11/21/03
相続税法 11(相続税の歴史2)
税金の話に戻しますと、家督相続を前提とすれば、遺産総額を課税対象にするのは当然ですし、戦前の家督相続は、家長が全部相続する代わりに、家の構成員の全責任を負う現実ないし社会意識がありました。
そういう思想下においては、構成員の数に応じて控除するシステムは必然だったと思われます。
戦後の民主化で、昭和22年家督相続制度が廃止され、遺産相続だけになったのですが、遺産総額に課税する仕組みはそのままでした。
昭和25年、シャープ勧告に基づき、遺産分割の促進と富の集中を排除すると言う見地から遺産取得税に変更されたのです。
まさに、私が主張しているとおりの家督相続=遺産総額課税・・・均分相続=取得課税と言う考えがあったのです。
ところが、農業、中小企業など分割しない相続の場合には、(1人に集中すると)課税が過重になると言う批判がされるようになりました。
シャウプ勧告どおりであれば、「相続税法 7(跡取り優遇制度1)(未分割遺産に対する課税)」のコラムで私が主張しているように、長男が全部取得する慣行はすぐに崩れていたでしょう。
これに危機感をもった保守勢力からの批判に応じて、遺産総額と相続人の数によって課税する現行の枠組みが昭和33年に決まり、現在に至っているのです。
シャウプ勧告による税制の民主化から、僅か8年間で、時代逆行の跡取優遇税制・保守系が大きく巻き返したと言えるでしょう。
こうした歴史をみれば現行の税制は、長男・跡取に遺産を集中させる為に、民法の均分相続には、真っ向から反対せずに、裏口からの家督相続廃止の骨抜き策であったことが分かるでしょう。
ま、こうしたことも含めて、何事も極端なことをせず、時代の進展に併せて順次やって行くと言うわが国のやり方は一つの良さとも言えますが、40年以上も経った今でも変更しないままやっているのは合理的でしょうか?
その後、核家族化が進展し、戸籍法も変わり、夫婦と未成熟の子を中心に編成されるようになったばかりか、社会実質も、変わってきたのです。
世襲のコラムで書きましたしたように、今では中小企業でも、世襲でやっていけなくなっているのですから、社会経済的側面から考えても跡取単独相続にこだわる合理性がありません。
そうであれば、遺産総額に対する課税ではなく、相続するひとりひとりが、現にいくら相続するかによって課税するのが、合理的でしかも分かり易いでしょう。
それにも拘わらず、(過渡期は終わったのに)昭和33年に、家督相続時代と同様の遺産総額に課税する基本にしたまま、放置しているのは、政府の怠慢、非合理ではないでしょうか?
勿論、それを支持する勢力があって、改正できなかったのかもしれません。
核家族化の進展と、各種企業における世襲の不可能性を前提とするとき、いまだに跡取優遇を主張する勢力が、国民の多くの支持を受けているはずがないのです。
国民の多くの意思に反した勢力が、国政を壟断しているとするならば、今の選挙制度は、民意反映機能が不全に陥っていると言えるでしょう。
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