12/19/03

監獄法 1

現在では死刑執行された後の死体は、どうなるでしょうか?
今では,幾らなんでも試し切りはなさそうですが、似た制度があるのです。
怖いですね。
監獄法を紹介しましょう。
基本法と補助法の関係を、平成15年12月3日のコラムで説明しましたが、これは刑法の補助法にあたるものです。

監獄法


公布:明治41年3月28日法律第28号
施行:明治41年10月1日

第十三章 死亡
第七十一条 死刑ノ執行ハ監獄内ノ刑場ニ於テ之ヲ為ス

これは刑法と同じです。
刑法では、監獄内とあるだけですが、監獄法では、監獄内の刑場と限定していますので、監獄内ならばどこでも良いのではなく、刑場と言うところでなければなりません。

2 大祭祝日、一月一日二日及ヒ十二月三十一日ニハ死刑ヲ執行セス

これは、恩赦の思想につながるものだと思います。
大祭祝日と言うのは、今は単なる休日ですが、この法律が出来た明治41年ころであてはめると、紀元節に始まって、すべて、天皇の主宰するまさに「祭の日」でしたから、こういう目出度いときには、少しはおこぼれを与えて、執行を待ってやろうということでしょう。
また、執行者・・首切り役人としてもいやな仕事ですから、こういう日くらいは休ませてやろうということもあったでしょう。

第七十二条 死刑ヲ執行スルトキハ絞首ノ後死相ヲ検シ仍ホ五分時ヲ経ルニ非サレハ絞縄ヲ解クコトヲ得ス
第七十三条 在監者死亡シタルトキハ之ヲ仮葬ス
2 死体ハ必要ト認ムルトキハ之ヲ火葬スルコトヲ得
3 死体又ハ遺骨ハ仮葬後二年ヲ経テ之ヲ合葬スルコトヲ得
第七十四条 死亡者ノ親族故旧ニシテ死体又ハ遺骨ヲ請フ者アルトキハ何時ニテモ之ヲ交付スルコトヲ得但合葬後ハ此限ニ在ラス

「交付することを得」と言うのですから、交付しない、拒絶することも出来るようです。
昔から、合戦で敵将の首をとっても、首実検した後は、敵方に遺体は返す慣わしだったように思いますが、明治政府は、遺族に引き渡さない場合を想定していますが、それでは、遺族は納得しないでしょう。
次の条文を考えたのでしょうか?

第七十五条 受刑者ノ死体ハ法務省令ノ定ムル所ニ依リ解剖ノ為メ病院、学校又ハ其他ノ公務所ニ之ヲ送付スルコトヲ得

公事方御定書では、死罪の場合には、執行後試し切の対象になっていました。
明治の監獄法は、その経過を踏まえ、或いは諸外国の法律により、試し切りは野蛮だからやめるとしても、医学の進歩のためには、解剖に使うのは良かろうと言うことになったのかもしれません。
国鉄の廃止路線を、地域鉄道の形に残したり、役人と言うのは完全な廃止を嫌がり似た制度を残そうとする傾向があります。
監獄法が解剖ならいいだろうと言うことにしたのは、試し切りの形を変えた温存のような気がします。
勿論ここで、殆どの読者は、杉田玄白、前野良沢、中川淳庵、桂川甫周らによる、1744年発刊の解体新書を思い出すことでしょう。
私は、杉田玄白が1815年に83歳で、この解体新書の回想録を書いた「蘭学事始」
を高校の国語の教科書に出ていて読んだ記憶があるだけですが、彼らは、幕府の許可を受けて、小塚が原の刑場で、死罪となった罪人の腑分けをしたことで有名です。
それにしても、今だけでなく昔でも遺族の引き取り要請を無視して、解剖に使うことが出来るのでしょうか?
極悪人で死罪になるような場合は、引取り人もいない場合が多かったからこそ、試し切りも成り立ったのではないでしょうか?
さらに言えば、明治維新後は、試しきりこそなくなったものの、文明開化にそって、西洋医学を吸収する為には、解剖の検体が足りなかったでしょうから、国策でもあったかもしれません。
今では、杉田玄白の時代のように、どこに胃袋と肝臓があるとか判るための解剖では意味がありません。
今は、「どういう病気で死んだ人のその病変箇所がどうなっていたか」の解剖こそが求められていますので、ただ、前科何犯とか、指を詰めてる、角刈り頭、人相が悪いという程度しか特徴のない死刑囚の解剖をしても、役に立たないように思うのが普通です。
ところが今でも、医学部のある大学にうっかり就職すると、医学部教授はもとより(散々人を切ってるんですからあたりまえですよね!)関係のない法学部教授までも、死亡時の解剖同意書を取られてしまうという噂がありますので、気をつけたほうがいいですよ。
医学研究には役に立たなくても、初心者である学生向け(杉田玄白レベル?)の需要は今でも足りないらしいのです。
変わった病気で死ななくとも、胃袋と肝臓や、すい臓の位置関係等がまともでさえあれば、(これがまともでなければ却って大変です。)役に立つということですから、普通の犯罪者でも十分役に立つと言う訳です。

   附 則
1 本法ハ刑法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス
2 監獄則ハ之ヲ廃止ス但懲治人ニ関スル規定ハ当分ノ内仍ホ其効力ヲ有ス


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