11/14/03

相続と世襲3(民法113)物権と債権1

相続を歴史的に見ると、皆さんは意外に思うかもしれませんが、財産権の相続の方がずっと後から生まれてきたものなのです。
公的地位の承継(世襲)のほうが古くからあって、財産権は、貨幣経済の発達等によって客観化するようになってから、借財などの承継義務が議論されるようになったらしいのです。
財産などが何もない時代から、天皇家、物部、蘇我家などで支配権の相続(世襲)があったことは、誰でも知っているところですよね。
何しろ財産と言っても、明治の30年代に西洋から民法を導入するまでは、債権と物権の区別もはっきりしてなかったのです。
これを法的に区別したのは、民法制定後のことですから、それまでは、財産権か人に対する支配権かの区別も、はっきりしていなかったのです。
なお、民法制定の経過については、平成3年6月4日の「4の4民法典論争1」以下で連載していますので参考にしてください。
家を相続すれば、家についている家来、下男などに対する支配権も付いてくるのです。
ヨーロッパでは、領主は地主・土地所有者で、しかも所有権の絶対性が言われていました。
ところが、日本では領主(大名)は、地主ではなく支配権だけでしたし、日本にも地主がいますが、土地と一緒に小作人を抱えていましたので、土地に対する直接の権利は小作人が、事実上持っていたようなものでした。
イギリスでエンクロージャームーブメント・囲い込みで農民を追い出したのは有名ですが、日本では土地から小作人を引き剥がすなどは、到底考えられないことでした。
戦後の農地解放で、追い出されたのは、地主の方でした。
勿論明治30年代に民法が導入されたからと言っても、土地を支配しているのか小作人を支配しているのかと言う区分けは、社会意識に根ざした概念ですから、国民の法意識がいきなり変わる事はありません。
民法の制定で、財産権は物権と債権とに分かれましたが、その債権の中でもさらに人的色彩の濃厚なものと人的色彩の薄いものがあります。
その中でも金銭債権は、最も人的色彩の薄いものでしょう。
貸した100万円の債務履行は、誰に返してもらっても効果は同じです。
また、借りた100万円を誰に返しても、債務内容が変わるものではありません。
ただし、違法な取立て目的の譲渡は禁止する為に、サービサー法などの別の規制があることは、サービサー法・債権回収業法のコラムで解説しました。
バブル崩壊後は、不良債権処理が日常化してきて、銀行でも、譲渡に対するアレルギーが薄れていますが、今でも、銀行などは貸し金債権の譲渡をためらって債務者の了解を得たりしているくらいです。
また、せっかく法律上譲渡性が認められている銀行預金や、敷金、預託金の返還請求権などまで、例外なく譲渡禁止の特約が契約書に印刷されているのを、見たことがあるでしょう。
見たことがない方は、手持ちの預金通帳や、賃貸借契約書を見て下さい。
ゴルフ会員権なども、譲渡するにはクラブの承認が必要になっています。
まあ、一応クラブであるから、会員資格を審査する必要があるという名目ですが、実際は名義書換料を払えばいいのですから「?」というところです。
役所が情報公開を渋る理由として、プライバシイ保護を主張するのと似ていますね。
このように、今でもノスタルジヤかどうか知りませんが、意味もなく譲渡禁止にしている慣行が多いものです。




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