相続税法3(配偶者控除3)(租税法律主義・憲法43)
一定期間内に、法の定めるとおりの申告をしても、以下の場合には、その部分については配偶者控除が受けられません。
相続税法
第19条の2
5 第1項の相続又は遺贈に係る相続税の納税義務者が、同項の被相続人の配偶者に係る相続税の課税価格の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき、第27条の規定による申告書を提出しており、又はこれを提出していなかつた場合において、当該相続又は遺贈に係る相続税についての調査があつたことにより当該相続税について更正又は決定があるべきことを予知して期限後申告書又は修正申告書を提出するときは、当該期限後申告書又は修正申告書に係る相続税額に係る第1項の規定の適用については、同項第2号イの課税価格の合計額及び同号ロの課税価格に相当する金額には、当該配偶者に係る相続税の課税価格のうちその隠ぺいし、又は仮装した事実に基づく金額に相当する金額を含まないものとする。
第5項は、簡単に言うと、脱税していて、税務調査で見つかった場合、修正申告してもこの分については、配偶者控除はありません。という意味です。
これら1項から5項までの条項は、まとめて記載し、まとめて説明しようとしたのですが、まとめてみると、現代文の弊で、ごちゃごちゃ と 長たらしいので、読者のみなさんが、どこに何が書いてあるのか分かり難いと思いますので、1項づつ分けて書きました。
前々回のコラムも、そうすればよかったかなと、今反省しています。
漢文調の条文でしたら、第4項の代わりに第3項の末尾に「ただし、やむをえない事情のあるときは、この限りでない」と言う程度の書き方で足り、第4項は不要です。
さらにいえば、前回紹介した第3項自体も、簡略化すれば、第2項に収まるでしょう。
例えば、「・・・・の申し出は、以下により・・することを要す」として記載要件を箇条書きにすれば、読む人は、すぐ分ると思いますが、今の法律は何故か本文内にごたごたと入れたがるので、見る人は、文字の山を見て、うんざりしてしまいます。
ところで、ちょっと、条文の正確な見方を説明しておきますと、前例で「ただし、やむをえない事情のあるときはこの限りでない」と言う書き方で足りると書きましたが、これですと、「やむをえないかどうか」は、客観的なものですから、税務署と納税者の見解が違えば、裁判で争えることになります。
ところが、現行の税法では「税務署長は」・・・「認めるときに限り」と言うのですから、正しい書き換えでは有りません。
正確に書き換えるとすれば「ただし、やむをえない事情があると、「税務署長が」認めるときは、この限りでない」とすべきことになります。
この違いは何でしょうか?
客観的にやむをえない事情があったかどうかだけで決まるのではなく、税務署長がやむをえない事情があったと認定したときに限り、認められるのです。
前者の場合は、税務署長が認めないときに、不服な納税者は、裁判して、客観的に、やむをえない場合であったとされれば、その判決の確定で、そのまま効力が生じますが、後者の場合は、裁判所が決められるのは、税務署長の認定があったかどうかが第1であって、次にその認定が不当であるかどうかという争いにしかなりません。
現行法では、「やむをえなかったかかどうか」自体は、税務署長が決めるのですから、裁判のテーマには、なり得ないのです。
せいぜい「裁量権を逸脱している」という争い方しか出来なくなっているのです。
憲法
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
これを学問上租税法律主義といい、法・国民の代表である国会で議決しない限り、税金は取れないという、近代法の原理です。
新憲法で租税法律主義が宣言されても、出来るだけ、政府が自由裁量でやりたい・国民の意見を聞きたくないと言う、骨抜きがこんなところにもあります。
政府や学者の考えは、納税義務を税務署長が決めるのではなく、国民の利益になる免除要件の判定をするのだから、いいじゃないかと言うものでしょう。
ここに、配偶者控除制度は、恩恵的制度と考えるかかどうかの重要性が有ります。
いつも言うことですが、原則的に、苛烈な法を定めて、各種各様な補助金や、免除制度があるから、或いは、取り締まりは常識的に運用するからいいだろうと言う法体系にするのは危険です。
免除や補助金は国民に利益になるだけだから、という理由でその認定を政府が自由に出来るとすれば、すべて実質的に政府の自由裁量になってしまって、法治国家の実質が失われてしまいます。
あまりにも刑罰法規が多すぎて、罪刑法定主義の実質が損なわれていることは、平成15年8月12日「罪刑法定主義」と8月16日の「令状主義の限界」のコラムでも紹介しました。
こうしてみると、免除や免責規定のように、一見国民の利益・特典を与えるだけのように見える場合でも、裁判所でチェックできるように定めるべきです。
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