12/23/03
刑法 7 (没収と追徴)
前回のコラムで紹介した、没収に関する条文の説明です。
「犯罪行為を組成した物」と言うのは、偽造文書、禁制品である麻薬や銃刀法で所持を禁止されている、刀やピストルなどそのもの自体が、犯罪を組成するものです。
そうしたものは、例えば本来の覚せい剤取締法違反事件に対する懲役刑などの刑罰のほかに、判決の際に併せて(付加して)没収が言い渡されます。
「犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物」というのは、殺人や傷害などで使った刀やピストルなどです。
「犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物」とは、分かり易い例では泥棒して得たものなどがあたります。
このように、没収出来るのは、被告人が従来から保有している無関係の財産を没収するのではなく、本来の刑が科される以上は、同時に没収されないとおかしいものばかりに限定されているのです。
覚せい剤所持罪で懲役刑を言い渡しながら、「裁判が終わったから、あなたの覚せい剤は持って帰ってよろしい」と言うのでは、漫画です。
以上のように、今の刑法で定められている没収刑は、江戸時代のように、家屋敷を没収してしまう財産刑ではなく、あたり前の規定といえるでしょう。
前回のコラムで条文を紹介しましたが、没収は、主たる刑に付加して科される刑でしかないということになっています。
そこから、こうした特殊な場合だけに限定されていて、財産を取り上げることを目的とした独立の刑ではないと言う意味も出てくるかもしれません。
第二項については、憲法の財産権保障の関係で、第三者の所有物が(例、店の客同士のけんかで、店にあった包丁など使って客が刺した場合)犯行に使われたとはいえ、没収するのは違憲ではないかという議論が出て、この規定が追加されたのです。
犯行に使われた包丁は、証拠として裁判に使っても、裁判が終わればそのお店に返すべきでしょう。
次に追徴についてみましょう。
刑法
(追徴)
第十九条の二 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
泥棒と違って、汚職などでは、没収するものが残っていないのが普通ですので、この追徴が多用されます。
100万円収賄したときに、その公務員が1000万円のお金を持っていても、犯罪によって得たものがどのお札かどうかは分かりませんし、貰ったお金をそのまま預金しても、預金に替えた時点で、貰ったもの自体ではなくなっています。
もらった札束のままで持っている場合しか没収できませんので、経済犯罪では、殆どの場合、追徴がたよりです。
これらは、いずれも犯人に利得を残さないという視点からのものであって、財産を取り上げて苦しめる懲罰が目的ではありません。
参考までに、没収、追徴が規定されている条文を紹介しておきましょう。
刑法
(没収及び追徴)
第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(没収の制限)
第二十条 拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。
ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。
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