通貨切り下げ3(インフレ6)

韓国ではサムスンや現代自動車その他の快進撃、あるいは原発受注など躍進がいろいろ報道されている割に、国民の方は非正規雇用・・あるいは大卒の就職難、あるいは海外移住や外国籍取得意欲の激しさ、自殺率の高さ・・等々聞こえて来るのは企業の躍進が国民の豊かさに連動していない事象ばかりです。
日本では財政赤字に関連して個人金融資産の分厚さがいつも引き合いに出されるのに対して韓国の場合は個人負債の大きさがクローズアップされています。
プラザ合意以降約30年間に及ぶ円高傾向の結果、(プラザ合意以前は1ドル250円前後で今は80円前後です・・)日本ではデフレ継続で企業や政府(組織)が苦しくなり国民個々人が豊かになったのに対して、そのころから通貨安政策に徹して来た韓国では逆の結果・・企業が伸びたのに対して個々人がやせ細っていたという比喩が出来るでしょうか?
ちなみに4月17日日経夕刊5ページの投資講座では、「過去25年のビックマックの価格差を書いていますが、日本ではやや下落しアメリカでは2、5倍になっているとのことで、この値段に釣り合う為替レートとしては86年に1ドル231円、11年は79円に該当し、ドルは66%も下落しているとのことです。
円表示でこの間の国内生産高がじりじり上がっているし、仮に同じとしても日本はドル表示で66%も生活水準が上がっているのに対し、アメリカではドルが66%下落している(同じ給与でも実質は66%減額です)のですからアメリカ人も大変です。
昨日、4月16日の例は分り易く数字を2倍にしただけであって、これが1、5倍でも1、2倍でも経済効果は同じです。
まして、インフレ対応による国内給与引き上げは、物価が上がってからの対応のために約1年くらい遅くなりますので国民にとってはもっとしわ寄せがきつくなります。http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2011121621408(東亜日報)によると以下のとおりです。
「中央銀行の韓国銀行(韓銀)が15日に発表した「第3四半期資金循環」によると、
家計部門の純金融資産(金融資産から金融負債を引いた差額)は3四半期末現在、
1146兆2000億ウォンに集計された。
これは2四半期末の1207兆7000億ウォンに比べて61兆5000億ウォンが減少したのだ。
このような減少幅は関連統計が作成されて以来、最も大きい数値だ。
韓銀の資金循環表上、家計は純粋な家計や小規模個人事業者、非営利団体を含める。
家計の金融資産は3四半期末2216兆9000億ウォンで前期対比41兆ウォンぐらい目減りした。
反面、家計部門の金融負債は第2四半期末の1050兆1000億ウォンから
3四半期末1070兆6000億ウォンで20兆ウォン以上増加した。
韓銀は、
「3四半期に欧州の財政危機で株価が急落して、 家計部門の株式や出資持分評価金額が目減りし、純金融資産が急減した」
と説明した。
一方、金融法人と政府の純金融資産は前期末よりそれぞれ35兆4000億ウォン、
3兆1000億ウォン増加して、家計に比べて状況が良いことが分かった。」以上のとおりで、最近のウオン安は輸出企業を潤しているものの家計を直撃していることが分ります。
ちなみに2012年4月16日の為替レートでは、1ウオン=0、07ですから、円で換算で、純資産が1146兆×0、07=80兆2200億円となります。
韓国の人口は4833万人で、日本の人口は1億2800万ですから、2,648倍です。
日本の人口比に直すと80兆2200億円×2,648=212兆4593億円の個人金融資産しかないことになります。(しかも上記のとおり、韓国では個人だけではなく非営利団体の資産も含みます)日本の個人金融資産は1500兆円前後と言われますが、負債額を引いた純資産額は約1000兆円前後当たりかも知れませんので、韓国人の5倍もの資産を有しています。(ネットで見られる限りの最新の日銀資金循環表(2011年12月)によると2008年の家計金融資産は1490兆円で負債は386兆円です)
実際に国民の豊かさは金融資産だけはなく、持ち家率等の資産構成にもよりますので一概には言えませんが一応の参考です。

通貨切り下げ2(インフレ5)

