02/03/05

立証責任の転換6と黙秘権2(憲法103)「修習生の盗撮被疑事件」

ところで、実際に黙秘権を侵害するような運用が行われている場面もあるのです。
今回社会を騒がせた、司法修習生の裁判所トイレでの盗撮容疑事件では、修習生が盗撮機器の設置時間帯に遠く離れた埼玉県にいたと言うアリバイがあったことが釈放の決め手になったと報道されています。
(真実はまだ分りませんが・・・・・。)
こうしたアリバイがなければ、一旦逮捕された被疑者の言い分を、国民がなかなか信用しない国民心理は重大です。
これまで書いているように、警察も裁判所も国民心理の阿吽の呼吸で運用しているからです。
アリバイを主張し、立証しない限り滅多に無罪にはしない構造は、警察がひとたび逮捕すれば殆どの人が助からないことになってしまい、「警察に睨まれたらおしまい」と言う前近代の暗黒時代そのものです。
松本サリン事件でも問題になりましたが、こうした運用は実質的に憲法に違反しているのです。
アリバイが有れば良いだろうといわれても、いきなり逮捕されたり、いきなり昨年の何月何日何時何分にどこで何をしていたかを、警察から聞かれても証明できる人は滅多にいないのです。
まして、いきなり逮捕されると動転してしまうばかりか、自宅にある領収書などいろんな資料を自分で探すことも出来ません。
たまたま家に資料がある場合でも、さしあたりいろんな資料を無目的にひっくり返しているうちに思い出すことが多いものですから、(普通は自分の行動データを取っていることは稀です)逮捕されて動転している人が奥さんや親に、「どこそこにこういう資料があるから」とはっきり指定して持ってきてもらうことは不可能なことが多いのです。
それに司法修習生が、すでに検察修習の経験者であるにもかかわらず、安易に罪を認める上申書を作成させられている点も重大です。
法律を学んで現に実習中の人間でも、いきなり逮捕されて、「素直に上申書を書けば、微罪処分で終わるだろう」という慫慂に引っかかってしまうのですから、一般の人ではなおさらでしょう。
(今回はビデオ機械設置事件なので、設置時間(ビデオの開始時間)が何時何分まで記録上明らかでしょうし、他方で、コンビニの領収書に時刻まで打ち出されるので、その領収書がたまたま有ったのがよかったのでしょう・・しかも今のコンビにはビデオ記録もありますので、彼の顔写真も映っていたのでしょう。・・・・・ただし、報道による推測です。)
彼は明白なアリバイがあったから良かったものの、それを出せなければ(買い物しないでたまたま公園でボケーっとしていた場合など)あとでいくら否認しても100%の確率で有罪になっていて、しかも反省しないと言うことでかなり重くされていた筈です。
彼はたまたま幸運であったと思いますが、こういう僥倖がない限り一旦逮捕されると逃れられない運用は問題です。




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