11/07/03

相続税法 5 (相続時精算課税適用者とは)

贈与と相続は、深い関連があります。
贈与税と相続税の重なり具合に関心のある人のために、条文を一々読まなくともいいですが、参考までに、条文を紹介しておきましょう。
読み飛ばすという熟語がありますが、関心のないところは、画面を読まずに飛ばしてください。

(相続時精算課税の選択)
第21条の9 贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうちその年1月1日において20歳以上であるものに限る。)であり、かつ、その贈与をした者が同日において65歳以上の者である場合には、その贈与により財産を取得した者は、その贈与に係る財産について、この節の規定の適用を受けることができる。
《追加》平15法008
2 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第28条第1項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
《追加》平15法008

(相続時精算課税に係る贈与税額の還付)
第33条の2 税務署長は、第21条の15から第21条の18までの規定により相続税額から控除される第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与税の税額(第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額がある場合において、当該金額を当該相続税額から控除してもなお控除しきれなかつた金額があるときは、第27条第3項の申告書に記載されたその控除しきれなかつた金額(第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与税について第21条の8の規定の適用を受けた場合にあつては、当該金額から同条の規定により控除した金額を控除した残額)に相当する税額を還付する。
《追加》平15法008
2 前項の規定による還付金について還付加算金を計算する場合には、その計算の基礎となる国税通則法第58条第1項(還付加算金)の期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の翌日からその還付のための支払決定をする日又はその還付金につき充当をする日(同日前に充当をするのに適することとなつた日がある場合には、その適することとなつた日)までの期間とする。
1.前項の申告書が基準日までに提出された場合 その基準日
2.前項の申告書が基準日後に提出された場合 その提出の日
《追加》平15法008
3 第1項の規定は、第27条第3項の申告書が提出された場合に限り、適用する。
《追加》平15法008
4 相続時精算課税適用者が贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに係る相続税につき決定があつた場合において、その決定に係る第1項に規定する控除しきれなかつた金額があるときは、税務署長は、当該相続時精算課税適用者に対し、当該金額に相当する税額を還付する。
《追加》平15法008
5 相続時精算課税適用者が贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに係る相続税につき更正があつた場合において、その更正により第1項に規定する控除しきれなかつた金額が増加したときは、税務署長は、当該相続時精算課税適用者に対し、その増加した部分の金額に相当する税額を還付する。
《追加》平15法008
6 前2項の規定による還付金について還付加算金を計算する場合には、その計算の基礎となる国税通則法第58条第1項の期間は、次の各号に掲げる還付金の区分に応じ当該各号に定める日の翌日からその還付のための支払決定をする日又はその還付金につき充当をする日(同日前に充当をするのに適することとなつた日がある場合には、その適することとなつた日)までの期間とする。
1.第4項の規定による還付金 同項の決定があつた日
2.前項の規定による還付金 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める日
イ 前項の更正に係る申告書が基準日までに提出された場合 その基準日
ロ 前項の更正に係る申告書が基準日後に提出された場合 その提出の日
ハ 前項の更正が決定に係る更正である場合 その決定があつた日
《追加》平15法008
7 第2項及び前項の基準日とは、第1項の申告書に係る被相続人についての相続の開始があつた日の翌日から10月を経過する日とする。
《追加》平15法008
8 前各項に定めるもののほか、第1項、第4項又は第5項の規定による還付金(これに係る還付加算金を含む。)につき充当をする場合の方法その他これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
《追加》平15法008