インフレになればインフレ率だけ給与を上げれば公平かと言うとそうではないので、日本でもどこでも、企業の活力を求める立場からは緩いインフレ待望論が強いのです。
急激なインフレは国民の不満がたまって政権存続の危機になるので困りますが、緩いインフレ目標を掲げるエコノミストが多いのは、この程度ならば国民が怒らない・・国民の気づかないうちにこっそりと所得移転が行われ易いことを期待しているのです。
緩くてもインフレ・物価上昇がある限り購買力が落ちることは確かですし、実際に「緩く」ですが為替相場も下がります。
その結果による国際競争力回復を期待しているのです。
緩くとも急激であろうとも通貨安=同率の物価上昇は、購買力平価の下落を通じて通貨安=物価上昇率だけ国民の所得を奪い(対外的には低賃金労働になってしまうので)、輸出企業にその分の所得移転する関係であることに変わりがありません。
日本でインフレが恒常的状態のときに私が考えていた数式と言うか、私なりに考えていたインフレと勤労者の関係式(資産家と勤労者・・持てるものと持たざるものの関係)がありましたのここで紹介しておきます。
持ち家を買うために、こつこつと貯蓄していた場合を想定した考え方です。
すなわち
3000万円のマンションを買うために年間所得6〜800万円の人が年間に200万円ずつ貯蓄していて2000万円まで貯めてあと5年で全額用意出来る予定をしたときに、マンション価格が2倍の6000万円になり、給与あるいは配当所得も2倍の1200〜1600万円になって年間貯蓄能力も2倍の400万円になるとどうでしょうか?(すべて2倍になった場合)
上記の例では自己資金で購入するのに今後積み増すべき必要な資金額が、インフレになる前には今後1000万円・・5年で目標達成予定でした。
すべてが2倍になるとどうでしょう。
6000-2000(保有自己資金)=4000不足となってしまいます。
その代わり収入・年間貯蓄能力も2倍の400万円になりますが、購入価格到達までには10年かかることになってしまいます。
対外純債務国の場合の海外債務返済も同じことで、100兆円の対外債務があるときに、自国通貨が半値になって外貨建てでの返済額が2倍になると通貨安によって貿易黒字が2倍になっても却って返済期間が延びてしまいます。
韓国と日本に当てはめて考えると、韓国等の通貨が仮に半値になっても(実際にそんな大幅な切り下げはあり得ませんが数字を分りよくしているだけですので誤解のないようにして下さい)円高になった日本等では必死にコスト削減に励みますので、韓国の貿易黒字がそのまま2倍になることはありませんが、外貨建て借金だけは、ウオン換算では2倍になりますのでもっと悲惨です。
実際のところ韓国のウオン下落はリーマンショック後に限れば、約2割と言われています。
以下は、サムスン系マスコミと言われる中央日報の日本語版です。
2011年09月20日09時05分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]

「韓国における公共部門と個人・企業の国家経済を構成する「経済3主体」の金融負債が3283兆ウォン(約220兆ウォン)と過去最大を記録したことがわかった。特に負債償還能力が急落しており、今後の韓国経済に負担を与えかねないという懸念が出ている。

国会企画財政委員会の李漢久(イ・ハング)議員(ハンナラ党)が19日に企画財政部と韓国銀行から提出を受けた資料を分析した結果によると、経済3主体の金融負債は2007年の2401兆4000億ウォンに比べ36%、881兆6000億ウォンの急増となった。」

