11/02/03
相続分7(民法109)(配偶者相続分の重要性2)
前回のコラムで書きましたように,相続分の割合で銀行がお金を下ろさせてくれれば、生活費は当面間に合いますので、問題がなかったのですが、銀行が母の分だけの払い戻しに応じてくれないので、母親のさしあたりの生活費がなくなってしまいました。
何が不満なのか、分からないので「話し合いをしよう」と言っても、妹が出て来ないので困ってしまったらしいのです。
みんなの意見は、少しくらいその妹に多くやっても良いので早く解決したいとも言いますが、話し合いのテーブルに着かないのでは、どうにもなりません。
仕方ないので、みんなでお母さんの生活費を、出し合って支えて行く状態です。
これでは我慢が出来ないし、何の為に預金が有るのか分かりません。
この事件は、裁判すれば銀行に勝てるのですが、それでは根本的な解決になりませんし、他の子ども達は、預金だけでなく自宅も全部母が相続すべきだと言う考えですから、法定相続分とおりの解決も困るわけです。
そこで、私としては、東京家庭裁判所に、遺産分割の調停を申し立てました。
郵便での呼び出し状だけでは、絶対に裁判所にも出て来ませんので、事情を説明して、家裁調査官から、出頭するように説得してしてもらいましたが、頑として出て来ません。
結局、出てこないのでは調停になりませんので、審判に移行しましたが、勿論審判手続きなっても出て来ません。
已むなしと言うことで、彼女に法定相続分とおりの遺産相続させ(自宅の持分に相当するだけ預金を多く相続させて)、その他の遺産はすべて、母が相続すると言う審判になりました。
母の住んでる家を売って、分配するわけには行きませんからね。
多分その妹は、兄弟みんなの前で、自分の法定相続分である一定のお金を欲しいとは言えなくて、だんまりのままで出てこなかったのでしょう。
こういう事件に遭遇するまで、代理人であった私自身が、当時、いつ何時、自分が死んでも妻が生活に困らないようにと、いう気持ちしかなかったことに気付いたのです。
うかつにも、預金の3分の2もが、子供に行ってしまうことを全く予想していませんでしたので、本当に驚きましたよ。
殆どの男性は、自分の妻が老後子供に気兼ねせず、安楽に暮らせるようにと思って家を建て、預金に励み或いは、保険を掛けているのではないでしょうか?
妻も、一所懸命に預金をしているのは、夫にもしものときには、子供をきちんと育てることは当然としても、基本的には自分が自由にできる金だと思って一所懸命蓄財して来た筈です。
それなのに、いざ夫が亡くなってみると、その3分の2(今は2分の1)が子供の権利になってしまって、子供のお慈悲がなければ、自分のものにならないなんておかしいと思いました。
自宅と預金がある場合、住んでいる家だけで、遺産の半分以上(殆ど9割でしょう)になる家庭が普通ですから、子供たちが法律とおり主張し出したら、配偶者が死亡すると親が殆どの場合、家を出るか預金ゼロかを選ばねばならなくなってしまいます。
こんなおかしな法律に対して、誰も異議を唱えないのは、こういう家族では、100%近い子供が、母が100%取得することに文句を言わない運用が有るからだと思います。
「それならば、何も問題がないじゃないか」と思われるかも知れませんが、100%近い人が、そう言うのが正しいと思っているならば、配偶者が全部相続するのを法律の原則にすべきであると言うのが、そのときからの私の意見になっています。
もちろん、結婚して数年で死亡して、夫の遺産の殆どが夫の親からの相続ないし贈与であったような場合もあるでしょうから、「05/18/03遺留分とは 7立法論3(民法55)」「07/12/03「遺留分 9(老人の再婚6)(民法57)」のコラムで、詳しく書いたように、身分関係だけを基準にせずに、結婚後の年数やその他の段階的な区分によって、相続分を細分化して行けば良いと思っています。
離婚訴訟の財産分与では、マンション購入代金の内、500万円をどちらの親が出してくれたかなど、実情を双方で詳しく主張立証して、裁判所が判決しますが、(むしろその結果を踏まえて和解することが多いのです)相続分は、機械的に身分関係で決めているので、却って正義に反する場合が生じるのです。
こうした法律改正前の自衛策としては、夫婦間の財産は、生前から、2分の1の共有にしておくしかないでしょう。
そうすれば、結果的に配偶者は、4分の3を確保できますので、自宅だけはなんとか維持できるかも知れません。
そこでまた税制ですが、今の法律では、配偶者への贈与は、婚姻後20年以上経過した場合で、自宅取得用として2000万円または、自宅不動産の持分贈与の場合評価2000万円までしか無税になりません。
したがって、4000万円以上の家に住んでいると、2分の1の共有持分を配偶者へ贈与すると超過分について贈与税がかかってしまいます。
夫婦の財産は基本的に半々の権利とすれば、財産評価がいくらであろうと2分の1までは贈与税が控除されるようにして欲しいものです。
相続税法を紹介しましょう。(贈与税に関する法は相続税法に規定されていますよ。)
相続税法
(贈与税の配偶者控除)
第21条の6 その年において贈与によりその者との婚姻期間が20年以上である配偶者から専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利若しくは家屋でこの法律の施行地にあるもの(以下この条において「居住用不動産」という。)又は金銭を取得した者(その年の前年以前のいずれかの年において贈与により当該配偶者から取得した財産に係る贈与税につきこの条の規定の適用を受けた者を除く。)が、当該取得の日の属する年の翌年3月15日までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合又は同日までに当該金銭をもつて居住用不動産を取得して、これをその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合においては、その年分の贈与税については、課税価格から2千万円(当該贈与により取得した居住用不動産の価額に相当する金額と当該贈与により取得した金銭のうち居作用不動産の取得に充てられた部分の金額との合計額が2千万円に満たない場合には、当該合計額)を控除する。
2 前項の場合において、贈与をした者が同項に規定する婚姻期間が20年以上である配偶者に該当するかどうかの判定は、同項の財産の贈与の時の現況によるものとし、当該期間の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
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