この、贈与税の選択課税制度は、平成15年の法改正で追加されたものです。
平成14年12月28日の憲法の限界のコラムで紹介した(後のコラムでも具体的な条文を紹介します)農家の贈与税の特例は、露骨に、農家の均分相続妨害の為に、長男などへまとめて生前贈与をしても、高率の贈与税を課さないどころか、相続開始時までの延納を認めると言う誘導政策です。
また次のコラムで紹介する相続税の計算の鷹揚さも、そうした思想的背景で理解できます。
しかし、平成の改正は、思想ではなく(核家族が中心になって、そういう争いの時代が終わったとも言えます)、景気対策として、少しでも親世代から子世代へ、資産を移動させようとする誘導策の一環として追加されたものです。
もともと、被相続人から、相続開始3年前に生前贈与を受けて贈与税を払っていた場合に、相続が開始すると、受贈財産を遺産に加えて遺産と見なして計算した結果、支払うべき税額から、既払いの贈与税額を、相続税の内金払い済みとすることが出来るようになっていたのです。
以下の条文です。

(相続開始前3年以内に贈与があつた場合の相続税額)
第19条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前3年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産(第21条の2第1項から第3項まで、第21条の3及び第21条の4の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除く。)に限る。以下この条及び第51条第2項において同じ。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、第15条から前条までの規定を適用して算出した金額(当該贈与により取得した財産の取得につき課せられた贈与税があるときは、当該金額から当該財産に係る贈与税の税額(第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)として政令の定めるところにより計算した金額を控除した金額)をもつて、その納付すべき相続税額とする。
【令】第4条
2 前項に規定する特定贈与財産とは、第21条の6第1項に規定する婚姻期間が20年以上である配偶者に該当する被相続人からの贈与により当該被相続人の配偶者が取得した同項に規定する居住用不動産又は金銭で次の各号に掲げる場合に該当するもののうち、当該各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める部分をいう。
各号は省略

このように、、高い税率の贈与税を一旦払っても3年以内に相続が開始すると、相続税の対象遺産として計算しなおし出来ます。
贈与税の控除は60万円から今年110万になったばかりですが、相続税ですと、標準家族で8000万円まで控除される上に税率まで違うのですから、相続税として計算しなおせるのは大きな特典です。
ところが、この条文だけですと、払い過ぎた場合に還付までは、受けられません。
全財産を贈与した場合、例えば全遺産8000万円しかない人が、生前に全財産8000万円を贈与していた場合を考えたらすぐに分かりますが、計算しなおしたら無税になるのですから、8000万円から贈与の基礎控除60万円ないし110万円を控除して残り全部、7940万円ないし7890万円を課税対象として納税していたら、払いすぎ額は、莫大な金額になります。
ところが、この条文だけですと、払い過ぎた場合に還付までは、受けられませんので大損となります。ところが今回の追加改正は、一定の条件の場合、払い過ぎた場合、還付・返してくれるのですから安心して贈与できるわけです。
これまでは、払ったものは、返してくれないので、跡取に生前贈与して財産の集中を図ろうとしても、そんなに多くは出来ませんでした。(農家に関しては特別措置法でその道があることは別に紹介します。)
今回の改正は、農家以外の一般家庭にもこういう制度が広まったわけですが、それは、景気対策という目的(名目)からです。
21条の9の冒頭にあるように「直系卑属で、贈与して貰う人は20歳以上」と言う限定をしていることに注意してください。
小さな子供や配偶者に贈与しても、景気対策にはなりません。
未成年者では、結果的に親の意向でまとまったお金を使うことになるので、実質的な親世代からの資産移転にはなりません。
また親世代でも65歳までは、まだ活気があって自分で使えますので、贈与者が65歳以下では認めないと言うのです。
要するに、使わない資産を抱えている65歳以上の高齢者から、使いたがっている世代に早く移転させようと言うわけです。
こうして見ると、遺産の跡取集中政策機能の強化(均分相続の空洞化政策)にもなりますが、その名目は、景気対策であった事が分かるでしょう。
なお、景気対策としての贈与税軽減策については、私はそれ程効果があるとは思っていませんので、 これは景気対策に名をかりた、遺産集中策の完成版ではないかと思いますがどうでしょうか?(これまでは農家だけの特例でした)
贈与税軽減策と景気対策については、別に書いていますので関心のある方は、このコラム内で検索してみてください。




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