日銀の国債引き受けとインフレ4

高金利国は資金があって(仕入れたり作ったりして)供給さえ出来れば儲かる社会・・資金・供給不足社会です。
日本も高度成長時代には作りさえすれば売れる時代でしたから、借金さえ出来れば儲かるので如何に銀行から借りられるようになるかの(銀行が大きな顔をしている)競争時代でした。
高金利国は、高金利でもそれ以上に儲かる元気な社会だとも言えますが、供給面で見れば供給不足・・その時代の平均的水準に必要な物品・サービスが行き渡っていない渇望感・ハングリー精神の強い社会であり、資金需要面で言えば資金不足社会です。
日銀が印刷能力の限度まで紙幣を印刷して国債を引き受けてその分の紙幣が市中に出回るとどうなるかですが、日本の場合既にハングリー時代が終わっているので、銀行が低利で貸してやると言っても必要以上に借りたい企業もないし国民も今までの倍の牛乳を飲みたい訳でもないことから、使い切れない国民は預貯金するしかないし、銀行も借り手がない分は国債を買うしかないので、次に発行する国債に紙幣が(吸い上げられて)還流して行きます。
ここ10〜20年にわたる国債増発は、行き場のない資金の受け皿だったし、紙幣が市場にあふれかえってインフレにならなかった所以です。
国債で引き受けてやらないと銀行は集まった預金の金利を払うばかりで貸出先がないので倒産してしまうのでその救済策でした。
(売る当てもないのに商品を仕入れている商店のようなもので・仕入れても仕方がない・・儲けが期待出来ないので0、00何%の低金利にしているのです)
この辺の意見は、04/27/03「銀行とは?4(農協的問屋機能の衰退、1)」以下で銀行の役割縮小を書き始め、国債引き受けは銀行に何のリスクもなく、帳簿の付け替えだけで巨額の利ざやを稼げる仕組みであることを09/13/08「金融機関の存在価値3(金融機関引き受けのからくり2)」〜09/14/08「国債の無制限引き受けと紙幣発行権2」で銀行に対する巨額の利益・倒産防止の下支えをしている仕組みを紹介しました。
BIS基準がこのころから厳しくなり、その引き換えに国債は自己資本比率に組み込めること・・ノーリスク勘定になったことも、投融資先がなくなっていた先進国での国債引き受け促進の応援政策だったことになります。
BIS構成の有力国・・先進国ではどこでも銀行機能の縮小・・優良融資先の縮小が始まっていたことがココから読み取れます。
この基準強化の結果今回のギリシャ危機でも分るように、世界の金融機関の殆どが国債を大量に保有していたことが分ります。
ある年に30兆円分の国債を日銀が引き受けて30兆円分の紙幣流通が増えても、その紙幣の使い道のない余った分は預金→銀行も借り手がないので次の国債引き受けに繋がるので日銀による際限ない国債引き受けの増加にはなりません。
実際に国会議決による国債引き受け枠は小泉内閣時代からあるらしいですが、1〜2回使った程度でその後は予算総則に書いてるだけで議論しないで毎年同じ数字のまま(5年も6年も同じ数字が出ているところには政治家は気がつかないと言うか議論の対象になり難いからです・・)国会を通過しているのは、実際には枠を使わないままだから、政治のテーマにならないのでしょう。
実際に日銀が引き受けたのが30兆円枠の内いくらだったか知りませんが、ともかく引き受けた分だけの紙幣が増えた筈ですが、我が国でインフレにならなかったどころかまだデフレで困っていることからすれば、日銀引き受け枠の増額に関しては当面まだまだ余裕があることが分ります。
この間に国債購入に向かった外に余った紙幣はいわゆる円キャリー取引で海外流出していたことについては、円キャリー取引のコラムで紹介したとおりです。
紙幣発行が需要以上に多くても、最強通貨・・即ち世界最低金利の円は引く手あまたなので当面海外へ流出して行くだけでしょう。
資金不足国への円の供給はその国では生活必需品購入資金になり、ひいては世界中が平等に文明の恩恵を受けられることですから目出たいことです。
人道主義者が「人類皆平等」などの理念を何回唱えても平等にはなりません。
資金が必要なところに借金であれ所得であれ、先ず資金があまねく行き渡るようにすることが生活水準や教育チャンス平等化の進展・人権意識の定着に資するのが明らかです。
日本がゼロ金利で巨額資金を世界に垂れ流すことにより、(国内で使うのは預金や国債を買い増すくらいですから)世界中の資金不足国が潤い、そこでの需要が広がって生活水準が向上します。
アメリカは世界中から借金で物やサ−ビスを買い、対価として資金を垂れ流し、日本は物やサービスを余り買わずに貿易黒字によって世界中から資金を集める代わりに低金利で世界に貸し出している構図です。
日本のように自分が我慢してお金を貸し出すのは国民性に合っているかも知れませんが、どうせお金を出すならば、アメリカのように自分がウマいものを食べて対価としてお金を出した方が得な感じです。
アメリカを通じて世界に資金を供給する仕組みとしては、アメリカに脅されて湾岸戦争のときに90億ドル=1兆1700億円を半強制的に取られてしまったことがありますが、アメリカ国債を買っていたとしてもこれを取り崩せないのですから経済的には同じことでした。
日本は円の値上がり阻止のために(貿易黒字ないし経常収支黒字分と同額)ドル買い介入して、買ったドルでアメリカ国債を買ってるのですから、保有しているアメリカ国債(ドル建て)を売ったらドルが値下がりしてしまうので売るに売れません。
と言う訳で、日本も中国もアメリカ国債は事実上無価値(宝の持ち腐れ状態)になっているのですから、外貨準備と言っても取られてしまったのと殆ど変わりません。
無理にまとめて売ればドルの大幅値下がりによって、ドル外貨準備の評価が何割も下がってしまい大損です。
債権債務関係では債権者の方がニッチモサッチも行かない・・フリーハンドを持っているのは債務国の方であると書いて来た所以です。

