11/26/04
官と宮との違い2
中国では、古来から、宮殿と言えば、現在のビル同様の大きなものでしたから、(至近な例では、北京の紫禁城内の大和殿とわが国の御所内の紫宸殿とを比べてみてください)内部は宮室がいくつにも別れていますし、役人もいろいろな部屋に詰めていたはずです。
こういう実態から、大きな建物を表す「宮」と大きな家に大勢の人が詰めている状態をあらわす「官」の漢字が生まれたのです。
大きな建物すなわち宮殿に転じたのですが、官とは大きな建物すなわち宮殿に詰めかけている人のことで、転じて王様の従者をあらわすようになったのです。
従者をあらわすと言えば、宦官の宦の方がより正確でしょうが、これは、後世「宦官」と言う特殊用法が独占してしまい、今では大きな家で仕える人のことを表すのは、官だけになってしまったと言うわけです。
こうした漢字が伝わったころのわが国では、宮殿と言っても草葺に毛の生えた程度の家しかない時代でしたから、(「飛鳥板葺きの宮」を思い起こしてください)幾重にも甍が重なるさまを表す「宮」という文字と、大きな家の中に大勢が群れている従者をあらわす「官」との実際の区別が出来なかったはずです。
前回書いたように、手書き文字が伝わったのですからなおさらでしょう。
この9月末から10月はじめにかけて、京都へ行ったついでに「御所」の見学をしてきましたが、紫宸殿、清涼殿と言ってもデパートやホテルなどの大きなビルに馴れた目で見れば、ワンルームの小さな建物でしかありません。
ちなみに、この御所は、幕末に火災にあって新築したものですから、わが国の建築史から見れば、かなり最近に属すると言うか、純粋和風建築の最後を飾るものかも知れません。
わが国古代には、建物が小さかったのですから、建て物内に人が詰めているかどうかではなく、ともかく君主に仕えるものを「官」と言い、建物の主人を建物自体を現す「宮」から転じた宮様(同じ用法は、お館様とか殿様、西の方様とか、)と言うわが国で好きな表現形態に流れていきます。
わが国では、「官」とは官位を与えられる地位以上を指したでしょうが、より、わが国の独自表現としてみれば、正確には、家には入れる身分、すなわち殿上人以上を言ったのではないかと私は思っています。
殿上人の官位については、12/26/03
「身分とは?3(中世社会2)公家」のコラムで紹介しましたが、4位〜6位の諸大夫の内、昇殿を許される人と許されない人があったと言うことです。
相撲で言えば幕内力士とそれ以下の関係です。
話がさらに転じていきますが、神社のことも神宮すなわち「宮」と表現するのが、わが国の表現形態です。
中国風に無理に解釈すれば、神宮は神様の宮殿とも言えますし、お館様、宮様と言う表現同様に「宮にいます神様」自体をあらわす言い方とも言えるでしょう。
ただ、私の解釈は、転じ転じて、かなり前から、「宮」という漢字が宮殿・ビルをあらわすものではなく、どちらかと言うと、宮様・・・何となく神さまの親戚をあらわす用語に変わってしまっていたと思うのです。
斎宮は、言うまでもなく皇女(ひめミコ)の職務呼称であって、建物ではありません。
何といっても、わが国は森林信仰の国ですから、伊勢神宮と言っても森林の規模から見れば、宮殿部分はほんの質素と言うほかありません。
まして殆どの神社には、宮殿らしき立派な建物は滅多になく、神々しい神さびた樹木があるばかりですので、神宮の「宮」と言う字が宮殿を意味すると言う印象を持っている人の方が少なくなっているのが実情でしょう。
現在でもお宮参りが盛んですが、お宮様または、神のより代に詣でるのであって宮殿に詣でるのでは、ありません。
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