11/21/02
胎児の権利能力(民法12)4
このへんで、我が国の判例や学説の状況がどうなっているかを少し説明してみましょう。
昭和7年10月6日の大審院(戦前の最上級裁判所。現在の最高裁判所小法廷に近いもの)判例というのが、判例として有名です。
この判例は、生まれて初めて権利が生ずる結果になる遡及効のある停止条件説を採用したと解されていて、学説の多くは、これに反対・すなわち遡及効のある解除条権説と言われています。
そんな古い判例(70年も前ですね)なんか現在に通用しないんじゃないの?という人が多いと思いますが、民法はロ−マ法以来の長いスパーンで考えていますので、その時間軸で考えればそんなに古い判例と言う訳でもないのかも知れません。?
事件は、大八車を引いていた男が、鉄道に突っ込んで死亡したと言う、いまで言えばトラックが飛び込んだ踏み切り事故の事件です。
念のため、判例の要旨を引用してみましょう。
『胎児の代理人に関する規定は存在しないので、損害賠償請求につき、母その他の親族が、胎児のため加害者と為した和解は、胎児を拘束しない。』
と言うものです。
一見すると、権利能力はあるけれども、母親その他の親族に代理権がないと言う事で、和解の効力が認められなかっただけのようにも読めますが、胎児の段階で権利能力があるならば、すなわち生まれたものと言う扱いである以上は、未成年者には自動的に親が法定代理人になる規定があるのに、この判例は代理権の規定がないと言うのですから、結局、胎児段階では、まだ、生まれたのと同じ扱いをしない事、すなわち、停止條件説を採用していると言う解釈が定説になっているのです。(法律の解釈だけでなく判例をどう読むかと言う事も争いになるので、法律家はやる事が一杯ありますよ・・)
但し、判例と言うものは、具体的な事件の解決の為に生まれて来ますので、この事件ではこの判決によって、胎児(に不利な?)和解の効力を否定して、胎児が出産後に、その法定代理人の母が、権利回復した事件です。
この事件は、胎児の亡くなった父の親(胎児のおじいさん・家長?)が仕切って和解した(ので結局胎児の貰うべき損害賠償金を、おじいさんが取って使ってしまった?)を、出産後法定代理人となった母が訴えた事件らしいです。
そうとすれば、結局、胎児の正当な権利を守った事(実質は母親の生活補償?)になっているのかもしれません。
この事件では、鉄道会社は、鉄道に大八車に突っ込まれた挙げ句、(これだけでも大変な迷惑です)今度は親族内のもめ事のとばっちりを受けて、2重払いを命じられたのですから、鉄道会社が気の毒という事になっていますが・・・・・・大八車の親は多分使ってしまって返せませんよ・・・返せるならそもそも裁判になりません。嫁さんに返せば済む事ですから
・・・・鉄道会社がババを引いた例です。
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