日銀の国債引き受けとインフレ3

先進国ではお金の量に比例して消費が増えるのは(まだお金さえあれば何でも買いたい人が多い)低所得層が中心ですから、バブル崩壊後消費の下支えのために子供手当や社会保障の充実・・最低賃金のアップなどバラマキが進んだのは経済合理性がありました。
中流以上の階層にとっては、収入が1割増えてもその殆どが貯蓄に回ってしまい消費があまり増えません。
ですから増税は景気を冷やすどころか、収入の何割を貯蓄してしまいお金を使わない階層から税でむしり取って政府が全部使い切る方が消費刺激になるという意見をSeptember30 ,2011「増税と景気効果2」前後で書きました。
景気対策・・と言っても、上記の通り底辺層に対する社会保障の底上げ程度では、供給能力過剰下での生産維持・下支え程度でしかなりませんので、企業は金利が安いからと言って借金してまで設備投資をしません。
ですから、金融緩和や紙幣の大量発行よりは底辺層に対する紙幣バラまき・・生活保護水準等福祉水準の引き上げやサラ金の金利引き下げの方が消費下支え効果があります。
(これがバブル崩壊後サラ金に対する高金利を違法とする判例・不当利得関連の債務者保護判例が進んだ政治・経済的背景でしょう)
農産物と違って仮に生産が足りなければ工業製品は増産が簡単ですし、それどころか我が国はバブル崩壊以降供給能力過剰で苦しんでいるのですから、仮にコーヒーを2倍飲んでもコーラや酒を多めに飲んでも業者は生産設備をフル稼働に近づけるだけで値上がりまではしません。
デフレ現象の原因はこれまで書いているとおり、賃金・生活水準で10倍格差のある中国その他新興国からの低価格品の流入にあるのであって、我が国の場合金利や紙幣量をいじってもどうなるものでもありません。
企業の方も国内投資しても儲けられないのが分っているので、いくら金利を安く・・ゼロ金利にしても、あるいは量的緩和をしても借金して投資する気持ちがありません。
3月23日の日経新聞朝刊社説には企業の手元流動性が60兆円と出ていましたが、企業は儲けるタネがないので資金があっても使い切れないで困っている状態です。
銀行も預金ばかり集まっても貸す相手がいない・・借りたい人が少ない状態ですから、金融機能が縮小して国債を買っている状態になっています。
銀行が本来の金融機能を果たせなくなっていることから国債に活路を見出している状態・・銀行は最早存在意義をなくしているのではないかという意見を09/19/08「銀行の存在意義6(融資機能の衰退3)」 前後で連載しました。
例えば、ゼロ金利どころかマイナス金利にしても車やテレビの販売が増える見込みがなければ・・あるいは鉄鋼需要がないのに製鉄の増産、車やテレビ製造の増産投資しません。
家賃を無料にしてくれても店員の給料分も売れないようなときには、店舗を借りる人がいないし、無利息で貸してくれても採算が取れる見込みがなければ、デパートも進出投資しないでしょう。
現在の我が国では供給能力過剰社会・・言い換えれば(長期にわたる貿易収支・経常収支黒字の蓄積の結果)資金余剰社会になっているので、従来の経済学理論とは異なり紙幣を濫発しても今更インフレにはなりません。
ではその紙幣がどこへ行くのかと言うと、円キャリー取引で海外流出して行きます。
ゼロ金利でも借りないほど資金余剰の国もあれば・・だぶついた資金を借りたい国・・まだ供給不足社会は世界中にいくらでもあります。
我が国の底辺層同様に新興国あるいは貧困国では、需要はいくらでもあるのに購買力が足りない国が圧倒的に多いので、そこへ資金が流れて行くのは自然であり、理にかなったことです。
旧来または現在の経済学者は、供給不足下の国内完結経済を前提に紙幣が増えればインフレになるとバカの一つ覚えのように主張するのですが、先進国では供給・生産力過剰社会ですので、紙幣垂れ流しが国内だけでのだぶつきから需要のある海外への垂れ流しになって、これを受けた海外でインフレが進みます。
日本の紙幣垂れ流しがアメリカや中国のインフレ、あるいは国際的資源高騰の遠因になっていることを03/20/08「サブプライム問題と世界経済5(低金利競争1)」以下のコラムで書きました。

