11/09/03
相続税法 7(跡取り優遇制度1)(未分割遺産に対する課税)
10ヶ月の申告期限を過ぎたら大変だから、早く判を押してくれと言う言い方で、跡取から外に出た弟妹に迫ってくることがよくあります。しかし、相続税の申告は、その期間に申告することに意味があるのであって、その間に遺産分割協議を済まさなければ、刑罰を科するというものではありません。また配偶者控除のように期間内に申告しなければ、認めない?・・納税義務がなくなる?ということも考えられません。世の中には、相続開始後、10ヶ月程度では、話合がつかないことはいくらもあるのですから、あらかじめ、そのときの法的手当てがあるべきです。そういう目でみますと、以下の条文が用意されています。
相続税法(未分割遺産に対する課税)
第55条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない」
ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない」
文章が長くて見ただけで、拒絶的になってしまいますので、本文と但し書きを分けてみました。
これで視覚的に、大分楽になるでしょう。
先ず本文を見ていただきますと、分割が決まってなくとも、法定相続分どおり分割した場合の計算書を提出して、10ヶ月内に申告する制度になっているのが分かるでしょう。
このことと関連しますが、サラり-マン 家庭は別として、例えば、農家や、商売人では、長男が殆どを(8割)または全部相続して、弟妹に何百万かずつ配る解決が結構多いのですが、こうした場合、却って相続税が高くなるのでないかという疑問を持つ人が多いと思います。
平成15年10月25日「教育改革21」のコラムで書きましたが、わが国では、累進課税であることは誰でも知っていますので、心配になります。
ところが、相続税に限っては、弟妹が一銭も相続しなくとも、弟妹あるいは、その他相続人全員が法定相続分とおり相続したものとして、申告しても良いと言うのがこの条文で、虚偽申告にならないのです。
それどころか、前回のコラムで紹介した第2項の括弧書きを見て下さい。
「相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数とする。」となっていて、放棄して、初めから相続人でなかったものと見なされた場合でも、基礎控除の頭数に数えてよいことになっています。
同じ2項で、頭数を増やす為に養子をいくら増やしても、(民法上は、何人でも養子に出来、制限はありません)最高2人までしか控除できないと言う制限があるのに、放棄の場合だけは、わざわざ民法の原理に反してまで控除を認めるのです。
これは度言う差異でしょうか?
養子を増やしての節税は認めないが、放棄はいくらしても税額に関係ないですよということですから、相続放棄に対する推進策と言えるでしょう。
そして、また55条後段ただし書きに戻りますが、
「その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては」すなわち、申告後に法定相続と違った割合で相続しても、上記条文の末尾にあるとおり、・・・申告したり更正するのを「妨げない。」と言って申告せねばならないとは言わないのです。
「税金を取りたいばかりの役所」と思われている税務署(大蔵省/財務省)にしては、鷹揚ですね。
もしも、基礎控除を、実際に相続したとおりの頭数しか認めない、更には貰ったとおり、修正申告しろと強制したら(これが本来法の精神でしょう)どうなっていたでしょう。
基礎控除は、同じ、1億の遺産でも1人で相続するのと5人で相続するのとでは、1人当たりの遺産取得額が違うから、同じ1億に課税するのでは、結果的に不公平になるので、頭数で一定額を控除しようと言うものだと思われていますが、本当はどうでしょうか?
ここには、もともと遺産取得者を課税対象とするのではなく、「家の遺産?」が課税対象という前提があるようです。
遺産総額が同じ1億でも、その遺産総額を課税対象としないで、相続人が、現に取得した遺産を対象に課税すれば、なんらの不公平も発生しません。
1人で1億相続した人と、1人当たり2000万しか取得しない人がいた場合、その取得額に課税するならば、税率も違うし、何の問題もないのです。
そして各人に機械的な基礎控除、即ち相続人3人で8000万円の控除ならば、1人当たり2666万の控除にすればよさそうなものです。
或いは、家一軒程度は非課税にするべきだと言うならば、1人5〜6千万円までを非課税にすれば簡単です。
何故こうした分かり易い制度にしないのかを、次回以降のコラムで、考えてみましょう。
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