12/31/02
55年体制 2(保険制度1)
進んだ民法や憲法が制定されたからではなく、戦後の経済成長と、都市労働者の増加が、必然的に核家族を輩出するようになって、家族主義の古い儒教道徳を根底からゆるがせ続けましたから、反動勢力による、戦前の家族制度の復活は殆ど絶望的になりつつあったのが1955年前の状況でした。 そこで老後の保障や病気災害などの保障を、家族に頼れない時代になったのですから、これを社会システムとして構築する必要が生じて来たのです。 (個人の自助努力の受け皿としては、各種の保険制度もこの時期から発達して来たのです。) 社会保障制度について、観念的な議論が得意?の社会党は、資本家と労働者を区別すべきだと言う立場で主張したものと思われますが、法的に資本家と言う定義が困難な事から、経営者がこれに当たるだろうという事で自民党にお茶を濁されたにらしく、経営者を社会保険その他いろいろなシステムから除外するシステムが出来上がりました。 経済学者や法、または全学連や社会党、共産党が想定している資本家(資本の配当だけで生活し、全く働かない搾取階級)というのは、我国では殆ど存在しないのです。 大手企業の株式を大量に保有しているのは持ち合いと言う形の関連企業が中心で、その他、何百万株単位で売り買いしているのは機関投資家と言う組織ですが、これも結局は大手企業従業員が、仕事としてやっているのですから、自然人の株主に限れば、ほんの一握りの、個人投資家に限られます。 個人株主の大多数は、最低単位の1000株を何口かを保有して、売り買いしている程度ですから、結局我国に、本来の意味の(左翼が好む働かないで搾取するだけの)資本家などは存在しないと言っても過言ではないでしょう。 こうして経営者を資本家扱いする事になりましたが、肝腎の大手企業の経営者は法的には株主から雇われている(正確には委任と言います)だけという事でこれにはいらず、個人企業主だけを資本家扱いする事になったのです。 これなら自民党も簡単にオーケーする話です。 八百屋や個人経営の大工さんや、我々弁護士も、遊んでいるだけの資本家(我国には殆どいません)も、経営者イコール資本家と言う形式論で一つにされて、社会保険に全く加入出来ない仕組みがこうして出来上がりました。 社会保障制度は、搾取されている労働者の為の制度と言う論理ですから、資本家・経営者には必要がないと言う形式論理です。 ところが経済の実態を見ますと、職人が独立して工場経営者になっている大田区の町工場を想像すれば分かるように、経営者・親方は、職人が帰った後も一人で少しでも仕事をするのが普通ですし、親方は朝一番早くから夜遅くまで、人一倍働かないと経営出来ないのが中小企業と言うものです。 大工さんや、ペンキ屋の親方、個人タクシーなどは、大手企業のように社長が昼間からゴルフなどしていても社員が働いてくれるような仕組みにはなっていません。 親方が病気で入院すればたちまち仕事が行き詰まり、サラ金から借りなければばらないと言うのに、社会保険に一切加入出来ないようにして、無職老人らと一緒の国保加入が義務付けられたのです。 サラリーマンは一定期間休んでいても会社から給料が払われますし、お医者さんにかかっても最近まで自己負担がゼロでした。 徐々に55年体制矛盾(と言うより不正です。)が修正されるようになって、最近本人にも一定の自己負担を求めるようになりました。 事業主は国保しか加入出来ませんが、国保は、加入者本人(すなわち保険料を払っている人)でも3割負担と言って医療費の3割を窓口で支払う義務があります。 サラリーマンは、病気になると治療費が払えなくなるが、個人事業主なら3割くらいは、払えるだろうと言う政策判断かも知れません。 社会保険の場合、サラリーマンの奥さんや家族など被扶養家族は、保険料を納めなくていい代わり、国保と同じ3割負担ですが、これは、一家の柱が病気になった場合よりも治療費の負担能力があるだろうと言う判断として一定の合理性があるでしょう。 後のコラムで述べますが健康保険組合の場合、今回の不況以前は、被扶養者として保険料負担のない場合でも、一旦3割負担した後に同額がバックされるような所もあったのです。 しかし、何回も言いますが、一流企業のサラリーマンよりも、ペンキ屋さんや大工さん、独立したばかりの経営者などの方がもっとぜい弱なのに、3割の費用負担をさせるのは、あまりにも観念的な分類であるばかりか、一銭も保険料を払っていないサラリーマンの家族と同じ割り合いの治療費を自己負担で払わねばならないのですからおかしな制度でした。 ついでに保険料について書きますと、国保では被扶養者が増える都度、一定の保険料が増額されますが、サラリーマンの加入する社会保険その他は(各種組合健保)、給与に連動する仕組みですから、扶養家族が増えても保険料が増えないまま、保険だけ利用出来るシステムでした。 個人事業主やそこで働く人々を代表する政党が未発達だった事が、こういうアンフェアーな制度を生み出したのです。
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