日銀の国債引き受けとインフレ2

市中で(民間が)国債が引き受けた場合、その分紙幣が市中から吸収されてしまうので、国債と引き換えに政府が手に入れた紙幣を政府が使っても市中に出回っている紙幣量は変わりません。
September30 ,2011「増税と景気効果2」前後で、増税しても吸い上げた紙幣を政府がほぼ全額使うので、市場での紙幣流通量はむしろ増えることが多いので、増税が景気を冷やすことはあり得ないと書いたことと同様に国債で吸い上げた場合も同じです。
国債増発も増税も資金循環としての経済効果は、同じであると繰り返し書いている所以です。
その論理の応用ですが、国債を市場で売らないで日銀が印刷した紙幣で買うとその分量だけ市場に紙幣が多く出回ります。
日銀が政府短期証券を引き受けた場合、(政府の為替介入資金として)紙幣が出回ったままにならないように売りオペで紙幣を市中から回収するのが普通です。
為替介入・・例えば円売りドル買いの場合、政府短期証券と交換に円紙幣を政府に供給し、政府がドル買いのために市中に放出した円は、日銀が政府短期証券を市中で売って(売りオペ)同額の円を吸収することで中立化を図っています。
ついでに為替介入して得たドル紙幣の行方を説明しておきますと、政府が為替介入で得たドル紙幣を市中に出して両替するとドルが下がってしまうので、ドルのままでアメリカの財務省証券を購入するので、日本や中国のドル外貨準備が増えます。
貿易黒字国が自国の通貨じり高を防ぐために為替介入すると、その結果アメリカの財務省証券や公的債権保有が増える仕組みです。
アメリカは上記のとおり資金が還流して来るのでいくら貿易赤字を続けてもドルが赤字分だけ下落することもなく、環流した資金で更に輸入出来ることになっているのが現状の世界経済です。
国債の日銀引き受けの場合、国債を市場に再販売出来れば問題がないのですが、買い手がつかないほど国債が暴落したときに伝家の宝刀を抜くことになるのですから、日銀は市場相場(大幅額面割れ)よりもはるかに高い値で引き受けることが前提です。
国債の信用がなくなって仮に額面の6割の値段でしか市場では買い手がつかないときに、日銀が政府希望価格の95%で引き受けたとすれば、これをそのままあるいは日銀の販売コストを上乗せして転売・売りオペするのは不可能です。
そんなことが出来るくらいなら日銀が引き受ける必要がありません。
日銀引き受けの場合、論理的には売りオペを出来ないので、紙幣が大量に出回ったままになるしかありません。
古典的あるいは現在の経済学・・あるいはマスコミでは、紙幣大量発行を放置すればハイパーインフレになると心配しますが、私の意見によれば現在日本で紙幣をいくら大量発行しても国内インフレが直ちには起こりません。
この辺の関係については、9/15/08「国債の無制限引き受けとインフレ1」February 22, 2012「為替相場と物価変動2(金融政策の限界2)」前後のコラムで連載したばかりですが、飽食・飽和商品時代では紙幣があるからと言って買い物に殺到する人が少ないからです。
牛乳、卵、キャベツ、人参でもお金があるからと言って2〜3倍食べたりしない、お酒も2〜3倍飲んだりしない・・精々無農薬野菜などレベルアップする程度で終わりです。
健康志向の強い現在では多く食べるかどうかは貨幣の量ではなく健康意識にかかっています。
年収1000万円の人の収入が1割増えても、日常品の欲しいものは既に持っているので、消費がそれほど増えるのではなく、預貯金が増えたり海外旅行をするくらいで、消費物資を買いあさって物価を上げるまでは行かないでしょう。
供給過剰社会では、品質レベルや好みに合う製品を供給するかどうかであって、購買力はそれほど影響がありません。
(携帯からスマホに移行しているのは購買力や金利による変化ではありません)
そのうえ、先進国では鉱工業製品・・車やテレビ、携帯などは、需要が盛り上がっても単価が上がることはなく単に増産すれば足ります。
供給余力のある先進国では商品価格は紙幣量に比例するのではなく、競合他社との製品比較・・競争次第で決まる傾向があります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC