11/10/07
使用貸借契約1(民法377)と使用窃盗1(刑法93)
以上のように、時間差利用という点では、消費貸借も普通の貸し借りも同類ですが、「借りたものを返すか、返さないか」という基準では、はみ出るはずの消費貸借という異質なものを貸借類型の冒頭に書いた以上は、「借りたものを返す」と言う本来の貸借・・使用するだけの貸借との違いを明文化する必要があったのでしょう。
そこで、本来の貸し借りを、消費貸借の次に書くに当たって消費貸借に対置するために、消費できない・・使用貸借と名づけてその次に条文を設定したと思われます。
刑法で窃盗罪の成否に関して論じられる問題として、使用窃盗の問題がありますが、これなどは、「使用」と「処分・消費」が対置概念であることを前提とした議論というべきでしょう。
使用窃盗とは、ちょっと100〜200メートル程、他人の自転車に乗っていき、そのまま戻ってきたような場合、窃盗罪の成立に必要な領得の意思があるのかという問題です。自転車の場合、場所が移るので、占有移転も明確ですし窃盗罪が成立しそうな感じですが、パソコンの持ち主不在の間に空き巣に入った人が、自分のもののように数時間使ってそのまま帰った場合どうでしょうか?
消費・処分してはいけない・・(無断でやれば、普通は横領罪になります)使うだけしか出来ない本来の貸借の中で、そのの類型の一つとして賃料を取る類型が賃貸借と言う位置づけを民法制定者が考えたのでしょう。
「使用」という熟語が無償を意味するのではなく、その前に置かれている消費貸借の条文に対して、貸借の分類の中で、消費は許されず、「使用するだけの貸借」という分類で付けられた名称と考えるべきでしょう。
そして民法の契約は無償が原則で有償は例外ですから、有料の貸借を賃貸借と称しただけで、使用貸借が無償を意味するのではなく、賃貸借が有償と言うだけです。
普通の類型では、無償を原則として条文のなかで有償の場合をホンのちょっとだけ特則として書き加えているだけですが、(有償委任、有償寄託、有償消費貸借金利の特約などなど・・)有償の貸借は利用例が多いし、トラブルも多いことから・・・それだけ古代から発達した長い歴史があるということでしょう・・・別類型を作ったのです。
使用貸借を要物契約にしたのは、現に借りてしまえば、一定期間借り続ける・・使用収益する権利が生じますが、ただで貸してやるという約束があったとしても、権利として「貸せ」という要求まで認めないという意味です。
実際上、「ちょっとシャープペンを貸して」といっても、「財布忘れたのでちょっと1万円貸して」と言っても、貸すかどうかは相手の気持ち次第で、相手は拒む権利があるのです。
こうした点は、贈与の履行済みと履行前の相違点としても、04/03/07「権利移転と恩恵4(民法185)贈与の取り消し」等で紹介しました。
贈与は文書があれば、未履行分の強制実現も可能ですが、こうした要物契約は、文書があっても履行前には効力がないので、権利として要求できません。
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