12/07/02

権利能力と法律行為能力(民法18)

人である限り、権利の主体になる資格・権利能力があると説明して来ました。
やっと人になりますと、赤ちゃんでも精薄児でも、親が死ぬとその財産を相続すること、すなわち、土地の所有者になったり、株式や銀行預金の名義人になります。
勿論親が死ななくとも、親や親戚の人が赤ちゃんにお年玉や土地をあげれば、(法律用語で言えば贈与すると言います。)貰った赤ちゃんの所有物に成ります。
でも赤ちゃんや精薄児は、自分で自分の財産を管理したり、処分したりする能力がありませんので、普通は貰ったお年玉などは親が管理していて、場合によっては親が晩御飯の買い物に使ってしまうかも知れませんね。
そうした実態から、赤ちゃんには何も権利がないような思い違いが起き易いのですが、法的には、既に書いて来ましたように出生した途端に権利主体者になるのであって、親は単なる管理人みたいな地位で赤ちゃんに代わって権利行使をしているに過ぎないのです。(これを法定代理人と言います。)
このように、権利主体に成れる資格を権利能力、資格はあるが自分で財産を管理したり処分したりする能力がない人を、行為無能力者と分類しています。
胎児の権利能力と自然人のコラムで書きましたように、民法第一条は『権利の享有は出生に始まる』と宣言して、人は、生まれた瞬間から権利の主体になれる制度としたものの、生まれたばかりの赤ちゃんが、自分の資産を管理出来る訳がないので、管理処分出来るような能力が出来るまでの間、誰かが代わって権利行使する制度を用意する必要があります。
これが無能力制度と、法定代理人と総称される制度です。
そんな事なら、自分で何でもやれる様になった時に権利の主体にすると言う法律にしたら、簡単じゃないの?と疑問に思う人も多いでしょう。
確かに法律家が、細かく議論するまでは、一人前に行動出来る事と、権利主体になれる事を厳密に区分けしないで過ごして来た時代が長かったと思います。
経済的に考えても、赤ちゃんや小さい子供のお祝を貰った親は、自分が貰ったのと同じ感覚で、お返しも親のお金でしますしね。貰ったものを親が自由にしてもいい様に考えたく成るのも自然な感情ですよね。
これと似た事例ですが反対の法律的な結果に成るのが葬式費用です。
香典は、死者に対する御悔やみ料ではなくて、(繰り返しますが、死んだら人ではあり得ませんので当事者資格がないのです。)葬儀の主宰者に対する御悔やみの気持ちを現わすもですから、本来主宰者が懐に入れても良いものです。
実際の話し合いでは、葬式費用関係も清算していますが、法律論としては遺産分けには関係ありません。
また相続税の関係では、葬儀費用も、死者のプラス財産から控除する項目に加えていますが、これは法理論とおりでは国民感情に合わないので実務上の修正をしているだけで、この事によって、葬儀費用が死者から受け継いだ債務に成るものではありません。
また実際、暴力団などは(アウトロウを標榜しますが意外と法律に詳しいのです。)葬式を盛大にしますが、これは一種の収入源としてやっている事ですから、法律解釈とおり主宰者(組長)ががっぽりとって、遺族には名義借り料みたいなものをお裾分けする事に成っているのでしょう。
話はどんどん他所へ行きますが、政治家のパーティ券もやくざと同じで、主宰者の儲けですよ、ここまで来れば当たり前ジャンと言う声が聞こえて来そうですが、赤ちゃんや子供病人などは、生きているので、名宛て人はその子供や病人となり、死者に対するものは、主宰者が名宛て人となります。
このように、出生した途端、権利主体にすると、何かと常識的な生活習慣と懸け離れた事に成り勝ちですね。
では、一人前に成った時に権利主体にする制度だとどうなるでしょうか?
贈与などは何とかなりますが、父母の死亡、すなわち、子供が小さい内に相続が発生したときは、未成年の子供だけ相続権がなくなってしまい、大変な差に成って来ます。
例えば、2人の子がある場合、22歳の子は相続出来て、14歳の弟は一切相続出来ない事に成ります。14歳の子供は相続しても自分で土地の売り買いが出来ないから同じだと思うでしょうが、何年かすれば自分で処分する能力を持つのですから、(相続していなければ成人して能力をもっても、能力を振るうべき何の財産もありません。)一旦相続していたのと相続していなかったのとでは大きな差が出るのです。
このようなわけで民法では、まず、知能レベルや年齢に関係なく、人である限り、権利主体と認めて、管理能力の劣る人には、別に、無能力制度(法定代理人)を設ける、2段階の制度を採用しているのです。




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