11/16/03

債権の譲渡性(民法114)

雇用契約、賃借権や出演契約など人的色彩の濃い債権債務は、今でも譲渡禁止が当然とされていて、法律解釈もそうなっています。
ただし、賃借権のうち、借地借家関係は、個人的関係で貸す人は少なくなって、貸しビル業等、業者が中心となってきました。
今では借主の個性と言うよりも、その業種による使い方の違いが大きいのであって、知り合いかどうかによる違いは滅多にありません。
したがって、誰が使おうと同じ業種の人が使い、家賃を払ってくれさえすれば、ビル所有者にとって何の不利益もないはずです。
したがって、譲渡禁止を例外とすべき時代になっていると考えています。
出演契約による出演権を、俳優が第3者に譲るとか、ヤンキースの松井が、今日の試合に出る権利を譲ったからといって、譲受人がバッターボックスに立ったら世の中の人は驚くでしょう。
また雇用なども、誰が働いても同じとはいえませんし、雇われ人も雇い主が誰でもいいとは言えませんので、こうしたものは譲渡性がないとされています。
ただし、これも尤もなようでいて、社会実態は大きく変わっていますので、今では原則と例外を変えるべきではないかと私は思っています。
昔の雇用は、使用人が中心でしたし、個人商店などは、人的関係が濃厚でした。
こういう関係は、今でもかなりの事業で残ってはいますが、社会の大多数は、使用人と雇い主の関係ではなく会社と労働者、パートの関係です。
会社と労働者の関係では、会社が、ある事業部門を譲渡した場合、企業風土の違いが徐々に末端に浸透するとしても、末端で働くパートにとって、仕事の内容が、変わるものではないし、もともと社長とじかに会うことはないのですから、殆ど影響がないのです。
むしろ譲渡にあたって、雇用維持が基本的な条件として話し合われるくらいで、御屋敷の女中さんと主人の関係とは、基本的に違います。
こうしてみると、法律が出来た明治30年代の雇用と現在の雇用とは、原則と例外が入れ替わっているものが多いのですから、安易に雇用は人的色彩が濃いから譲渡禁止とは言い切れませんし、その他の債権もそうです。
個人的なお抱え運転手でさえ、今では誰でも良い時代です。
自分で雇うと、今日はおなかが痛いとか、風邪を引いた、子供のことで休ませてくれとかの臨時事情が多くて、あてになりませんので、ずっと前から直接雇用を止めて、ハイヤー会社と契約して誰でも良いから、「毎日責任を持って回してくれ」という形態が主流となっています。
今、派遣が花盛りですが、派遣は大手などのことかというと、さにあらず、驚くなかれ、むしろ、人的色彩の強い末端の業種から派遣的雇用が早くから始まっていたように思いますよ。
世間では人的色彩の濃い職種は、働く人が大変だと思っている人が多いと思いますが、どちらかというと、労働者の方が実質的に強くなって、いろいろな我がままが出て来易いのです。
こうしたことは、幕末期に日本を観察した数多くの外国人が、如何に日本では働く人が言うことを聞かないかと驚きの記録を残しているところからも、私1人の感想ではありません。
でも働かないのではなく、働き者ですが、上からの指示では梃子でも動かないものの、おだててうまく使えばいくらでも働く,言わないことまでやってくれると言って外国人は驚いていますよ。
気に入らないと、国鉄労働者よりもずっと昔から、遵法闘争をやっていたのです。
何でも歴史があるものですね。
信長や、家康の小説を読んでいると、殿様は絶対的なようですが、小説家は人を使ったことがないので、日本では、上の人がどれだけ下に気を配らねばならないかが分かってないのです。
そこで末端であればあるほど、江戸時代の初めから、番随院長兵衛のような「人入れ稼業」が発達していたのです。
今の介護の社会化と言うのもこの一種と理解できるでしょう。
ホテルや旅館その他の外食やクリーニングの発達もそうですが、赤の他人の方が、簡単なのです。
清掃なども、行く先のビルのオーナーが誰であろうと、働く人には関係がないし、ビル側も、清掃員個人に関心がありません。
ただ、きれいにしてくれればいいのです。




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