刑の長期化と刑法改正(刑法115)
いずれにせよ、こうした量刑基準や矯正カリキュラムを変化させるのは、公的立場とは言え裁判官や刑務所の内部だけでの検討だけではなく、民主的にオーソライズされた公開の議論で決めて明瞭化していく必要があるでしょう。
09/25/08「政府(専門家)と議会の役割分担2(刑法103)」以下で、殺人罪や傷害罪の法定刑を紹介しましたが、日本の刑法では法定刑がやけに幅広いために、従来と同じ行為をした事件に対して、世の中の風潮が変わったなどの理由で、(本当に風潮が変わったのどうかのオーソライズは裁判所の独断で、)公開の議論抜きで重罰化していける仕組みです。
法律改正=国会討論・・・重罰化する必要性の議論を公開の議論抜きに役人の判断だけで、実際に宣告する刑罰を(裁判所全体の基準の範囲内ですが・・)勝手に変更できているのが、正しいかどうかの問題提起です。
ただし、司法界が国会をまったく無視しているのではなく、かなり重罰化が進んでくるといくら何でもまずいと思うようになったのか、平成16年の刑法改正で、たとえば傷害罪では、従来長期10年以下だったのを15年以下にしたり、懲役刑の最長期が15年だったのを20年に延ばすなど、刑の範囲の変更をしています。
その結果、刑を加重するときには従来20年が最長期だったのが、平成16年からは30年まで延ばすことができるようになっています。
刑法
(懲役)
第12条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。(平成16年の改正)
第14条 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を30年とする。
《追加》平16法156
2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては30年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては1月未満に下げることができる。
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
平成16年改正を見ると、最長期が10年のままでは軽すぎる事件があったかのように見えますが、かつてそんな大事件はありませんでした。
たとえば、ナイフで刺してハラワタが出てしまったような、死亡すれすれの事件を担当したことがありますが、心臓や肺をかすらなかったので、(営利な刃物でスッパリ切れているので)意外にも直ぐに傷口が治り、わずか全治2〜3週間程度で治ったのには驚きましたが、傷害罪は交通事故(では、全治1年以上はいくらでもありますが・・・)とは違い、意外に結果が軽いので、刑もそれほど重くなりません。
その代わりホンの1センチでも、肺をカスッタりするとそれだけで死亡に至りますので、単純な傷害罪にはなりません。(傷害致死罪または殺人罪)
傷害だけで、7年も8年も懲役刑を宣告されることなど滅多になく、ましてや15年もの長い刑を宣告せなければならないような事例は、実務上皆無に近く、容易に想像が出来ません。
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