしても、エアアバッグのタカタのエアバッグ騒動はいきなり出てきたもののメデイア報道では実態がよく分からないうちに大騒ぎになって巨大日本企業が潰れてしまった印象です。
同じものを装着している日本国内では全く事故報道がないのに、アメリカでだけで何故事故があるのか不審に思っていました。
ただし、この原稿は半年ほど前に書いておいたものですが、直近で日本でもエアバッグ不良による事故が起きたという報道を見たような印象ですから、本当に問題があったのかもしれません。
以下の通り国内でも事故が起きていたのですが、大規模規模報道になっていなかっただけのようです。
http://www.sankei.com/affairs/news/170117/afr1701170032-n1.html
2017.1.17 15:43更新
タカタ製エアバッグの異常破裂でけが人か 国内2件目、リコール対象車が追突事故」
なぜ国内ニュースであまり目にしないかと思って見ると、今日現在ネット検索して見たところ以下の記事が見つかりました。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40961
2014 10 31メディア・マスコミ
「タカタ製エアバッグ事故で際立った日米の報道姿勢の違い」
要はホンダがアメリカで2008年リコール届出をした時に(すでに4〜5件の事故が起きていた)全車種の危険を知っていたはずなのに、なぜ一部車種しかリコール届出をしなかったかの調査報道・・消費者視点がアメリカの報道方法であり、日本メデイアは企業側発表をそのまま報道していただけの違いという説明です。
日本では企業発表しか報道しないから私のように何気なく(朝仕事に出かける前に新聞等を)ちらっと見てるだけの一般人には・・なんとなくアメリカで次の日本叩きが始まったか程度の印象を持つ人が多かったという事でしょう。
ただ気になって調べる気になれば、ほんの5〜10分以内でこのような深堀りした意見が出てくるので、自分がメデイアに汚染されている一方の対米悪感情が修正されるチャンスがあるだけ有難い時代です。
日々流れてくる情報は膨大で、その99、999%について、我々日々忙しいので特に関心をひいた記事以外にはさらに深堀りして見ようと思う気が起きない(・・出かける前の朝食などの準備中に)時間もないのでそのまま読み飛ばして行く時代です。
これを繰り返していると私のように(なぜアメリカだけで事故報道があるのか?という反米意識?)いつの間にかメデイアの誘導したい方向意識が定着して行きます。
メデイアの一方的イメージ報道・一種のフェイクでしょう・・に対してそれぞれ有益な批判があるだけありがたい世の中ですが、念のために批判的意見を見て見ようという動機づけもない・時間もない私のような一般人はメデイアのイメージ報道に洗脳されて行くしかけです。
これがエアバッグのような技術的分野では、それ程反米/国粋主義を煽ることにはなりませんが、これが民族主義と直結するような分野ではメデイアの報道の仕方・編集態度は重要です。
8月9日までメデイのフェイク性を連載してきましたが、編集の自由に隠れてできるだけ日本企業側に立って、日本消費者無視?企業発表しか報道しない日本メデイアの報道姿勢が際立っていたことになります。
タカタのエアバッグ騒動に関する日米の編集態度差はハシなくもその一端を明らかにしたことになります。
話題がそれましたが、メデイアの垂れ流し報道にもメデイアによる「どの方向で行くかの編集権!があってのことですから、これを鵜呑みに出来ない・・「なかったことをあったと言い、あったことをなかった」というだけがフェイクではなく、「10あったことを1しか報道しない」あるいは無視してまったく報道しないのも一種のフェイクでしょう。
というものの、アメリカで次々と起きる出来ごと・・次々と外国企業から罰金をとり、場合によっては潰してしまいながら、他方でシエールガスなど資源の国産化と輸出によって,国内工場の燃料コストを安くして補助をするからどうだ!ということでしょう。
燃料コストだけ安くしてもうまく行かない・・ガソリンがぶ飲みを気にしない前提の結果,却って省エネ工夫力で日系企業に負けてしまったし、この程度の補助より人件費の安さの方が魅力があったからこそ新興国へこれまで生産拠点を移転して来たのですから、この発想では無理があります。
