11/20/03

相続税法 10(相続税の歴史1)

相続の効力1,2のコラムで書きましたように、相続は、自動的に承継((法的な概念では、包括承継といいます 。)するのですが、大家さんや地主は、歴史に詳しいのか、代替わりに対して、名義書換料を請求してくることがあります。
相続税の原型は、名義書換料に始まると私は思っていますので、「不動産屋は結構やるなあ」というのが感想ですが、実務ではそんな甘いことは言ってられません。
「相続は当然承継であって、地主の承諾は要らないんですよ。」と言って一銭も払わないで終わりです。
相続税は、世襲制度とは、真っ向から対立する制度ですから、明治時代になるまでは、なかった制度です。
もし、江戸時代にあったら大変ですね。
将軍家や加賀の前田家なども、17回も相続税を払っていたら、何せ、最高税率は、ここ何十年も70%(最近50%になりました。)ですから、これを前提にすると、何も残らないどころかマイナスになっていて、最後はみんな、長屋住まいになって、籠かきでもしていたかも知れませんよ。
こうして見ると、相続税の歴史は結構新しいものだと分かるでしょう。
具体的には、明治になってもすぐには出来なくて、明治37年になって、やっと日露戦争の戦費調達財源として創設されたものと言われています。(ただし38年と書いている本もあります。)
相続税に関しては、富の偏在を防ぐとか、いろいろな名目がついていますし、平等欲求の強い国民の受けが良いので普及していますが、戦費調達が目的だったのであって、そうした平等思想は、付け足しでした。
ちなみに諸外国の立法例を紹介しますと、ドイツでは1906年、アメリカは1916年になって遺産税が創設され、イギリスでは、1949年に出来たばかりです。
明治37年と言えば、1904〜5年ですから、いろんな法律を西洋から導入するばかりだったわが国にしては、珍しく、世界トップランナーだったと言うところでしょうか?
日本、ドイツの順に早いというのは、民主化が進んでいたのではなく、財政的に逼迫していた順に早く導入しただけのことかも知れません。
話を、相続税が、相続人単位に課税せず、遺産総額に何故着目しているかの11月8日の「相続税法7」のコラムの疑問に戻します。
学問的には、遺産税か遺産取得税かという分類になるようですが、学問はさておき、私の素人関心で、いつものように書き進めます。
ところで相続税が創設されたのは明治37年ですから、当然のことながら、家督相続制度下の相続を前提に組み立てられていたでしょう。
具体的には、家督相続には、課税を軽く、遺産相続には重くしていたようです。
読者の中には、家督相続制度下の遺産相続って何かな?と疑問に思う方もいるでしょうが、実は家督相続制度と遺産相続制が平行して存在していたのです。
ちょっと考えれば分かると思いますが、家督を継がない次男三男が都会に出て、結婚して所帯を持つことが普通になっていましたので、この次男や3男が死亡すると、その次男などの遺産についての相続を解決せざるを得ません。
そこで、戸主以外の者の相続については、家督相続の適用がありませんので、遺産相続を観念せざるを得なくなったのです。
この遺産相続制度に関しては、一見マイナーな問題であったことから、思想的な圧力が少なかったことが幸いして?学者などの合理的な意見だけで(というよりもそれが既に当時からの国民意識でもあったでしょう。)今と似たような遺産(均分)相続制度を民法中に設けていたのです。
いつも書くことですが、政府が思想的に家の制度を国民に押し付けても、他方で産めよ増やせよと、子供を多く生ませる以上は、結果的に核家族が発生してくるのを、押しとどめることは出来ません。
皆さんは、戦前は家督相続制度で一貫していたと思っている方が多かったと思いますが、こうして、民法の中に家督相続と、遺産相続を並存せざるを得なかったのです。
戦後の改正で、いきなり現在の遺産相続制度が創設されたのではなく、並存状態の家督相続がなくなっただけなのです。
ちなみに、この遺産相続人は、直系卑属だけでしたが、昭和17年の改正で配偶者も遺産相続人に加えられましたので、戦前から今の制度の原型が出来ていたのです。
戦争に取られて何時死ぬかもしれないのに、もしも戦死した場合、妻が相続できないのでは戦意に関わるということで、配偶者の相続権が盛り込まれたのでしょうか?
この制度を詳しく説明していると、長くなりすぎますので、また別の機会に譲るとしましょう。




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