12/18/02

動植物の権利能力 2

話があちらこちらに行ってる様ですが、本当はこのコラムのテーマを書きたい為の寄り道でした。
動植物に権利能力がなくても、贈与を受けた人が、ちゃんと約束を守れば良いのだから、牧場や預金など、動物の名義にする必要がない、と思う方が多いと思いますが、そうではないのです。
どう言う違いがあるかと言いますと、馬や動物名義の牧場ならば、管理人がお金に困った場合でも、土地を売る事は出来ませんが、人または団体に贈与して、その人の名義にして、『馬が死ぬまで牧場のままにしておく』と言う条件の場合、贈与を受けた人叉は、団体は、馬の首を撫でながら『悪いなあ、許してくれ』と言いながら売り飛ばしても、単なる契約違反にしかなりません。(売買契約は有効ですからこれを買った人から取り返す事は不可能です。)
その上死んだ人は契約違反で訴える事は出来ませんから、(いくら私でも死んだ人にまで、権利能力を与えよと主張しませんよ)遺言執行者が追及する方法も考えられますが、実際上困難ですからやられ損となり勝ちです。
契約違反をしない道徳的な人でも、その人に債務未払い等が発生しますと、債権者から債務者の財産であるとして差し押さえられてしまう事があります。
実際の事件ではこれが一番多いでしょう。
この場合には法的に救済の方法がありません。(刑事事件にもなりません。)
馬の一生分のお金についても同じ事です。馬名義なら管理人が自分の為に使えば、横領罪と言う刑事事件になりますし、(後のコラムで書きますが、預金解約には裁判所の許可を必要とすれば、自己使用目的の解約すら出来ません)管理人の債権者が動植物名義の預金を差し押さえる事は不可能ですが、自分名義だと何に使ってしまおうと、契約違反と言うだけですし、その上第三者からの差し押えを防止出来ません。
しかも、自分名義だと、自分のお金とごちゃ混ぜにしてしまっても良いのでなお、訳が分からなくなりやすいのです。
差し押えの話が出たついでに、差し押えの権利関係について、少し述べておきましょう。
差し押えがあったときは、『名義』を規準として判定される仕組みになっています。
不動産は登記簿記載の、預金は預金名義によると言う訳です。
権利能力のない社団の場合、預金をするのに団体名で出来ない為に、便宜上代表者名で預金をしたり不動産を所有するときに代表者名で登記をせざるを得ません。(この不便をなくす為に法人格制度が出来た事を自然人と法人のコラムで説明しました。)
代表者が個人的な資金繰りに窮したときに、代表者個人名儀である事を良い事に、預金を解約して使い込んだり、土地を売り飛ばしたり、または、差し押さえられたりする問題があるのです。
自分名義である事を良い事にしてと言う場合『奇貨として』言う熟語が使われますが、私の見る所、これは法律用語ではありません。
秦の始皇帝の親(子楚)が若い頃、趙の国に人質になっていた時に、この公子の将来性に目を付けた『呂不韋』と言う人が『奇貨措くべし』と大事にしていた所、遂にその『子楚』が秦の国王・荘襄王となり、さらにはその子秦王『政』(天下統一後始皇帝と称す)から相国・仲父として大事にされた故事に由来する言葉です。
この故事ちなんで明治の学者が使ったので、かっこいいと言う事で、法律家が愛用するようになっただけの事だと思います。
自然人と法人のコラムの説明で、法人が出来たのだから、現在ではそう言う不都合がないと思っている人が多いと思いますが、法人制度が出来ても売り飛ばされたりする問題は解決されていません。
どんな団体でも法人に成れるものではないからです。 
現在では、マンションの管理組合が修繕積立金等の巨額のお金を預金するのに、法人格がない為に、自治会の代表者個人名や管理組合の理事長個人名等で預金しているのが大きな不安材料になっている事を聞いた事があるでしょう。
一定の組織になってはいるものの、法人格を取得するまでには至っていない団体の事を、権利能力のない社団と言います。
ましてその段階まで組織が発展していない団体が無数にありますので、世の中は大変なものですよ。
法人の詳しい話は『法人のコラム』で正面から取り上げますので、今日はこのくらいにしましょう。




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