新興国よりレベルの高い公共インフラ・生活水準を維持するためには、海外で儲けられる人には遠慮せずに儲けてもらってその還流資金を利用する必要があ流からこれで収支が成り立っていたのです。
これをやめてしまうと,上記程度の腕力に任せた罰金の上乗せ取り立てでは(江戸時代の豪商とり潰しと同じで)とても間に合いません。
企業の儲けであれ資源輸出であれ,原因が何であれ,自国内で働いた以上の収入・海外資金環流に頼るのはその内無理が出て来るので,(サウジが原油収入に頼らない国家造りに必死ですが・・)どこのクニでも還流資金のあるうちに自国産業の足腰を鍛えておく必要があります。
それには,汎用品生産から手を引いて新興国の出来ない手の込んだ高級品に取り組む人材比率を増やして行く・・機械代替の効かない高度なサービス人材を育てる・民度引き上げ努力が合理的です。
日本の女性が世界1の人気がある点を見習うべきでしょう。
民度レベルの引き上げ競争になってくると再教育準備期間の資金が必要です。
個人で言えば進学資金・・失業した中高年齢者が再教育プログラム・就労支援に参加した場合に失業保険の一種を給付する制度があります。
雇用保険法
(昭和四十九年十二月二十八日法律第百十六号)
 第二款 技能習得手当及び寄宿手当
(技能習得手当及び寄宿手当)
第三十六条  技能習得手当は、受給資格者が公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合に、その公共職業訓練等を受ける期間について支給する。
国家単位で言えば、時代対応出来るような民度修正期間の資金として貯蓄や還流資金のあるなしが、明暗を分けます。
個人の場合お金がないと技術を身につける暇がなく、貧困の連鎖と言われるように底辺労働に就くしかなくなります。
その資金源になる海外で儲けている企業を非難して、わざわざ自国に高コスト工場を維持しろと言うのは愚策です。

巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)2

この辺で話題が変わりますが、March 13, 2017,「素人政治の限界6(プロの流出)」〜「政治と信頼1(意思表示の責任)」等で少しずつ書いてきた取り引き外交に関する懸念・・July 5, 2017「巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)1」の続きに戻ります。
トランプ大統領もメキシコ進出阻止した企業へ裏で何らかの密約で見返りを与えているのかも知れませんが、経営原理に反した個別企業たたき・・狙われたら大変とみんなクビをすくめた状態・恣意的狙い撃ち強制がはびこると必ず裏での取引がくっついて来ます。
そうなると・・独裁国家の恣意的経済介入・企業癒着と区別がつかなくなり、予測不能・合理的経済活動が阻害され、長期的に国内企業の足腰が弱ります。
思想の自由がないキリスト教支配が暗黒の中世になってしまった歴史をDecember 17, 2016「フランス革命1(ルネッサンスの完成)→キリスト教支配からの解放」などで書いて来ましたが,ソ連の粛清時代みたいな政治になると(暗黒の中世の焼き直しですから)結果が見えています。
どこまで落ちぶれてもアメリカには資源があるから強いと思うのは間違いで,多くの資源国・・新興国・・ロシアも資源がたっぷりあっても民度レベル以上には成長出来ないことを見ても明らかです。
アメリカは資源が豊富なだけではなく、身分制度に縛られた欧州に比べて自由な雰囲気が新規工夫や開発を生み出して来た・・これこそがアメリカの強みです。
予測不能な政治行動のトランプ政権の、行き当たりばったりの強権支配が定着し自由闊達な言論・行動を萎縮させると、アメリカへの人材流入が止まりただの資源国になってしまいます。
今後有能な人材がアメリカに入って行かなくなれば,ロシア、オーストラリアあるいは中東産油国のような資源国レベルにまで落ちて行くしかないと言うのが、トランプ氏の御託宣でしょうか?
トルコが長年安定していたのですが、昨年のクーデター未遂騒ぎ以降急速に独裁性を強めてきた結果、窮屈な政治体制を嫌がって有能人材の国外流出が進んできたと報道されています。
これがアメリカでも起きるのでしょうか?
ただし中国では思想締め付けが厳しいにも関わらず、多くの世界的先端企業が生まれている事実からすれば、トルコに関するこの種の報道は矛盾していますので、メデイアによる想像だけで書いているだけかも知れません。
頭脳流出が増えていることを真面目に報道する以上は、本来1年〜2年ではなく10〜20年程度の流出推移を見ないと分からない筈ですが、日経新聞報道ではムードだけ書いていて、なんの出典根拠も示していなかった記憶です。
日本の一流学者の経歴を見ても5年〜10年程度の長期間アメリカ留学して研究所に在籍していて研究成果が世界的に認められている人が多い(1〜2年の留学で成果を出すのは無理でしょう)のですから、元々半年や10ヶ月そこらで決め付けるのは無理がある・・私の意見自体データ根拠ありませんが、クーデター未遂事件後頭脳流出が進んでいるという日経の報道は根拠なく欧米的価値観で受け売り報道していることが明らかです。
どういう表現だったのか忘れましたで念のためにネット検索してみました。 http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H1V_U7A110C1FF8000/
トルコ、深まる分断 クーデター未遂半年2017/1/14 22:24
「・・・・反対意見を封じ込め、エルドアン氏は悲願の改憲に突き進む。首相職の廃止、国会の解散、多選制限の事実上の緩和、大統領令の発令――。実現すれば「権力の均衡が失われ、個人の独裁につながる」(最大野党の共和人民党)との懸念が募る。強権を嫌い優秀な人材が国を離れる「頭脳流出」は欧州とアジアをつなぐ新興国の将来にとって不安材料となっている。」
約半年前に読んだ記憶だったので、この機会に読み返して見ましたが、上記記事では破産急増のNHK報道同様に上記の通りムードしか書いていません。
私のように毎朝仕事に出る前にさっと読むだけで何気なく読むものには、この種ムード報道は非常に有効で、「頭脳流出が起きている」という結果だけ刷り込まれたまま信用していましたが、今アメリカの将来に関して思い出したので、上記の通り検索して読み直してみると何らのデータも引用していなかったことがわかりました。
このように事実調査に基づかない(頭脳流出は数十年単位でみないとわからない筈ですから調査に基づかない意見であることが明らか)ムード報道は人の思考内容に恐ろしい刷り込み効果をもたらすことが分かります。
(私は頭脳流出に関心があったのでその記憶だけでしたが、今読み返して見ると安倍政権の改憲姿勢に対するネガキャンが中心的意図だったことが分かります・・同じ記事を読んでも読者の関心によって記憶が違うものです)
今回、中国の先端企業が成功しているという日本メデイア報道と矛盾することから気がついたことですが、これがなければ、独裁=先端文化が育たないという図式の刷り込みを信じてしまうところでした。
中国の公害や人権侵害を滅多に報道しない日本メデイアの特質からすれば、中国の成功企業報道の方が実は誇大・・こっちの方が虚偽かも知れません。
メデイアの事実報道が事実に基づかずに想像で書いているのが原則になると、頭脳流出が本当かどうか不明で何を信用して思考を組み立てて良いかもわからなくなります。
日本国内データと違い世界情勢に関しては、多くの日本人にとって他の角度からのチェック能力皆無ですので、その影響力が強大です。
ところで、人材流入にも2種類があって,明治日本のように一流人材を招いてそれに触発されると次々と近代科学研究が開花して行く民度のクニと全部やってもらわないとすぐに途絶えてしまう民度があります。
一を聞いて10を理解する人と10全部教えてもらわないと何も出来ない人材・民度の違いです。
アメリカは、たまたま新天地を求めて次々と人材が流入していたから、その人たちが上澄みに乗っかって来て、次々と新産業が起こって来ただけで自前の人材が育ってきた訳ではありません。
上澄み人材流入に頼ると、それまでの上中流階層の上に乗っかってくるので古参移民は徐々にランクを下げていくしかありません。
トップクラス・・アップルのジョブスみたいな人が仮りに数人や10人程度が移民で入って来て大企業トップになっても層の厚い中流層には関係がない・・ニッサンのゴーンさん見たいなもので、企業が隆盛になれば中堅社員にとっては自分の地位を失うわけではないので、社長が異民族であろうと日産の中堅社員が大歓迎しているのと同じです。
ところが技術革新(オートメ化)+新興国の生産参加により流れ作業的労働者が職を失う・・中間層が一斉に「中の下」以下〜非正規に落ちるようになると社会的インパクトが大きいので、これが人口の大多数を占める既存移民の不満になり、トランプ旋風になって行ったものと思われます。
新たな技術・・AI駆使できる有能な移民を制限したからと言って従来型中間層の職場を維持できる訳ではない時代です。
AI取り込みに反対し・・上澄み人材流入が縮小すると逆に国内工場が国際競争に負けて生き残れなくなります。

低レベル化?とメディアの信用低下

今回NHKの「クローズアップ現代」の見出しと内容の食い違いを書いていて気がつくことは、報道関係者には基本的に反政府主義者が多いのは仕方がないとしても、報道全てに言得ることですが、政治的な主張するには特に反対論者がいることからより一層綿密な裏づけ調査が必要のにこれを怠っている・人材劣化が起きているからではないかと思われます。
昨日最後に書いたように文化欄に逃げているのは、ツッコミが浅すぎても読者が減るだけですが、政治利害のある場合には読者が減る程度では収まらず、利害関係者の強烈不満を呼び起こすリスクがあるからです。
サンゴ礁のやらせ報道では、地元漁協に利害があったことから判明したものです。
その後ネットの発達によって、政治テーマでもメデイア以外のものも反論できるようになってきたので、フェイクニュースが大きな問題になってきました。
あるいは読者や視聴者レベルが上がってムードだけ煽る・根拠のない意見には飽き足らない人が増えてきたのに、メデイア側が社会のレベルアップに追いついて行けなくなっている状態かもしれません。
これがトランプ氏によって、アメリカでもフェイクニュースの批判を受けるようになった原因です。
フェイクニュースは、積極的フェイクもあれば、調査不足もあるでしょうが、もともと報道各社の色付立場が重視され事実調査を軽視する傾向があれば、結果的に調査能力も上がりませんから根は同じです。
色付け角度付け報道が改まらない弊害というか、報道には一定の角度からの関心に基づく掘り起こしが必要なのでそれはそれでいいのですが、関心に基づく事実調査の合理性欠如が問題です。
慰安婦騒動に関して事実調査不足が問題になりましたが、「破産急増」テーマは事実無根でも慰安婦ほどの大事件性がありませんし、誰も問題視せず(私は信用拡大のコラムを書いている途中で最近の破産がどうなっているかが気になったので、たまたまネット検索したら出てきた中でNHKが1番客観的報道しているかと思って覗いて見て驚いただけです)に垂れ流して終わっている印象ですが、事実調査を怠って報道している点では同じ危険性があります。
朝日新聞の慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書を、January 9, 2015「第三者委員会の役割2(朝日新聞慰安婦報道1)」のテーマでこのコラムで引用紹介したことがありますので結論部分の一部再引用します。
「・・しかし、韓国事情に精通した記者を中心にそのような証言事実はあり得るとの先入観がまず存在し、その先入観が裏付け調査を怠ったことに影響を与えたとすれば、 テーマの重要性に鑑みると、問題である。
そして、吉田証言に関する記事は、事件事故報道ほどの速報性は要求されないこと、裏付け調査がないまま相応の紙面を割いた記事が繰り返し紙面に掲載され、執筆者も複数にわたることを考え合わせると、後年の記事になればなるほど裏付け調 査を怠ったことを指摘せざるを得ない。」
まして、14日に紹介した日弁連意見書を見ると単に「カードローンについても総量規制の対象にすべきだ」という趣旨だけのことであって破産の増加については傍論的にデータを紹介しているだけで破産増自体に懸念を示すには、時期尚早としたのか?意見を書いていません。
しかもネットで簡単検索した限りでは日経も朝日新聞や東京新聞でも「破産増」だけの表示で「急増」とは書いていない(朝日はローン急増が原因か?と書いていますが破産急増とは書いていません)のに、NHKだけが何故「破産急増」と・・刺激的テーマにしてしかも「クローズアップ」して取り上げるほど社会性があると判断したのかが疑問です。
4月12日の「クローズアップ現代」の内容を読んで見るとカードローンが増えていることが話題の中心で、どこにも破産急増の話題が見当たりません。
羊頭狗肉というか、見出しと内容があってないのです。
破産急増とは時間軸でいうものですが、1%増の基準が1年間の統計結果による以上は長期間観察の結果なのですから、1〜2週間程度かけて関連データを調査して比較判断・深堀する時間をかけられないような緊急速報性がないことも確かです。
報道時間中の進行でNHKの期待に沿う意見が出たかは別としても、(文字化したネット報道には出ていません)まだ前年より1%増えたデータしかないことが明らかですから、これだけでなぜ「「急増」というテーマにしたのかの不思議さが残ります。
日常用語としても、1%程度の増減があったくらいで「急増」「急減」という言葉を使う人は滅多にいないのではないでしょうか?
