11/18/03
相続の効力1(民法116)
死亡の瞬間に相続するという意味が、ちょっと分かり難いと思いますので解説しておきましょう。
相続開始後何年もたってから、「うちはまだ相続していないから、」と言う人がいます。
引っ越して新たな生活をしているのに、住民票の移転手続きをしていないことを理由に、まだ住所を移していないから、と言って前住所を書くのと同じ発想です。
住所の概念については、平成14年9月21日からの「住所とは」の連続コラムで説明していますので、そのコラムを合わせて御読みください。
相続では当事者間で、話合ったり税金の申告や納付の手続きがありますが、その話し合いが終わって、「誰がどこの土地を相続する」と具体的に決まるまで相続していないと思うようです。
ところが、法理論では、分割協議が調って特定の土地や車が、ある相続人が相続すると決まったときに、その相続人が相続するのではありません。
話が決まると、被相続人の死亡時に遡って、特定の遺産を相続することになった人が、所有者になるのであって、死亡と相続人の取得の間には、一瞬たりとも空白がないことになっているのです。
まあ言ってみれば、法の擬制ですね。
10年ほどかかって、遺産分割協議が成立することがありますが、このとき、10年前から自分のものだったと言われてもぴんと来ないですよね。
事実と違うことを無理に擬制するから、常識と乖離するのでしょう。
民法
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
まず、現在の相続法では、このシリーズで世襲と相続の区別で紹介したように、一身専属的な権利以外は、全面的に相続でき、しかもなんらの許可も承認も同意も、要りません。
どこかに届けることさえいらないのです。
条文は、「相続開始のときから・・・承継する』と言うのですから、開始した瞬間に承継するのです。
借地人が、死亡したときに、子供のうちの誰かが相続すると、地主や不動産屋が、名義書換料を請求してくることがありますが、この条文で明らかなように、死亡と同時に相続してしまうのですから、地主が承諾する余地がないのです。
ついでに説明しておきますと、名義書換料や更新料の本質については、諸説がありますが、大まかに言えば、地主や家主の承諾が必要なときに円満に承諾してもらう為の解決金的なものが承諾料ですし、更新拒絶の紛争回避の為の解決金が更新料と言えるでしょう。
相続開始の瞬間に、自動的に相続することになっている法制度下では、第3者がどうのこうのといえる余地が全くないのですから、解決金を払う必要がありません。
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