11/26/07
徳政令・棄捐令と破産法・再生法1
ついでに、江戸時代の棄捐令の内実を見ると、一般に言われているように債務を帳消しにしたのではなく、訴訟を受け付けないと言うだけのことだったらしいのです。
訴訟を受け付けてくれなければ、実現の方法がありませんから、結果的に帳消しになるのと同じですから、一般的理解・・教科書の説明は間違いではありません。
シェークスピアのベニスの商人の筋書きも、「肉1ポンドを切り取る実行ができない」というだけで、債務が消滅すると言う判決ではありません。
ただし、これらを法的に分解すると今の破産免責と同じであることが分かるでしょう。
自然債務と言う言葉を、06/18/07「非免責債権6(破産法21)」のコラムで紹介してきましたが、破産で債務・借金が消滅したと誤解している方が多いのですが、実は債務は消滅するのではなく、・・免責・・責任を免ずるだけ・・・、法的請求が許されなくなるに過ぎないのですから、江戸時代の棄捐令・・訴えを受け付けないのと法的効果は同じなのです。
ただし、棄捐令や徳政令では、担保にとられた領地や農地などの担保実行の訴えを受け付けない・・担保の効力が失効することが狙いだったのに対し、(有産者だけが当事者でした)現在の破産や再生では、逆に担保権は別除権として破産や再生の影響を受けない逆の制度になっています。
無産・消費社会で、サラ金債務者の多くは、強制執行されるべき財産は何もないのですが、厳しい取立てを違法とするための手段として機能しているだけです。
現在の破産・再生法では、生産手段の取り戻しどころか、自宅や車でさえ担保(住宅ローン)を帳消しにしてくれません(別除権と言います。)から、現状維持にまで至りません。
別除権については、12/14/06「年金担保融資の弊害4(破産法10)別除権4」前後で紹介しました。
江戸時代までの長屋住まいの無産者は、訴訟手続きに乗るほどの借金も出来ないし訴訟手続きに乗ってこない社会でしたから、こうした階層は棄捐令の対象ではなかったのです。
当事者適格については、11/03/02「裁判を申し立てる資格 3」前後で紹介しましたが、当時は町人までが資格者で、長屋の「くまさん」などは動物?扱いで、当事者適格もなかったでしょう。
町人とは、西洋で言う市民のことであって、長屋の住人は町人とは言わなかったことを、11/06/02 「自然人(民法 2) 1」のコラムで紹介しました。
他方で封建社会の基礎であった農地や領地支配権の担保流れを放置すると、社会秩序の崩壊に繋がる重大事態ですから、この担保実行の禁止・・訴訟受付け停止で足り、また停止せざるを得なかったということです。
これに対して、現在は生産手段がなくとも、自宅がなくとも生きていける消費・大衆社会ですし、江戸時代に当てはめれば長屋の住人程度の階層が金融取引のターゲットになっているのです。
他方でこうした無産者に対しても金融の利便を付与し、また購買層のターゲットにしている以上は、自宅や車を持っているのは余分な贅沢でしかないという理解なのでしょう。
そこには、彼らから車や家を取り上げても、社会不安にならないと言う政策判断があると言えます。
庶民は、昔から何もないのが原則・・原則に戻るだけと言う理解です。
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