日中気温がわずか1時間で25度から26度(約4%の変化)に変わっても急上昇と言わないでしょう。
しかも、「若者もシニアも」と見出しになっていますが、内容には年齢別の変化についてどのような調査をしたかの出典の明示もなければ、何%から何%に増えたかも書いていません。
司法統計年表に年齢別の増減推移まで出ていると言う意味かも知れません。
そこで司法統計年表16年のPDFで「破産新受事件数―受理区分別―全地方裁判所
第 102 表」に入って見ましたら、年間の合計数しか出ておらず、内訳としては自然人と法人の2分類しかありません。
NHKはどこから若者やシニアの年齢別統計を入手したのか不明です。
以上によると、派手な見出しと内容がまるで違う上に・・内容のない、いい加減な報道をしているように見えますが、これでは視聴者が離れていかないのか不思議です。
私はテレビを見ていないのでNHKの総合レベルが分からないですが、NHKは報道内容を全てネットにアップしていないはずですから、ネットアップする分は精選されているとすれば、「クローズアップ現代」のレベルがNHKの報道レベルの上位を代表していると言うべきでしょう。
慰安婦騒動以来、親中韓系報道をしてきたフジテレビや朝日新聞の売り上げ減少が知られていますが、これを受けて経営者は必死になって体質改善に取り組んでいると思われますが、NHKには民間と違って市場淘汰の仕組みがないので、番組が劣化していく一方になっているのかも知れません。
私に言わせれば、「朝日新聞やNHKの政治的立場が受け入れられなくなったのは残念」という自己正当化ばかりではなく、政治理念先行で事実無視の捏造的報道しか経験がないから、こんなことになっているのではないでしょうか?
見出しテーマと内容がまるで違っていても気にしない人材レベルの低さ・いろんな角度に知恵をめぐらせての多角的事実調査能力欠如こそが、基本的原因ではないかということです。
「若者もシニアも破産急増」というテーマを決める時に、相応の幹部が関与したはずですが、どういうデータ調査が必要かの思いをめぐらせる能力もない人ばかりで運営しているのでしょうか?
もしかしたら虚偽でもでっち上げでもムードを作り上げれば勝負あり・という成功経験しかない年齢層・事実調査経験のない幹部の方が、事実調査の必要性を具申する若手をドヤして「事実調査などいらない政治色付け先行でやれ!と檄を飛ばしていたのかもしれません。

巨額収入層排撃の愚(海外収益の必須性)1

鄧小平が「クロ猫でもシロ猫でも稼ぐ猫は良い猫だ」と言ったと言われるのは,本質を突いています。
閉鎖社会では分配の論理が重要ですが,外から稼いで来る人を悪役に仕立てても解決になりません。
ジニ係数基準を騒ぐ人は,「等しく貧しい方が良い」と言うやっかみの論理支持者でしょうか?
  「貧しきを憂えず、等しからざるを憂う」
私の若い頃には,左翼系全盛時代でしたから上記のような標語が一般に流布していました・・。
こんな変な理屈で左翼文化人マスコミは,「格差があるよりは貧しい方がマシだ」とソ連の計画経済の失政による窮乏の進行を正当化していたのです。
政治的にしょっちゅう福祉の増大・・保育所の充実や生活保護費アップその他を主張しているのが彼らですが、その財源を誰が出すのでしょうか?
お金持ちの多い町あるいは大企業城下町・・他所で稼いだ金が入るので,(自分の町だけの売上に頼るスーパーよりも他府県全国展開で稼いだ儲けを本社所在地に還付している方が)中間層は納税負担が少ない割に立派なインフラが整備される恩恵を受けるのが普通です。
昔からウチの町は大手企業や金持ちが多いから市民税などが安い割に図書館等が整備され充実している・・とメリットを自慢する人が多かったのですが,最近ジニ係数で不満をあおる風潮では,こう言う町はジニ係数の大きな町として住み難い・・不満が大きくなっているのでしょうか?
やはり周辺にお金持ちが多い方が立派な図書館が整備され、公園整備や道路掃除も行き届き割安の美術館や公共機関を利用できる・得な感じをする方が自然ではないでしょうか?
格差がイヤだと言ってお金持ち・・せっかくお祭り等で大金を寄付してくれる人や多額納税者を追い出したり潰したりしてどうするつもりでしょうか?
