11/01/03

相続分6(民法108)(配偶者相続分の重要性1)(遺産は共有か合有か)

今回は、配偶者相続分が3分の1どころか2分の1でも不都合な理由を、具体的な事例で説明しましょう。
20年程前に、都内で老夫婦で生活していて、夫が死亡した相続事件に関与したことが、有りました、
自宅一軒(借家)と千数百万円の預金が、残されていました。
7〜8人の子供がいて、「お母さんが、その家に住み、預金はお母さんの老後資金にすれば足りるかな?」と言うのが、大方の意見でした。
それで何故弁護士の出る幕が有るの?と言う疑問が有るでしょうが、実は、たった1人だけどうしても、印を押さない娘がいたのです。
困りきった他の相続人から、こんな理不尽なことがあるか?と言う相談を受けて、受任したのです。
本来法的(判例理論によれば)には、預金債権のような可分債権は、相続開始と同時に相続分の割り合いで、自動的に相続人に帰属することになりますので,相続人間の分割協議や審判手続きを要しないと言うのが判例の帰結です。
この理論からすれば、母親は、他の相続人の同意がなくとも預金の3分の1(当時は3分の1の相続分でした。)だけ払い戻し出来るのですが、一般的に銀行は、相続人全員の印をそろえて行かないと払い戻しさせません。
相続財産は、分割の仕方が、財産法の共有と違い、以下の条文で特別に定められていることや、分割の話し合いが決まると、遡及効があることもあって、単純な共有でなくこれを合有と主張する学説が有力です。

民法
第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

このように相続財産は、相続人間の共有か、それとも合有なのかという考え方の大きな違いが有りますので、銀行が確定した判例理論に応じないのは、この判例理論に不満なのか(合有説に組するのか?)かも知れません。
お上に従順な銀行が、何十年前からの確定判例に逆らうのは奇異ですから、大事を取るという名分だけで、実は出来れば預金の流出を1日でも延ばしたいという自己保身的発想で払い戻しに応じないだけの可能性もあります。
ともかく、今は、殆どの銀行では、相続人全員で一致して請求しなければ、預金の払い戻しには応じてくれません。
勿論、確定した判例理論ですから、銀行相手に、支払いを求める裁判をすれば100%勝ちますが、(ときどき勝ってる判決を見かけますよ。)大方の人は相続人間の協議の成立を優先させるのです。
それと、実際上の問題として不動産などの分割の話し合いに際して、どうしても凸凹が生じますので、この調整弁として、最後に現金の分配で色をつける解決が多いのです。
そのときにお金だけ分配が終わってしまっていると、もらた人は既に使ってしまっていたりして、(そのまま持っていても、一旦手にしたお金をもう一度吐き出すのは、抵抗があるものです。)新たに調整資金としての出費が困難になりがちです。
こうしたことから、実務上、預金だけ先に払い戻しを求めて裁判まですることは、稀なのです




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