日本でもかなりの人数が非課税階層ですが,それでも高度な社会保障・インフラを利用出来ているのは,高額所得者や海外からの収益を含めた企業利益の投入があるからです。
この流れを維持するには正当に税を納める愛国心・郷土愛が必要です。
この数年・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たのは,こうした流れの帰結です。
還元してくれない資本家では意味がない・・国籍意識のないユダヤ系に対する批判が急速に盛り上がって来た根拠です。
グローバリズム反対と言うよりは、資本家の民族への還元意識厚薄の問題です。
我が国でこう言う反対論がそれほど盛り上がらないのは、日本企業は資本家のためではなく従業員のためにあると言う意識・・トヨタその他みんな民族意識が濃厚だからです。
日本企業は元々民を如何にして養うか発想から始まっているので、利益率・株主への還元・配当率の低さが欧米基準によって批判されてきました。
ただし、この20年ばかり、国際展開する関係で・例えばニューヨーク株式市場に上場するには、欧米基準を無視できないことや東証でも外国人投資家比率が上がってきたことからかなり配当率が上がっています・・国際社会の一員としてある程度の付き合いも必要ですから仕方がないと思いますが・・。
低所得者定義にはいろいろあると思いますが,非課税世帯数でサーチすると掲載年月が古いですが、以下のとおりです。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1286124377 2012/4/2314:58:05
現在、住民税非課税世帯が3100万人、年収200万以下のワーキングプア1100万人と合わせ4200万人と今後も増加する。 失業者150万人、生活保護者250万人。
基礎控除その他いろいろな条件があって,全部紹介すると複雑過ぎますが,上記集計数の根拠不明で信用性がはっきりしませんが、当時では約3100万世帯(1世帯平均2人としても人口の約半分?)も非課税だと言うのです。
納税している人でも、ホンの数万円など雀の涙程度しか納税していない人も多いでしょう。
保育所不足を非難する風潮が盛んですが、保育所で保育する幼児一人当たりに要する公的負担は半端ではありません。
利用者にも高額所得者がたまにはいるとしても、多分利用者の母親の平均給与の何倍ものコストがかかっているはずですし、納税額で比較したら、もしかしたら数百倍以上もかかっているかも知れません。
こうした経費・・児童手当や学校の維持経費,道路など補修負担をしているか?となりますが,給与所得者で言えば,課税対象の中間層の負担が増える一方になっているのは分りますが、中間層が減って非課税層が増えているのでそれだけでは到底足りません。
日本を含めて先進国は,資本所得・・主として海外利益送金がないと成り立たない社会になっていることが分ります。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08H5H_Y7A200C1000000/
財務省が8日発表した2016年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆6496億円の黒字だった。原油安で貿易収支が大幅に黒字転換したことが寄与し、前年から4兆2370億円黒字幅を拡大した。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2016cy.htmによれば、
「第一次所得収支:18兆1,360億円の黒字(前年比▲2兆5,166億円 黒字幅縮小)(うち再投資収益は3兆9,014億円の黒字)」
となっています。
日本の場合、上記のとおり約18兆円もの大金が毎年のように海外から収益として入っているのですからこの資金によって、補填されていることが分ります。
アメリカも世界からの資金還流で成り立っていますから、例えばアップル製品を国内工場で作れ・海外製品に45%関税をかければ、国民は中国やバングラデッシュ等で作ったものを利用する他国よりも割高なもの使うしかなくなり,国内消費激減・・生活水準がそれだけ下がり・・同時にアメリカ企業アップル等グローバル企業の利益・・アメリカ国内送金も急減します。
資本家の利益が税や寄付その他で国内還流してフードスタンプ配給資金や実際労働以上の高賃金や、公共インフラ資金にもなっているのですから,これをなくすとその分減った資金をどうするか?
やっかみによって、巨額所得者や、資本収益を敵視して追い出していくと、中高給与所得者の税を引き上げるしかなくなる・・これでは何とか生き残っている中間層が余計苦しくなります。
このやり方はトランプ氏の創意によるものではなく、フランスがフロマンまたはフロランジュ法とか言う法律を作って既にアルミタール鉄鋼の工場移転に対して政府が介入をしています。
「ルノーに対する政府介入権を日産に及ぼさない」と言う取り決めが昨年頃決着がついたのが記憶に新しいところです。
日産・ルノーへの介入問題についてはJune 20, 2017,「最低賃金制度(非正規)」のコラムで紹介しました。

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